「ほっ」と。キャンペーン
ブログトップ

EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

<   2015年 02月 ( 2 )   > この月の画像一覧

■大阪大学の山川先生による敗血症性DICに対する遺伝子組み換えトロンボモデュリン(リコモジュリン®)のメタ解析です.予想通りの結果,といったところでしょうか.実臨床での感覚と一致しています.米国で行われているPhaseⅢの結果がでるのはあと数年かかりますが,どのような結果になるでしょうか.

■RCTより観察研究のエビデンスを重視してはいけないわけですが,相対リスク比で見ると観察研究の方が死亡リスク減少効果が強いです.おそらくは前後比較研究による原疾患治療の変化,RCTよりも重症例を登録しているために死亡率に差がつきやすいなどの要因もあると思われます.また,観察研究に症例対照研究が含まれており,解釈に注意が必要かと思われます.後ろ向き症例対照研究においてはバイアスを考慮すると,いかにp値が小さく95%信頼区間が狭くとも,オッズ比が3-4以上または0.25-0.33以下でない限りその結果は懐疑的であるとする意見があります(Science 1995; 269: 164-9).

■ただ,最近,敗血症性DIC領域はアウトカムを死亡率だけで判断してよいのか個人的には疑問に思っています.KyberSept trialの二次解析を見ると,DIC治療は長期機能予後を改善させる可能性があるのではないか?と最近思っていて,そんな研究を今後やってみたいものです.
重症敗血症における遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモデュリン:システマティックレビューとメタ解析
Yamakawa K, Aihara M, Ogura H, et al. Recombinant human soluble thrombomodulin in severe sepsis: a systematic review and meta-analysis. J Thromb Haemost. 2015 Jan 10 [Epub ahead of print]
PMID:25581687

Abstract
【背 景】
遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモデュリン(rhTM)は,日本では播種性血管内凝固(DIC)に対する新しい抗凝固薬として広く使用されているが,敗血症性DICにおけるその臨床効果は明らかではない.

【目 的】
敗血症性DIC患者におけるrhTMの有益性と有害性を評価する.

【方 法】
敗血症性DICに対するrhTMを検討した無作為化試験(RCT)と観察研究(後ろ向き症例対照研究および前向きコホート研究)の各々において,システマティックレビューとメタ解析を行った.有効性として全死亡率(28-30日)を,有害事象として重篤な出血合併症を主要評価項目として評価した.GRADEアプローチを用いたアウトカムレベルでエビデンスの質を評価した.

【結 果】
12研究(838例/RCT3報,571例/9報観察研究)を解析した.
死亡における相対リスクは,RCTで0.81 (95% CI, 0.62-1.06)と有意でない減少を示し,観察研究では0.59 (95% CI, 0.45-0.77)であった.メタ回帰解析では,各研究において,rhTM治療の効果量とベースラインの死亡率に有意な負の相関がみられ(p=0.012),ベースラインのリスク増加に伴ってrhTM治療が有益となる確率が増加することを示唆している.重篤な出血合併症リスクはrhTM群と対照群で有意差はみられなかった.死亡率,重篤な出血におけるエビデンスの質を中等度と判定した.

【結 論】
rhTMは敗血症性DIC患者において28-30日死亡率を減少させる傾向に関連していた.臨床に組み込むことを明白にする前に,本知見を支持するか否かについてはさらなる大規模かつ厳密な試験が必要である.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2015-02-24 19:58 | 敗血症性DIC | Comments(0)
■日本には数多くの医療ジャーナリストがいて,さまざまな番組,書籍などで情報発信を行っています.注意すべきは,医療ジャーナリストはその情報に一切の責任を負わないことです.たとえ間違った情報を発信して,それが原因で人が死んでも医療ジャーナリストが法的に裁かれることはありません.そして我々医療従事者と違い,その情報発信力は絶大です.マスコミの医療監修は不十分で,視聴率重視ですから,デマに近い反医療的発言でもめったに訂正することはありません.言論の自由とやらに保護されている書籍も同じです.そして,この間違った医療情報発信に対して間違いを指摘してきた医療従事者を医療ジャーナリスト側からシャットアウトしてしまうケースもしばしば見られます.ここで特定の人物を名指ししたりはしませんが,そういう医療ジャーナリストがはびこっているのが現実です.

■医療ジャーナリストはあくまでも素人です.論文を片っ端から読んでどれがエビデンスレベルが高いか,なんてことを判断するのはなかなか難しく,現場を体験することも難しいのが現実で,医師等に話を聞くことでまとまったコンパクトな情報を得ています.しかし,そこで選ぶ医師のレベルまではかることは困難で,ときには医療ジャーナリスト自身の思想に合ったことを喋ってくれる都合のいい医師から情報を得ることもあり,論文等の一次情報にアクセスしない報道がいかにバイアスがかかった危険なものであるかはテレビ番組や一般人向け医療書籍を見れば一目瞭然です.医療は人命がダイレクトにかかわるデリケートな領域です.論文を片っ端からすべて読めとは言いませんが,せめてレビュー論文等をしっかり読んで,自分の書いた記事や発言について批判的吟味を甘んじて受け入れる医療ジャーナリストが望まれます.

■今回,医療ジャーナリストがどのように情報収集して医療問題を報じるかについての調査論文がでましたのでご紹介します.医療ジャーナリストの情報源は一次情報にあたらない非常にもろいものです(報道したい内容についてまず文献からあたる医療ジャーナリストはわずか7%でした).なおecancerはオープンアクセスジャーナルですので,この論文は無料公開されています.それにしてもこの回答率の低さはなんなんでしょうね?
医療ジャーナリストは癌に関する問題をどのように扱うのか?
Nakada H, Tsubokura M, Kishi Y et al. How do medical journalists treat cancer-related issues? Ecancermedicalscience 2015; 9: 502
PMID:25729415

Abstract
癌患者は様々な医療情報を通して自身の疾患に関する情報を得ることができる.したがって,癌関連の問題を医療ジャーナリストがどのように扱っているかを知ることは非常に重要であることから,我々は,日本のメディアにおいて医療問題を報じている82の組織の364人のジャーナリストに,癌関連問題を報じる理由と,直面する困難さについての自己記入式アンケートを送った(回答者57人,回答率16%).医療関連問題について報じる理由で最も多かったのは彼ら自身の各問題に対する興味であった(n=36).彼らは主に標準治療(n=33),医療ポリシー(n=30),新規治療法(n=25),診断(n=25)をカバーしていた.調査を受けたすべてのジャーナリストが,医療問題を報告することに若干の困難を感じていた.この懸念は情報の質(n=36),社会的影響(n=35),専門的知識の欠如(n=35),専門用語の理解の困難さ(n=35)などを含んでいた.ジャーナリストは,医師を含む個人のネットワーク(n=42),ソーシャルメディア(メール,Twitter,Facebook)(n=32)を情報ソースとして用いていた.48人のジャーナリストのうち35人はホスピスに関する話題をこれまでまったく報道しておらず,話題選択は偏っていた.医師は癌に関する情報源として最も信頼されており,ジャーナリストは彼らにインタビューすることに高い重要性を示していた.医療の知識は速く進歩しており,ジャーナリストは癌関連の問題をカバーすることがより困難となる可能性がある.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2015-02-15 17:57 | 文献 | Comments(0)

by DrMagicianEARL