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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

<   2015年 04月 ( 5 )   > この月の画像一覧

■宣伝で恐縮ですが,INTENSIVISTの26号「ICUで遭遇する血液疾患」が刊行されました.ICU患者に合併する血液疾患,輸血,重症血液疾患,造血幹細胞移植がとりあげられています.今回私も赤血球輸血基準に関するレビュー(Intensivist 2015; 7(2): 267-77)を執筆させていただきました.6月13日のJSEPTICセミナーでも本内容について講演させていただきます.
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■2014年12月に原稿執筆を終えたのですが,その後にNEJM誌とRev Bras Ter Intensiva誌にRCTが,BMJ誌にメタ解析が報告されており,今回のINTENSIVIST誌には掲載されていません.なので以下に紹介させていただきます.

■なお,私はINTENSIVIST誌の中で,「ヒトの細胞外液量が正常の急性貧血において,忍容しうる下限がどこまでなのかについては確立されていない」と書きました.実際,ヘモグロビン濃度がどこまで下がれば死亡リスクがどの程度高まるかは分かっていない状況で,心血管リスクを有する患者においては輸血制限群のヘモグロビン閾値を8.0g/dLに設定した上で輸血制限を支持するRCTが多数でていたわけです.今回のNEJM誌に報告されたRCTでは制限群のヘモグロビン閾値は7.5g/dLと,従来よりやや低くした結果,アウトカムが非制限群より悪いという結果となりました.このことから,少なくとも心血管リスクを有する患者では閾値を8.0g/dLより低く設定しない方がいいという提案になるでしょうか.

■一方,Rev Bras Ter Intensiva誌の方は敗血症性ショックを対象とした小規模のRCTです.既にTRISS trialで,敗血症性ショック患者では輸血閾値は7.0g/dLでも9.0g/dLでもアウトカムに差はない(医療資源・コスト面で7.0g/dLが自動的に推奨される)という結果でしたが,今回の小規模RCTではScvO2と乳酸値に注目しており,ヘモグロビン濃度がどうであろうがベースラインのScvO2が低い患者や乳酸値の高い患者において赤血球輸血はこれらのパラメータを改善させるとしています.

■なおこの2つのRCTはBMJ誌のメタ解析には含まれていません.
心臓手術後の非制限輸血と制限輸血(TITRe2 study)
Murphy GJ, Pike K, Rogers CA, et al; TITRe2 Investigators. Liberal or restrictive transfusion after cardiac surgery. N Engl J Med. 2015 Mar 12;372(11):997-1008
PMID:25760354

Abstract
【背 景】
赤血球輸血におけるヘモグロビン濃度の閾値制限が,非制限に比して,心臓外科手術後の合併症や医療コストを減じるかについては不明確である.

【方 法】
我々は,英国17施設で登録された,待機的心臓手術を施行された16歳超過の患者における多施設共同並行群間試験を行った.術後ヘモグロビン濃度が9g/dL未満の患者を,制限輸血閾値(ヘモグロビン濃度<7.5g/dL)または非制限輸血閾値(ヘモグロビン濃度<9g/dL)に無作為に割り付けられた.主要評価項目は,無作為化から3か月以内の重症感染症(敗血症または創部感染)または虚血性イベント(永続的脳卒中[脳画像での確認と,運動・感覚・協調運動のいずれかの障害],心筋梗塞,腸管梗塞,急性腎傷害)とした.手術日から術後 3か月までにかかった医療費は,指標手術の費用を除いて推計した.

【結 果】
無作為化された計2007例の患者のうち,4例が脱落となり,1000例を閾値制限群,1003 例を閾値非制限群に割り付けた.無作為化後の輸血率はそれぞれ53.4%と92.2%であった.主要評価項目の発生率は,閾値制限群で35.1%,閾値非制限群で33.0%であり(OR 1.11, 95%CI 0.91-1.34, p=0.30),サブグループでの不均一性は示されなかった.死亡は,閾値制限群の方が閾値非制限群よりも多かった(4.2% vs 2.6%, HR 1.64, 95%CI 1.00-2.67, p=0.045).主要評価項目のイベントを除く重篤な術後合併症の発生率は,閾値制限群で35.7%,閾値非制限群で34.2%であった.医療費は両群間で有意差はみられなかった.

【結 論】
心臓手術後の制限された輸血閾値は合併症や医療コストにおいて非制限よりも優越性を示せなかった.
敗血症性ショックにおける輸血:7.0g/dLは本当に適切な閾値か?
Mazza BF, Freitas FG, Barros MM, et al. Blood transfusions in septic shock: is 7.0g/dL really the appropriate threshold? Rev Bras Ter Intensiva 2015 Jan-Mar;27(1):36-43
PMID:25909311

Abstract
【目 的】
異なる輸血トリガーでの敗血症性ショック患者における中心静脈酸素飽和度と乳酸レベルに対する赤血球輸血の即時効果を評価する.

【方 法】
48時間以内に敗血症性ショックと診断され,ヘモグロビン濃度が9.0g/dL以下の患者を登録した.患者はヘモグロビン濃度が9.0g/dL超過を維持するように直ちに輸血を行う群(Hb9群)とヘモグロビン濃度が7.0g/dL以下に低下するまで輸血を行わない群(Hb7群)に無作為化された.ヘモグロビン,乳酸値,中心静脈酸素飽和度を各輸血の前および輸血1時間後に測定した.

【結 果】
46例の患者および74の輸血を登録した.Hb7群の患者は,乳酸中央値が2.44(2.00-3.22)mMol/Lから2.21(1.80-2.79)mMol/Lまで有意に低下し(p=0.005),これはHb9群では観察されなかった[1.90(1.80-2.79)から2.00(1.70-2.41)に変化].中心静脈酸素飽和度はHb7群で増加し[68.0(64.0-72.0)%から72.0(69.0-72.0)%に変化,p<0.0001]したが,Hb9では増加しなかった[72.0(69.0-74.0)%から72.0(71.0-73.0)%に変化,p=0.98].ベースライン時点で乳酸値が上昇または中心静脈酸素飽和度<70%であった患者は,ベースラインのヘモグロビン濃度にかかわらずこれらの変化が有意に増加していた.これらの数値が正常値であった患者では両群とも減少はみられなかった.

【結 論】
赤血球輸血は,低灌流の患者においてはベースラインのヘモグロビン濃度にかかわらず,中心静脈酸素飽和度を増加させ,乳酸値を減少させる.輸血は低灌流のない患者においてはこれらの変化がみられなかった.
赤血球輸血における制限vs非制限の輸血戦略:メタ解析および逐次解析を用いた無作為化試験のシステマティックレビュー
Holst LB, Petersen MW, Haase N, et al. Restrictive versus liberal transfusion strategy for red blood cell transfusion: systematic review of randomised trials with meta-analysis and trial sequential analysis. BMJ 2015 Mar 24;350:h1354
PMID:25805204

Abstract
【目 的】
赤血球輸血における制限と非制限の輸血戦略の有益性と有用性について比較する.

【方 法】
研究デザインは,無作為化試験のメタ解析および逐次解析を用いたシステマティックレビューである.無作為化比較試験のCochrane central register of controlled trials,SilverPlatter Medline (1950 to date),SilverPlatter Embase (1980 to date),Science Citation Index Expanded (1900 to present)から検索を行った.抽出された試験のリストと他のシステマティックレビューを参照して評価し,執筆者および輸血専門家によって追加する試験の抽出を行った.試験は,言語,盲検化しており,出版状態,サンプルサイズによらず,成人または小児で非制限群と比較した制限輸血戦略を評価された,出版有無によらない無作為化比較試験を登録した.2名が独立して,抽出された試験のタイトルと要約をスクリーニングし,関連している試験は適格性をフルテキストで評価した.そして2名のレビュワーは独立して,登録された試験の方法,介入,アウトカム,バイアスリスクのデータを抽出した.危険率および95%信頼区間による平均差の推定はランダム効果モデルを使用した.

【結 果】
無作為化された患者9813例を含む31試験が登録された.赤血球輸血を受けた患者の割合(RR 0.54, 95%CI 0.47-0.63, 8923例,24試験)と輸血された赤血球単位数(平均差-1.43, 95%CI -2.01 to -0.86)は非制限輸血戦略群よりも制限群の方が少なかった.非制限輸血戦略と比較した制限輸血は死亡リスク(RR 0.86, 95%CI 0.74-1.01, 5707例,9報のバイアスリスクの低い試験),全有病リスク(RR 0.98, 95%CI 0.85-1.12, 4517例,6報のバイアスリスクの低い試験),致死的または非致死的な心筋梗塞リスク(RR 1.28, RR 0.66-2.49, 4730例,7報のバイアスリスクの低い試験)に関連していなかった.結果はバイアスリスクが不明確か高い試験を含めても影響はみられなかった.死亡および心筋梗塞において逐次解析を用いると,必要となる情報量には満たなかったが,制限的輸血戦略による全有病率において15%の相対リスク減少または増加を排除しえた.

【結 論】
非制限と比較して,制限輸血戦略は輸血された赤血球単位数と患者数の減少に関連していたが,死亡率,全有病率,心筋梗塞については不変のようであった.制限輸血戦略はほとんどの臨床状況において安全である.非制限輸血戦略は患者にいかなる利益も示せなかった.

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by DrMagicianEARL | 2015-04-28 13:39 | 文献 | Comments(0)
■重症患者の栄養管理では,経腸栄養にせよ経静脈栄養にせよpermissive underfeeding(安静時エネルギー消費量よりも少ないエネルギー摂取の許容)の方がアウトカムがいい可能性があるとして現在では主流となっているが,初期の至適エネルギー投与量をどの程度にするかについてはまだ不明確な状況にあります.今回,ベースに栄養失調のない重症患者でどの程度の初期エネルギー摂取量が良好なアウトカムを示すのかについてのメタ解析が報告されたので紹介します.本結果からは,目標エネルギー量の33.3-66.6%程度で開始するのがいいようです.

■なお,メタ解析に登録された8報のうち7報が80-200例程度であるのに対して,Riceらの報告が1000例あるため,そちらに引っ張られている部分はあるかもしれません.
重症患者における経腸栄養での初期カロリー摂取量の効果:無作為化比較試験のメタ解析
Tian F, Wang X, Gao X, et al. Effect of initial calorie intake via enteral nutrition in critical illness: a meta-analysis of randomized controlled trials. Crit Care 2015; 19:180

Abstract
【背 景】
重症患者において,臨床アウトカムを改善させるため,経腸栄養の使用が支持されているが,至適なカロリーおよび蛋白の摂取量については不明確である.

【目 的】
本メタ解析の目的は,重症成人患者において変化するカロリー量や蛋白量の投与量に関連した臨床アウトカムに関する無作為化比較試験(RCT)の定量的解析を行うことである.

【方 法】
我々は重症患者における初期のカロリーや蛋白の摂取量の違いによる効果を比較したRCTを検出するため,Medline,EMBASE,Cochrane databaseから検索した.危険率(RR)および95%信頼区間(CI)による加重平均差はランダム効果モデルを用いて算出した.主要評価項目は死亡率,副次評価項目は感染症,肺炎,消化管不耐性,入院期間およびICU在室期間,人工呼吸器装着日数とした.

【結 果】
1895例を登録した計8報のRCTにおいて,低エネルギー群と高エネルギー群とで死亡率死亡率(RR 0.90; 95%CI 0.71-1.15; p=0.40), 感染症(RR 1.09; 95%CI 0.92-1.29; p=0.32),消化管不耐性リスク(RR 0.84; 95%CI 0.59-1.19; p=0.33)に統計学的有意差はみられなかった.サブグループ解析では,目標エネルギー量の33.3-66.6%である低エネルギー群サブグループでは高エネルギー群よりも死亡率が低かった(RR 0.68; 95%CI 0.51-0.92; p=0.01).低エネルギー群でカロリー摂取量が目標エネルギーの66.6%超過である場合は死亡率および消化管不耐性の改善は見られなかった.高蛋白と高エネルギー摂取の併用は感染症を減少させるが(RR 1.25; 95%CI 1.04-1.52; p=0.02),両群で毎日の蛋白摂取量が同等の場合は,高エネルギー摂取では感染症を減少させなかった.他の副次評価項目に統計学的有意差はみられなかった.

【結 論】
本メタ解析では,栄養失調のない重症患者において,高エネルギー摂取は臨床アウトカムを改善させず,合併症を増加させる可能性がある.高エネルギーと比較して,初期の中等量の栄養摂取(目標エネルギーの33.3-66.6%)は死亡率を減少させる可能性があり,高エネルギー(≧0.85g/kg/day)と高蛋白摂取の併用は感染症発生率を減少させる可能性がある.しかし,エネルギーとタンパク質の摂取量のアウトカムへの寄与は不明である.
■高度侵襲にさらされる重症患者では内因性エネルギーが発生する.安静時エネルギー消費量(REE)を正確に算出する方法は現時点では存在せず,内因性エネルギーも算出することは不可能なため,至適カロリー投与量(外因性エネルギー)を算出することはできない.REEよりカロリー量が多いoverfeedingはglucose toxicity(ミトコンドリア内部の過度の酸化ストレス,炎症反応の増幅),nutritional stress(REE増加,CO2産生増加,骨格筋タンパク分解増加,水分貯留・浮腫増悪)といった有害性があり,現在は推奨されておらず,REEより少ないカロリー量を許容するpermissive underfeedingが現在ではゴールデンスタンダードとなっている(BMI<18等のベースの栄養状態不良の患者は除く).

■2011年に報告された7施設共同の4640例RCTであるEPaNIC trial[1]では,早期経腸栄養に早期経静脈栄養を併用しない方が,平均ICU滞在日数,感染症発生率,腎代替療法施行日数,2日以上の人工呼吸器使用率,医療コストといったアウトカムが優れており,「ENが可能であれば,早期PNによる補助で投与エネルギーゴールを目指す管理は一利もなく推奨されない」と結論づけ,ESPENの推奨を否定,ASPEN/SCCMの推奨を支持するものであった.

■このEPaNIC trialのpost hoc解析では,経腸栄養か経静脈栄養かといった投与経路は問題ではなくoverfeedingが問題であるととらえられている.EPaNIC trialのvan den Burgheは2013年のCritical Care誌でのレビュー[2]において,このoverfeedingがautophagyの抑制を引き起こし,免疫低下を起こすことに言及しており,これが感染症増加の原因のひとつと考えているようである.さらに,重症度は早期静脈栄養の有害性とは関連がなく,投与カロリーは少ないほど予後が良く,糖よりもアミノ酸/蛋白の投与量の方が予後と関連したとしている[3]

■これを支持するかのように,2014年に経腸栄養と経静脈栄養を比較した2400例の大規模RCTであるCALORIES trial[4]が報告された.この報告では,overfeedingを回避し,NICE-SUGAR study[5]に基づいた中等度の血糖管理を行うことで死亡率は同等であった.

■重症患者における投与カロリー量,permissive underfeedingについては以下にまとめているので参照されたい.
敗血症と栄養管理(2) 投与カロリー,静脈栄養併用
http://drmagician.exblog.jp/21625275/


[1] Casaer MP, Mesotten D, Hermans G, et al. Early versus late parenteral nutrition in critically ill adults. N Engl J Med 2011; 365: 506-17
[2] Schetz M, Casaer MP, Van den Berghe G. Does artificial nutrition improve outcome of critical illness? Crit Care 2013; 17: 302
[3] Casaer MP, Wilmer A, Hermans G, et al. Role of disease and macronutrient dose in the randomized controlled EPaNIC trial: a post hoc analysis. Am J Respir Crit Care Med 2013; 187: 247-55
[4] Harvey SE, Parrott F, Harrison DA, et al; the CALORIES Trial Investigators. Trial of the Route of Early Nutritional Support in Critically Ill Adults. N Engl J Med 2014; 371: 1673-84
[5] NICE-SUGAR Study Investigators, Finfer S, Chittock DR, Su SY, et al. Intensive versus conventional glucose control in critically ill patients. N Engl J Med 2009;360:1283-97
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by DrMagicianEARL | 2015-04-22 18:07 | 文献 | Comments(0)
■敗血症性ショックに対するPMX-DHPについてはフランスのABDOMIX studyと米国カナダのEUPHRATES studyがあるが,そのうちABDOMIXについては昨年3月23日にベルギーはブリュッセルで開催されたISICEMで既に報告があり,結果はネガティブであったことを既に知っておられる方も多いと思います(しかも数か月後には早々とRonco先生がCritical Care誌にPMX-DHPのレビュー論文をpublishした際に結果を書いてましたが).

■このISICEMでの報告から1年たってようやくIntensive Care Medicine誌にpublishされましたのでここに紹介します.対照群と有意差なしどころか有害ともとれないこともないデータです.Authorがどのような表現でConclusionsを書いてくるか興味がありましたが,AbstractはITT解析を重視した厳しめの表現となりました.limitationはあるものの,PMX-DHPの適応を考え直す必要はあるでしょう.

■それにしても,EUPHAS studyでは中間解析でのCox比例ハザード回帰でPMX-DHP群の方が死亡リスクが低かったために試験が中止となったのに対して,今回のABDOMIXはPMX-DHP群の方が死亡リスクが高いのによく中止にならなかったな,と思いました.
腹膜炎による敗血症性ショック患者に対するポリミキシンB血液浄化の早期使用(ABDOMIX study)
Payen DM, Guilhot J, Launey Y, et al; ABDOMIX Group. Early use of polymixin B hemoperfusion in patients with septic shock due to peritonitis: a multicenter randomized control trial. Intensive Care Med 2015 Apr.11 [Epub ahead of print]
PMID:25862039

Abstract
【目 的】
腹腔感染症からくる腹膜炎による敗血症性ショックにおいて,ポリミキシンBによる血液浄化(PMX-DHP)ファイバーカラムが死亡率と臓器不全を減少させるかを検討する.

【方 法】
本研究は,2010年10月から2013年3月までのフランスの18のICUにおいて,消化管穿孔に関連した腹膜炎に対する緊急手術後12時間以内の敗血症性ショック患者243例を登録した前向き多施設共同無作為化比較試験である.PMX-DHP群は標準治療に加えて,2回のPMX-DHPを施行された.主要評価項目は28日死亡率,副次評価項目は90日死亡率およびSOFAスコアに基づいた臓器障害の重症度の低下とした.

【結 果】
主要評価項目の28日死亡率は,PMX-DHP群(119例)で27.7%,標準治療群(113例)で19.5%,p=0.14であった(OR 1.5872, 95%CI 0.8583-2.935).副次評価項目の90日死亡率はPMX-DHP群で33.6%,標準治療群で24%,p=0.10(OR 1.6128, 95%CI 0.9067-2.8685),day 0から7でのSOFAスコアの減少はPMX-DHP群で-5(-11 to 6),標準治療群で-5(-11 to -9),p=0.78であった.事前に規定していたサブグループ(合併症,外科手術の適切性,PMX-DHP施行回数2回未満)やday 0から3のSOFAスコアの減少についても同様の結果であった.

【結 論】
本多施設共同無作為化比較試験で,腹膜炎による敗血症性ショックに対するPMX-DHPは,標準治療と比較して,有意ではない死亡率の増加を示し,臓器不全を改善させなかった.

1.PMX-DHP群で死亡率が高まった原因は?

■「PMX-DHPは死亡リスクを改善させないかもしれないが,血圧は上昇する」という印象をもっている人は多いと思われる.しかし,本ABDOMIXの結果は,統計学的有意ではないものの死亡率絶対差が7-8%と無視できない大きさである.この差がなぜ生じたかについてはサブ解析を見ると分かる.PMX-DHP群の32%にあたる38例がPMX-DHPを続行できず,そのうちの23例が凝固が原因であり,そのうち19例が1回目のPMX-DHP施行で凝固が生じていた.この続行不可能であった38例を除外したサブ解析ではPMX-DHP群の死亡率は18.5%となり,標準治療群の19.5%とほぼ同等となる.一方,PMX-DHPが続行できなかった38例の死亡率は47%と異常に高い.なぜこんなに死亡率が高まってしまったのか?

■ひとつは,試験が行われたのがフランスであるという点である.人種の差の検討も必要であるが,日本やイタリアと違い,PMX-DHPに慣れてない施設やスタッフも多かったのかもしれない.また,フランスではDICの治療は行われない.人工デバイスが入った状態でのDIC併発がなんらかの弊害をもたらしたのかもしれない.さらに,使用した抗凝固薬はヘパリンであり,これが敗血症病態において何らかの悪影響を及ぼした可能性も否定できない(本邦ではメシル酸ナファモスタットが一般的である).これらの要因が重なり,PMX-DHPが続行不可能となった症例では死亡率が5割近くまで高まったのかもしれない.だが,いずれにせよ,これらの症例を除外しても,死亡率の改善は示せていないことになる(敗血症性ショックの死亡率が20%を切ってくると有意差をもって死亡率を改善させた介入はRCTレベルでは現時点では存在しない).おそらく,PMX-DHPについて言及するガイドラインでは今後推奨度は本研究結果を受けて下がる可能性がある.

2.これまでの知見

■PMX-DHP(polymyxin B-immobilized fiber column-direct hemoperfusion)はエンドトキシン吸着カラムのトレミキシン®(東レメディカル)を用いた日本発の血液吸着療法であり,敗血症に適応がある.2010年に報告された大規模RCTであるEUPHAS studyでは結果はポジティブであるとされたが,試験がCox比例ハザード回帰解析結果で早期終了されていること,死亡率に有意差がないこと,腹腔内感染症による敗血症にしては対照群の死亡率が高すぎることなどの問題点が多数指摘され,EUPHASを含め,PMX-DHPが敗血症の死亡率を改善するとするRCTレベルのエビデンスはなく,血圧上昇効果についてもエビデンスは明確ではなかった.

■詳細について本ブログではPMX-DHPについてのまとめの記事を2013年にアップしているので参照されたい.

敗血症とエンドトキシン計測&PMX-DHP(2) ~PMX-DHPは敗血症の予後を改善しうるか?~
http://drmagician.exblog.jp/20996440/

3.今後のRCT

■PMX-DHPについては,現在米国カナダでEUPHRATESが行われている.本試験は,エンドトキシン血症(EA値≧0.6)を伴う敗血症性ショック患者を対象とし,標準治療+PMX-DHP群と標準治療群を比較した米国・カナダ42施設共同二重盲検RCTである.

■さらに,スイスでもENDOX study(pilot RCT)が開始されている.この研究はAN69ST(SepXiris®)のカラムの電荷を少し変えてエンドトキシンを効率よく除去できるようにしたoXirisというカラムを用い,このoXiris群,PMX-DHP群,標準治療群を比較した3アームのRCTである.この結果でPMX-DHPが優位性を示せなければ,コスト面も考慮すると優先順位は下がることになるかもしれない.
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by DrMagicianEARL | 2015-04-21 16:41 | 敗血症 | Comments(1)
■近年,propensity scoreを用いた解析が非常に流行しており,「観察研究をRCTっぽくする解析」「疑似RCT」などの表現でよく紹介されています.最近,PubMedにおいても,Article typeをRCTにすると,propensity scoreの解析を用いた観察研究までヒットするようになりました.しかし,この解析方法はそんな簡単なものではなく,解釈にかなり注意を要するもので,一部は不適切な乱用ではないかと疑うような報告もあり,私はかなりこの解析を用いた研究には慎重になるべきだと考えています.観察研究はGRADEシステムでいけばエビデンスのベースの質はCであり,よいデザインであればBに上がるわけですが,はたしてpropensity scoreを用いた研究はBになりうるのか?については私はまだ懐疑的です.使うならば「統計に詳しい医師」ではなくちゃんと統計学の専門家に相談するべきだと思います.

■敗血症領域では,日本集中治療医学会が敗血症Registryデータを用いてpropensity scoreの解析を行っています.また,DPCデータを用いたpropensity scoreの解析の報告も散見されるようになりました.これらのような報告を慎重に見るべき,とする論文がでていましたので紹介するとともに,propensity scoreについて少しまとめてみました.
敗血症領域において,propensity score解析を用いた観察研究は無作為化比較試験の結果と合致するか?
Zhang Z, Ni H, Xu X. Do the observational studies using propensity score analysis agree with randomized controlled trials in the area of sepsis? J Crit Care. 2014 Oct; 29(5): 886.e9-15
PMID:24996762

Abstract
【背 景】
敗血症は集中治療室における死亡や罹患の主要因であり,多くの研究がそのアウトカムを改善する目的で行われている.この目的のため,無作為化比較試験(RCT)やpropensity score(PS)法を用いた観察研究が一般的に用いられている.しかし,これらの2つの主要な方法論的デザインの合致はこの特異的領域ではまだ検討されていない.

【目 的】
本研究の目的は,RCTとPSによる研究とでの効果量の比較を行うことである.

【方 法】
敗血症領域において,PubMed,Scopus,EBSCOを含む電子データベースからPSを用いた研究を検索した.これらの研究を,集団,介入,対照,アウトカムの単語でRCTまたはシステマティックレビューやメタ解析とマッチさせた.1領域について複数のPSによる研究とRCTが存在する場合は,効果量を,変量効果モデルと逆分散法を用いて蓄積した.

【結 果】
RCTとPSを用いた研究のマッチしたペアが少なくとも1つ存在するという基準を満たしたものが全部で8つのトピックスで検出された.介入は,活性化プロテインC,低用量ステロイド,アンチトロンビンⅢ,抗菌薬併用療法,魚油製剤,スタチン,挿管時のエトミデート,遺伝子組換えヒト可溶性トロンボモデュリンが含まれた.効果量はほとんどのトピックス(6/8)でRCTとPSを用いた研究で統計学的有意差がみられた.効果量の蓄積された平均差は-0.16(95%CI -0.33 to 0.01)であり,RCTよりもPSを用いた研究の方が治療効果が大きくなる傾向がみられた.本結果はサンプルサイズの大きいRCTとPSを用いた研究に限定しても不変であった.

【結 論】
我々の研究から,敗血症領域において,有効性試験の差によりPSを用いた研究がRCTよりも大きな治療効果を報告している傾向が示唆された.
■観察研究とRCTの結果が乖離することはよく見られることであり[1],たとえPSを解析に用いた研究であっても,その効果量はRCTと異なることを示している.この研究の他にも,集中治療領域全体[2],急性冠症候群[3]の研究においてもPSを用いた研究とRCTには乖離がみられるとの結果が報告されている.

■もっとも,RCTは事前に決められた患者登録基準,除外基準によって選択された集団を対象としており,観察研究はそのような厳しい選択がない,リアルワールドなデータをもとに解析を行うため,治療介入を行う医師自身の判断がより効果が得られやすいであろう患者を意図的に選択している可能性もあるため,観察研究とRCTとで効果量に差がでることはある意味当たり前のこと,と考えることもできる.ただし,PSを用いた解析はそう単純なものではないことを知っておかなければならない.「RCTっぽくする解析方法」という響きのいいフレーズの下で流行りの解析方法ではあるが,使い方を誤ると不適切となり兼ねない諸刃の剣である.

1.propensity score matching解析とは?
■特定の治療介入を行うか否かは患者の状態,あるいは医師によって判断が異なることがある.通常の後ろ向き観察研究ではこのバイアスが大きくかかわり,単純に介入群と非介入群で効果を直接比較しても得られる結果から導き出される結論は妥当性に欠ける.そこで背景因子を調整した多変量解析が行われるが,説明変数(背景因子)が研究者によって恣意的に決定されるためバイアスリスクが除かれるわけではない.この後ろ向き観察研究のバイアスリスクをより除く手段としてpropensity score(以下PS)を用いた解析が行われるようになった.

■PSは日本語では傾向スコアなどと訳され,特定の治療介入が行われる傾向を見たものである[4].すなわち,患者の背景因子をもとに,特定の治療介入が行われる確率(割り付け確率)を多重ロジスティック解析を用いて算出したスコアである.当然ながら確率であるため,PSは0から1までの値をとる.RCTの割り付け確率は真のPSであるが,観察研究ではこの割り付け確率を共変量(背景因子)から推定していくことになる.そこで,PS(特定の治療介入を受ける確率)が同じ2人の患者がいて,片方がその治療を受け,もう片方が治療を受けていないならば,片方を治療群,片方を対照群としてペアをつくり(マッチング),この2人がランダムに両群に割り付けられたと仮定して比較を行う.これがPS matching解析であり,「擬似RCT」「観察研究をRCTっぽくする解析」と言われる理由である.

■このようにRCTを行うことが倫理的に困難で観察研究を余儀なくされるとき,問題となる治療選択バイアスを軽減する上でPSは非常に有用である.ただし,PSを用いた解析結果に妥当性を持たせるためにはいくつもの問題点をクリアせねばならず,そう簡単に使える解析手法ではない[5]

2.propensity scoreの問題点

(1) できる限り多くの共変量を組み込まなければならない

■PS解析を行う上で重要なのは,交絡因子をすべて考慮することが目標となる.すなわち,治療法の選択に関連するすべての要因を共変量として組み込む必要があり,十分多くの変数をモデルに取り込まなければならない.もし共変量が少なければそこには「共変量を研究者が自分の都合のいい結果となるように選択した可能性」という恣意性のバイアスが生じてくる.よって,どこまでデータが揃っているかが重要となってくるため,欠測値が多いデータベースでは不利となる.PS解析の研究結果を見るときは,必ず共変量に目を通し,妥当性を検討すべきである.

■国全体規模での大規模データベースでPSを用いた解析が行われることがある.これは生活習慣病等の慢性疾患や急性期加療後の長期的な薬剤投与followなどでよく用いられている.近年,集中治療領域において日本からDPCデータのPSを用いた解析が報告されるようになったが,ここは注意が必要である.DPCデータは詳細な検査値や重症度は不明であること,アップコーディング(たとえばDICでないのにDIC病名がついているなど)を除外できないこと,no CPRとなった症例を除外できないことはかなり大きなlimitationであると思われる.また,PSでの共変量はDPCの性質上,すべて0か1の2つの値のみであり連続変数ではない.そもそもPSは前述の通り,治療介入の選択に関連する変数をできる限り多く組み込む必要があるが,DPCデータから得られる変数では不十分である.集中治療領域は慢性疾患とは異なり来院時のデータの連続変数で大きく治療方針や予後が変わるため,ここを考慮せずの解析データではいかにサンプル数が多くても妥当な結論は得られないのではないかと思われる.

(2) サンプル数が大きく削ぎ落とされてしまう

■特定の治療の介入群と非介入群の偏りが大きいと,PSでマッチするペアの数が極端に少なくなってしまい,研究の妥当性が落ちてしまう(少ない方の患者群に合わせてマッチングが行われるためどうしても検定する際の症例数が少なくなる).実際に集中治療領域でPS matching解析を用いた研究のほとんどが1/3~1/10にまでサンプル数が削ぎ落とされている.当然,研究全体のサンプル数が少なければそれだけマッチするペアは少なくなりやすい.

(3) マッチングされた患者集団は母集団を反映するか?

■PS matchingでは患者背景がどちらかの群に偏ってしまう.このため,得られた結果を本来の治療効果を検討したい母集団全体に本当に適応できるのかという問題点を有する.例えば,治療を行わなかった群に合わせたマッチングを行った場合,治療を受けなさそうな患者群での治療効果が判定されることになる.よって,解析前の介入群と非介入群のそれぞれのサンプル数の影響は免れない.

3.問題点をなんとかして解消する方法はないか?

■共変量の数が不十分である場合,サンプル数が非常に少ない場合はそもそもPS解析は行うべきではないと思われる.サンプル数の削ぎ落としをなくしたい,偏りをできるかぎりなくしたいという場合は(なぜか医療系論文ではまだほとんど用いられていないようであるが)PSの逆数の値を用いてその患者の予後に与える影響度に重み付けをして解析を行うIPTW法(inverse probability of treatment weighting)[6]という方法が提唱されており(周辺構造モデル(marginal structral model)とも呼ぶ),PS matching法よりもIPTW法の方が解析が簡単で、患者背景の調整もよりうまく行えると認識されている.

[1] Anglemyer A, Horvath HT, Bero L. Healthcare outcomes assessed with observational study designs compared with those assessed in randomized trials. Cochrane Database Syst Rev 2014; 4: MR000034
[2] Zhang Z, Ni H, Xu X. Observational studies using propensity score analysis underestimated the effect sizes in critical care medicine. J Clin Epidemiol 2014; 67: 932-9
[3] Dahabreh IJ, Sheldrick RC, Paulus JK, et al. Do observational studies using propensity score methods agree with randomized trials? A systematic comparison of studies on acute coronary syndromes. Eur Heart J 2012; 33: 1893-901
[4] Rousenbaum PR, Rubin DB. The central role of the propensity score in observational studies for causal effects. Biometrika 1983; 70: 41-55
[5] Rubin D. Estimating causal effects from large data sets using propensity scores. Ann Internal Med 1997; 127: 757–63
[6] Austin PC. The performance of different propensity score methods for estimating marginal hazard ratios. Stat Med 2013; 32: 2837-49
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by DrMagicianEARL | 2015-04-03 18:42 | 論文読み方,統計 | Comments(3)
■肺炎球菌は,インフルエンザと同様に厚生労働省のB群予防疾患としてワクチン接種が推奨されています.このB群予防疾患は重症化予防を重点においており,今回プレベナー13®でそれに見合った大規模RCTとindirect protectionまで検討した観察研究が報告されましたので紹介します.当院を含む地域では肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®ですが)が積極推奨された結果か,重症肺炎球菌肺炎は激減しつつあり,臨床的な感覚にも合致します.

■インターネット上では,何名かの開業医さんが自分のホームページにおいて肺炎球菌ワクチンを否定する内容を書いています.しかし,その根拠は自分の診療経験であり,「肺炎球菌ワクチンを接種しても肺炎になる患者がいるので当院では接種をやめた」という,細菌学的・疫学的考察も肺炎球菌ワクチンの目的も無視した勘違いもしくは根拠に欠ける内容が目立ちます.プライマリーケア最前線の現場で科学的根拠の欠落した情報発信をされているのは非常に残念としか言いようがありません.

■重症肺炎球菌肺炎の中には,適切かつ迅速な治療を行っても急速な増悪の経過をたどる劇症例が存在します.気管支鏡を行うと,気管支の奥の方から褐色の水のような喀痰がいくらでもわきでてきて,人工呼吸器を装着しても呼吸状態が維持できず,わずか24時間程度で死亡に至るようなケースを経験されている先生もおられるかと思います.また,このような劇症例でなくとも,敗血症に相当する重症例に罹患した高齢者は救命できてもその後の機能予後が著しく低下することはしばしば経験され,このような患者を減らす上でも肺炎球菌ワクチンを今後も推奨していく必要があると思います.

■また,ニューモバックス®,プレベナー®が推奨される流れで注意すべきは,カバーされていない他の肺炎球菌株によるブレークスルーが地域単位で生じてくる可能性です.実際に観察研究の方でそのブレークスルーの可能性が示されています.

成人の肺炎球菌肺炎に対する多糖類コンジュゲートワクチン(プレベナー13®),CAPITA study
Bonten MJ, Huijts SM, Bolkenbaas M, et al. Polysaccharide conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults. N Engl J Med 2015; 372: 1114-25
PMID:25785969

Abstract
【背 景】
肺炎球菌多糖類コンジュゲートワクチンは乳児において肺炎球菌感染症を予防するが,65歳以上の肺炎球菌による市中肺炎に対する効果は知られていない.

【方 法】
65歳以上の成人84496例を登録した本無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験において,我々はワクチンタイプの肺炎球菌株による市中肺炎,非細菌性と非侵襲性の肺炎球菌による市中肺炎,侵襲性肺炎球菌感染症の最初のエピソードについて13価多糖類コンジュゲートワクチン(PCV13)の効果を検討した.標準的検査方法と血清型特異的尿中抗原検出アッセイを市中肺炎と侵襲性肺炎球菌感染症の検出に用いた.

【結 果】
ワクチンタイプの株による感染症の最初のエピソードのper-protocol解析において,市中肺炎はPCV13群で49例,プラセボ群で90例発生し(ワクチン効果45.6%; 95.2%CI 21.8-62.5),非細菌性と非侵襲性市中肺炎はPCV13群で33例,プラセボ群で60例発生し(ワクチン効果45.0%; 95.2%CI 14.2-65.3),侵襲性肺炎球菌はPCV13群で7例,プラセボ群で28例発生した(ワクチン効果75.0%; 95%CI 41.4-90.8).効果は試験期間中持続した(平均フォローアップ期間3.97年).調整したintention-to-treat解析でも同様の効果が観察され(ワクチン効果はそれぞれ37.7%,41.1%,75.8%),市中肺炎はPCV13群で747例,プラセボ群で787例発生した(ワクチン効果5.1%; 95%CI -5.1 to 14.2).重篤な有害事象や死亡は両群間で同等であったが,PCV13群で局所反応が多かった.

【結 論】
高齢者において,PCV13はワクチンタイプの肺炎球菌,細菌性,非細菌性の市中肺炎,侵襲性肺炎球菌感染症を予防するが,あらゆる原因での市中肺炎予防効果はみられなかった.
英国およびウェールズにおける,導入後4年間の侵襲性肺炎球菌感染症における13価肺炎球菌コンジュゲートワクチンの効果
Waight PA, Andrews NJ, Ladhani SN, et al. Effect of the 13-valent pneumococcal conjugate vaccine on invasive pneumococcal disease in England and Wales 4 years after its introduction: an observational cohort study. Lancet Infect Dis 2015 Mar 19 [Epub ahead of print]
PMID:25801458

Abstract
【背 景】
13価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV13)は,7価ワクチン(PCV7)のルーチン接種後に増加した血清型の増加を防ぐが,集団免疫や血清型のブレークスルーの可能性については不明確である.

【目 的】
本研究の目的は,英国およびウェールズにおいて導入後4年間の侵襲性肺炎球菌感染症に対する13価肺炎球菌コンジュゲートワクチンの効果を解析することである.

【方 法】
我々は,PCV13導入前およびPCV7導入前をベースラインとして,2013年7月から2014年6月までのワクチンタイプと非ワクチンタイプの侵襲性肺炎球菌感染症の発生率を推定するために,英国とウェールズにおける電子的報告および侵襲性肺炎球菌感染症例の血清型の国のデータセットを用いた.発生率は血清型データの欠落と時間の経過によるサーベランス感度の変化で補正した.発生率と信頼区間の推定は過分散ポアソンモデルを用いた.

【結 果】
2013/2014年の疫学的な侵襲性肺炎球菌感染症の発生率は,PCV13導入前に比して32%減少していた(2008-10年の発生率10.14/100000 vs 2013/14年の発生率6.85/100 000; 発生リスク 0.68, 95%CI 0.64-0.72),.これは,PCV7がカバーする血清型が86%減少したこと(1.46 vs 0.20/100000; 発生リスク 0.14, 95%CI 0.10-0.18),PCV13によってカバーされたさらなる6種類の血清型が69%減少したことによる(4.48 vs 1.40/100000; 発生リスク 0.31, 95%CI 0·28-0·35).PCV7導入前と比較すると,侵襲性肺炎球菌感染症は56%減少していた(15.63 vs 6.85/100 000; 発生リスク 0.44, 95%CI 0·43-0·47).PCV13導入前と比較すると,PCV13に含まれない血清型は,5歳未満の小児と45歳以上の成人において広い範囲の血清型の増加によりその発生率が増加していた(4.19 vs 5.25/100000; 発生率 1.25, 95%CI 1.17-1.35).5歳未満の小児において,2013/2014年のPCV13に含まれない血清型の発生率は2012/2013年よりも高かった(2歳未満: 12.03 vs 10.83/100000; 2-4歳: 4.08 vs 3.63/100000).

【結 論】
英国およびウェールズにおけるPCVの8年間の導入は侵襲性肺炎球菌感染症を50%以上減少させた.PCV7による集団免疫は持続しており,同様に間接的保護作用はPCV13によってカバーされる血清型が追加されたことで生じている.しかし,2014年においてPCV13に含まれない血清型による侵襲性肺炎球菌肺炎を,特に5歳未満の小児において増加していることが示された.もしこの増加が持続するのであれば,小児におけるPCV13プログラムの最大限の有益性は既に達成されている.

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by DrMagicianEARL | 2015-04-01 00:00 | 感染対策 | Comments(0)

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