ブログトップ

EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

<   2015年 06月 ( 4 )   > この月の画像一覧

■ICU患者が急変した際の緊急挿管において,挿管後に急激に血圧が低下することを経験した医師は非常に多いと思われます.今回,ICUでの挿管後低血圧に関する報告が立て続けに3つ出たので紹介します.

■以下の報告では挿管後低血圧発生率は3-5割ですが,当院では高齢者が多く,リスク因子を有する患者も多いこと,敗血症性ショック患者が多いことから挿管後低血圧発生率はもっと高いです(8割程度).このため,挿管後低血圧に備えて挿管直前にリンゲル液の急速輸液負荷を開始したり,ノルアドレナリンをスタンバイして挿管を行うなどしています.
ICUでの気管挿管後の重篤な循環動態破綻の発生と危険因子
Perbet S, De Jong A, Delmas J, et al. Incidence of and risk factors for severe cardiovascular collapse after endotracheal intubation in the ICU: a multicenter observational study. Crit Care. 2015 Jun 18;19(1):257. [Epub ahead of print]
PMID:26084896

Abstract
【背 景】
重篤な循環動態の破綻(CVC:cardiovascular collapse)はICUにおける緊急気管挿管(ETI:endotracheal intubation)後の生命を脅かす合併症である.多数の因子がETI中の循環動態と相互に作用する可能性があるが,重篤なCVC発生に関連する因子について焦点をあてたデータの研究はない.本研究はICUにおけるETI後の重篤なCVCの発生を検討し,重篤なCVCVの予測因子を解析した.

【方 法】
本研究は,42のICUでの1400の挿管症例についての前向き多施設共同研究の二次解析である.重篤なCVC発生は,挿管前に循環動態が安定(循環作動薬なしで平均動脈圧>65mmHg)している患者で評価し,重篤なCVC予測因子は患者および手順の特性に基づいた多変量解析で検討した.

【結 果】
重篤なCVCは885挿管中264例(29.8%)で生じた.2段階多変量解析では,CVCの独立した危険因子は,年齢に無関係のSAPSⅡスコア(OR 1.02, p<0.001),60-75歳(OR 1.96, p<0.002 vs <60歳),>75歳(OR 2.81, p<0.001 vs <60歳),挿管の原因が急性呼吸不全であること(OR 1.51, p=0.04),ICUにおける最初の挿管(OR 1.61, p=0.02),酸素化方法としてNIVを使用していたこと(OR 1.54, p=0.03),挿管後のFiO2>70%(OR 1.91, p=0.001)であった.気管挿管を要する昏睡患者は挿管中のCVC進展リスクは低かった(OR 0.48, p=0.004).

【結 論】
ICUにおいて,CVCは,特に高齢者や急性呼吸不全で挿管された重症患者でよく見られる合併症である.CVC予防のための特異的バンドルはこれらのハイリスクの重症患者の挿管に関連した有病率や死亡率を減少させる可能性がある.
ICU患者における挿管後低血圧:多施設共同コホート研究
Green RS, Turgeon AF, McIntyre LA, et al; the Canadian Critical Care Trials Group (CCCTG). Postintubation hypotension in intensive care unit patients: A multicenter cohort study. J Crit Care 2015, June 16[Epub ahead-of Print]

Abstract
【目 的】
気管挿管を要する重症患者における挿管後低血圧(PIH:postintubation hypotension)の発生率と予後との関連性を検討する.

【方 法】
4つの教育三次医療病院の集中治療室(ICU)で挿管を要する重症成人患者479例について医療記録をレビューした.主要評価項目はPIHの発生率とした.副次評価項目は死亡率,ICU滞在日数,腎代替療法の必要性,そして,全死亡,14日を超えるICU滞在,7日を超える人工呼吸器装着期間,腎代替療法の複合項目とした.

【結 果】
総じて,挿管を要するICU患者におけるPIHの発生率は46%(218/479例)であった.単変量解析では,PIHに進展した患者はICU死亡率(37% vs 28%, p=0.049)と全死亡率(39% vs 30%, p=0.045)が増加した.重要な危険因子で調整すると,PIH進展は主要な有病率や死亡率の複合項目と関連していた(OR 2.00; 95%CI 1.30-3.07; p=0.0017).

【結 論】
PIHへの進展は緊急既往管理を要するICU患者においてよく見られ,不良な予後と関連していた.
挿管後低血圧と他の短期アウトカムの予測における挿管前のショック指数と改訂ショック指数
Trivedi S, Demirci O, Arteaga G, et al. Evaluation of preintubation shock index and modified shock index as predictors of postintubation hypotension and other short-term outcomes. J Crit Care. 2015 Aug;30(4):861.e1-7
PMID:25959037

Abstract
【目 的】
挿管前のショック指数(SI:shock index)および改訂ショック指数(MSI:modified shock index)は救急部門における挿管後低血圧の予測能を示している.本研究の主要な目的は,集中治療環境におけるその関連性を検討することである.2つ目の目的は,集中治療室において,死亡率や滞在期間といった他の短期アウトカムとショック指数の関連性を評価することである.

【方 法】
本研究は三次医療センターの140例の成人ICU患者で行われた非並行コホート研究である.登録基準は,明らかに循環動態が安定している患者での緊急気管挿管とした.

【結 果】
挿管前のSI≧0.90は,収縮期血圧<90mmHgで定義される挿管後低血圧と,単変量(p=0.03; OR 2.13; 95%CI 1.07-4.35)および交絡因子で調整した多変量解析(p=0.01; OR 3.17; 95%CI 1.36-7.73)で有意に関連していた.これは,高いICU死亡率とも,単変量(p=0.01; OR 4.00; 95%CI 1.26-12.67)および多変量解析(p=0.01; OR 5.75; 95%CI 1.58-26.48)の両方で関連していた.挿管前のMSIと挿管後循環動態不安定およびICU死亡との間には関連性は見られなかった.挿管前SIおよびMSIは,ICU滞在期間や30日死亡率との間に関連性は見られなかった.

【結 論】
我々の知見は、ICUの緊急挿管を要する成人患者において,挿管前のSIが0.90以上であることは挿管後低血圧(収縮期血圧<90mmHg)やICU死亡の予測因子であることを示した.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2015-06-29 00:00 | 文献 | Comments(0)
■Clostridium difficle感染(CDI)といえば,最近海外では最強のprobioticsとも言われる細菌叢移植である糞便投与が話題ですが,今度は無毒化したClostridium difficileを投与して再感染を防ぐという研究で,これもある意味probioticsということにはなりますが・・・この領域はとにかく驚かされる発想ばかりです(回盲部にドレーンつっこんで大量の水で洗い流すなんて治療もあります).よくこんなことやろうと考えましたね・・・
Clostridium difficle感染再発予防のための無毒化Clostridium difficile株M3の芽胞投与:無作為化比較試験
Gerding DN, Meyer T, Lee C, et al. Administration of spores of nontoxigenic Clostridium difficile strain M3 for prevention of recurrent C. difficile infection: a randomized clinical trial. JAMA. 2015 May 5;313(17):1719-27
PMID:25942722

Abstract
【背 景】
Clostridium difficileは米国の病院における医療ケア関連感染の最も多い原因である.患者の25-30%が再発する.

【目 的】
安全性,腸管内定着,再発率,C. difficle感染(CDI)再発予防のための無毒化C. difficile株M3(VP20621; NTCD-M3)最適な用量設計を検討する.

【方 法】
本研究は,米国,カナダ,欧州の44施設において,2011年6月から2013年6月まで,CDI(初回感染または初回再発)と診断を受け,かつメトロニダゾールか経口バンコマイシンまたはその両方の投与による治療が成功した18歳以上の患者173例で行われたPhaseⅡ,二重盲検プラセボ対照用量調節研究である.患者は,NTCD-M3の経口固形物として,10^4芽胞/日を7日間(n=43),10^7芽胞/日を7日間(n=44),10^7芽胞/日を14日間(n=42),プラセボを14日間(n=44)の4つの治療に無作為に割り付けられた.主要評価項目は治療7日間以内のNTCD-M3の安全性と忍容性とした.副次評価項目は研究薬終了から6週間のNTCD-M3の腸管定着とday 1から6週間のCDI再発とした.

【結 果】
治療開始となった168例の患者のうち,157例が治療を完遂した.1つ以上の治療を要する有害事象はNTCD-M3投与を受けた患者の78%,プラセボ投与を受けた患者の86%で報告された.下痢と腹痛は,それぞれ,NTCD-M3投与患者で46%と17%,プラセボ投与患者で60%と33%であった.治療を要する重篤な有害事象は,プラセボ投与患者で7%,NTCD-M3投与患者で3%であった.頭痛はNTCD-M3患者で10%,プラセボ投与患者で2%であった.腸管内定着はNTCD-M3患者の69%でみられ,10^7芽胞/日群で71%,10^4芽胞/日群で63%であった.CDI再発率は,プラセボ患者43例中13例(30%),NTCD-M3患者125例中14例(11%)であり(OR 0.28; 95%CI 0.11-0.69; p=0.006),最も低い再発率であったのは10^7芽胞/日の7日間投与を受けた患者で,43例中2例(5%)であった(OR 0.1; 95%CI 0.0-0.6; p=0.01 vs プラセボ).再発は定着した患者では86例中2例(2%),NTCD-M3を投与されたが定着しなかった患者では39例中12例(31%)であった(OR 0.01; 95%CI 0.00-0.05; p<0.001).

【結 論】
メトロニダゾールかバンコマイシンで治療を行い臨床的に改善したCDI患者において,NTCD-M3芽胞の経口投与は良好な忍容性と安全性を示した.無毒化C. difficlie株M3は消化管に定着し,CDI再発を有意に減少させた.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2015-06-25 19:14 | 感染症 | Comments(0)
■2014年にAHAで報告されたAVOID studyがようやくpublishされました.結果は,どうやら低酸素血症のない急性心筋梗塞に酸素投与はよくないという結果.ただし,死亡率の評価はこれからです.現在DETO2X-AMI trial(Am Heart J 2014; 167: 322-8)とICEREA Study(Circulation. 2015 Jun 19)がongoingとなっています.

■このブログでも,高酸素血症は決して安全ではないという記事を書きました.不必要な酸素投与は無害ではないことを認識しておかなければなりません
SpO2の落とし穴 ~酸素投与患者の「SpO2 99%」を見て安心してませんか?~
http://drmagician.exblog.jp/22262792
特にCOPDや心肺停止蘇生後患者などの重症疾患患者においては不必要な酸素投与は死亡率を増加させる傾向があり,心筋梗塞でもそのようなことがあるのではないかと考えられています.実際に,冠血流を減少させることが知られていますし,サンプル数が少ないものの,心筋梗塞に対する酸素投与で死亡リスクが3倍に増加するとするコクランレビュー(Cochrane Database Syst Rev 2010; 6: CD007160)もあります.
ST上昇型心筋梗塞における空気と酸素(AVOID study)
Stub D, Smith K, Bernard S, et al; AVOID Investigators. Air Versus Oxygen in ST-Segment-Elevation Myocardial Infarction. Circulation. 2015 Jun 16;131(24):2143-50
PMID:26002889

Abstract
【背 景】
酸素は,冠血管収縮と高い酸化ストレスによって心筋の傷害を増加させる可能性が既知の研究で示唆されているにもかかわらず,ST上昇型心筋梗塞の患者に広く投与されている.

【方 法】
我々は,救急隊による12誘導心電図でST上昇型心筋梗塞と診断された患者において酸素投与を行わない群と酸素投与群(8L/分)を比較した多施設共同前向き無作為化比較試験を行った.
無作為化された患者638例のうち,441例がST上昇型心筋梗塞と診断され,主要評価項目の解析に組み込まれた.主要評価項目は心筋酵素,トロポニンI,クレアチンキナーゼで評価した心筋梗塞のサイズとした.副次評価項目は,心筋梗塞の再発,不整脈,6カ月時点でのMRIによる心筋梗塞サイズとした.

【結 果】
平均ピークトロポニン値は酸素投与群と非投与群で同等であった(57.4 vs 48.0 μg/L; 平均比率 1.20; 95%CI 0.92-1.56; P=0.18).非投与群と比較して,酸素投与群では平均ピーククレアチンキナーゼが有意に増加した(1948 vs 1543 U/L; 平均比率 1.27; 95%CI 1.04-1.52; P=0.01).非投与群と比較して,酸素投与群では心筋梗塞再発率が増加し(5.5% vs 0.9%; P=0.006),不整脈の頻度も増加した(40.4% vs 31.4%; P=0.05).6カ月時点で,酸素投与群はMRIで評価した心筋梗塞サイズが有意に増加していた(n=139; 20.3 vs 13.1 g; P=0.04).

【結 論】
低酸素血症を有さないST上昇型心筋梗塞患者に対する酸素療法は早期の心筋傷害を増加させ,6カ月時点での心筋梗塞サイズを増加させる可能性がある.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2015-06-23 18:19 | 文献 | Comments(0)
■ある疾患の死亡について解析・評価する際にアウトカムを全死亡でまとめるのは主流といえば主流ですが,この全死亡をもって多変量解析などを行うと誤った結論や推奨を導きだしてしまうリスクがあります.私自身,肺炎のデータ解析の際に目的変数を全死亡と肺炎関連死亡と別々に多変量解析してみるとまったく異なる結果になりました.現在は次々と否定されていっている米国での肺炎ガイドラインの推奨ももとはといえば大規模観察研究で全死亡をアウトカムとして多変量解析を行った結果でてきたもので,臨床現場感覚との乖離が生じました.治療介入の推奨まで踏み込むのであれば,死亡原因を分けて解析するなど何らかの工夫が必要です.

■全死亡をアウトカムとすることも大事ですが,それをもって多変量解析を行えば,前後関係や因果関係を無視した結果を導きだす可能性があることに注意が必要です(統計学上有意な相関があってもそれそのものは因果関係を示すとは限りません).今回は敗血症性ショックについて,死亡関連因子をより細かく見ようという報告がでましたので紹介します.このような検討を行うことでどの時期にどのような状況でどのような介入を行えば死亡を防げるのか,ということが解明できてくるのではないかと思いますし,同時にガイドラインの推奨が大きく変わるような結論が得られるかもしれません.
敗血症性ショックにおける死亡時期と原因
Daviaud F, Grimaldi D, Dechartres A, et al. Timing and causes of death in septic shock. Ann Intensive Care. 2015 Dec;5(1):58
PMID:26092499

Abstract
【背 景】
敗血症性ショックに関するほとんどの研究は,早期死亡か後期死亡の区別や直接死亡原因を考慮することなく粗死亡率を報告している.本研究の目的は敗血症性ショックの死亡原因を明らかにすることである.

【方 法】
本研究は6年間(2008-2013年)の単施設後ろ向き観察研究である.集中治療室(ICU)入室から48時間以内の敗血症性ショックと診断された患者を登録した.早期および後期死亡は,それぞれICU入室から3日以内と3日超に生じたものと定義した.ICUにおける主要な死亡原因はカルテ記録から決定した.早期および後期死亡の予測関連因子の検出のため,参照カテゴリーとして生存状態を用いての多変量ロジスティック回帰解析を行った.

【結 果】
543例が登録され,平均年齢は66±15歳で合併症を有する率は高かった(67%).ICU死亡率と院内死亡率はそれぞれ37.2%と45%であった.死亡はICU(124例)および院内(42例)において,早期が78例(32%),後期が166例(68%)であった.早期死亡は,原因となる感染症に関連した治療困難な多臓器不全(82%)と腸管虚血(6.4%)が主要原因であった.ICU後期死亡は,29%がend-of-lifeの意思表示に直接関連したもので,その他のほとんどは,院内感染(20.4%),腸管虚血(16.6%)を含むICU関連合併症が関連していた.早期死亡の独立関連因子は,年齢,悪性疾患,糖尿病,病原体非検出,初期重症度であった.3日生存者における後期死亡の独立した危険因子は,年齢,肝硬変,病原体非検出,それまでのコルチコステロイド治療の曝露であった.

【結 論】
我々の研究は敗血症性ショック関連死亡の包括的な評価を示すものである.早期および後期死亡の危険因子の検出は異なった予後パターンを見出す可能性がある.

[PR]
by DrMagicianEARL | 2015-06-22 11:53 | 敗血症 | Comments(0)

by DrMagicianEARL