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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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■長年議論されつつもRCTではポジティブな結果が出続けている市中肺炎へのステロイド投与.根底には,ステロイド=免疫抑制=感染症にはよくない,というバイアスがあって,みんな勇み足になっているところはあるんでしょう.しかし,これまでのRCTを見るに,劇的効果というほどの有用性ではないにせよ,少なくとも総合的に見て悪いものではなさそうだという印象で,以下に紹介するメタ解析でも同様の結果です.では悪くないならば実際にステロイドを実臨床に組み込むか?ですが・・・

■このメタ解析では絶対死亡率を3%低下させるというこの数字ですが,これがどこまで臨床的に有意なのか,捉え方は様々でしょう.しかも統計学的にも有意ではなく,あくまでもtrendにとどまる結果です.臨床的安定化の指標も発熱有無など,改善というよりはステロイドでマスクされているだけでは?という項目が入っていたりしてどこまで参考にしていいものか判断しかねます.

■ただし,注意しなければならないのは,このメタ解析でも触れられていますが,ステロイド投与により有害事象が出やすいハイリスク患者が除外されている研究が多いことです.また,市中肺炎を対象とするなら千人単位での大規模RCTを組むことは決して難しくないと思われますが,実際に行われたRCTは1000例に満たないものばかりです(研究主旨は異なりますが,現在ANZICSが行っている,敗血症性ショックに対する低用量ステロイド療法の大規模RCTであるADRENAL studyは3800例を登録予定です).加えて,RCTのプロトコルや治療経過を見てみると,入院市中肺炎全体での評価にもかかわらず死亡率が比較的高い,抗菌薬投与期間が非常に長い,など,日常診療の感覚とは異なる治療がRCTでは行われていたのかと疑わざるを得ません.このため,現時点では私自身は外的妥当性が乏しいと考え,市中肺炎患者に対してステロイドを投与することを選択肢に入れる予定はありません.
市中肺炎による入院患者に対するコルチコステロイド療法:システマティックレビューとメタ解析
Siemieniuk RA, Meade MO, Alonso-Coello P, et al. Corticosteroid Therapy for Patients Hospitalized With Community-Acquired Pneumonia: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Intern Med 2015 Aug 11
PMID:26258555

Abstract
【背 景】
市中肺炎(CAP)はしばしば見られ,重症化しやすい.

【目 的】
市中肺炎患者の死亡率,有病率,入院期間におけるコルチコステロイド療法併用の効果を検討する.

【方 法】
MEDLINE,EMBASE,Cochrane Central Register of Controlled Trialsを用いて2015年5月24日までの報告を検索した.検索対象は,市中肺炎による入院患者におけるコルチコステロイド全身投与の無作為化比較試験とした.2人のレビュアーが独立して研究データを抽出し,バイアスリスクを評価した.エビデンスの質は執筆者らのコンセンサスによるGRADE(the Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムで評価した.

【結 果】
年齢中央値は60歳代で,患者の約60%が男性であった.コルチコステロイド併用は全死亡率(12試験;1974例;RR 0.67[95%CI 0.45-1.01];リスク差 2.8%; 中等度の確からしさ),人工呼吸器の必要性(5試験;1060例;RR 0.45[0.26-0.79];リスク差5.0%;中等度の確からしさ),急性呼吸窮迫症候群(4試験;945例;RR 0.24[0.10-0.56],リスク差6.2%;中等度の確からしさ)の減少に関連していた.また,臨床的安定化までの期間(5試験;1180例;平均差-1.22日[-2.08 to -0.35日];高い確からしさ),入院期間(6試験;1499例;平均差-1.00日[-1.79 to -0.21日];高い確からしさ)が短縮していた.コルチコステロイド併用は治療を要する高血糖の頻度を増加させたが(6試験;1534例;RR 1.49[1.01-2.19];リスク差3.5%;高い確からしさ),消化管出血の頻度は増加させなかった.

【問題点】
多くのアウトカムにおいて,少ない事象数と試験数であった.試験はしばしば重篤な有害事象のリスクが高い患者が除外されていた.

【結 論】
市中肺炎による成人入院患者において,コルチコステロイドの全身投与は死亡率を約3%,人工呼吸器装着を約5%,入院期間を約1日減少させる可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2015-08-14 11:16 | 肺炎 | Comments(0)
■コンサルテーションのやり方は様々で,患者の緊急性有無や臨床現場かカンファレンスかなどをはじめとして状況に応じて変わります.とりわけ救急部門からのコンサルテーションは時間的余裕が通常よりあまりなく,正確に重要なポイントを抑えて情報を伝達する必要があります.しかしながら,救急現場におけるコンサルテーションに標準化されたモデルがこれまでほぼない状況ではありました.

■近年,コンサルテーションの5Csが提唱され,研究されています.以下に紹介する論文の他にもいくつかありますので(Acad Emerg Med 2012; 19: 968-74/J Emerg Med 2012; 42: 704-11)御参照ください.
コンサルテーションの5Cs:救急部門における有効なコミュニケーションのための医学生のトレーニング
Kessler CS, Tadisina KK, Saks M, et al. The 5Cs of Consultation: Training Medical Students to Communicate Effectively in the Emergency Department. J Emerg Med 2015 Aug 3 [Epub ahead of print]
PMID:26250838

Abstract
【背 景】
効果的なコミュニケーションは医療従事者において,特に救急部門では重要である.しかし,現在,医師によって一貫して行われている,あるいは研修医に使用されているような標準化されたコンサルテーションモデルはない.近年,コンサルテーションモデルの5Cs(Contact,Communicate,Core Question,Collaborate,Close the Loop)が,コンサルテーションシナリオによるシミュレーションを用いた救急部門のレジデントにおいて研究されている.

【目 的】
経験的デザインを用いて,新規の学習者集団(医学生)および「リアルタイムかつリアルワールド」の臨床設定において5Csコンサルテーションモデルの有効性を評価することを目的とした.

【方 法】
8施設の大規模教育都市部三次医療センター(米国およびカナダ)において前向き無作為化比較試験を行った.2つの経験群(非同期とライブトレーニング)への介入をベースラインの対照群と比較した.4つまで設置されたすべての参加者が電話でのコンサルトを行う.上級医が事前に規定された5CsのチェックリストとGlobal Rating Scale(GRS)を用いて,それぞれのコールを観察および評価した.

【結 果】
トレーニング(非同期またはライブ)を受けた参加者は5Csチェックリストの合計とGRSにおいて対照群よりも有意に高いスコアであった.両トレーニング方法(非同期とライブ)は同等の効果であった.重要な点として,学習の有益性は,2回目,3回目,4回目のコンサルト(初回のコンサルトと比較)において,学生の5Csチェックリスト合計とGRSスコアが一貫して高い状態のままで維持されていた.事後テストでは,すべての参加者が,患者の情報の中継において,より自信と能力が身に着いたと感じたと報告していた.

【結 論】
医学生は,タイムリーで,安価で,かつ便利な方法で5Csモデルを使用した訓練ができ,救急部門からの医師のコンサルテーションの有効性を高めることが可能である.

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by DrMagicianEARL | 2015-08-12 00:00 | 文献 | Comments(0)
■人工呼吸管理の際,圧調節のPCが好まれる傾向が多いようですが,実際にPCの方がアウトカムがよいとする質の高い研究があるわけではありません.私自身はVCを最初に用いており,同調が悪ければPCに変更する,という方法をとっています(ちなみにSIMVは一切使ってません).

■今回,PCとVCを比較したメタ解析が報告されたので紹介します.結果はいかなる差も認めずとのことで,患者ごとにいい方を選択すればいいということになるでしょうか.
急性呼吸不全における圧調節vs容量調節の換気:生理学的ナラティブおよびシステマティックレビュー
Rittayamai N, Katsios CM, Beloncle F, et al. Pressure-Controlled vs Volume-Controlled Ventilation in Acute Respiratory Failure: A Physiology-Based Narrative and Systematic Review. Chest 2015; 148: 340-55
PMID:25927671

Abstract
【背 景】
人工呼吸は急性呼吸不全の管理において重要である.容量調節または圧調節の換気はいずれも用いられているが,後者のモードの使用が増加している.我々はこれら2つのタイプの換気の生理学的原則によるナラティブレビューと,文献検索を行ってモード間の比較を行った文献を解析した.

【方 法】
圧調節持続強制換気(PC-CMV)または圧調節逆比換気(PC-IRV)が容量調節持続強制換気(VC-CMV)より有用であるか否かについて検討するため,システマティックレビューおよびメタ解析を行った.方法論的質の評価としてバイアスリスクについてはCochraneツールを用いた.また,研究の選別のため,質の目安として生理学的基準を導入した.アウトカムはコンプライアンス,ガス交換,血行動態,呼吸仕事量,臨床的予後とした.解析はランダム効果モデルを用いたRevMan5を使用した.

【結 果】
34研究が登録基準に該当し,多くの高いバイアスリスクを有していた.PC-CMV/PC-IRVとVC-CMVの比較では,コンプライアンスやガス交換においていかなる差も認めておらず,PC-IRVのみでみても同様であった.酸素化指標の慶安ではPC-IRVにおいて効果減弱が示唆された.血行動態,呼吸仕事量,臨床的予後に関して,両モード間に差は見られなかった.

【結 論】
2つのモードが異なる稼働原則であるが,臨床的に得られるデータではアウトカムにいかなる差もみられなかった.我々は一般化を高める全ての検出した試験を登録し,質の高い生理学的研究のみを含むよう試みた.しかし,含まれる試験は小さく,質は非常に多様であった.これらのデータは,急性呼吸不全患者の換気の選択肢を広げる上で一助となる.

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by DrMagicianEARL | 2015-08-11 10:00 | 敗血症性ARDS | Comments(0)
■JSEPTIC-CTGからの報告です.重症敗血症患者ではBUN,Cr上昇がしばしばみられ,AKI(急性腎傷害)としてCRRTを行うこともよくありますが,AKI全体で見るとseptic AKIは比較的予後良好である,という結論になるでしょうか.
持続的腎代替療法による治療を受けた急性腎傷害患者において,敗血症は死亡の危険因子とはならない可能性がある
Nagata I, Uchino S, Tokuhira N, et al; for JSEPTIC (Japanese Society for Physicians Trainees in Intensive Care) Clinical Trial Group.Sepsis may not be a risk factor for mortality in patients with acute kidney injury treated with continuous renal replacement therapy. J Crit Care. 2015 Jun 26 [Epub ahead of print]
PMID:26220246

Abstract
【目 的】
本研究の目的は,持続的腎代替療法(CRRT)を受けた非敗血症性急性腎傷害(AKI)と比較して,CRRTを受けた敗血症性AKIの重症患者の臨床的特徴,経過,予後を検討することである.

【方 法】
本研究は2010年の日本の14のICUにおいて行われた多施設共同後ろ向き観察研究である.CRRTを受けた重症AKIの全成人患者が登録され(n=343),患者背景,CRRT導入時の状態,CRRT設定,予後に関する情報を収集した.患者はAKIの要因によって,敗血症性AKI群と非敗血症性AKI群に分類された.

【結 果】
症例の約半数(48.7%)がAKIの要因としての敗血症/敗血症性ショックであり,CRRTを受けた敗血症性AKIの患者は非敗血症性AKI患者に比してより深刻な状態であった.しかしながら,CRRTを受けた敗血症性および非敗血症性のAKIの患者間でICU死亡率(48.5% vs 43.8%; p=0.44),院内死亡率(61.1% vs 56.3%; p=0.42)に有意差は見られなかった.さらに,多変量回帰解析では,敗血症は低い院内死亡と関連していた(OR 0.378; p=0.012).

【結 論】
CRRTを必要とするのに十分な状態のAKI患者において,敗血症は死亡の危険因子とはならない可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2015-08-10 16:18 | 敗血症性AKI | Comments(0)
■救急外来に来た20代の若年患者のCT(両側肺背側に気管透亮像を伴う浸潤陰影を有する典型的な誤嚥性肺炎像)を見た研修医が,こんなに若い患者が誤嚥性肺炎になるわけがないという思い込みから「間質性肺炎を疑います」と報告してきたことがありました.確かに誤嚥性肺炎自体は50歳代から生じることが報告されており,20代では考えにくいですが,「抗精神病薬とか内服していないか?」と聞くとビンゴでした.

■抗精神病薬(睡眠薬含む)が必要ならば仕方がありませんが,不必要に処方されているケースも多く,それが誤嚥性肺炎の引き金となっていることはよく経験されます.そしてそれは若い患者であっても生じます.以下は抗精神病薬が誤嚥性肺炎リスクを増加させるとするメタ解析ですが,特筆すべきは,高齢でも若年でもそのリスクは同等という結果です.
抗精神病薬曝露と肺炎のリスク:観察研究のシステマティックレビューとメタ解析
Nosè M, Recla E, Trifirò G, et al. Antipsychotic drug exposure and risk of pneumonia: a systematic review and meta-analysis of observational studies. Pharmacoepidemiol Drug Saf 2015; 24: 812-20
PMID:26017021

Abstract
【目 的】
肺炎は65歳の患者において有病や死亡の主要な原因の1つである.近年,高齢患者において複数の研究で抗精神病薬(AP:antipsychotic)の使用と肺炎リスクの関連性が示唆されている.この観察研究のシステマティックレビューおよびメタ解析の目的は,第一世代および第二世代抗精神病薬が高齢者,さらには若年層においても肺炎リスクを増加させるのかについて検討し,薬剤の曝露に関連したリスクを明らかにすることである.

【方 法】
APに曝露されていない患者あるいは過去にAPを使用した患者とAP曝露患者を比較した肺炎アウトカムについてのデータを報告した全観察コホート研究または症例対照研究をシステマティックレビューおよびメタ解析に含めた.研究参加者は,診断カテゴリーにおいて制限のない任意の性別,年齢を含めた.

【結 果】
肺炎リスクは第一世代AP曝露(OR 1.68; 95%CI 1.39-2.04, I2=47%),第二世代AP曝露(OR 1.98; 95%CI 1.67-2.35, I2=36.7%)で有意に増加した.そのリスクは,高齢者および若年成人層において,異なる診断カテゴリーや年齢別グループ間でも同等であった.年齢と肺炎リスクのいかなる関連性も検出されなかったメタ解析によって年齢の知見は裏付けられた.いくつかの研究のみが個々の薬剤についてのデータを報告していた.

【結 論】
近年の観察研究のエビデンスのシステマティックレビューでは,第一世代および第二世代のAP曝露は肺炎リスクの増加に関連していることが示唆された.本システマティックレビューは,高齢患者のみならず若年患者においてもリスクが増加するを示したことで既知の知見を拡張するものである.個々の交絡因子における肺炎リスクについての情報はまだ非常に限定されている.

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by DrMagicianEARL | 2015-08-08 00:00 | 肺炎 | Comments(0)
■急性心不全でカルペリチド(商品名ハンプ®;hANP;α-human arterial natriuretic peptide;α型ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)が本邦ではよく用いられています.この薬剤,私自身は使ったことありません.なにぶん海外では使われていない薬剤なのでカルペリチドの論文に接触することがまずなく,質の高いRCTがあるわけでもないというのもあります.しかもお値段は3500円前後と高い薬剤です.近年はトルバプタン(サムスカ®)もありますし,カルペリチドよりもコストがかからず有害事象が有意に少ないという報告(J Clin Pharmacol 2013;53:1277-85)もでている以上,今後も心不全では使う気はあまりありませんでした.

■なので私自身はカルペリチドの使い勝手はさっぱり分かりません.現在,このカルペリチドが非小細胞肺癌に有効な可能性があるとして国立循環器病センターをはじめとする国内複数施設での共同試験が行われており,それを期待してはいますが・・・.

■そのカルペリチドが急性心不全で使用するとむしろ死亡リスクを増加させる可能性があるという報告が亀田総合病院,安房地域医療センター,川崎医科大学の3施設共同で5月にonline publishされていましたので紹介します.後ろ向き研究ではありますが,そこそこのN数でpropensity score matchig解析を行って死亡リスクは2倍以上に有意に増加するという結果でした.
急性心不全においてカルペリチドは院内死亡率の増加に関連している:傾向スコアマッチング解析
Matsue Y, Kagiyama N, Yoshida K, et al. Carperitide Is Associated With Increased In-Hospital Mortality in Acute Heart Failure: A Propensity Score-Matched Analysis. J Card Fail. 2015 May 18 [Epub ahead of print]
PMID:25999241

Abstract
【背 景】
日本ではカルペリチド(αヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)はすべての急性心不全患者の半数う以上で使用されている.しかし,その臨床効果はまだよく検討されていない.

【方 法】
我々は症状の急性発症または増悪を呈し,参加3施設に入院した急性心不全患者を後ろ向きに抽出し,傾向スコアマッチング解析を行った.主要評価項目は院内死亡とした.

【結 果】
本研究に登録されたすべての急性心不全患者のうち,402例(38.7%)がカルペリチドで治療を受け,全コホートでの院内死亡率は7.6%であった.傾向スコアによってカルペリチドによる治療有無で367ペアをマッチさせた.このマッチングコホートでは,カルペリチドによる治療は院内死亡に関連していた(OR 2.13; 95%CI 1.17-3.85; p=0.013).潜在的により有害な影響が高齢患者で観察された(OR 2.93; 95%CI 1.54-5.91).

【結 論】
急性心不全患者においてカルペリチドは院内死亡率の増加に関連していた.我々の結果は,カルペリチドの臨床的安全性と有効性を検討するためのより良いデザインの無作為化臨床試験の必要性を強く示唆するものである.

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by DrMagicianEARL | 2015-08-06 19:17 | 文献 | Comments(0)
■PK/PD理論から時間依存性抗菌薬では間歇投与よりも長時間or持続投与の方がいいだろう,ということで多数の研究が行われていてRCTも複数あります.今回重症敗血症において持続投与が有効かどうかを検討したANZICSのRCTが報告されたので紹介します.重症敗血症を対象としたものでは最大規模です.また,現在別の多施設共同RCT(BLISS study)を行っています.
重症敗血症におけるβラクタムの持続的投与vs間歇的投与の多施設共同無作為化試験(BLINGⅡstudy)
Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al. A Multicenter Randomized Trial of Continuous versus Intermittent β-Lactam Infusion in Severe Sepsis. Am J Respir Crit Care Med. 2015 Jul 22. [Epub ahead of print]
PMID:26200166

Abstract
【背 景】
βラクタム系抗菌薬の持続静注は間歇的投与に比して,時間依存性抗菌活性により予後を改善する可能性がある.

【目 的】
重症敗血症患者において持続投与と間歇投与の効果を検討する.

【方 法】
25のICUにおいて無作為化比較試験を行った.ピペラシリン-タゾバクタム,チカルシリン-クラブラン酸,メロペネムの投与を開始された患者を,治療コースが終わるかICU退室まで,持続投与か30分間の間歇投与かを無作為に割り付けられた.主要評価項目は28日時点での生存ICU非入室日数とした.副次評価項目は,90日生存,抗菌薬中断後14日間の臨床的治癒,14日時点での臓器不全のない生存日数,菌血症の期間とした.

【結 果】
年齢中央値64歳で,APACHEⅡスコア中央値20の患者432例を登録した.ICU非入室日数は,持続投与群18日間(IQR 2-24),間歇投与群20日間(IQR 3-24)で有意差は見られなかった.90日生存は,74.3%(156/210)vs 72.5%(158/218); HR 0.91(95%CI 0.63-1.31, p=0.61)で有意差はみられなかった.臨床的治癒は52.4%(111/212)vs 49.5%(109/220); OR 1.12 (95%CI 0.77-1.63, p=0.56)であった.臓器不全のない日数(6日間, p=0.24),菌血症の日数に有意差は見られなかった(0日間,p=0.24).

【結 論】
重症敗血症を伴う重症患者において,βラクタム系抗菌薬の持続投与,間歇投与において予後に差はみられなかった.
■時間依存性の抗菌薬はPK/PD理論から,時間依存性抗菌薬の投与時間を延ばし,TAM(Time Above MIC)を増やせば治療効果が増すのではないか,という仮説が生まれた.ここからさらに派生して,バッグに1日分の抗菌薬を詰めて,24時間持続点滴をする方がPK/PD的には理にかなっている,という発想も生まれた.抗菌薬の持続投与は,間欠的な投与に比べて少ない投与量で同等の血中濃度とTAMを獲得するため,理論上では持続点滴の方が間欠的投与に比べると有利である.

■ただし,抗菌薬のクリアランスには個人差があり,必ずしも個々の患者で期待されるような薬物動態を示すという保証はない.また,24時間容器に入れた抗菌薬の安全性も問題である.実際,PCGに関しては,特に高温環境下では失活しやすい特徴をもっており,通常よりも長時間点滴バッグの中に入れたままの抗菌薬が失活するおそれもある.

■また,PK/PD理論には問題点もあることが指摘されている[1].①血中濃度は蛋白に結合したものも含む全濃度を使用するのか遊離した薬剤濃度を使用するのか,②PKのパラメータは血中でのパラメータでよいのか,③PDパラメータとしてMICを用いているが,MBCやMPCとの関係はどうなのか,である.また,PK/PD理論に基づく投与法と有効性についての報告がされるようになっているが,副作用,耐性菌の出現との関連性についてはほとんどない.

■加えて重症敗血症の病態では,クリアランスや分布容積が治療経過中にめまぐるしく変化することも予想され,理論通りにはいかない可能性もある.このため,持続投与による抗菌薬濃度が不十分となったり過剰となったりするリスクもある.

■これまでの報告では,持続投与は間欠投与に比して同等もしくは優位であるとする結果が多いが,敗血症のような重症病態でない限りはそこまで効果に差はないようであることから,少なくとも非重症例においてはわざわざ持続投与を行う必要性は低いと思われる.Falagasら[2]による最新(2013年)のメタ解析(敗血症以外も含む)では,14報が登録され,カルバペネム系抗菌薬またはTAZ/PIPCの持続投与は死亡リスクを41%有意にする(RR 0.59; 95%CI, 0.41-0.83)と報告しているが,登録された報告のうちRCTはわずか3報であった.

■PubMedを用いて,以下の検索式で文献検索を行ったところ,253文献がhitした.これらを通読し,敗血症患者を対象とし,ハードアウトカムをメインに報告しているRCTは,上に紹介したRCT以外では2報[3,4]であった.
(("sepsis"[MeSH Terms] OR "sepsis"[All Fields]) OR ("shock, septic"[MeSH Terms] OR ("shock"[All Fields] AND "septic"[All Fields]) OR "septic shock"[All Fields] OR ("septic"[All Fields] AND "shock"[All Fields]))) AND (extended[All Fields] OR prolonged[All Fields] OR continuous[All Fields] OR discontinuous[All Fields] OR intermittent[All Fields] OR short[All Fields] OR bolus[All Fields]) AND (("anti-infective agents"[Pharmacological Action] OR "anti-infective agents"[MeSH Terms] OR ("anti-infective"[All Fields] AND "agents"[All Fields]) OR "anti-infective agents"[All Fields] OR "antimicrobial"[All Fields]) OR ("anti-bacterial agents"[Pharmacological Action] OR "anti-bacterial agents"[MeSH Terms] OR ("anti-bacterial"[All Fields] AND "agents"[All Fields]) OR "anti-bacterial agents"[All Fields] OR "antibiotics"[All Fields]) OR "anti-bacterial agents"[All Fields] OR "anti-infective agents"[All Fields] OR "antifungal agents"[All Fields] OR ("beta-lactams"[MeSH Terms] OR "beta-lactams"[All Fields] OR ("beta"[All Fields] AND "lactams"[All Fields]) OR "beta lactams"[All Fields]) OR ("beta-lactams"[MeSH Terms] OR "beta-lactams"[All Fields] OR ("beta"[All Fields] AND "lactam"[All Fields]) OR "beta lactam"[All Fields]) OR ("beta-lactams"[MeSH Terms] OR "beta-lactams"[All Fields] OR ("beta"[All Fields] AND "lactams"[All Fields]) OR "beta lactams"[All Fields]) OR "beta Lactam"[All Fields] OR "beta Lactams"[All Fields] OR "beta lactams"[All Fields] OR ("beta-lactams"[MeSH Terms] OR "beta-lactams"[All Fields] OR ("beta"[All Fields] AND "lactam"[All Fields]) OR "beta lactam"[All Fields]) OR "beta lactam"[All Fields]) AND randomized controlled trial[ptyp]
■Roberts[3]らは,敗血症患者57例を対象として,CTRX 2gを1日1回ボーラス投与する群と24時間持続投与する群に割り付けたオープンラベルRCTを行った.臨床的治癒率(持続投与群13/29 vs 5/28ボーラス群; 調整後OR 3.74; 95%CI 1.11-12.57; p=0.06),細菌学的治癒率(18/29 vs 14/28; 調整後OR 1.64; 95%CI 0.57-4.70; p=0.52)に統計学的有意差はみられなかったが,ロジスティック回帰解析では,持続投与(OR 22.8; 95%CI 2.24-232.3; p=0.008)とAPACHEⅡスコア(調整後OR 0.70; 95%CI 0.54-0.91; p=0.008)が良好な臨床アウトカムの関連因子であった.死亡率(3/29 vs 0/28; p=0.52)に有意差はみられなかった.

■Dulhuntyら[4]は,豪州および香港の5施設において,重症敗血症患者60例において,TAZ/PIPC,MEPM,CVA/ticarcillinを持続投与群とボーラス間欠投与群に割り付けた二重盲検RCTを行った.抗菌薬濃度がMICを超えていた時間の占める率は,持続投与群で82%,間欠投与群で29%(p=0.001)であった.臨床的治癒率は持続投与群で有意に高かったが(70% vs 43%, p=0.037),ICU-free days(19.5 vs 17, p=0.14),院内生存率(90% vs 80%, p=0.47)に有意差はみられなかった.

■上に紹介したRCTとこれら2つのRCTの計3報を統合したRでのメタ解析結果は以下の通りである.random effects modelでは死亡をアウトカムとして22.3% vs 23.9%; OR 0.90, 95%CI 0.39-2.03; I(2)=28.3%であり,αエラー0.05,検出力0.80で計算すると有意差を得るための必要サンプル数は21818例であった.
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■臨床的治癒をアウトカムとすると,53.5% vs 43.7%; OR 2.02, 95%CI 0.86-4.76; I(2)=66.2%であり,αエラー0.05,検出力0.80で計算すると有意差を得るための必要サンプル数は1332例であった.
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■以上から,敗血症においては,抗菌薬持続投与は死亡率に影響を与えるほどの有効性はない.臨床的治癒率を改善する可能性は,傾向としてはあるかもしれず,これをもって持続投与を行うのもいいかもしれないが,臨床的にはそれほどの有益性がある治療方法とは言いがたく,強い推奨をもって選択すべき治療ではないと思われる.

[1] 堀 誠治.PK-PD解析からみた効果的かつ安全な抗菌薬適正使用.薬学雑誌 2007; 127: 931-7
[2] Falagas ME, Tansarli GS, Ikawa K, et al. Clinical outcomes with extended or continuous versus short-term intravenous infusion of carbapenems and piperacillin/tazobactam: a systematic review and meta-analysis. Clin Infect Dis 2013; 56: 272-82
[3] Roberts JA, Boots R, Rickard CM, et al. Is continuous infusion ceftriaxone better than once-a-day dosing in intensive care? A randomized controlled pilot study. J Antimicrob Chemother 2007; 59: 285-91
[4] Dulhunty JM, Roberts JA, Davis JS, et al. Continuous infusion of beta-lactam antibiotics in severe sepsis: a multicenter double-blind, randomized controlled trial. Clin Infect Dis 2013; 56: 236-44
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by DrMagicianEARL | 2015-08-05 20:53 | 敗血症 | Comments(0)

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