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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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■非常に精度が高いことで有名なコクランのメタ解析と,コクランでないメタ解析とでどれくらいの違いがあるのかについて調べた研究を紹介します.まあこの研究結果をあえて変なメタ解析を多数掲載しているPLoS One誌に投稿したというのは皮肉的な何かあるのかなと勝手に思ってしまいましたが・・・.結果としては,コクランでないメタ解析の方が精度が低く,効果量が大きくなる傾向があるようです.そして他論文に引用される際も効果量が大きい方のメタ解析が引用されるようで,ここで二重のバイアスが生じることになります.

■ひとつのトピックに関してメタ解析が複数出ていることは珍しくありませんが,各メタ解析ごとに登録している研究やメタ解析結果がかなり異なっていることも多いです.システマティックレビューやメタ解析といえどもかなりのバイアスがあると思った方がいいでしょう.たとえコクランといえどもたまになんでこんなメタ解析になってるのか疑問に思うこともあります.

■私自身現在ガイドライン作成過程でメタ解析を行っていますが,どの研究をincludeするかの過程,エビデンス総体評価の過程,どうしても主観に頼る作業が入ります.このため,メタ解析メンバー間でもかなり意見の相違が生じ議論になります.こういう作業をやっていると複数のメタ解析がでても内容がバラバラになることはおおいにありえるんだなと痛感します.

■なお,システマティックレビュー/メタ解析がどの程度の質なのかの評価方法としてAMSTARというものがありますので活用してみてください.以下の紹介文献の下に掲載しています.
同一トピックにおけるコクランと非コクランのメタ解析間での系統的違い:ペアマッチ解析
Useem J, Brennan A, LaValley M, et al. Systematic Differences between Cochrane and Non-Cochrane Meta-Analyses on the Same Topic: A Matched Pair Analysis. PLoS One. 2015 Dec 15;10(12):e0144980
PMID:26671213

Abstract
【背 景】
Cochrane Collaborationによるメタ解析は,厳格な方法論と,バイアスを最小化し透明性/再現性を最大化し,集計データの精度を向上させることを目的とした報告基準を遵守して行われる.このメタ解析結果が,同一トピックにおいてCochrane Collaboration以外で行われたメタ解析での報告結果と違いが生じるか否かについては未解決の問題である.

【方 法】
我々は解析の単位として,各メタ解析につきCochraneレビューと非Cochraneレビューを比較するペアマッチ解析を行った.心血管領域の文献のメタ解析を用いて,介入とアウトカムについてマッチしたペアを抽出した.ペアは,Cochraneと非Cochraneのレビュー間での結果の不一致がどの程度か,効果量と統計精度が体系的に異なっているか否か,これらの違いがどのようにレビューの二次引用頻度に関連しているかについて比較した.

【結 果】
我々の検索で40のマッチしたレビューのペアが得られた.2つのセットで,いずれが最初に出版したか,登録した研究数,平均サンプルサイズについては同等であった.レビューのペアは計344の臨床試験が含まれており,111研究(32.3%)はCochraneレビューのみで登録されており,104研究(30.2%)は非Cochraneレビューのみであり,129研究(37.5%)は両方に含まれていた.言い方を変えると,研究の62.5%は1つもしくは他のメタ解析論文にのみ含まれていた.全体を通して,ペアの37.5%は結果が矛盾していた.結果が異なる統計的な解釈が生じた95%信頼区間の幅において矛盾が最も多く生じていた(7ペア).加えて,20%が,集計した効果量の方向が異なっていたか(5ペア)効果量が2倍以上異なっていた(3ペア).非CochraneレビューはCochraneレビューに比して有意に高い効果量(p<0.001)と低い精度(p<0.001)であった.マッチしたペアよりも少なくとも2倍以上の効果量を報告しているレビューはより多く引用されていた.

【結 論】
トピックを合わせたCochraneと非Cochraneのレビューの結果は非常に類似していたものの,矛盾した結果が多く,登録された研究の重複が驚くほど少なかった.疑問の下での介入において異なる解釈が生じうる2つのタイプのレビュー間において,系統的な差や方法論に反している可能性を示している非CochraneレビューはCochraneレビューに比して低い精度で大きな効果量を報告していた.
AMSTAR(Assessment of Multiple Systematic Review)によるシステマティックレビュー/メタ解析の評価項目
・システマティックレビューのデザインは,システマティックレビュー施行前に決定されているか?(レビュー実施前に課題や登録基準が決定されている)
・2名以上で論文のチェックが行われているか?(2名の独立した担当者でデータ抽出が行われている,意見の不一致があった場合の合意到達手順が明確にされている)
・少なくとも2つ以上のデータベースを利用しているか?(検索を行った年およびデータベースが明記さており,2つ以上のDatabaseが使用されていなければならない.検索式・Key wordが明記,検索方法に説明されている.)
・論文の研究様式や報告様式に関係なく検索しているか?(未発表論文や学会発表の抄録,研究registrationも対象に検索していなければならない.)
・full text reviewの後に,登録および除外された論文がリストあるいはreferenceにしてあるか?
・登録された論文の詳細が報告されているか?(患者・介入・アウトカムなどの詳細が表などの形式で報告されている.)
・Risk of bias,Jadad scaleなどで各論文の質が評価してあるか?
・研究の質がシステマティックレビューの結論を提示する際に考慮されているか?
・異質性が評価され,異質性が高い場合にはRandom Effectが使用されているか?
・出版バイアスが評価されているか?(Funnel Plotなどを利用して評価する)
・COIが開示されているか?

AMSTARについては以下の文献を御参照ください(フリーで閲覧できます).
Shea BJ, Grimshaw JM, Wells GA, et al. Development of AMSTAR: a measurement tool to assess the methodological quality of systematic reviews. BMC Med Res Methodol 2007; 7: 10
Shea BJ, Bouter LM, Peterson J, et al. External validation of a measurement tool to assess systematic reviews (AMSTAR). PLoS One 2007; 2: e1350

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by DrMagicianEARL | 2016-01-25 17:19 | 論文読み方,統計 | Comments(0)
■米国内科学会(ACP)は“High Value Care initiative”というものを推進しています.これは,よくある臨床的問題に関して,検査や治療オプションの利益,害,費用を医師や患者が理解できるようにし,双方が健康を改善し,害を避け,無駄な診療を省く医療を目指すものです.米国GDPに占める医療費は現在17%ですが,このうち最大30%(7650億ドル)は不要なサービスに起因し,回避することがとされています.

■今回このHigh-Value Care initiativeとして,米国内科学会と米国CDCが共同で,成人の急性気道感染症(気管支炎,咽頭扁桃炎,感冒,副鼻腔炎)に対する抗菌薬の適正使用を促す文献がAnnals Internal Medicine誌にでましたので紹介します.と言っても感染症を少しでも勉強した人にとっては当たり前のことしか書いてませんが,この当たり前のことが全然守られていないのが実臨床です.先日のJAMA Internal Medicine誌に報告された「急性呼吸器感染症では抗菌薬はすぐに処方せず一旦待つのがいい」という結果になったDAP study(http://drmagician.exblog.jp/23990355/)もあわせると,いきなり最初から抗菌薬を使うケースはほとんどないはずです.おそらく,抗菌薬による有害事象は極めて軽視されています(有害事象が出ていてもそれが抗菌薬によるものと気づかれないこともしばしば).

■耐性菌や有害事象等の問題は病院のみでは解決できませんが,感染対策加算が始まって以降,抗菌薬適正使用が病院においては推進されているものの,プライマリの現場ではまったく進んでいないのが実態だと思いますし,特に年配の開業医さん相手に抗菌薬適正使用の直接介入を行うことは極めて難しいです(私はもうあきらめて,感染対策加算ブームに乗っかった世代に交代するのを待つしかないなと思ってます).ただし,間接的介入はまだできる余地があるのではないかと思います.もっとも抗菌薬処方は患者側が不要なのに「抗菌薬を欲しい」と求めてくることもあるからです.昨年から始まった世界抗菌薬啓発週間等も使って市民へ啓発していくこともひとつの手段だと思います.
成人における急性気道感染症における適切な抗菌薬使用:米国内科学会および疾病管理センター(CDC)からのHigh-Value Careのためのアドバイス
Harris AM, Hicks LA, Qaseem A; High Value Care Task Force of the American College of Physicians and for the Centers for Disease Control and Prevention. Appropriate Antibiotic Use for Acute Respiratory Tract Infection in Adults: Advice for High-Value Care From the American College of Physicians and the Centers for Disease Control and Prevention. Ann Intern Med. 2016 Jan 19 [Epub ahead of print]
PMID:26785402

Abstract
【背 景】
急性気道感染症(Acute respiratory tract infection;ARTI)は成人において抗菌薬処方理由として最も多い.ARTI患者に対しては抗菌薬はしばしば不適切に処方されている.本文献は,ARTIを呈した健常成人(慢性肺疾患や免疫不全状態を除く)において,抗菌薬処方の最良のプラクティスを提示するものである.

【方 法】
成人のARTIに対する適切な抗菌薬使用についてのエビデンスのナラティブな文献レビューを行った.専門的学会の最も最近の臨床ガイドラインを,メタ解析,システマティックレビュー,無作為化比較試験で補完した.エビデンスに基づいた文献を抽出するため,Medical Subject Headings(MeSH)用語である"acute bronchitis(急性気管支炎)","respiratory tract infection(気道感染症)","pharyngitis(咽頭炎)","rhinosinusitis(副鼻腔炎)","the common cold(感冒)"
を用いて,2015年9月までCochrane Library,PubMed,MEDLINE,EMBASEで検索した.

【High-Value Care アドバイス1】
臨床医は肺炎に進展していない気管支炎が疑われた患者において検査や抗菌薬治療の開始を行うべきではない.

【High-Value Careアドバイス2】
臨床医は,A群溶連菌咽頭炎が疑われる症状(例えば,遷延する発熱,前頸部リンパ節炎,咽頭扁桃の浸出液,あるいは他の症状の合併)の患者には迅速抗原感知テストと/またはA群溶連菌の培養の検査を行うべきである.臨床医は溶連菌咽頭炎と確認した場合においてのみ抗菌薬による治療を行うべきである.

【High-Value Careアドバイス3】
臨床医は,10日間以上の遷延する発熱,重篤な症状または高熱(>39℃)かつ3日連続で続く膿性鼻汁または顔面痛の発症,5日間の典型的ウイルス疾患の初期改善に続発する症状悪化(重複感染)を呈するまで急性副鼻腔炎に対する抗菌薬治療を温存すべきである.

【High-Value Careアドバイス4】
臨床医は感冒患者に対して抗菌薬を処方すべきではない.

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by DrMagicianEARL | 2016-01-24 17:38 | 抗菌薬 | Comments(0)
■急性肝障害マウスモデルでのrTM投与効果とHMGB1や好中球集積抑制の基礎研究を紹介します(筆頭執筆者は私の大学時代の先輩です).これまでrTMがHMGB1を減少させるとした報告は基礎・臨床ともに複数ありますが,代謝による減少も考慮する必要がありました.肝虚血再灌流モデルにおいてはHMGB1が対照群よりも有意に消失しにくいという報告(Crit Care Med 2010; 38: 879-85)があり,HMGB1は肝代謝である可能性が指摘されています.よって,HMGB1の動態を調べるのであれば肝障害モデルがbetterなのではないかと私は思っています.

■今回の報告では,LPS/GalN誘発性急性肝障害モデルに対するrTMの投与でHMGB1や好中球集積が抑制され,生存が改善したという結果です.もっとも,rTMはNETs放出抑制作用もあるようですので機序としてはそちらの考慮も必要です.実臨床では急性肝障害に対してrTMはどうなのかというのは気になるところですが,DICに対するrTMの市販後調査ではやはり肝障害がベースにあると出血リスクが増加するというデータがでており,安全性の懸念はあります.
遺伝子組換えヒト可溶性トロンボモデュリンはマウスにおいてリポポリサッカライド/d-ガラクトサミン誘発性急性肝障害を改善する
Osumi W, Jin D, Imai Y, et al. Recombinant human soluble thrombomodulin improved lipopolysaccharide/d-galactosamine-induced acute liver failure in mice. J Pharmacol Sci. 2015 Dec;129(4):233-9
PMID:26712705

Abstract
【背 景】
急性肝障害(ALF)における遺伝子組換えヒト可溶性トロンボモデュリン(TM-α)の効果は不明確であり,我々はマウスでのリポポリサッカライド(LPS)/d-ガラクトサミン(GalN)誘発性ALFにおいてTM-αの効果を解明した.

【方 法】
LPS/GalN投与1時間後にプラセボ(生理食塩水)またはTM-α(100mg/kg)を投与した.LPS/GalN投与24時間後に生存率を評価した.血漿および肝検体はLPS/GalN投与から1,3,7時間後に評価した.

【結 果】
生存率はプラセボ群よりもTM-α治療群の方が有意に高かった.LPS/GalN投与7時間後に血漿high-mobility group box 1タンパク(HMGB1)の有意な増強が観察された.TM-α治療マウスでは,血症HMGB1はプラセボ群よりも有意に低かった.プラセボ治療群では肝NF-κB p65の有意な増強が観察された一方,TM-α治療群ではプラセボと比較して有意な減少が観察された.TNF-αとミエロペルオキシダーゼの肝発現はプラセボ群で有意に増加しており,TM-α治療群では減衰していた.TM-α治療はLPS/GalN投与後に肝への好中球集積も有意に減じていた.

【結 論】
従って,TM-αはLPS/GalN誘発性のHMGB1レベルを減じることでALFの症状を減じる有用な治療戦略となる可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2016-01-19 12:12 | 敗血症性DIC | Comments(0)
■2カ月前のものですが,腎機能に着眼点を置いたICU人工呼吸器患者の鎮静剤の比較論文を紹介します.傾向スコアマッチング解析を用いた大規模研究で,プロポフォールがミダゾラムよりも腎アウトカムが良好で,死亡率も有意に低いという結果であり,近年のミダゾラムよりプロポフォールの方が好ましいという流れを支持するものです.ただ,マッチングしているとはいえ,ミダゾラムが使用された患者は循環動態が芳しくないためプロポフォールを回避されたというバイアスがある可能性もあります.
プロポフォールまたはミダゾラムの投与を受けた重症疾患患者の腎臓の予後
Leite TT, Macedo E, Martins Ida S, et al. Renal Outcomes in Critically Ill Patients Receiving Propofol or Midazolam. Clin J Am Soc Nephrol. 2015 Nov 6;10(11):1937-45
PMID:26342046

Abstract
【背 景】
プロポフォールは経験的に腎虚血再灌流傷害に対する保護効果を有することが示されてきているが,心臓手術患者での臨床エビデンスは限られている.重症疾患患者におけるプロポフォールと乏尿やAKI(急性腎傷害)との関連性についてのデータはない.

【方 法】
Multiparameter Intelligent Monitoring in Intensive Care IIデータベース(2001-2008年)からデータを得た.患者選択基準は,初回の集中治療室(ICU)に入室した,人工呼吸器を必要とし,プロポフォールまたはミダゾラムの投与を受けた成人患者とした.傾向スコア(Propensity score)解析(1:1)を用い,腎関連アウトカム(AKI,乏尿,累積体液バランス,RRTの必要度)はICU滞在の最初の7日間で評価した.

【結 果】
1396のプロポフォール/ミダゾラムのマッチングした患者が登録された.最初のICU7日間におけるAKIはミダゾラム群に比してプロポフォール群の方が有意に低かった(55.0% vs 67.3%, p<0.001).プロポフォールは尿量(45.0% vs 55.7%, p<0.001)や血清クレアチニン基準(28.8% vs 37.2%, p=0.001)のいずれの基準を用いても低いAKI発生に関連していたプロポフォール群は乏尿(<400mL/日)の頻度が少なく(12.4% vs 19.6%, p=0.001),利尿薬の使用頻度が少なかった(8.5% vs 14.3%, p=0.001).加えて,ICU在室の最初の7日間において,プロポフォール群は体重の5%超の累積体液バランスへの到達頻度が少なかった(50.1% vs 58.3%, p=0.01).ICU在室の最初の7日間でのRRTの必要度もプロポフォール群で少なかった(3.4%vs 5.9%, p=0.03).ICU死亡はプロポフォール群が低かった(14.6% vs 29.7%, p<0.001).

【結 論】
本大規模傾向スコアマッチングのICU患者集団において,プロポフォールで治療された患者はAKI,輸液関連合併症,RRTを必要とするリスクが低かった.

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by DrMagicianEARL | 2016-01-07 18:39 | 敗血症性ARDS | Comments(0)
■ICU患者での栄養管理の論文はよく読みますが,より広い範囲の「急性期の患者」というくくりでの論文はあまり読んだことがなく,今回そのRCTのメタ解析が出たので紹介します.ただでさえICU患者でも栄養療法で有意差をつけることが難しい上に,ICU患者に比して重症度がかなり低くなりますから,当然ながら臨床ハードアウトカムに差はつかないだろうなと思いながら読んでみたらやはり死亡率を含めほとんどのアウトカムで有意差なし.ただし,副次評価項目ではあるものの再入院では有意差がついているので,長期アウトカムの設定にするといろいろ差が見えてくるんじゃないかなと.
低栄養の入院患者における栄養サポートと予後:システマティックレビューとメタ解析
Bally MR, Blaser Yildirim PZ, Bounoure L, et al. Nutritional Support and Outcomes in Malnourished Medical Inpatients: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Intern Med. 2016 Jan 1;176(1):43-53
PMID:26720894

Abstract
【背 景】
急性疾患において,栄養療法は低栄養状態あるいはそのリスクのある内科入院患者において広く行われている.しかし,我々の知る範囲では,この介入が患者に対して有効性および有益性を示した包括的な研究はない.

【目 的】
無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビューにおいて低栄養あるいはそのリスクを有する内科入院患者の予後における栄養療法の効果を検討する.

【方 法】
Cochrane Library,MEDLINE,EMBASEを用いた.研究期間は1982年10月5日から2014年4月30日までに各国で行われたもの(ほとんどは欧州)を登録した.我々の解析は2015年3月10日から2015年9月16日にかけて行った.予め指定されたコクランプロトコルに基づいて,我々は入院患者における対照群と比較した栄養療法(カウンセリングや経口摂取・経腸栄養を含む)の効果を検討したRCTを体系的に検索した.2人のレビュワーが研究の背景,方法,結果のデータを抽出した.意見の不一致は合意により解決した.主要評価項目は死亡率とした.副次評価項目は医療関連感染,あらゆる原因での再入院,機能予後,入院期間,毎日のカロリーおよび蛋白の摂取量,体重変化とした.

【結 果】
計3736例の患者を含む22報のRCTを登録した.全体的に研究の質は低く,バイアスリスクが不明確なものがほとんどであり,RCT間の異質性は高かった.介入群は対照群に比して有意に体重(平均差0.72 kg; 95%CI 0.23-1.21 kg),カロリー接種量(平均差397 kcal; 95%CI, 279-515 kcal),蛋白接種量(平均差20.0 g/d; 95%CI 12.5-27.1 g/d)が増加した.死亡率(9.8% vs 10.3%; OR 0.96; 95%CI 0.72-1.27),医療関連感染(6.0% vs 7.6%; OR 0.75; 95%CI 0.50-1.11),機能予後(平均Barthel指数差 0.33ポイント; 95%CI -0.88 to 1.55ポイント),入院期間(平均差 -0.42日; 95%CI -1.09 to 0.24日)は介入群と対照群間で有意差がみられなかった.再入院は介入群で有意に減少させた(20.5% vs 29.6%; RR 0.71; 95%CI 0.57-0.87).

【結 論】
内科入院患者において,栄養療法はカロリーと蛋白の摂取量,体重を増加させる.しかしながら,再入院を除き,臨床アウトカムにおいてはわずか効果しかみられなかった.このギャップを満たすため,より質の高いRCTが必要である.

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by DrMagicianEARL | 2016-01-05 16:31 | 文献 | Comments(0)
■本ブログを見てくださっている方からよく受ける質問が2つあります.「なぜブログをそんなに大量に書けるのか?」と「どうやって論文を読んでるのか?」です.

■前者についてはいつも「結婚してない(し彼女もいない)から」と答えてます.病院業務が終わってからブログ更新作業を行いますし,レビュー記事ともなれば数多くの論文をまとめることになるため何日もかけて書きます.そのぶん病院から家に帰るのも遅くなりますから家族ができたりしたらこんな頻度では更新はとてもできません(中には結婚されていてお子さんもたくさんいて,でも論文もばんばんだしてブログもやってる救急医の先生がおられますが,私にはそこまでのパワフルさはとてもありません).

■まあそれはいいとして,後者についてですが,私自身,論文の読み方を教わったこともありませんし,現在勤務している病院に抄読会もありません.すべて我流でやっています.なので参考になるか分かりませんし,もっといい方法もあると思いますが,私自身のやり方を以下に紹介します(ある特定のことについて論文を調べたい,ではなく新しくでてきた論文を日課として読んでいきたい場合のやり方です).習慣にしたいけど全然英語論文を読む気になれず,という方はこんなやり方でよければ.

1.英語論文にどうやって慣れるか
■研修医によく言ってますが,英語論文を読むのにベースの英語力はあまり関係ありません.大学入試の際ほとんどの勉強時間を数学に割いていた私は英語はからきしダメで,直前に詰め込みで勉強したとはいえセンター試験の英語は120点程度でした.英語論文読めないと言ってる研修医はみんなこの点数を超えてたんですよね.大学に入ってからも1~2年の教養課程以外で特に英語を勉強することもなく,教養課程も真面目にやってたわけでもなくで英語論文なんてとても読める状況じゃないまま大学を卒業し,今の病院に卒後臨床研修医として就職しました.

■研修医2年目の時に,レジデントも今の病院で残ることが決定してから英語論文を読むようになりました.マンパワーが少ない環境では自分で知識を蓄えて自分の身を守るしかないと思っていたからです.ただ,読み始めは大変でした.とにかく時間がかかる.分からない単語や文は翻訳サイトを頻回に使う,時には翻訳サイト使ってもさっぱり分からない部分がある,1個の論文読むのにいったい何日かかるのかと思ったくらいで,これではあまりにも効率が悪い.そこでやり始めたのが「Abstract読み」です.

■論文のAbstract(要約)は,その研究の内容(背景,目的,方法,結果,結論)がコンパクトにまとまっていて本文に比べて非常に短く,これなら息切れせず読んでいけます.本ブログでも論文はAbstractで紹介していますが,だいたいどの論文もこれくらいの長さです.最初は1日1Abstract読むと決めて始め,英語論文の決まった単語や言い回しなどが分かってくると辞書や翻訳サイトを使わず読めるようになりスピードが上がりますので,1日あたりに読むAbstractの数が徐々に増えていきました.慣れてくればAbstract1つにつきかかる時間は1~2分程度.それくらいに論文英語に慣れてくると本文の方もかなりのスピードで読めるようになります.何日もかかってたのが1日で,さらにはより短時間でざっと読めるようになります.もし内容がいまいちつかみづらいときは,背景と結論を先に読んじゃいましょう.何の研究かがあらかじめつかみやすくなり,Abstractが読みやすくなります.

■Abstractの読みやすさも,英語文化の違いやネイティブか否か等もあって執筆者によって様々で,論文によっては非常に分かりにくい表現や単語を用いているケースもあります.非常にシンプルでまわりくどい表現も少ないAbstractとしては医学では最も権威ある雑誌「the New England Journal of Medicine」(通称NEJM誌)がおすすめです.この雑誌の原著論文のAbstractは非常に読みやすいのが特徴です.たとえばまわりくどい論文のAbstractの背景は日本語にするとこんな感じです.
【背景】Aは死亡率の高い疾患であり,年々増加している.薬剤XはYを阻害することでBの治療に用いられているが,近年,Aに対しても有効性が示唆されているが,無作為化比較試験での検討はない.我々はAに対するBの有効性を検討した.
一方,NEJM誌だとこんな感じです.
【背景】Aに対するXを評価した無作為化比較試験はない.
同様に結論の方でも,まわりくどい論文Abstractは
【結論】Aに対するXはプラセボと比較して死亡率に統計学的有意差が見られなかったが,ICU在室期間は有意に短縮した.サブ解析では,より重症例でXにより死亡率が改善しており,さらなる検討が必要である.
一方,NEJM誌だと
【結論】XはAの死亡率を改善させなかった.
ちょっと極端な書き方ですが,こんな感じです.なので最初のうちはNEJM誌がスラスラ読みやすいと思います.

2.Abstract通読の利点と注意点
■英語論文に慣れるためにAbstractを使うやり方を紹介したわけですが,Abstractの使い方は様々です.Abstractは論文を読む上で,最初に概略として目を通す上で短くまとまっていて非常に便利です.その利点は単に内容の概略を把握するだけではありません.

(1) 論文の選択作業
当たり前のことではあるんですが,Abstractを速読できるようになれば,論文を選んで本文を読むという作業工程がルーチン化できるようになります.

(2) 本文重要ポイントの把握
本文を読みたいけど今時間がない,とりあえず今はざっとだけ,という時にはAbstractを速読して本文の重要であろう部分を推測し,そこだけピンポイントで選んで読めます.

(3) トレンドがつかめる
日課でAbstractをたくさん読めば読むほど,それだけ今どのような研究がトレンドなのか,どんな研究デザインだとどのような結果になりやすいか,どの国が(もしくは特定の研究者が)特にその研究をやっているか,などが分かってきます.Abstractのbackground(背景)の部分にも書いてありますし,同系統の研究のAbstractを複数読むだけでもだいぶとトレンドが分かってきます.

(4) 学会抄録の書き方の参考になる
学会発表の際,締切がせまってるけど抄録がなかなかうまく書けない,なんて経験があるかもしれません.限られた字数で極力余計な情報を省き,重要ポイントをおさえてシンプルに提示するわけで,これはアピールポイントです.逆に言えば書き方しだいではいい研究でも非採択になりかねません.字数の違いはあれど,査読を経て一流雑誌に掲載される論文のAbstractは構成がよくできていて,抄録を書く際の参考になります.できれば,本文とAbstractを比べてみて,どう抽出しているのか調べてみてもいいかもしれません.

■一方,Abstractで注意すべきは,それだけで論文の中身が分かったようになってはいけないことです.Abstractには考察がないことはもちろん,バイアスを含め,その論文の問題点を抽出するにはAbstractは内容が少なすぎますし,Abstractには書かれていないデータも本文にはたくさんあります.やはりデータは研究の命であり,そこに目を通さないと吟味できません.時には本文を見るとAbstractとずいぶんと内容が違う,なんて罠もあります.

3.読む雑誌を決めてAbstract通読
■医学雑誌のほとんどが登録されているPubMedという検索エンジンがあります(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed).誰でも無料でアクセス可能です.この検索欄に「雑誌の略称[jo]」を入力して検索ボタンを押すとその雑誌に登録されている論文がすべて出てきます(マイナー雑誌ではすべてが登録されているとは限りません).さらに,「(雑誌Aの略称[jo]) OR (雑誌Bの略称[jo]) OR ...」というように複数の雑誌の略称名をORでつなげていくと,それらの雑誌に掲載されている論文が新しいものからすべて出てきます.ただし,中にはletter to editor等,Abstractがない論文も含まれますので,最後に「AND hasabstract」をつけておくと,Abstract付きの論文だけが抽出されます.

■読む雑誌ですが,ノンジャンルの雑誌であれば以下の世界5大ジャーナルと呼ばれる5誌がおすすめです.英語に慣れると同時にとりわけインパクトの高い最新研究結果を知ることができます.
・the New England Journal of Medicine:PubMed略称「N Engl J Med」,略称「NEJM」
・the Lancet:PubMed略称「Lancet」,略称「Ln」
・the British Medical Journal:PubMed略称「BMJ」,略称「BMJ」
・the Journal of the American Medical Association:PubMed略称「JAMA」,略称「JAMA」
・Annals of Internal Medicine:PubMed略称「Ann Intern Med」,略称「AnIM」

■さらに以下の2誌を加えれば7大ジャーナルです.
・JAMA Internal Medicine(旧Archives of Internal Medicine):PubMed略称「JAMA Intern Med」,略称「JAMAIM」
・Canadian Medical Association Journal:PubMed略称「CMAJ」,略称「CMAJ」

■以下はPubMed検索欄に入れる検索式です.
5大ジャーナルを検索する場合
((N Engl J Med[jo]) OR ("Lancet"[jo]) OR (BMJ[jo]) OR (JAMA[jo]) OR (Ann Intern Med[jo])) AND hasabstract

7大ジャーナルを検索する場合
((N Engl J Med[jo]) OR ("Lancet"[jo]) OR (BMJ[jo]) OR (JAMA[jo]) OR (Ann Intern Med[jo]) OR (JAMA Intern Med[jo]) OR (CMAJ[jo])) AND hasabstract
※今でもAbstract読み私はルーチンで読む雑誌を決めて(47雑誌),その雑誌名をまとめてPubMedの検索式に打ち込んでタイトルで読むものを選んでいき,Abstractを一気に通読しています.

■以下は私のルーチンカバー範囲になりますが,ルーチン読み雑誌の検索式を御紹介します.
救急集中治療系雑誌
(Crit Care Med[jo]) OR (Intensive Care Med[jo]) OR (Am J Respir Crit Care Med[jo]) OR (Chest[jo]) OR (Crit Care[jo]) OR (Crit Care Clin[jo]) OR (Shock[jo]) OR (Ann Intensive Care[jo]) OR (J Intensive Care Med[jo]) OR (J Emerg Nurs[jo]) OR (J Emerg Med[jo]) OR (Int J Emerg Med[jo]) OR (Am J Emerg Med[jo]) OR (Eur J Emerg Med[jo]) OR (Crit Care Nurse[jo]) OR (Ann Emerg Med[jo]) OR (J Crit Care[jo]) OR (Crit Care Res Pract[jo]) OR (Crit Care Resusc[jo]) OR (Anaesth Intensive Care[jo]) OR (Anaesthesiol Intensive Ther[jo]) OR (Anesth Analg[jo]) OR (Am J Crit Care[jo]) OR (Acta Anaesthesiol Scand[jo]) AND hasabstract
感染症/感染制御系雑誌
((Antimicrob Agents Chemother[jo]) OR (J Antimicrob Chemother[jo]) OR (Clin Infect Dis[jo]) OR (Lancet Infect Dis[jo]) OR (Clin Microbiol infect[jo]) OR (Int J Antimicrob Agents[jo]) OR (Antimicrob Resist Infect Control[jo]) OR (J Infect[jo]) OR (Infection[jo]) OR (Eur J Clin Microbiol[jo]) OR (Am J Infect Control[jo]) OR (Diagn Microbiol Infect Dis[jo]) OR (J Hosp Infect[jo]) OR (Epidemiol Infect[jo]) OR (Infect Control Hosp Epidemiol[jo])) AND hasabstract

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by DrMagicianEARL | 2016-01-04 21:34 | 論文読み方,統計 | Comments(0)

by DrMagicianEARL