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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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敗血症の新定義・新診断基準(2016年2月22日のSCCM/ESICMによる大幅改訂)
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■米国フロリダ州はオーランドで開催されている第45回米国集中治療医学会(SCCM;Society of Critical Care Medicine)において,3日目の2月22日(日本時間23日午前5時)の米国集中治療医学会・欧州集中治療医学会合同セッションにおいて敗血症の新しい定義が発表されました.同時に,JAMA誌に新定義の論文1報とその検証論文2報がpublishされましたので紹介します.以下概略です.
新定義・新診断基準の概略

・敗血症の定義
旧定義:「全身症状を伴う感染症,あるいはその疑い」(SSCG 2012)
新定義:「感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害」
旧敗血症(SIRS+感染症)→敗血症から除外
旧重症敗血症(敗血症+臓器障害)→敗血症(重症はつけない)

※これまでのSIRS基準は消え,SIRS+感染症で敗血症としていたのが,重症敗血症以上で敗血症とし,なおかつ重症敗血症という用語が消滅しました.これにより,敗血症(Sepsis)と敗血症性ショック(Septic shock)の2つになりシンプルになったと言えます.

・敗血症の診断基準
旧基準:SIRS基準または2001年基準
新基準:ICU患者とそれ以外(院外,ER,一般病棟)で区別
 ICU患者:感染症が疑われSOFAスコアが2点以上増加
 非ICU患者:quick SOFAスコア(qSOFA)で2点以上でスクリーニング陽性(敗血症疑い)→精査でSOFAスコアが2点以上ならば敗血症診断
qSOFAスコア:「呼吸数22回/分以上」「意識障害(GCS<15)」「収縮期血圧100mmHg以下」が各1点ずつ


※大規模検証研究において,ICU患者ではSOFAスコアがqSOFAやSIRSよりも院内死亡予測妥当性(AUROC)が有意に高かったのに対し,それ以外の患者ではqSOFAがSOFAスコアよりも有意に高かったことによります(JAMA 2016; 315: 762-74).迅速に認知して対応する上でqSOFAがシンプルな3項目になっているのは非常に実用的かと思われます.同時にSIRS基準にも入っていた呼吸数が基準に入っており,いかにベッドサイドで呼吸数が重要であるかの証左と思われます.

・敗血症性ショックの定義・診断基準
新定義:「実質的に死亡率を増加させるに十分に重篤な循環,細胞,代謝の異常を有する敗血症のサブセット」
旧診断基準:敗血症で輸液負荷にも反応しない低血圧(収縮期血圧で評価)
新診断基準:適切な輸液負荷を行ったにもかかわらず平均血圧65mmHg以上を維持するための循環作動薬を必要としかつ血清乳酸値の2mmol/L(18mg/dL)超過

※こちらも検証研究がなされています(JAMA 2016; 315: 775-87).収縮期血圧ではなく平均血圧を見ていること,乳酸値をより重要視することが推奨されており,これは血圧の下がったショック(Overt Shock)のみならず潜在的ショック(Cryptic Shock)もカバーする上で重要です.
■今回の改訂により,既知の敗血症研究の多くが再検証が必要になります.特にバイオマーカーの検討はすべてやり直しです.臨床試験においては,敗血症の死亡率が年々減少してきており,新たな治療介入を検討しても有意差が出にくい状態です.より重症で死亡率が高い患者層になったことでeffect sizeがより大きくなり有効な治療法が検出されやすくなるかもしれません.
敗血症および敗血症性ショックの第3の国際コンセンサス定義(Sepsis-3)
Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016 Feb.23; 315(8): 801-10

【背 景】
敗血症および敗血症性ショックは2001年に最終改訂されている.敗血症の病理生物学(臓器機能,形態,細胞生物学,生化学,免疫学,循環の変化),管理,疫学は進歩していており,再検証の必要性が示唆されている.

【目 的】
敗血症および敗血症性ショックの定義を評価し,必要に応じて改訂を行う.

【方 法】
敗血症の病理生物学,臨床試験,疫学の専門家によるタスクフォース(19名)が米国集中治療医学会と欧州集中治療医学会で招集された.定義と臨床診断基準は,査読と賛同を求めた国際的な専門学会(謝辞に記載された31学会)による補助のもと,会議,Delphiプロセス,電子カルテデータベース解析,投票を通じて作成された.

【結 果】
以前の定義の問題点として,炎症に過度の焦点を置いていること,敗血症が重症敗血症からショックへの連続体に続くという誤ったモデル,全身性炎症反応症候群(SIRS)の不適切な感度と特異度がある.敗血症,敗血症性ショック,臓器障害において,近年,多数の定義や用語の使用が,報告される発生率や観察される死亡率において不一致を招いている.タスクフォースは重症敗血症という用語が余計であると結論づけた.

【推 奨】
敗血症は,感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害として定義されるべきである.臨床的運用において,臓器障害は,院内死亡率10%超に関連するものとして,Sequential [敗血症に関連した] Organ Failure Assessment(SOFA)スコアの2点以上の増加により表現しうる.敗血症性ショックは,敗血症単独よりも高い死亡リスクに関連する特に重篤な循環,細胞,代謝の異常を有する敗血症のサブセットと定義すべきである.敗血症性ショックの患者は体液量減少がない状態でも平均血圧65mmHg以上を維持するための循環作動薬の必要性と血清乳酸値の2mmol/L(18mg/dL)超過によって臨床的に検出できる.この併用は院内死亡率40%超過に関連している.院外,救急部門,一般病棟においては,感染症が疑われた成人患者は,quick SOFA(qSOFA)と称する新しいベッドサイドの臨床スコアで構成される臨床診断基準(呼吸数22回/分以上,精神状態の変化,収縮期血圧100mmHg以下)で少なくとも2点を有するのであれば,予後不良の典型的な敗血症の可能性があると迅速に認識することができる.

【結 論】
これらの定義と臨床診断基準の更新は以前の定義と置き換え,疫学研究や臨床試験においてより大きな一貫性を提供し,敗血症や敗血症への進展リスクを有する患者のより早い認知とよりタイムリーな治療を促進するべきである.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-23 12:19 | 敗血症 | Comments(3)
 2016年2月11日から14日まで神戸国際会議場および神戸ポートピアホテルで開催された第43回日本集中治療医学会総会学術集会に参加してきました.私自身は12日にワークショップセッションでPost-Intensive Care Syndromeについて発表させていただきましたが,今回の学会の個人的なメインはJSEPTIC-DIC studyの結果報告を見に行くことと言っても過言ではありません.以下,感想などを.

1.JSEPTIC-DIC study
■これまで本邦では日本集中治療医学会や日本救急医学会がSepsis Registry委員会を立ち上げて敗血症症例のデータ集積を行ってきているが,どれも数百例レベルで,今回のJSEPTIC-DIC studyは桁が1桁違う過去最大規模かつ最新の国内敗血症データベースとなる.
【対 象】
本研究は,敗血症性DICに対する治療を積極的に施行している施設と施行しない施設の両方を含めた本邦40施設42ICU共同後ろ向き観察研究である.対象は2011年1月から2013年12月の3年間に重症敗血症/敗血症性ショックが原因でICUに入室した3195例.

【参加施設】
参加施設は院内ICUが57%,救急ICUが43%であり,ICU管理方針はClosedが41%,Openが43%であった.

【患者背景】
患者背景は,平均年齢70歳,男性が60%,平均APACHEⅡスコアは23,感染源は腹腔が32%で最多,次いで肺26%,尿路16%,血液培養陽性は44%,陰性は50%,DIC合併率は71%であった.DIC治療薬はATが31%,rTMが27%,プロテアーゼ阻害薬12%であった(重複あり).ICU入室から退院までは平均41日間,院内死亡率は33%であった.

【結果1】DIC治療方針の転帰への影響
 DIC治療薬を50%以上の患者に投与した施設の患者を積極群(23施設1670例),50%未満の患者に投与した施設の患者を非積極群(19施設1525例)とした.
 ICU生存率は80.7% vs 79.6%,p=0.46,院内生存率は67.1% vs 67.3%,p=0.90で有意差はみられなかった.多変量ロジスティック回帰解析では,積極群はICU生存退室においてOR 1.34[95%CI 1.08-1.65],p=0.007,病院生存退院においてOR 1.34[95%CI 1.11-1.60],p=0.002であり,独立した予測因子であった.
 敗血症DICを積極的に治療した施設では生存率良好と関連があり,DIC治療薬投与が転帰を改善する可能性がある.

【結果2】敗血症性DICに対する遺伝子組換えトロンボモデュリン製剤(rTM)の効果
 3195例中,DIC患者1847例が対象,このうち645例にrTMが投与され(rTM群),1202例にはrTMが投与されていなかった(対照群).施設情報,患者背景,治療内容を使用したpropensity scoreを算出し,propensity score matching解析を実施し,466組のペアが作成された.
 院内死亡においてはrTMはOR 0,717,95%CI 0.547-0.940,p=0.0161であった.生存期間の比較では,HR 0.762,95%CI 0.615-0.943,p=0.0125であった.rTM群での輸血量の増加は認めていなかった.処置を要する出血は対照群1.3%に対してrTM群2.8%と増加していたが,統計学的有意差は認めなかった.
 敗血症性DICに対するrTMの投与は死亡率の低下と関連していた.

【結果3】敗血症性DICに対するアンチトロンビン製剤(AT)の効果
 3195例から以下の3段階のサブグループで施設情報,患者背景,治療内容を使用したpropensity score matching解析を実施した.
(1)DIC患者1875例中,715例にATが投与され(AT群),1132例には投与されていなかった(対照群).
(2)AT値をday1に測定しているDIC患者1041例中,AT群509例,対照群532例
(3)day1のAT値が70%以下のDIC患者815例中,AT群450例,対照群365例
 マッチしたペアはそれぞれ(1)428組,(2)275組,(3)212組作成された.AT群は院内死亡において(1)OR 0.906,95%CI 0.69-1.19,(2)OR 0.94,95%CI 0.65-1.34,(3)OR 1.09,95%CI 0.73-1.64,p=0.68であった.
敗血症性DICに対するATの投与は死亡率の低下と関係を認めなかった.
■この他にも,乳酸値,PMX-DHP,vv-ECMO,Open vs Closedなど多数の解析が発表されている.本研究の主旨である敗血症性DICに関しては,DIC治療薬,とりわけrTMにおいて生存率改善の可能性が示唆されているものの,施設どうしの比較にも近く,またDICを治療しない施設におけるDICパラメータの測定欠損など後ろ向き観察研究特有の限界もあるとも言える.また,先日の第22回大阪DIC研究会においては本JSEPTIC-DIC studyデータを用いたDIC治療プロトコル採用可否での死亡率比較で,APACHEⅡスコア20以上において生存率改善を示唆する結果が報告されており,過去の知見も合わせればやはりAPACHEⅡスコア20~25以上のpoppulationでなければ死亡率改善は得られない可能性があり,rTMの海外PhaseⅢ studyに登録された患者の重症度しだいで結果は決まるかもしれない.

2.TPTD study
■敗血症性ショックのEGDTにおいて,輸液指標にCVPを用いることについては懐疑的見解が相次いでいる.しかしながら,CVPに代わる確立された輸液反応性指標がないことも事実で,それではTPTDはどうかということで本研究がRCTデザインで日本で行れている.今回その中間解析結果が報告された.
敗血症治療における経肺熱希釈法の併用に関する多施設共同研究・中間報告 TPTD-study Group
【背 景】
敗血症の初期治療においては十分な輸液が必要だが,中心静脈圧を指標とした従来のEGDTについては有効性を疑問視する報告が相次いでいる.経肺熱希釈法(TPTD)は心臓の拡張終期容量と肺外の水分量を測定することが可能であり,中心静脈圧に代わる輸液の指標として期待される.

【目 的】
敗血症におけるTPTDを用いた輸液管理の有用性を検討する.

【方 法】
2013年11月から2015年8月に当研究(多施設前向き比較対照試験;UMIN000011493)に参加した16施設のICUに入院し,48時間以上の人工呼吸器管理を必要とした敗血症患者105例を対象とした.無作為に割り付けたTPTDによる輸液管理を行ったTPTD群(50症例;GEDI 650-850,SVV<15%目標)と中心静脈圧を用いたCVP群(55症例;CVP 12-15cmH2O目標)を比較した.

【結 果】
生存例について,人工呼吸器管理日数はTPTD群で有意に短縮された(Kaplan-Meier法;p=0.041,5.5±7.2 vs 7.0 vs±6.4).ICU滞在期間(6.8±6.4 vs 8.8±7.0),カテコラミン投与期間(2.3±1.8 vs 3.6±4.1)についても,TPTD群ではCVP群と比較して日数が短縮される傾向にあった.72時間の輸液バランスには有意差を認めなかった(4.8±5.9L vs 4.8±5.3L).
※輸液バランスは実際の発表では24時間で3075mL vs 3646mL,72時間トータルでは3106mL vs 4650mLという数字であった.

【結 論】
TPTDを用いた輸液管理によって,十分量の輸液とカテコラミンの必要期間の制限が可能であり,人工呼吸器管理期間を短縮できる.
■Rivers' EGDTのCVPをTPTDにしたらどうなるかというRCTですが,主要評価項目で人工呼吸器管理日数で有意差がついたほか,輸液バランスもTPTD群の方が少ない傾向で好ましく見えるのだが,問題は28日生存率である.100例ちょっとでの検討になるため微妙ではあるが,発表での28日生存率は67% vs 78%で有意差はないもののTPTD群の方が高い傾向がみられている.その絶対差は11%もあり無視できる大きさではない.本研究は最終的に200例を予定しており,この差は200例では有意差はつかないが,500例ほどになれば有意差がつく数字であるため,注意してみていく必要はあるだろう.

3.Global Sepsis Alliance委員会報告
■最終日にGlobal Sepsis Alliance委員会の報告があり,その中で市民への情報発信のためのホームページ作成について報告がなされた.「敗血症安心プラネット」というホームページ名であり昨年より開設されているが,アクセス数が伸び悩んでいた状況にあった.検索についても,「敗血症 安心」という検索ワードにしなければ上位に表示されない.業者に依頼するなどしてアクセス数を増やすことも検討されていたが,コストがかかる上に上位にいく保障がないのが問題であった.

■そこで,救急・ICU系のブロガーにリンクを貼ってもらい,アクセス数を増やすことで検索上位にひっかかることが期待された.実際に本ブログ「EARLの医学ノート」や「ER×ICU~救急医の日常~」で敗血症安心プラネットの紹介とリンクを学会期間中に貼ったところ,アクセス数が劇的に伸びたことが報告された.

■というわけで,まさかとは思ったが,依頼されたこともあり,このブログが学会デビューしてしまった.実際に委員会報告のスライドで私のブログが顔写真本名付きでの紹介という大変恐縮な状況.それはいいとして,一般市民への啓蒙手段,なかなかに難しいようである.

市民と医療従事者のための敗血症安心プラネット~SEPSIS JAPAN~
Global Sepsis Alliance JAPAN
http://sepsisjapan.com/

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by DrMagicianEARL | 2016-02-19 11:30 | 敗血症 | Comments(0)
■もう既に話題になっていますが,ICM誌に当直後の認知機能悪化が報告されました.まあ経験的にみなさんも体感していることだと思います.私も当直後はそのまま日勤に連続して突入しますが,その日勤では極力検査・処置が入らないようにはしています.

■じゃあ実際に医療過誤が起こるか?というのが気になるところですが,カナダの1448名の外科医の調査では,処置・手術が日中と夜間で患者の死亡・再入院・合併症の複合アウトカムに差はないと報告しています(N Engl J Med 2015; 373: 845-53).差がつかなかった理由については経験でカバーしている,安全かどうか自分で判断している,という考察がなされています.ただし,夜間に複数回の処置・手術があると合併症頻度は1.14倍に有意に増加してはいます.また,夜勤明けの運転では37.5%が急ブレーキを使用し,半数近くが車を制御しきれず,その運転能力の低下は運転開始から15分以内に出現していたとの報告もあります(Proc Natl Acad Sci U S A 2016;113:176-81)
ICUの医師の夜勤は認知機能を低下させる
Maltese F, Adda M, Bablon A, et al. Night shift decreases cognitive performance of ICU physicians. Intensive Care Med. 2016 Mar;42(3):393-400
PMID:26556616

Abstract
【背 景】
疲労と医療過誤のリスクとの関係は一般的に知られている.本研究の主な目的は,集中治療医の集団の認知機能における集中治療室(ICU)夜間シフトの影響を評価することである.認知機能における専門的経験と睡眠量の影響も検討した.

【方 法】
3つのICU(シニア24名,研修医27名)から全51名の集中治療医が登録された.研究参加者は休みの夜の後と夜勤後を無作為に割り付けて評価した.Wechsler Adult Intelligence ScaleとWisconsin Card Sorting Testに基づいて4つの認知能をテストした.

【結 果】
作業記憶能力(11.3±0.3 vs 9.4±0.3; p<0.001),情報処理能力(13.5±0.4 vs 10.9±0.3; p<0.001),知覚推理能力(10.6±0.3 vs 9.3±0.3; p<0.002),認知柔軟性(41.2±1.2 vs 44.2±1.3; p=0.063)のすべての認知能が夜勤後で悪化していた.研修医とICU医師の間で認知機能障害のレベルでは有意差はみられなかった.認知柔軟性のみが2時間の睡眠後に回復していた.他の3つの認知能は夜勤中の睡眠量が十分でも低下していた.

【結 論】
集中治療医の認知能は,専門的経験量や夜勤中の睡眠時間に関係なくICUの夜勤後に有意に低下していた.患者の安全性と医師の健康への影響についてさらなる評価がなされるべきである.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-18 17:42 | 文献 | Comments(0)
※本記事は一般市民向けでもあります.

敗血症安心プラネット~Global Sepsis Alliance JAPAN~の御紹介
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1.敗血症という病気

■敗血症(英語でSepsis)という病気を知っていますか?敗血症は医学的には「全身症状を伴う感染症,あるいはその疑い」とされています.あらゆる感染症も重症化すると敗血症になります.一般的な肺炎や尿路感染症などの細菌感染症のみならず,インフルエンザやエボラ,MERSコロナウイルス,さらには寄生虫なども重症化すれば敗血症に至ります.この敗血症によって臓器不全,あるいはショック状態になると死亡率は著しく増加します.
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■世界では年間約2700万人の敗血症が発生しており,そのうち,約800万人が死亡しており,2-3秒に1人が世界のどこかで敗血症により死亡している計算になります.このため「Around every 3rd heartbeat, someone dies of sepsis.(心臓が3回鼓動を打つごとに誰かが敗血症で亡くなっている)」とも言われています.これは発展途上国だけの問題ではなく,日本を含む先進国でも深刻です.2002年から2008年にかけての10年間で,敗血症発生率は2倍以上と劇的に増加しており,心臓発作よりも多くの患者が敗血症に罹患しています.そして,敗血症患者の20-40%は集中治療室(ICU)での治療を必要としています.

■米国7州にある847病院の重症敗血症患者192980例の死亡統計データから日本にあてはめると,日本では年間38万4千人が重症敗血症に罹患していることになります.2011年の厚生労働省死亡統計では,敗血症が死因とされている死亡は11170例であり,全死亡の0.9%でした(2001年時は6179例であり1.8倍に増加).しかし,この数字は癌など他の病気がある患者が敗血症にかかり死亡した場合などが含まれていない可能性が高く,実際の死亡数はもっと多いものと考えられており,米国モデルにあてはめるならば,おそらく日本の実際の敗血症死亡例は死亡統計の約10倍(年間10-20万人)と予想されます.また,高齢者ほど罹患率,死亡率が高いことも示されており,超高齢化社会を迎えている日本ではさらに敗血症患者は増加すると思われます.

2.世界敗血症同盟(Global Sepsis Alliance)の設立

■この敗血症の世界的な危機的状況を改善させるため,「Stop Sepsis, Save Lives(ストップ敗血症,命を救え)」をスローガンに,非営利団体である世界敗血症同盟(GSA;Global Sepsis Alliance)設立され,敗血症患者のためにより良い管理体制を整えることを目的とし,致死性疾患である敗血症に対する認識を深めるための世界的活動の一貫として,2012年に毎年9月13日をWorld Sepsis Day(世界敗血症デー)と定め,世界各地で各種イベントが開催され,世界敗血症宣言が発表されています.日本でも東京や横浜でイベントが開催されました.
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■日本集中治療医学会では,2012年3月のブリュッセルにおける世界敗血症同盟の準備会議に参加し,World Sepsis Dayの趣旨に賛同し,8月には日本GSA委員会(中川聡委員長)を発足させ,活動を開始しています.活動としては,専門家による敗血症の早期診断,早期治療介入,集中治療,リハビリテーションの知識の普及啓発を医療者および一般市民に対して行うことを計画しています.

■2015年にGSA Japanのホームページが開設されています.敗血症がどのような病気か,どのような症状があれば病院を受診すべきか,どのようにして敗血症を予防するかなどが解説されていますので以下のリンクから是非ご覧ください.

市民と医療従事者のための敗血症安心プラネット~SEPSIS JAPAN~
Global Sepsis Alliance JAPAN
http://sepsisjapan.com/

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by DrMagicianEARL | 2016-02-13 19:38 | 敗血症 | Comments(0)
■これまで2回,コホート研究でHMG-CoA還元酵素阻害薬のスタチンがICUせん妄を有意に抑制するという報告をEly先生らのグループが報告しています(Am J Respir Crit Care Med 2014; 189: 666-73,Crit Care Med 2014; 42: 1899-909).これは,集中治療領域においてスタチンの抗炎症作用が注目されており,また,炎症とせん妄の関連については近年多数の報告がでていることから,スタチンの抗炎症作用がせん妄を減じるという仮説が三段論法で成り立つわけで,この仮説を検証したことになります.

■そして今回,RCTの二次解析にはなりますが,敗血症性ARDS症例におけるスタチンを検討したSAILS trialのデータを用いてICUせん妄をスタチンが抑制するかを検討した報告がLancet Respiratory Medicineに報告されました.結果は見事なまでにネガティブ.集中治療領域でいろいろ期待されてきたスタチンですが,ARDSでむしろ予後が悪化した報告を見たあたりからかなり懐疑的です.おそらく重症急性炎症病態で脂質系に影響を与えるのはよくないのではと思います.
敗血症性急性呼吸窮迫症候群の患者におけるICUでのせん妄と認知機能障害遷延におけるロスバスタチンvsプラセボ
Needham DM, Colantuoni E, Dinglas VD, et al. Rosuvastatin versus placebo for delirium in intensive care and subsequent cognitive impairment in patients with sepsis-associated acute respiratory distress syndrome: an ancillary study to a randomised controlled trial. Lancet Respir Med. 2016 Jan 28 [Epub ahead of print]
PMID:26832963

Abstract
【背 景】
せん妄は人工呼吸患者においてよく見られ,退院後少なくとも1年の認知機能障害と関連している.臨床前観察研究においてはICUにおけるスタチンの使用はせん妄を減少させる可能性が示唆された.我々はスタチンの多面的な効果がICUにおけるせん妄を減少させ,認知機能障害遷延を減少させるかについて無作為化比較試験で評価した.

【方 法】
我々は,敗血症性急性呼吸窮迫症候群患者におけるロスバスタチンvsプラセボの死亡率と人工呼吸器非装着日数を評価した無作為化比較試験であるSAILS trialにおいて本補助的研究を行った.本研究は米国の35病院で行われた.患者は8例のブロック無作為化で割り付けられ,ロスバスタチン(40mgローディングを行い,ICU退室後3日間または試験開始から28日後または死亡まで20mg/日)またはプラセボに病院ごとに割り付けた.患者と研究者は治療割り付けを盲検化された.せん妄はConfusion Assessment Method for intensive care(CAM-ICU)で評価した.認知機能は実行機能,言語,口頭推論と概念形成,動作,迅速性,記憶遅延のテストで評価した.認知機能障害はこれらの項目の1つが正常集団の少なくとも2SD以下または2つが1.5SD以下である場合と定義した.主要評価項目はintention-to-treat集団における28日までのICUにおける毎日のせん妄状態,副次評価項目は6ヵ月および12ヵ月の認知機能とした.本試験はClinicalTrials.govに登録した(NCT00979121 and NCT00719446).

【結 果】
272例の患者がICUにおける毎日のせん妄を評価された.せん妄の日数の平均比率は,ロスバスタチン群で34%(SD 30%),プラセボ群は36%(29%),HR 1.14, 95%CI 0.92-1.41, p=0.22であった.6カ月時点では,ロスバスタチン群で53例中19例(36%),プラセボ群で77例中29例(38%)が認知機能障害を有し,両群間で有意差はみられなかった(治療効果 0.93, 95%CI 0.39-2.22; p=0.87).12カ月時点では,ロスバスタチン群で67例中20例(30%),プラセボ群で81例中23例(28%)が認知機能障害を有し,両群間で有意差はみられなかった(治療効果 1.1, 95%CI 0.5-2.6; p=0.87).

【結 論】
ほとんどの患者はせん妄を有し,生存者の1/3が1年以上の追跡で認知機能障害を有していた.前臨床試験および観察研究は好ましい結果であったにもかかわらず,本試験は,優位性の検出には不十分ではあるが,ICUにおけるせん妄あるいは12ヵ月の追跡における認知機能障害を減少させる上でロスバスタチンの有益性は何ら示されなかった.よって,本集団でよく観察されたICUおよびICU後の認知機能障害を減じる目的での介入の評価が引き続き必要である.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-09 18:55 | 敗血症 | Comments(0)
■アセタゾラミド(ダイアモックス®)を集中治療領域で使用したことのある先生はかなり少ないのではないでしょうか.この薬剤が挿管人工呼吸管理下にあるCOPD患者の代謝性アルカローシスに対して使用することで早く離脱できるのではないかとするRCTが報告されましたので紹介します.結果は,主要評価項目を含めてほとんどのアウトカムに有意差なしです.執筆者は結論で「統計学的には有意差はないけれど差の数値は臨床的に無視できない」と言いたげな書き方をしていますが,臨床的にも有意とは言い難い差と私は思います.確かにベクトルはいい方向に向いてはいますが,使うほどの差かと言うと微妙です.

■この薬剤の機序はNa利尿と尿中HCO3-の排泄増加ですので,機序的には代謝性アルカローシスを改善させることになります.代謝性アルカローシスは代償反応として低換気が起こりますので,アセタゾラミドで換気刺激を促してやろうというものです.なお,本邦においては「肺気腫における呼吸性アシドーシス」に保険適用があります.どちらかというと呼吸性アシドーシスで私は使用することがごくたまにあって,NPPVでも治療しきれず,挿管拒否されているCO2ナルコーシスと高度の呼吸性アシドーシスの場合に苦し紛れの一手で投与をtryします.ただ,この研究のデータを見るにPaCO2もたいして下がらないようですね.
慢性閉塞性肺疾患患者における侵襲的人工呼吸器装着期間におけるアセタゾラミドvsプラセボの効果:無作為化比較試験(DIABOLO study)
Faisy C, Meziani F, Planquette B, et al; DIABOLO Investigators. Effect of Acetazolamide vs Placebo on Duration of Invasive Mechanical Ventilation Among Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2016 Feb 2;315(5):480-8
PMID:26836730

Abstract
【背 景】
アセタゾラミドは慢性閉塞性肺疾患(COPD)と代謝性アルカローシスの患者において呼吸刺激薬として数十年使用されてきているが,この使用における大規模なプラセボ対照比較試験はない.

【目 的】
COPDで代謝性アルカローシスの重症患者における人工呼吸器装着期間をアセタゾラミドが減少させるかについて検討する.

【方 法】
本DIABOLO studyは,フランスの15の集中治療室(ICU)で2011年10月から2014年7月まで行われた無作為化二重盲検多施設共同試験である.24時間以上の人工呼吸管理を受けることが予想されたCOPD患者計382例をアセタゾラミド群とプラセボ群に無作為に割り付け,380例がintention-to-treat解析に組み込まれた.アセタゾラミド(500-1000mgを2回/日)とプラセボは代謝性アルカローシスの症例において静脈内投与することとし,ICU入室48時間以内に導入され,最大28日間までICU在室中継続した.主要評価項目は気管挿管もしくは気管切開による侵襲的人工呼吸器装着期間とした.副次評価項目は動脈血ガスと呼吸パラメーター,weaning期間,有害事象,抜管後の非侵襲的人工呼吸器の使用,weaning成功率,ICU在室期間,ICU死亡率とした.

【結 果】
無作為化された382例の患者のうち,380例(平均年齢69歳,男性272例[71.6%],気管挿管379例[99.7%])が試験を完遂した.プラセボ群(193例)に比して,アセタゾラミド群(187例)は人工呼吸器装着期間中央値(-16.0時間; 95%CI -36.5 to 4.0時間; p=0.17),人工呼吸器からのweaning期間(-0.9時間; 95% CI -4.3 to 1.3時間; p=0.36),分時換気量の毎日の変化(-0.0L/min; 95%CI -0.2 to 0.2 L/min; p=0.72),動脈血二酸化炭素分圧(-0.3mmHg; 95%CI -0.8 to 0.2 mmHg; p =0.25)に有意差はみられなかったが,血清重炭酸濃度の変化(群間差 -0.8mEq/L; 95%CI -1.2 to -0.5mEq/L; p<0.001),代謝性アルカローシスの日数(群間差 -1; 95%CI -2 to -1日間; p<0.001)はアセタゾラミド群で有意に減少した.他の副次評価項目では両群間に有意差はみられなかった.

【結 論】
侵襲的人工呼吸管理を受けるCOPD患者において,アセタゾラミドの使用はプラセボに比して侵襲的人工呼吸器装着期間を統計学的有意には減少させない結果であった.しかしながら,差の大きさは臨床的に重要であり,本研究は統計学的有意性を検出する上で検出力不足であった可能性がある.

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by DrMagicianEARL | 2016-02-08 18:27 | 文献 | Comments(0)
■敗血症性ショックをはじめとする循環不全に対する輸液反応性の指標として受動的下肢挙上(PLR:Passive Leg Raising)を検討した研究のメタ解析がでましたので紹介します.PLRは当院でもカスタマイズEGDTプロトコルに組み込んでいます.今回のメタ解析では,心拍出量増加で見た反応性はかなりの高精度ですが,血圧増加でみるのはあまりあてにはならないようです(特異度が比較的高いので,PLRで血圧が上がれば反応性ありと見てもいいとは思いますが).少なくともEV1000やPiCCOなどといった特殊デバイスがない施設では非侵襲的かつ簡便に行えるものとして推奨されるのではないでしょうか.今回はレビューもつけました.
輸液反応性予測における受動的下肢挙上:システマティックレビューおよびメタ解析
Monnet X, Marik P, Teboul JL. Passive leg raising for predicting fluid responsiveness: a systematic review and meta-analysis. Intensive Care Med. 2016 Jan 29. [Epub ahead of print]
PMID:26825952

Abstract
【目 的】
成人の輸液反応性予測因子としての,受動的下肢挙上(PLR)による心拍出量(CO)と動脈血圧(PP)の変化を検討した研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を行った.

【方 法】
関連する原著論文およびレビュー論文をMEDLINE,EMBASE,Cochrane Databaseでスクリーニングした.COおよびPPを評価したROC曲線下面積,感度,特異度,PLRテストの閾値を統合してメタ解析を行った.

【結 果】
21研究(成人患者991例,輸液チャレンジ995例)を登録した.COは,6研究で心臓超音波検査で,6研究で較正脈波輪郭分析で,4研究でバイオリアクタンスで,3研究で経食道ドップラーで,1研究で経肺熱希釈法または肺動脈カテーテルで,1研究で胸骨ドップラーで計測された.PLRと輸液負荷間でのCOの変化の統合相関は0.76(0.73-0.80)であった.PLRによるCOの変化は,統合感度0.85(0.81-0.88),統合特異度0.91(0.88-0.93)であった.ROC曲線下面積は0.95±0.01であった.PLRによるCO変化の最良閾値は≧10±2%であった.PPのPLRによる変化においては(8研究,輸液チャレンジ432例),統合感度は0.56(0.49-0.53),統合特異度は0.83(0.77-0.88),統合ROC曲線下面積は0.77±0.05であった.感度分析およびサブグループ解析は一次解析と一致していた.

【結 論】
急性循環不全の成人において,PLRによるCOの変化は,容量負荷によるCOの反応性を非常に正確に予測する.PLRによるPPの変化の効果を評価すると,PLRテストの特異度は許容できるが,感度は乏しかった.
1.CVP計測の衰退

■Riversらが敗血症性ショックに対するEGDTの有効性をthe New England Journal of Medicineに報告[1]してから十数年,Surviving Sepsis Campaign GuidelinesでRivers’ EGDTが推奨され続けてきたが,その後3つの大規模RCTであるProCESS[2],ARISE[3],ProMISe[4]が相次いで報告され,Rivers' EGDTは集中治療医による標準ケアと同等という結果であった.この結果の解釈は様々であり,一概にRivers' EGDTを否定できるものではないが,EGDTを構成する各種モニタリングを再考する時期にきているとも言える.

■敗血症性ショック治療において急速輸液負荷が必要であることは疑う余地はない.しかしながら,どの程度の量を入れたらよいのかについては未解決の課題であり,現時点で至適投与量の目安は確立されていない.このため,実臨床においては輸液過剰も起こりうる.近年,敗血症性ショック治療に伴う過剰輸液が予後を悪化させる可能性が指摘されており[5,6],Kelmら[6]は,第1病日で,患者の67%に過剰輸液がみられ,48%が第3病日まで輸液過剰が遷延したと報告している.

■輸液反応性の指標については,Rivers' EGDTにも組み込まれている中心静脈圧(CVP)が半世紀にわたって使用されてきたが,近年はその有用性を否定する研究が相次いでいる.Marikら[7]は,CVPの輸液反応性を検討した研究43報のメタ解析を行っており,ROC曲線下面積は0.56[95%CI 0.54-0.58]という結果であり,以前にMarikが揶揄した通り,CVPを指標とするのはまさに「コイントスで決めるのと同じ」という結果であった.もっとも,各種の研究の詳細を紐解けば,CVPが使用できる状況はまだあると思われるが,少なくともCVP単独で判断することは危険かもしれない.

2.Frank-Starling曲線の理論とPassive Leg Raising test

■敗血症性ショック病態に伴う末梢循環不全による虚血が生じている場合,その部位への血液灌流と酸素運搬を要する.酸素運搬量(DO2)の規定因子は,ヘモグロビン濃度(Hb),血中酸素濃度(PaO2),そして心拍出量(CO)である.そしてこの心拍出量の構成要素は心拍数,前負荷,後負荷,交感神経,心収縮性である.一回心拍出量は心室拡張末期容積に依存しており,これは静脈環流によって決定される.この拡張末期容積に相当するものが前負荷であるが,Frank-Starling曲線の理論に基づくならば,前負荷の増加に応じて一回心拍出量が増加する.また前負荷がある一定レベルを超えるとむしろ一回拍出量は減少することも知られている.よって,一回心拍出量の増大が得られる前負荷の上限が輸液量の目安となってくる.

■前述のCVPは,確かに敗血症性ショック病態においては低下しやすい.しかし,CVPは交感神経系と心機能の影響を容易に受けうるものであることに注意が必要であり,交感神経興奮が続くと循環系の中心化が生じ,低下したCVPが上昇することがある.このため,CVPが目安になったとしてもそれはショックの初期の段階のみであるとする報告が複数ある.

■Frank-Starling曲線の理論に基づくならば,輸液反応性を見るための最良の方法は実際に輸液して前負荷をかけることであるが,当然ながらこれは過剰輸液リスクに曝される.体液総量を増加させずにあたかも急速輸液負荷をしたかのような効果を見ることができれば輸液反応性を安全に見ることができるといえる.

■そこで,輸液反応性の指標として多数報告されているのが受動的下肢挙上(PLR:Passive Leg Raising)を用いた試験である.一般的に下肢を挙上することでおよそ150-200mLの輸液負荷に相当することが古くから知られており[8],PLRはその応用である.PLRの方法は,45度ヘッドアップの状態からスタートし,その後頭部フラット+45度下肢挙上状態にすることで心拍出量や血圧が増加するかどうかを評価するものであり[9],この手法では300-500mLの輸液ボーラス投与に相当するとされる.これいより心拍出量増大をもって輸液反応性ありと判定することは実に理にかなっているものと思われる.上記のメタ解析において血圧においては感度が低かった理由は,血圧の規定因子が心拍出量と末梢血管抵抗の2つであることを考慮すると,ノルアドレナリン等で十分な末梢血管抵抗増大が得られていない患者をincludeすることにより輸液反応性判定の感度が下がることは容易に想像できる.
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■このPLRのメリットは非侵襲的(新たにカテーテル挿入が不要)であり再現性が高いことにある.また,人工呼吸器患者と自発呼吸患者では下大静脈等の圧モニタリングが異なる,カテーテルを用いたモニタリングでは心房細動等の不整脈患者では使用できないなどの問題点があるが,Cavallaroら[10]の9報メタ解析では,PLR testでは自発呼吸か人工呼吸器装着,洞調律か不整脈かで差がないことも大きなメリットといえる.

■Xiao-Tingら[11]は,ICUで人工呼吸器を装着している敗血症性ショック患者48例においてPLR testとETCO2(呼気終末炭酸ガス濃度)を用いて輸液反応性を前向きに検討している.この検討では,PLR testによって輸液反応性があると予測された患者では反応性がないと判定された患者よりもETCO2が有意に増加しており(3.0±3.0 vs 0.5±2.5mmHg; p<0.05),PLR testによるETCO2の5%以上の増加は輸液反応性を感度93.4%,特異度75.8%,AUROC 0.849(95%CI 0.739-0.930)で予測するとしている.

■現時点では敗血症性ショックに対してPLR testを用いたプロトコルを検討したRCTは報告されていないため,PLR testによるeffect sizeを知ることはできない.しかし,これまでの観察研究やそのメタ解析結果から,心拍出量増大を目安とした場合の輸液反応性を高精度に予測し,かつ非侵襲的で簡便に行えるものとしてPLR testは今後積極的に検証されるべき手法であると思われる.

[1] Early goal-directed therapy in the treatment of severe sepsis and septic shock. N Engl J Med 2001; 345: 1368-77
[2] ProCESS Investigators; Yealy DM, Kellum JA, Huang DT, et al. A randomized trial of protocol-based care for early septic shock. N Engl J Med 2014; 370: 1683-93
[3] ARISE Investigators; ANZICS Clinical Trials Group; Peake SL, Delaney A, Bailey M, et al. Goal-directed resuscitation for patients with early septic shock. N Engl J Med 2014; 371: 1496-506
[4] Mouncey PR, Osborn TM, Power GS, et al; ProMISe Trial Investigators. Trial of early, goal-directed resuscitation for septic shock. N Engl J Med 2015; 372: 1301-11
[5] Boyd JH, Forbes J, Nakada TA, et al. Fluid resuscitation in septic shock: a positive fluid balance and elevated central venous pressure are associated with increased mortality. Crit Care Med 2011; 39: 259-65
[6] Kelm DJ, Perrin JT, Cartin-Ceba R, et al. Fluid Overload in Patients with Severe Sepsis and Septic Shock Treated with Early-Goal Directed Therapy is Associated with Increased Acute Need for Fluid-Related Medical Interventions and Hospital Death. Shock 2015; 43: 68-73
[7] Marik PE, Cavallazzi R. Does the central venous pressure predict fluid responsiveness? An updated meta-analysis and a plea for some common sense. Crit Care Med 2013; 41: 1774-81
[8] Rutlen DL, Wackers FJ, Zaret BL. Radionuclide assessment of peripheral intravascular capacity: a technique to measure intravascular volume changes in the capacitance circulation in man. Circulation 1981; 64: 146-52
[9] Thiel SW1, Kollef MH, Isakow W. Non-invasive stroke volume measurement and passive leg raising predict volume responsiveness in medical ICU patients: an observational cohort study. Crit Care 2009; 13: R111
[10] Cavallaro F, Sandroni C, Marano C, et al. Diagnostic accuracy of passive leg raising for prediction of fluid responsiveness in adults: systematic review and meta-analysis of clinical studies. Intensive Care Med 2010; 36: 1475-83
[11] Xiao-Ting W, Hua Z, Da-Wei L, et al. Changes in end-tidal CO2 could predict fluid responsiveness in the passive leg raising test but not in the mini-fluid challenge test: A prospective and observational study. J Crit Care 2015 Jun 1 [Epub ahead of print]
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by DrMagicianEARL | 2016-02-04 18:51 | 敗血症 | Comments(0)

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