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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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■私は普段から口酸っぱく「高酸素血症は(挿管処置時をのぞく)一利なしどころか有害,SpO2が98%以上なら投与酸素量はすみやかに下げるべき」と言っています.医療従事者は低酸素血症には敏感ですが,高酸素血症は放置してしまうことが多々あり,その根底には,高酸素血症は有害でないという勘違い,SpO2 98%以上はPaO2 100-500mmHgに相当することが周知されていない,SpO2が高いときにモニターアラームが鳴るような設定がほとんどされていない,ということが挙げられると思います.

■高酸素血症のデメリットは何かと聞くと,多くの人は高炭酸ガス血症による呼吸性アシドーシス,さらにはCO2ナルコーシスを挙げると思いますが,それ以外のデメリットを挙げられますか?これまで分かっている知見では,肺胞内酸素が急激に吸収されることによる肺胞虚脱,肺サーファクタントの減少が生じることによる気道閉塞,吸収性無気肺,さらにはこれらの影響によるずり応力(shear stress)による肺傷害(atelectrauma)から炎症を惹起してARDS悪化の要因となりえます.また,気管支繊毛が不全状態となり気道クリアランスが低下することによる感染リスク増大,急性心筋梗塞における冠血流量低下や梗塞範囲増加などがあります.実際,観察研究では高酸素血症で死亡率が増加している報告が救急集中治療領域でいくつも報告されており,そのうちのいくつかは低酸素血症よりも死亡率が高くなっています.

■今回御紹介するRCT,Oxygen-ICU trialは高酸素血症を回避する酸素療法プロトコル(SpO2 94-98%に管理)と,高酸素血症を許容する従来の酸素療法(SpO2 98-100%,上限PaO2 150mmHg)を比較したところ,高酸素を回避した方が死亡リスクが43%有意に低下したという結果(NNT 11.6)となり,これまでの観察研究結果を指示する結果となりました.ちなみに私はICU患者に対しては本研究の高酸素回避プロトコルよりもさらに低いSpO2(目標値88-92%)で管理しています.

■なお,高酸素血症の有害性等は以下の記事にまとめておりますのでご参照ください.
SpO2の落とし穴 ~酸素投与患者の「SpO2 99%」を見て安心してませんか?~
http://drmagician.exblog.jp/22262792/
集中治療室の患者の死亡率における保守的vs従来型酸素療法の効果:Oxygen-ICU無作為化比較試験
Girardis M, Busani S, Damiani E, et al. Effect of Conservative vs Conventional Oxygen Therapy on Mortality Among Patients in an Intensive Care Unit: The Oxygen-ICU Randomized Clinical Trial. JAMA 2016, Oct.5 [Epub ahead-of-print]

Abstract
【背 景】
不必要な酸素療法による潜在的有害性が示唆されているにもかかわらず,重症疾患患者は相当な期間高酸素血症状態となっている.動脈血酸素化のコントロール戦略は合理的ではあるが,臨床においては評価されていない.

【目 的】
酸素投与の保守的プロトコルは集中治療室(ICU)に入室した患者の予後を改善しうるかを評価する.

【方 法】
Oxygen-ICU試験は2010年3月から2012年10月までに,イタリアのモデナ大学病院の内科外科ICUに72時間以上入室することが予測された全患者を登録して行われた単施設オープンラベル無作為化臨床試験である.原案でのサンプルサイズは660例であったが,480例を登録した後,登録が困難との判断で早期中止となった.

【介 入】
患者は,PaO2を70-100mmHgまたは動脈血酸素飽和度SpO2を94-98%に維持するように酸素療法を受ける群(保守群)と,標準的ICUに沿ってPaO2を150mmHgまでまたはSpO2を97-100%まで許容する群(従来群)に無作為に割り付けられた.主要評価項目はICU死亡率とした.副次評価項目は,ICU入室から48時間以上後の新規の臓器不全と感染症の発生率とした.

【結 果】
計434例(年齢中央値64歳,188[43.3%]が女性)が,保守的(218例)または従来的(216例)の酸素療法を受け,修正intent-to-treat解析に登録された.ICU在室中の毎日の時間加重平均PaO2は,保守群(PaO2中央値87mmHg [四分位範囲79-97])よりも従来群(PaO2中央値102mmHg [四分位範囲88-116])の方が有意に高かった(p<0.001).ICU在室中に,保守的酸素療法群で25例(11.6%),従来型酸素療法群は44例(20.2%)が死亡した(絶対リスク減少[ARR] 0.086 [95%CI 0.017-0.150]; 相対リスク[RR] 0.57 [95%CI 0.37-0.90]; p=0.01).新規のショックエピソード(ARR 0.068 [95%CI 0.020-0.120]; RR 0.35 [95%CI 0.16-0.75]; p=0.006),肝不全(ARR 0.046 [95%CI 0.008-0.088]; RR 0.29 [95%CI 0.10-0.82]; P =0.02),新規の血流感染(ARR 0.05 [95%CI 0.00-0.09]; RR 0.50 [95%CI 0.25-0.998; P =0.049)の発生率はは保守的酸素療法群の方が低かった.

【結 論】
72時間以上ICUに在室する重症疾患患者において,保守的酸素療法プロトコルは従来型治療と比較して低いICU死亡率であった.これらの予備的知見は計画されていなかった試験の早期中止に基づいており,本アプローチの潜在的利益の評価のためにはより大規模の多施設試験が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2016-10-17 00:00 | 文献 | Comments(1)
2012年10月15日作成
2014年10月15日改訂


世界手洗いの日(Global Handwashing Day)
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■10月15日は世界手洗いの日(Global Handwashing Day)である.これは,UNICEF・世界銀行などからなる「せっけんを使った手洗いのための官民パートナーシップ」が2008年から実施されているもので,感染症の予防のため、石鹸を使った正しい手洗いの方法を広めるための活動が世界各地で行われる.

1.医療従事者の手指衛生

(1) WHO,CDCの推奨

■世界保健機関(WHO)は,手洗い・手指衛生(hand hygiene)を「決して付加的な行為ではなく,それ自体が不可欠な医療行為である」としている.しかしながら手指衛生はどの病院においてもきっちり守られているとはいえない現状がある.WHOガイドライン作成者でもあるPittetらの報告では,手指衛生実施率はほぼ50%を下回っている[1].仕事が忙しい(=ケアの頻度が増す)につれて,通常ならば手洗いの必要回数が増えるにもかかわらず,実際には手洗い実施率が極端に低下することも報告されている[2].手指衛生は耐性菌保有患者に接触するときのみに行うものではなく,全患者のケアにおいてなされるべきものである.

■医療従事者の手指が媒体となり,病原体の感染伝播が発生する5段階についてPittetらは警鐘をならしている[3]
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第1段階:患者の皮膚や患者周囲環境に病原体が存在する
皮膚には100-100万個/cm^2の常在菌が存在し,腋窩部や鼠径部には特に多い.健常な皮膚からは1日に100万個の落屑があり,細菌と一緒に剥がれ落ちる.MRSAなどの耐性菌が皮膚に定着している患者においては患者の皮膚のみならず周囲の環境から大量に耐性菌が検出される.Kramerらが各病原体の乾燥環境下での感染性持続時間を報告しているので参考にされたい[4].この報告を見ても分かる通り,数ヶ月以上生存可能な菌は非常に多い.

第2段階:医療従事者の手によって微生物が運搬される
医療ケアを行えば医療従事者の手指は10-20%が病原体で汚染され,菌が100-1000CFU付着する.これが衣服,パソコンのキーボードやPHS,ドアの取っ手をはじめさまざまな部位に触ることで他の医療従事者にも伝播されていく.実際,聴診器,ネクタイ,あごひげ,ネクタイなども汚染されていることが多数報告されている[5-11].医療現場ではネクタイ着用はしないよう英国医師会が提案しており[12],あごひげがある男性も剃るべきである[10]

第3段階:微生物は手の皮膚上で最低数分間は生存している
手指に付着した病原体はアシネトバクター属で60分,緑膿菌で30分程度は生存している.

第4段階:医療従事者による手指衛生が未実施,または,不適切である

第5段階:汚染された手指が別の患者と直接接触,あるいは患者が直接触れる可能性のある環境に付着する.

■米国CDCの隔離予防策ガイドライン[13]においては,手指衛生は標準予防策の構成要素の第1番目に挙げられており,①血液・体液などに触れた後,②手袋を外した直後,③次の患者をケアする前,の3つのタイミングが示されている.WHOでは“Clean care is safer care〝をスローガンに手指衛生の実施率改善に努めており,手指衛生の必要な5つの具体的場面を設定している[14]
① 患者に接する前(Before Patient Contact)
② 無菌的処置を行う前(Before Aseptic Task)
③ 体液曝露の可能性があった後(After Body Fluid Exposure Risk)
④ 患者に接した後(After Patient Contact)
⑤ 患者周囲環境に接した後(After Contact With Patient Surroundings)

■手指衛生には通常石鹸または消毒薬成分含有石鹸(スクラブ剤など)と水による手洗いと,水をしようしないアルコールをベースにした製剤の使用が含まれる.特に前述のCDCガイドラインで挙げられた3つの場面での手指衛生の必要性を述べた報告は多い[15-20]

(2) 手袋は手洗いの代用とはならない

■手袋の着用は手洗いの代用ではなく,手袋の着用が手洗い不要の理由とはならない.手袋を外す際にどれだけ注意を払っても手指は汚染される.また,手袋には微小孔(ピンホール)が医療従事者が考えているよりはるかに多く存在し,着用後にもピンホールは生じうる.実際,未使用の手袋でも微小な穴が1-7%存在し,再生処理したものでは10-75%の微小孔を認めたと報告されている[21].日本グローブ工業会によると,たとえ手術時の滅菌グローブであっても少なくとも1.5%にピンホールが空いているとされている.実際に手袋を脱いだ手から患者と同一菌が1.7-4.2%の割合で検出されている[22]

※2014年10月,テキサス州でエボラ出血熱患者がでた際に,ケアにあたった看護師がエボラ出血熱に感染した.この看護師はPPE(シールド付きマスク,キャップ,ガウン,手袋)によるmaximal barrier precautionをしていたにもかかわらず感染しており,PPEを脱ぐ際に手指に付着した可能性が指摘されている.適切なPPE着脱のチェックが必要である.

(3) 手指衛生の方法,流水手洗い後の乾燥について

■手の除菌という観点からは多くの場合,消毒薬成分含有石鹸や速乾性手指消毒薬の使用が,普通石鹸による手洗いより優れている[23,24].よって,目に見える汚染がある場合には流水による手洗いが推奨されるが,簡便さや除菌効果を考慮すると,それ以外の場合にはアルコール系消毒薬を含有した速乾性手指消毒薬の使用が適している.また,石鹸と流水による手指衛生のエビデンスの多くが,手洗い時間が30秒~1分の検討であるのに対し,実際の臨床現場では平均15秒未満である.なお,時間が短いほど石鹸成分が残留し,手荒れの原因となる.

■また流水の場合,乾燥に時間もかかる.これに対し,特定の洗い場の必要がなく,即効性があり,自然乾燥に時間のかからないアルコール製剤は臨床現場の実情に合っており,手指衛生遵守率を上昇させる可能性が高い.手洗い後の手指の乾燥はしばしば軽視されており,ペーパータオル3枚程度を使わなければ十分な乾燥はできない.濡れた手は乾燥した手の100-1000倍の菌を運ぶ[25].また,不十分な乾燥ではその後の手袋装着時に手指に余計な刺激を与えたり手袋が損傷する原因となる.手荒れを最小限に抑えるため,温水は使用せず,品質のよい紙タオルで(ゴシゴシこするのではなく)軽く叩くようにして水気をきるようにする.

■ただし,ノロウイルスなどの一部のウイルスや芽胞(Clostridium difficileなど)などにはアルコール系消毒薬は効果が低いことを確認し,石鹸や流水による手洗いを適宜組み合わせることが望ましい.ノロウイルスにおいてはin vitroで,30分間のエタノール製剤曝露によっても除去できないことが報告されている[26]

Clostridium difficile関連下痢が治癒してから間もない患者の皮膚,特に腹部,胸部にはCDが保菌されていることが報告されている[27].下痢が治ってからClostridium difficileの保菌率が50%以下になるのに7日間を要している.これは今後の院内での感染対策において大きな影響がある可能性がある.下痢症状が治ってもなお皮膚にClostridium difficileが保菌されている場合,院内伝播のリスクが大きく,下痢が治ってからも接触感染対策の期間を考慮しなければならない.

■手指消毒薬に菌が耐性化することは通常濃度で使用される限りはありえないため,抗菌薬のように消毒薬をローテーションさせる必要はない.

■ICUでの手洗いの水の水質に関してはCDCガイドラインにもはっきりした記載はなく,水道水でも十分であるという意見もあり,水質の定期的な細菌培養検査を行って十分な監視体制がとられている施設では水道水でよいが,そうでない施設では滅菌水が望ましい.また,水道管内に滞留している水にレジオネラが増殖することがある.このため,水を使用するときは最初の水をある程度流してから使用すべきかもしれない.

(4) 手指衛生遵守率の実態とその改善のために何をすべきか?

■どの施設でも指摘されているが,手指衛生の遵守率が最も低いのは医師である.大学病院多施設調査では,手の汚染と遵守率が最もひどいのは教授であり,若い医師ほど手指衛生遵守率が高いとされている.しかしながらその若い医師ですら看護師と比較すると手指衛生遵守率ははるかに低いのが現状である.手指衛生を調査した本邦4施設共同3545例観察研究[28]では,適切な手指衛生順守率は19%(医師15%,看護師23%)と報告されている.

■この数値から,院内感染・耐性菌水平伝播の原因に手指衛生不足がかかわっている可能性がかなり高いことが伺える.中には患者に触れさえしなければ院内感染は起こらないと考えている医師すらいるが大きな間違いである.これらの意識啓発をベテラン医師に行ってもおそらくは遵守率改善は望めない.よって,「鉄は熱いうちに打て」の通り,研修医から手指衛生を体で覚えさせる必要がある.また,サーベランスで,同一主治医から同一耐性菌を検出している場合は,ICTからその医師に対して手指衛生指導を行う必要もあるだろう.

■医療従事者以外,すなわち患者や患者家族などの手指衛生はついつい忘れられがちである.病院訪問者の手洗いの順守率は25%と非常に低いが,積極的な手洗い励行の介入によって遵守率は68%まで著明に改善し,長時間訪問者では77%まで改善したと報告されている[29].感染対策上必要であることを説明し,病室の出入りの際の手指衛生実施に協力いただけるようにすべきである.

■手指衛生を改善するための方策をWHOが提案している.
① システム変更(インフラ整備)
・アルコール式手指消毒剤をケア現場のすべてに配置
・手洗い場には液体石鹸,ペーパータオル,ごみ箱の設置
② 訓練と教育
・WHOが推奨する手指衛生の必要な5つの場面に基づく定期的な教育と正しい手指衛生手技の訓練
③ 評価と還元
・職員間で知識を共有および手指衛生実施状況調査の実施とその還元
④ 現場に手洗いのポスター掲示
・手指衛生の重要性を忘れないための手技やタイミングに関するポスターの掲示
⑤ 施設での医療安全の文化づくり
・手指衛生の改善を最重要事項とし,患者の安全を意識させる環境づくり
※個々の医療スタッフが速乾性消毒剤を持ち歩くのも有効である.

■知識・認識・行動制御・促進といった因子だけでは手指衛生の改善には十分でなく,行動の変化の決定要素に焦点をあてることでより手指衛生の改善がより有効なものとなる[30]

■各病院の手指衛生の状況を数値化する最も簡便な手段は手指消毒薬使用量データであり,各病院の感染対策室はこの数値を算出すべきと思われる.これに関しては,アルコール消毒薬の使用量で評価すると参考になる.具体的には,1回あたりの使用量が3cc(ヒビスコール®では1プッシュ1.5ccで1回あたり2プッシュ必要)として,全使用量を患者数×期間で割った「1人の患者につき1日に使用される量」を算出する.一般的には15cc/患者人/日が最低の標準ラインとされている.ただし,病室に入るときと出るときの最低2回を考えても,15cc/患者人/日だと消毒回数5回,すなわち2.5回しか病室に出入りがない計算になるため,実はこれでも少ない.

■手指衛生用速乾性アルコール消毒薬の使用量を増加させる一手段として,各スタッフが携帯式の消毒薬を持つことであり,これにより多くの施設で消毒薬使用量が増加した.

■SHEA/IDSAによる手指衛生のガイドライン[31]が発表されているので参考にされたい.

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[6] Marinella MA, Pierson C, Chenoweth C. The stethoscope. A potential source of nosocomial infection? Arch Intern Med 1997; 157: 786-90
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by DrMagicianEARL | 2016-10-15 07:00 | 感染対策 | Comments(0)
■ICUにおけるストレス潰瘍予防でPPIがよく使用されていますが,その適用範囲はあまり周知されていません.ガイドラインとしては17年前のものになりますが,American Society of Health-System Pharmacists(ASHP)からストレス潰瘍予防のガイドライン(Am J Health Syst Pharm 1999; 56: 347-79)が発表されており,ICU患者でのストレス潰瘍予防介入の適応基準(成人)が定められています.その後,各種RCTのメタ解析が行われ,PPIがH2RAよりもストレス潰瘍を予防するためPPIが推奨されるようになりましたが,このメタ解析においては,includeされたRCTはどれも有意差が出せていません.加えて,これらのRCTのほとんどは2000年以前のものであり,出血リスクが5%程度であるのに対し,2000年以降のストレス潰瘍による出血リスクは複数の観察研究で1%以下と報告されています.すなわち,集中治療の進歩とともにストレス潰瘍自体がかなり減少しており,現在では胃酸抑制薬の益は乏しくなり,むしろ肺炎やCDIといった感染症のリスクが問題となっています.それもあってか,敗血症でもSSCG 2008では積極推奨だったストレス潰瘍予防薬投与はSSCG 2012ではトーンダウンし,適用は出血リスクがない患者には投与すべきでないという推奨に変わりました.

■集中治療の進歩に伴ってストレス潰瘍出血率が低下してきた背景には早期経腸栄養の普及が関連していると言われています.実際,経腸栄養時にストレス潰瘍予防が必要かについては,経腸栄養を行った方がむしろ消化管出血を抑えるという報告が以前からあります.近年のMarikらのメタ解析(Crit Care Med 2010; 38: 2222-8)では,H2RAの消化管出血予防効果は全体では認められるが,経腸栄養を施行した患者に限定したサブ解析ではH2RA投与有無で消化管出血リスクに影響はなく,経腸栄養そのものが上部消化管出血を予防する可能性を示唆する結果となっています.

■これは,経腸栄養によってプロスタグランジン分泌と消化管血流が改善する,胃内pHが経腸栄養によって希釈され上昇する,ストレス起因性の迷走神経刺激伝達系を経腸栄養が抑制することなどが理由と考えられています.さらに,H2RAは全体では肺炎,死亡率を増加させなかったが,経腸栄養患者ではH2RAを投与した方が肺炎や死亡率が増加しています.以上から,経腸栄養はストレス潰瘍に対する予防効果があり,経腸栄養施行患者へのストレス潰瘍予防薬投与は合併症リスクが増加する可能性があることを考慮すると必要性は低いかもしれない,ということが言われるようになりました.

■今回紹介する論文はまさに早期経腸栄養患者でのPPIの必要性可否を問うものです.結果は,PPI群・プラセボ群いずれも臨床的に意義のある出血はゼロ,その他あらゆるアウトカムに有意差なしという結果.サンプル数が少ないですが,前述の流れも考慮すれば予想された結果ではあり,少なくともPPIをルーチンで使用する必要はないのかなという印象です.使用するにしてもASHPガイドラインの適用範囲を超えて使用する必要性はないと思われます.
ストレス潰瘍予防におけるパントプラゾールとプラセボ(POP-UP):無作為化二重盲検探索比較試験
Pantoprazole or Placebo for Stress Ulcer Prophylaxis (POP-UP): Randomized Double-Blind Exploratory Study. Crit Care Med 2016; 44: 1842–50

Abstract
【目 的】
パントプラゾールは消化管出血の予防として重症患者に頻回に投与されている.しかし,プラセボとの比較は不適切に評価されており,パントプラゾールは潜在的な有害を有する.我々の目的は,パントプラゾール投与の益と害を評価することである.

【方 法】
本研究は前向き二重盲検無作為化並行群間比較試験である.研究は大学病院の内科外科混合ICUで行った.患者は経腸栄養が適用となった人工呼吸器を装着した重症疾患患者である.我々は患者を毎日プラセボ静注群とパントプラゾール静注群に無作為に割り付けた.主要評価項目は臨床的に意義のある消化管出血,感染による人工呼吸器関連合併症もしくは肺炎,Clostridium difficile感染症とした.副次評価項目は明らかな出血,ヘモグロビン濃度,死亡率とした.

【結 果】
無作為化された214例の患者のうち,臨床的に意義のある消化管出血エピソードを有した患者はいなかった.3例(プラセボ群1例 vs パントプラゾール群2例)の患者は感染による人工呼吸器関連合併症または肺炎の基準を満たし,1例(0例 vs 1例)がClostridium difficile感染症と診断された.パントプラゾールの投与は明らかな出血率(6例 vs 3例; p=0.50),赤血球輸血施行で調整した毎日のヘモグロビン濃度(p=0.66)においていかなる差も認められなかった.死亡率は両群間で同等であった(log-rank検定 p=0.33: 調整後のパントプラゾールのハザードリスク 1.68 [95% CI0.97–2.90]; p=0.06).

【結 論】
経腸栄養を受ける人工呼吸器を装着した重症疾患患者に対するパントプラゾールの予防的投与において益と害の根拠は得られなかった.ストレス潰瘍予防のための重症疾患患者への酸抑制薬ルーチン投与のプラクティスについてはさらなる評価が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2016-10-14 20:53 | 文献 | Comments(0)
■久々の更新になります.今回は基礎研究ですがなかなか興味深かったのでとりあげました.

■肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)の代表的な毒素にpneumolysin(ニューモリシン)があります.肺炎球菌が気道に感染するとそこで増殖し,autolysin(オートリシン)により一定の割合の菌体が自己融解を起こし,ニューモリシンを放出します.ニューモリシンは感染した気道上皮細胞の細胞膜上にmembrane pore formationを形成して細胞膜を穿孔させ,細胞を死滅させます(J Mol Biol 1998; 284: 449–61).また,ニューモリシンはこれとは異なる機序でマクロファージのリソソーム膜を透過させてマクロファージのアポトーシスを誘導させることも知られています(MBio 2014; 5: e01710-14).さらに,RSウイルスのGグリコプロテインは肺炎球菌のペニシリン結合蛋白(PBP)1aに結合することでニューモリシンなどの毒素産生遺伝子の発現をアップレギュレーションし,RSウイルスと肺炎球菌の混合感染が重症度と死亡率を悪化させることも報告されています(Am J Respir Crit Care Med 2014;190:196-207)

■このように厄介な毒素ニューモリシンですが,マクロライド系抗菌薬は,抗菌作用以外にニューモリシン抑制効果を有することも知られています(Eur Respir J 2006; 27: 1020-5).今回,このニューモリシンによる毒素を投与されたマウスにNSAIDsを投与すると死亡率が悪化し,抗ロイコトリエン拮抗薬(モンテルカスト)を投与すると死亡率が改善されたという報告が出ましたので御紹介します(前者はアブストラクトになく本文参照).抗ロイコトリエン拮抗薬がこのような作用を有していたとは驚きでした.ぜひ臨床研究に繋げていただきたい知見です.また,敗血症や肺炎球菌肺炎ではNSAIDsはよくないであろうとは言われていましたが,今回肺炎球菌肺炎でのNSAIDsによる増悪機序(ニューモリシンに対する保護作用を有する12-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸をNSAIDsが抑制)がこのように分かったのは非常に興味深いなと思いました.
ロイコトリエンB4第2受容体はニューモリシンによる急性肺傷害から個体を防御する
Shigematsu M, Koga T, Ishimori A, et al. Leukotriene B4 receptor type 2 protects against pneumolysin-dependent acute lung injury. Sci Rep 2016 Oct 5;6:34560
PMID:27703200

Abstract
【背 景】肺炎球菌感染は世界的に深刻な問題であり,死亡率も高いにもかかわらず,肺炎球菌による致死的な分子機序は発見されていないままである.我々はロイコトリエンB4および12(S)-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸(12-HHT)のG蛋白共役受容体であるBLT2が肺炎球菌毒素ニューモリシン(PLY)による肺傷害からマウスを保護することを示した.

【結 果】BLT2欠損マウスにおいて,PLYの気道内投与は血管外漏出と気管支収縮を伴う致死的な急性肺傷害(ALI)を引き起こした.アナフィラキシーの低速反応物質として古典的に知られている大量のシステイニルロイコトリエン(cysLTs)がPLY投与肺から検出された.PLYに依存した血管外漏出,気管支収縮,死亡はCysLT1受容体拮抗薬の投与により著明に改善した.PLY刺激下では,血管内皮細胞および気管支平滑筋細胞に発現する,CysLT1により活性化された致死的血管外漏出と気管支収縮を誘導するcysLTsをマスト細胞が産生していた.12-HHTの産生を阻害し,PLYへの感受性を増加させるアスピリンまたはロキソプロフェンを投与されたマウスもまたCysLT1拮抗薬によって改善した.

【結 論】本研究ではPLY依存性ALIの分子機序を発見し,肺炎球菌感染によるALIに対する保護的治療手段としてCysLT1拮抗薬が使用できる可能性が示唆された.

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by DrMagicianEARL | 2016-10-12 00:00 | 肺炎 | Comments(0)

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