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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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■近年,日本で大麻使用者の逮捕が急増しており,中には高校生まで書類送検されたケースも見受けられます.SNSを見ると,日本でも「医療用大麻を合法化すべきだ」と叫んでいるアカウント(典型例は逮捕前の高樹沙耶氏)をよく見かけますが,科学的根拠をすっ飛ばしてしまっているどころかデマまで流している始末です.大麻による有害性を過少評価・歪曲して「害が少ないからやっても大丈夫」という主張する方もおられるのですが,このような問題性否認(病的な心理的防衛機制)を多用するのは依存症患者の特徴でもあるので,なんだか危険だなと感じています.

■米国では約30もの州で大麻が合法化されていますが,これはあくまでも州法です.まず,米国連邦政府や米国FDAは大麻使用を認めておらず,米国全体での連邦法よりも州法(一般市民による投票)が優先されるため広まっているに過ぎません.要するに科学的に安全性や有効性等の十分な検討をしなければならないはずのところをすっとばして州法が先走っているわけで,州法があるからといってそれが安全かつ有効という根拠にはまったくなりません.むしろ,大麻の効果は限定的で,若年者においては一定の健康への有害事象が認められると報告されています(JAMA 2015; 313: 2456-73,JAMA 2016; 316: 1765-6).また,WHOが大麻を容認しているというデマも流れていますが,WHOは大麻を容認しておらず(http://www.who.int/substance_abuse/facts/cannabis/en/),主に有害事象の懸念を述べており,使用については治療に使用できないか研究段階であるとしか述べていません.

■今回,JAMA Psychiatry誌に,大麻を合法化した州で違法な大麻使用と大麻による有害事象が増加しているとの報告が出ましたので紹介します.やはり日本では研究は進めるにしても臨床導入するの時期尚早すぎるなと思います(日本では大麻そのものの研究はできませんが,特区を作るなどして研究を行える体制をつくるべく日本臨床カンナビノイド学会が発足しています).なお,文中に登場する「医療用大麻」という言葉はおかしいのですが,論文中に使用されているためそのまま記載しています.実際のところは,医師が処方箋を出し,その処方箋をもって大麻販売所で購入するというもので,「医療用」と明確に区切られているわけではないのが現状です.
米国成人の違法大麻使用,大麻使用による障害,医療マリファナ法:1991-1992年から2012-2013年
Hasin DS, Sarvet AL, Cerdá M, et al. US Adult Illicit Cannabis Use, Cannabis Use Disorder, and Medical Marijuana Laws: 1991-1992 to 2012-2013. JAMA Psychiatry. 2017 Apr 26 [Epub ahead of print]
PMID: 28445557

Abstract
【背 景】
過去25年間に,違法な大麻使用と大麻使用による障害が米国の成人に増加しており,また28の州が医療マリファナ法(MML)を制定した.MMLおよび成人の違法な大麻使用または大麻使用により経時的に考えうる障害についてはほとんど知られていない.

【目 的】
州のMMLおよび大麻の使用および障害の有病率における変化の程度に関する米国データを提示する.

【方 法】
MMLを定めた州と他の州の居住者の変化の程度の差異を3つの横断的な米国成人サーベランス(the National Longitudinal Alcohol Epidemiologic Survey (NLAES; 1991-1992), the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions (NESARC; 2001-2002), and the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions-III (NESARC-Ⅲ; 2012-2013))を用いて検討する.早期MML州はNLAESとNESARCの間にMMLが制定された州とした(前期).後期MML州はNESARCとNESARC-Ⅲの間にMMLが制定された州とした(後期).過去の違法な大麻使用とDSM-Ⅳでの大麻使用による障害を計測した.

【結 果】
1991-1992年から2012-2013年にかけて,MMLが定められた州において違法な大麻使用は他の州よりも有意に増加し(1.4%増加; 標準誤差 0.5; p=0.004),同様に大麻使用による障害も増加した(0.7%増加; 標準誤差 0.3; p=0.03).前期では,違法な大麻使用と大麻使用による障害はMMLがない州とカリフォルニア州(最初から有病率が非常に高かった)において同等に減少していた.一方で,早期からMMLを制定した州においては,大麻の使用や障害の頻度は増加していた.早期にMMLを制定した州とMMLを制定していない州とで大麻使用(2.5%; 標準誤差 0.9; p=0.004)と障害(1.1%; 標準誤差 0.5; p=0.02)に有意な差が見られた.後期では,違法な大麻使用は,MMLを制定していない州で3.5%(標準誤差 0.5),カリフォルニア州で5.3%(標準誤差 1.0),コロラド州で7.0%(標準誤差 1.6),他の早期MML制定州で2.6%(標準誤差 0.9),後期MML制定州で5.1%(標準誤差 0.8)増加した.MMLを制定していない州と比較して,後期MML制定州(1.6%増加; 標準誤差 0.6; p=0.01),カリフォルニア州(1.8%増加; 標準誤差 0.9; p=0.04),コロラド州(3.5%; 標準誤差 1.5; p=0.03)では違法な大麻使用の増加が有意に大きかった.大麻使用による障害の増加はカリフォルニア州(1.0%増加; 標準誤差 0.5; p=0.06)とコロラド州(1.6%増加; 標準誤差 0.8; p=0.04)においては,有病率が少なかった大麻使用による障害の増加は小さいものの,同様のパターンを記述的に追っており,その変化はMMLを制定していない州よりも大きかった.

【結 論】
医療用マリファナ法は,違法な大麻使用および大麻使用による障害の頻度の増加に寄与していた.州独自の政策変更もまた重要な要因となっている可能性がある.医療マリファナは幾許かの有益性があるかもしれないが,マリファナの州法変更に関連した大麻による健康への影響について医療従事者や一般市民の両方が考慮すべきである.

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by DrMagicianEARL | 2017-05-29 10:34 | 文献 | Comments(0)
■敗血症は迅速な認知とそこから迅速な治療へのスムーズな移行が課題となっています.今回御紹介するNEJMの論文はSSCG2012で定められた敗血症治療の3時間ケアバンドル,抗菌薬投与,輸液負荷が開始されるまでの時間と死亡率の関連性について大規模データを用いて検証されたものです.輸液負荷開始までの時間については統計学的に有意な関連性はみられなかったものの,3時間ケアバンドル,抗菌薬投与はいずれも1時間遅れるごとに4%有意に死亡率が上昇するという結果であり,迅速な治療開始の重要性を示唆する論文です.
敗血症の指定された緊急治療における治療までの時間と死亡
Seymour CW, Gesten F, Prescott HC, et al. Time to Treatment and Mortality during Mandated Emergency Care for Sepsis. N Engl J Med 2017, May 21[Epub ahead of print]

Abstract
【背 景】
2013年にニューヨークでは,敗血症の早期発見と治療のためのプロトコルを病院に求めるようになった.しかし,より迅速な敗血症の治療が患者の転帰を改善するか否かについては議論されている.

【方 法】
2014年4月1日から2016年6月30日までのニューヨーク州健康局に報告された敗血症および敗血症性ショックの患者データを研究した.患者は,救急部門に到着後6時間以内に敗血症プロトコルが導入され,敗血症患者の3時間ケアバンドル(血液培養,広域抗菌薬,乳酸値計測)の全項目を12時間以内に完遂された.マルチレベルモデルを使用して,3時間バンドルの完了までの時間とリスク調整死亡との間の関連性を評価した.また,抗菌薬の投与および最初の静脈内輸液のボーラスの完了までの時間も調査した.

【結 果】
149病院の49331例の患者のうち,40696例(82.5%)が3時間以内に3時間バンドルを完遂されていた.3時間バンドルの完遂までの時間の中央値は1.30時間(四分位範囲 0.65 to 2.35),抗菌薬投与までの時間の中央値は0.95時間(四分位範囲0.35 to 1.95),最初の輸液ボーラス投与完遂までの時間の中央値は2.56時間(四分位範囲1.33 to 4.20)であった.12時間以内に3時間バンドルを完遂した患者において,バンドル完遂までの時間がより長いこと(OR 1.04/hour; 95%CI 1.02 to 1.05; p<0.001),抗菌薬投与開始までの時間がより長いこと(OR 1.04/hour; 95%CI 1.03 to 1.06; p<0.001)は高いリスク調整後院内死亡と関連していたが,最初の輸液ボーラス投与完遂までの時間がより長いことは関連していなかった(OR 1.01/hour; 95%CI 0.99 to 1.02; p=0.21).

【結 論】
より迅速な敗血症治療の3時間バンドルの完遂と迅速な抗菌薬投与は低いリスク調整後院内死亡と関連していたが,最初の輸液ボーラス投与の迅速な完遂は関連していなかった.

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by DrMagicianEARL | 2017-05-22 14:45 | 敗血症 | Comments(0)
■一般市民の間でHIV検査がなかなか進まない理由のひとつに「HIVに感染すると助からないから検査するのが恐い」というのがあります.検査を受けたくないという若い人に聞くと帰ってくる答えはだいたいこれです.世代によってはドラマ「神様もう少しだけ」を鮮明に覚えておられる方もいて,今はHIVに感染しても死なない時代に変わったということを教えると非常に驚かれます.それくらい,HIV/AIDSの治療が進歩したことはまだあまり知られておらず,悲しいことに医療従事者の間でも認識されていない,HIV/AIDSの疾患の知識が不十分と感じることがよくあります.

■HIV治療薬の進歩は目覚ましく,毎年新薬が出続け,ガイドラインも毎年のように更新されます.片手いっぱいの錠剤を飲まなければいけなかった時代はもう過去の話,今は内服薬は非常に少なくてすみ,副作用も少なくなっていて,一般人と変わらない生活を送ることができます.日本では1日あたり4人ずつHIV/AIDS患者が増加しており,いつどこで自分が感染するか分かりません.推計では依然8人に1人のHIV感染者が自身の感染の事実を知らずに生活しているとされています.HIV検査は保健所で無料で受けることができますので,一度でも性交渉があるなら検査をぜひ受けてください.たとえ感染が分かっても今は様々なサポート体制が整っています.

■今回,HIV感染者で治療を受けた患者の大規模コホートデータの解析結果がLancet HIV誌に報告されました.結果は,HIV患者の平均余命は今や一般人と変わらない,という結果でした.また,まだウイルス量が少ない状態で治療を開始した20歳のHIV感染者の平均余命は78歳と報告されており,できるだけ早いうちに検査を受けて治療を開始した方がいいのです.

■同時に,HIV感染患者は治療の進歩により高齢化が進んでいます.現時点でそのHIV患者の高齢化を受け入れる社会体制はまだ整っているとは言えず,これは医療機関でも同様で,今後の課題になっていくでしょう.
1996年から2013年に抗レトロウイルス治療を開始したHIV陽性患者の生存:コホート研究の共同解析
The Antiretroviral Therapy Cohort Collaboration. Survival of HIV-positive patients starting antiretroviral therapy between 1996 and 2013: a collaborative analysis of cohort studies. Lancet HIV 2017, May.10 [Epub ahead of print]

【背 景】
過去20年間でHIV感染患者の医療福祉は大幅に改善している.これらの改善が予後および平均余命にどのように影響したのかについての推定は,患者,臨床医およびヘルスケアプランナーにとって最も重要である.我々は1996年から2013年に抗レトロウイルス治療(ART)を開始した患者の3年生存と平均余命の変化について検討した.

【方 法】
我々は欧州および北米の18のHIV-1コホートからデータ解析を行った.患者(16歳以上)は1996年から2010年に3種類以上の薬剤によるARTを開始され,少なくとも3年間観察されている場合に解析に組み込んだ.ART開始後の最初の年およびART開始後の2年目および3年目の4期間(1996-99年,2000-03年,2004-07年,2008-年)における,ART開始時の年齢,性別,AIDS,リスク群,CD4細胞数,HIV-1 RNAで調整された全死亡と原因別死亡ハザード率(HRs)を推定した.ART導入の期間から平均余命を推定した.

【結 果】
88504例の患者が我々の解析に登録され,そのうち2106例がART導入の最初の1年で死亡し,ART導入の2年目または3年目で2302例が死亡した.2008-10年にARTを開始した患者は,2000-03年にARTを開始した患者よりも,ART導入後の最初の1年間の全死亡率が低かった(調整HR 0.71, 95%CI 0.61-0.83).ART導入後2年目および3年目の全死亡率もまた,2008-10年にARTを開始した患者の方が,2000-03年に開始した患者よりも低く(調整HR 0.57, 95%CI 0.49-0.67),この減少は1年時点でのウイルス量やCD4細胞数では十分に説明しえなかった.2000-03年のART導入と比較して2008-10年の方が,1年目(調整HR 0.48, 95%CI 0.34-0.67),2年目と3年目(調整HR 0.29, 95%CI 0.21-0.40)のAIDSでない死亡率は低かった.1996年から2010年までの間,ARTを開始した20歳の患者の平均余命は女性で9年,男性で10年延びていた.

【結 論】
後期ART時代であっても,ARTの最初の3年間の生存率は改善し続けており,おそらくは毒性の低い抗レトロウイルス薬への移行,服薬遵守の改善,予防措置,および併存疾患の管理を反映している.これらの改善を考慮に入れて,予後モデルおよび平均余命予測を更新する必要がある.

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by DrMagicianEARL | 2017-05-12 18:04 | 感染症 | Comments(0)
■上気道炎での咽頭痛を訴える患者は非常に多く,このような患者に対しては私はアズノールうがい液を処方することが一番多いです.他にはトローチや小柴胡湯加桔梗石膏を処方することもあります.この咽頭痛があるせいで抗菌薬の不適切使用につながっているという見方もあるようです.

■研修医の頃,咽頭痛にNSAIDsやトランサミンを処方している上級医も見たことがありますが,エビデンス的には・・・.一方,耳鼻科の先生から咽頭痛に対してステロイド(デキサメサゾン)が経験的によく効くということを教えられたことがあります.でもエビデンスや副作用のことを考えると処方する気にはなれず処方したことはありません.今回紹介する論文は成人の急性咽頭痛にデキサメサゾンが有効かを検討したRCTです.結果は,主要評価項目の24時間時点では咽頭痛を改善させる傾向はあるけど有意差なし,副次評価項目の48時間後なら有意に改善というなんとも評価しにくい結果です.どうやら効くかもしれないなという印象はありますが,投与を推奨するほどのインパクトがあるかというと疑問です.少なくともこの研究を見てデキサメサゾンを処方しようとは私はならないですね.
成人の急性咽頭痛における初期抗菌薬なしでのプラセボと比較したデキサメサゾン経口の効果
Hayward GN, Hay AD, Moore MV, et al. Effect of Oral Dexamethasone Without Immediate Antibiotics vs Placebo on Acute Sore Throat in Adults: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2017 Apr 18;317(15):1535-1543
PMID: 28418482

Abstract
【背 景】
急性咽頭痛はプライマリケアにおいては明らかな負担であり,不適切な抗菌薬処方の原因となる.コルチコステロイドは代替対症療法となりうる.

【目 的】
抗菌薬が処方されていない急性咽頭痛における経口コルチコステロイドの臨床的有効性を評価する.

【方 法】
南および西イングランドの42の診療所において,直ちに抗菌薬治療を必要としない急性咽頭痛を診療所で訴えたその日に登録された成人576例の二重盲検プラセボ対照無作為化試験(2013年4月から2015年2月まで;28日間追跡完了は2015年4月)を行った.投与は,デキサメサゾン10mg経口単回(293例)または同一のプラセボ(283例)とした.主要評価項目は,24時間後での症状が完全消失した患者の割合とした.副次評価項目は48時間後に症状が完全消失した患者の割合,中等度の症状持続期間(Linkertスケールに基づく),視覚的疼痛尺度(0-100mm; 0が無症状で100が最も悪い),仕事や学校を休んだ日数,後で処方された抗菌薬使用量または他の薬剤,有害事象とした.

【結 果】
565例の患者(年齢中央値34歳[四分位範囲 26.0-45.5歳]; 女性75.2%; 介入率100%)はデキサメサゾンを投与された288例とプラセボ277例に無作為に割り付けられた.24時間後,デキサメサゾン群で65例(22.6%),プラセボ群で49例(17.7%)が症状完全消失となり,リスク差は4.7%(95%CI -1.8% to 11.2%),相対リスクは1.28(95%CI 0.92 to 1.78; p=0.14).24時間後で,デキサメサゾン投与を受けた患者はプラセボを投与された患者と比較して症状完全消失が多くはならなかった.48時間後では,デキサメサゾン群で102例(35.4%),プラセボ群で75例(27.1%)が症状完全消失し,リスク差は8.7%(95%CI 1.2% to 16.2%),相対リスクは1.31(95%CI1.02 to 1.68; p=0.03)であった.この差は後での抗菌薬投与を受けていない患者においても見られており,リスク差は10.3%(95%CI 0.6% to 20.1%),相対リスクは1.37(95%CI 1.01 to 1.87; p=0.046).他の副次評価項目では有意差はみられなかった.

【結 論】
急性咽頭痛をプライマリケアで呈する成人において,デキサメサゾン経口単回投与はプラセボに比して24時間後の症状消失率を増加させなかった.しかしながら,48時間後では有意な増加がみられた.

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by DrMagicianEARL | 2017-05-08 19:56 | 感染症 | Comments(0)

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