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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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■入院患者の院内感染を疑った時,その鑑別疾患に末梢静脈カテーテル関連血流感染症は入っているでしょうか?中心静脈カテーテルであれば意識する方は多いですが,末梢静脈カテーテルでも血流感染は起きます.Makiら(Mayo Clin Proc 2006; 81: 1159-71)のシステマティックレビューによれば,末梢静脈カテーテルでも中心静脈カテーテルの約1/5の頻度で感染が起こるとされています.

■よく経験されるのは,アミノ酸輸液製剤(特にビーフリード®)に薬剤を混注する際にBacillus cereus(アルコール製剤耐性)が混入し増殖して感染を起こすケースです.また,皮膚定着菌による感染も生じることがあり,黄色ブドウ球菌だと厄介です.

■今回御紹介する論文は,末梢静脈カテーテル関連血流感染症62例をまとめた報告になります.
末梢静脈カテーテル関連血流感染症は重篤な合併症と潜在的死亡に関連する:後ろ向き観察研究
Sato A, Nakamura I, Fujita H, et al. Peripheral venous catheter-related bloodstream infection is associated with severe complications and potential death: a retrospective observational study. BMC Infect Dis 2017; 17: 434
PMID: 28623882

Abstract
【背 景】
本研究の目的は末梢静脈カテーテル関連血流感染症(PVC-BSIs)の臨床的特徴と予後を抽出し,重篤な合併症や死亡のリスクについて検討することである.

【方 法】
東京の2つの大学附属病院において,2010年6月から2015年4月までの後ろ向き観察研究を行った.我々は,血液培養陽性でPVC-BSIsと診断された62例の入院患者について,臨床症状,基礎疾患,検査結果,治療方法,再発率,合併症について検討した.

【結 果】
入院から菌血症発生までの中央期間は17日間(範囲3-142日間)であり,カテーテル挿入から菌血症診断までは6日間(範囲2-15日間)であった.カテーテル挿入部位は腕が48例(77.4%),足が3例(4.8%),記録なしが11例(17.7%)であった.加えて,原因店異物は,グラム陽性菌が58.0%,グラム陰性菌が35.8%,カンジダが6.2%,複数菌種が25.8%であった.8例(12.9%)の患者が血液培養陽性から30日以内に死亡した.PVC-BSIsの死亡患者は,黄色ブドウ球菌感染の率が生存患者よりも高かった(OR 8.33; p=0.004)

【結 論】
PVC-BSIsは医療関連感染の明らかな原因となりうる.合併症で集中治療や抗菌薬の長期間治療を要する重篤なPVC-BSIsのケースが見られ,いくらかの患者が死亡している.PVC-BSIs患者において,黄色ブドウ球菌菌血症は予後に影響しうる可能性がある主要な問題である.

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by DrMagicianEARL | 2017-06-20 11:19 | 感染対策 | Comments(0)

■敗血症性ショックにおけるPMX-DHP(ポリミキシンB直接血液灌流;エンドトキシン吸着)はABDO-MIXにおいて死亡率悪化傾向がみられ,現在米国のEUPHRATESのpublish待ちの状態です(既に2016年10月の欧州集中治療医学会では発表済みで,死亡率はITT解析では43.8% vs 44.3%,PP解析では31.9% vs 36.9%でいずれも有意差なし).日本版敗血症診療ガイドラインでは敗血症性ショック患者を対象とした3つのRCTのメタ解析により使用しないことを弱く推奨するとしており,一方のSSCG 2016ではEUPHRATESの結果待ちというスタンスをとっています.

■今回御紹介する論文は,JSEPTIC-DIC studyのpost hoc解析でPMX-DHPの死亡率改善効果を見たものです.後ろ向きコホートで傾向スコア解析(propensity score analysis)を行っています(層別解析やIPTW法は使用していません).結果は,PMX-DHPが院内死亡率とICU在室期間を有意に改善するという結果でした.

■詳細データを見ると,まず全体が1723例に対し,傾向スコアマッチングで524例まで削ぎ落とされています.約1/3になってるあたりは他の集中治療領域の同様の解析でもだいたい同じです.PMX-DHP非施行群が1201例でPMX-DHP施行群が522例のため,マッチングにより患者背景はPMX-DHP施行群側に寄りやすくなります.マッチング前の患者背景では,非施行群より施行群の方が
・救急センターICUの率が高い
・救急部門からのICU入室が少ない
・ICUベッド数が少ない施設の入院が少ない
・肝不全が多い
・重症度が高い(APACHEⅡスコア 25.2 vs 25.9,SOFAスコア 11.2 vs 12.0)
・JAAM DICスコア4項目以上の患者数が多い
・感染巣が腹部で多くその他は少ない
・原因菌がグラム陰性菌や混合感染で多く,フラム陽性菌や不明は少ない
・白血球数,血小板数が少なく,PT-INRは延長
・rTM,AT製剤,プロテアーゼ阻害薬,IVIG,低用量ステロイド,RRT,non-renal indication RRTが多い
という特徴でした.マッチング前の全死亡率に差はありません(36.6% vs 37.9%).マッチング後は両群間の背景因子に有意差なく綺麗にそろっており,腹腔感染重症度はマッチング前後でほぼ変わっていないのですが,非施行群は死亡率が約5%上がり,施行群は約5%下がるということが起こっています.APACHEⅡスコア25前後,SOFAスコア11前後で非施行群の院内死亡率41.2%というのは敗血症性ショックとしては標準~やや高い印象を持ちます(私見です).

■マッチングにおいてどの変数が特に影響を与えたのかですが,背景因子の違いを見るに,感染巣(腹腔感染症),原因菌(グラム陰性菌)の比率がマッチング前後で特に大きく変動しています.このあたりは推測でしかありませんが,これまでPMX-DHPが特に用いられてきた腹腔内感染による敗血症で威力を発揮しやすいのかも?とも考えられるわけです.一方のABDO-MIXは腹腔感染に限定しているものの死亡率が悪化傾向となっていますが,ABDO-MIXはPMX-DHPに慣れていないフランスでの研究で,フサンではなくヘパリンを用いている,DICは治療しない,という違いがあります.これらも考えると,再度腹腔感染症でフサンを使ってDICも治療する状態でRCTをやってみてほしいなと思うわけですが,EUPHRATESがああいう結果である以上,海外ではもうRCTは組まれないと思われます.日本でやるしかないでしょうけれども・・・

敗血症性ショック患者でのポリミキシンB血液灌流による潜在的な生存率の改善:傾向スコアマッチングコホート研究(JSEPTIC-DIC studyのpost hoc解析)
Nakamura Y, Kitamura T, Kiyomi F, et al; Japan Septic Disseminated Intravascular Coagulation (JSEPTIC DIC) study group. Potential survival benefit of polymyxin B hemoperfusion in patients with septic shock: a propensity-matched cohort study. Crit Care 2017; 21: 134

Abstract
【背 景】
本研究の目的は,ポリミキシンB血液灌流(PMX-HP)が敗血症性ショック患者の生存率を改善させるかについて検討することである.

【方 法】
本研究は3年の間に治療を受けた患者で行われた後ろ向き多施設共同研究である.我々はJapan Septic Disseminated Intravascular Coagulation (JSEPTIC DIC) studyのデータベースの傾向スコア解析を行った.本研究は16歳以上の敗血症性ショック患者1723例のデータを登録した.さらに,患者をPMX-HP治療群とPMX-HP非治療群に分けた.主要評価項目は全院内死亡,副次評価項目は集中治療室(ICU)死亡と最初の28日間でICUに在室していない日数(ICUFDs:ICU-free days)とした.

【結 果】
1723例のうち,522例がPMX-HPを受けた.傾向スコアマッチングにより262組がマッチした(PMX-HP非治療群とPMX-HP治療群それぞれ262例ずつ).全院内死亡率はPMX-HP非施行群よりもPMX-HP施行群の方が有意に低かった(32.8% vs 41.2%; OR 0.681; 95%CI 0.470-0.987; p=0.042).最初の28日間のICUFDはPMX-HP非治療群よりもPMX-HP治療群の方が有意に多かった(それぞれ14(0-22) vs 18(0-22)日,p=0.045).一方で,ICU死亡率には二群間で有意差はみられなかった(21.8% vs 24.4%; OR 0.844; 95%CI 0.548–1.300; p=0.443).

【結 論】
我々の結果は,敗血症性ショック患者においてPMX-HPが全院内死亡とICU在室期間を減少させることを強く示唆する.


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by DrMagicianEARL | 2017-06-08 17:39 | 敗血症 | Comments(0)

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