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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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■ICUにおける鎮痛鎮静管理は近年,睡眠の領域にまで研究が進んでいます.おそらく今後PADとまとめて略語になっていたところに睡眠が入っていくだろうと言われており,今後の重要なトピックスになるでしょう.睡眠薬には多数の薬剤が知られていますが,多くはむしろせん妄リスクになる可能性があるベンゾジアゼピン系であり,非ベンゾジアゼピン系でもせん妄を減じた研究はこれまでほとんどありません.

■2014年に順天堂大学を中心とするDELIRIA-Jグループが,65-89歳の重症患者に対するメラトニン受容体作動薬ラメルテオン(ロゼレム®)がせん妄を減少させるとする67例RCTを報告しています(JAMA Psychiatry 2014; 71: 397-403).このラメルテオンの後に新しい作用機序である選択的オレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(ベルソムラ®)が上市されました.ICUでの不眠やせん妄の予防で既に使用している施設があると聞いていますが,私自身は,まだそのようなエビデンスがないことと,入眠時幻覚や悪夢,睡眠時麻痺,自殺企図,ナルコレプシー様症状などの懸念があったことからICU患者には使用していません.

■今回紹介する論文はラメルテオンのRCTを行ったDELIRIA-Jグループがスボレキサントでせん妄予防効果を検討した三重盲検RCTです.同グループは,ラメルテオンはせん妄予防効果があったものの,ラメルテオンだけでは不十分なケースがあったとして,今度はスボレキサントに着目して研究を行いました.結果は,スボレキサントがプラセボに比して有意にせん妄を予防,それもスボレキサント群のせん妄発生例はゼロでした.小規模研究ですが,これは大規模RCTでの検証がおおいに期待できそうです.ただ,このRCT,対象は「内服可能」な患者です.より重症な,人工呼吸器を装着して経管栄養しているせん妄ハイリスク患者だとスボレキサントでどれだけ抑え込めるかは分かりません.
せん妄に対するスボレキサントの予防効果:プラセボ対照無作為化比較試験
Hatta K, Kishi Y, Wada K, et al; DELIRIA-J Group. Preventive Effects of Suvorexant on Delirium: A Randomized Placebo-Controlled Trial. J Clin Psychiatry. 2017 Aug 1[Epub ahead of print]
PMID: 28767209

Abstract
【背 景】
せん妄予防に高い効果を示す薬物学的介入はまだ見つかっていない.我々は選択的オレキシン受容体遮断薬であるスボレキサントがせん妄予防に効果的かどうかについて検討した.

【方 法】
我々は,多施設共同評価者盲検プラセボ対照無作為化比較試験を2015年4月から2016年3月まで集中治療室よび急性期病棟で行った.新規に救急入院となった65-89歳で内服がk能な48時間以上滞在が見込まれる患者を対象とした.72例が封筒法でスボレキサント(15mg/日;36例)またはプラセボ(36例)に無作為に割り付けられて3日間夜間に服用した.主要評価項目はDSM-5に基づくせん妄発生率とした.

【結 果】
スボレキサント内服患者はプラセボ内服患者に比して有意にせん妄が少なかった(0%[n/N=0/36] vs 17%[6/36], p=0.025).log-rank検定による比較においても,スボレキサント内服群の方がプラセボ内服群よりも有意にせん妄が少なかった(χ²=6.46, p=0.011).分散分析により,日本版せん妄評価尺度-98(DRS-R-98-J)の睡眠覚醒サイクル障害スコア(項目#1)における治療の主要な効果の傾向が示された(F=3.79,p=0.053).有害事象に有意差はみられなかった.

【結 論】
急性期ケアでの高齢患者に対する夜間のスボレキサント内服はせん妄に対する保護作用を与える可能性がある.せん妄の概日核ドメインを改善するためのスボレキサントの潜在性を示すためにはより大きな研究が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2017-08-22 12:14 | 文献 | Comments(0)

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