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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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■ARDS患者においてPEEPを高く設定して虚脱した肺胞を開通させ,かつ再虚脱を防止するオープンラング戦略はまだエビデンスが少ないものの酸素化の改善において有用であるという報告がいくつも出ています.その中でも45cmH2Oといったような非常に高いPEEPに設定し,その後PEEPを漸減するという肺リクルートメント手技が知られています.しかし,この方法はこれまで小規模の研究しかなく,統一された手法もありません.また,酸素化は改善しますが死亡率に与える影響までは不明でした.

■今回紹介する論文は,中等症以上のARDS患者1010例を登録し,肺リクルートメント手技を検討した大規模RCT(ART)です.結果は,肺リクルートメント手技を行った方が死亡率が悪化し,圧傷害や気胸が増加したという惨憺たる結果でした.私もARDS患者に肺リクルートメント手技はやりますが,このARTのような介入プロトコルほどは攻めませんし,やるにしてもICU入室初日か2日目までですし(急性期は日数がたつほど肺は硬くなるため損傷リスクがある),リクルートメントの非常に高いPEEPをかけている時間はかなり短めで,PEEPも35cmH2Oまで上げたりはしません.漸減も比較的すみやかに行っています.このためか,肺リクルートメント手技を行ってもbarotraumaや気胸をきたした経験は今のところありません.酸素化改善を得るためならもっと肺に優しいプロトコルにできるのでは?とずっと思っています.

■さて,このARTは,ブラジル,アルゼンチン,コロンビア,イタリア,ポーランド,ポルトガル,マレーシア,スペイン,ウルグアイの9カ国120のICUで行われた大規模RCTになります.患者は中等度から重症のARDS患者で,2/3が敗血症性ショック,2/3がdirect ARDSです.腹臥位療法を受けたのは1割,ARDS発症から無作為化までの時間は15時間程度,平均P/F比は120程度,TVは5.8mL/kg理想体重(研究プロトコルでは4-6mL/kg理想体重を目標),プラトー圧は26cmH2O程度です.

■リクルートメントを行う群は無作為化後すぐに神経筋遮断薬の投与を開始されています.肺リクルートメントのやり方は以下の図の通りです(論文Supplemental contentより).この手技を,初回が成功(P/F比が50以上増加)し,かつP/F比が250未満または50超の低下があれば24時間ごとに行います.
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■対照群は低いPEEPといってもあくまでも肺リクルートメント群と比して,という意味合いで,PEEPレベルは10cmH2O前後(day 1, 3, 7で12.0→10.5→9.6).肺リクルートメントを行った群は16.2→14.2→11.6でいずれも対照群より有意に高く,プラトー圧>30cmH2Oとなった患者の割合もday3までは肺リクルートメント群の方が有意に多いという結果でした.P/F比は一貫して肺リクルートメント群の方が平均で50前後高い状態が維持されていました.ARDSの研究を見ていると,酸素化が改善したという結果に飛びつくのはどうも危険なようです.例えば,1回換気量にしても現在一般的に行われている低1回換気よりも高い換気量の方がRCTでは酸素化は良好だったにもかかわらず死亡率は悪化しています.

急性呼吸窮迫症候群の患者の死亡率における肺リクルートメントと呼気終末陽圧(PEEP)の漸減vs低いPEEPの効果:無作為化比較試験(ART)
Cavalcanti AB, Suzumura ÉA, Laranjeira LN, et al; Writing Group for the Alveolar Recruitment for Acute Respiratory Distress Syndrome Trial (ART) Investigators. Effect of Lung Recruitment and Titrated Positive End-Expiratory Pressure (PEEP) vs Low PEEP on Mortality in Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2017 Sep 27 [Epub ahead of print]
Abstract
【背 景】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の臨床アウトカムにおけるリクルートメント手技と呼気終末陽圧(PEEP)漸減の効果はいまだに不明確である.

【目 的】
標準的な低いPEEP戦略と比較して,最良の呼吸器系コンプライアンスのためのPEEP漸減に関連した肺リクルートメントが中等度から重症のARDS患者の28日死亡率を減少させるかについて検討した.

【方 法】
本研究は,中等度から重症のARDS成人患者を登録した,2011年11月17日から2017年4月25日までに9か国120の集中治療室(ICU)で行われた多施設共同無作為化試験である.肺リクルートメント手技と最良の呼吸器系コンプライアンスのためのPEEP漸減による実験戦略(501例;実験群)または低いPEEPの対照戦略に割り付けた.全患者はweaningまで従量式アシストコントロールモードを受けた.主要評価項目は,28日目までの全死亡率とした.副次評価項目は,ICU在室期間と入院期間,28日間での人工呼吸器非装着日数,7日間以内のドレナージを要する気胸,7日間以内の圧傷害,ICU死亡率,院内死亡率,6ヶ月死亡率とした.

【結 果】
計1010例の患者(女性37.5%; 平均[標準偏差]年齢 50.9歳[17.4])が登録・フォローアップされた.28日時点で,実験群501例のうち277例(55.3%),対照群509例のうち251例(49.3%)が死亡した(HR 1.20; 95%CI 1.01 to 1.42; p=0.041).対照群と比較して,実験群は6ヶ月死亡率を増加させ(65.3% vs 59.9%; HR 1.18; 95%CI 1.01 to 1.38; p=0.04),平均人工呼吸器非装着日数を減少させ(5.3 vs 6.4; 絶対差 −1.1; 95%CI −2.1 to −0.1; p=0.03),ドレナージを要する気胸リスクを増加させ(3.2% vs 1.2%; 絶対差 2.0%; 95%CI 0.0% to 4.0%; p=0.03),圧傷害リスクを増加させた(5.6% vs 1.6%; 絶対差 4.0%; 95%CI 1.5% to 6.5%; p=0.001).ICU在室期間,入院期間,ICU死亡率,院内死亡率に有意差はみられなかった.

【結 論】
中等度から重症のARDS患者において,低いPEEPと比較した肺リクルートメントとPEEP漸減は28日全死亡率を増加させた.本知見は,これらの患者における肺リクルートメント手技とPEEP漸減のルーチンの使用を支持しない.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-29 00:00 | 敗血症性ARDS | Comments(0)
■ICU患者の終末期と考えられる状況でのwithdrawal(ECMOや人工呼吸器,投与中の薬剤中止)やwithholding(これ以上の積極的な治療を行わない)はどのようにされているでしょうか?これらのEnd-of-Lifeケアについては3学会合同の指針が示されており,(1)人工呼吸器,ペースメーカー(ICDの設定変更を含む),補助循環装置などの生命維持装置を終了する,(2)血液透析などの血液浄化を終了する,(3)人工呼吸器の設定や昇圧薬,輸液,血液製剤などの投与量など呼吸や循環の管理方法を変更する,(4)心停止時に心肺蘇生を行わない,が提示されており,いずれを行うにしても患者や家族らに十分説明して合意を得て進め,同時に緩和ケアを行う(筋弛緩薬投与などの手段により死期を早めるようなことは行わない),としています.終末期の定義は日本救急医学会の「救急医療における終末期医療に関する提言」で以下のように定められています(ただし,実臨床ではこの判断が難しいことは当然ながらしばしばある).
①不可逆的な全脳機能不全(脳死診断後や脳血流停止の確認後なども含む)と診断された場合
②生命が新たに開始された人工的な装置に依存し,生命維持に必須な臓器の機能不全が不可逆的であり,移植などの代替手段もない場合
③その時点で行われている治療に加えて,さらに行うべき治療方法がなく,現状の治療を継続しても数日以内に死亡することが予測される場合
④悪性疾患や回復不可能な疾病の末期であることが,積極的な治療の開始後に判明した場合

■では実際にはどのように家族に説明するかですが,ICU患者である場合,癌患者や超高齢者と比較してなかなか説明のハードルが高いと感じる医師も多いです.その結果,治る見込みがほぼない状況にある患者にずるずると侵襲的治療が継続されてしまうケースもあります.どのように説明するかの正解となるようなものがあるわけではないですが,私自身は,毎日家族に病状の詳しい説明を行い(時には1日に2回),ベッドサイドでもモニターを含め一緒に状態を見てもらい,徐々に助からないであろう状況を受け入れてもらうようにしています.この過程で,緩和ケアとwithholdingは最初の段階で同意を得て開始します.そして日々の家族への説明等で受け入れ具合を見てwithdrawalの話を出します.このようなEnd-of-Lifeケアを行っていく上で,日本緩和医療学会が行っている緩和ケア研修会(PEACE)は参考になりますので,ぜひ受けられた方がいいと思います.

■ただし,これまでの経験で,私も抜管を行ったことはまだありません.ここに踏み込むにはかなり勇気がいりますし,まさに「withdrawalよりもwithholdingの方が医療者の心理的負担は少ない」というエビデンスをダイレクトに痛感します(Am J Public Health 1993; 83: 14-23).実際に,人工呼吸器のwithdrawalは日本ではほぼ行われていないに等しい行為です.終末期で抜管すれば患者は平均して1時間で確実に死に至るため(Chest 2010; 138: 289-97)躊躇するのは当然のことかと思われます.仮にもし行うにしても倫理委員会にお伺いをたてるなどする必要があるでしょう.今回紹介する論文はそのICU患者の人工呼吸管理の中止について検討した報告です.

■このARREVE studyでは,前向き観察研究で,終末期のICU人工呼吸患者のwithdrawの手段としてimmediate extubation(即時抜管)とterminal weaning(終末期weaning) を比較しています.即時抜管では,口腔内の分泌物や喀痰を十分に吸引した後に抜管し,すぐに加湿された酸素をマスクで投与して経過をみます.一方,終末期weaningは,呼吸回数やPEEP,酸素濃度を30~60分ごとに低下させていき,最終的にチューブを残した状態で維持できるのであればTピースで過ごすなどします.結果は,即時抜管の方が気道閉塞や喘ぎ呼吸,疼痛のBPSスコアが高いなどが生じやすいが,ICUスタッフの仕事量は少なく,複雑な悲嘆・PTSD・不安・抑うつは同等という結果でした.これらの結果から,緩和ケアの観点からいけば私自身は終末期weaningを選びたいところですが,海外では即時抜管もそれなりにあるようです.抜管すれば家族と肉声で会話できるというメリットがあるのかもしれません.
重症疾患患者の人工呼吸換気の中止(withdraw)における終末期weaningまたは即時抜管(ARREVE study)
Robert R, Le Gouge A, Kentish-Barnes N, et al. Terminal weaning or immediate extubation for withdrawing mechanical ventilation in critically ill patients (the ARREVE observational study). Intensive Care Med 2017 Sep 22 [Epub ahead of print]
PMID: 28936597

【目 的】
人工呼吸器の中止(withdrawal)において,即時抜管か終末期weaningかの相対的なメリットは,特に患者や近親者においては議論の余地がある.

【方 法】
本前向き観察多施設共同研究(ARREVE)は,ICUチームによる選択での終末期weaningと即時抜管を比較するためフランスの43のICUにおいて行われた.終末期weaningは換気補助の量の漸減とし,即時抜管は換気補助の事前の減量なしの抜管とした.主要評価項目は,死後3ヶ月後の近親者の心的外傷後ストレス症状(Impact of Event Scale Revised, IES-R)とした.副次評価項目は,近親者の複雑な悲嘆(complocated grief),不安,抑うつ症状,死までの経過における患者の快適さ,スタッフの仕事量とした.

【結 果】
我々は終末期weaningした248例の患者の近親者212名(85.5%),即時抜管した210例の患者の近親者190名(90.5%)を登録した.即時抜管は,終末期weaningと比較して,気道閉塞や高い平均Behavioural Pain Scaleスコアと関連していた.近親者において,3ヶ月後のIES-Rスコアは両群間で有意差はみられず(31.9±18.1 vs 30.5±16.2; 調整差 −1.9; 95%CI −5.9 to 2.1; p=0.36),複雑な悲嘆,不安,抑うつスコアにおいても差はみられなかった.ナースは,即時抜管群の方が仕事量スコアが低かった.

【結 論】
終末期weaningと比較して,即時抜管は,それぞれの方法が適用されたICUにおいて標準的な診療を構成する場合,近親者の心理的状態の差異と関連していなかった.患者は即時抜管の方が気道閉塞と喘ぎ呼吸が多かった.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-28 00:00 | 文献 | Comments(0)
■オーストリアはウィーンで第30回欧州集中治療医学会(ESICM 2017)が開催されている関係で,Intensive Care Medicine誌も次々と論文をonline publishしています.今回紹介するのは侵襲性カンジダ感染症が疑われた重症患者への経験的抗真菌薬の投与期間を0日目と4日目に計測したバイオマーカーに基づいて決定するアルゴリズムを用いて決定する介入群と,国際ガイドライン通り2週間投与を目安とする群を比較したRCTです.バイオマーカーによるアルゴリズムの図はICMのTwitter公式アカウントが公開していましたのでそちらから拝借してAbstractの下に掲載しました.

■結果は,バイオマーカーによるアルゴリズムを用いた方が早期に抗真菌薬を中断できたという結果です.単施設研究であり,もう少し検証は必要ですが,7日以内に約半数が安全に抗真菌薬を終了できるのであればかなり心強いエビデンスになります.気になるのは,バイオマーカー群は中央値にしてほぼ半分の投与期間であるにもかかわらず,コストに有意差がなかったことです.何にそこまでコストがかかったんでしょうね?
重症患者における経験的抗真菌薬の早期中断のためのバイオマーカーに基づいた戦略:無作為化比較試験(S-TAFE study)
Rouzé A, Loridant S, Poissy J, et al; S-TAFE study group. Biomarker-based strategy for early discontinuation of empirical antifungal treatment in critically ill patients: a randomized controlled trial. Intensive Care Med 2017 Sep 22 [Epub ahead of print]
PMID: 28936678

Abstract
【目 的】
本研究の目的は,経験的抗真菌薬の早期中断におけるバイオマーカーに基づいた戦略の影響を検討することである.

【方 法】
この前向き無作為化比較単施設非盲検研究は混合ICUで行われた.計110例の患者が,経験的抗真菌薬投与期間を,0日目と4日目に(1,3)-β-D-グルカン,マンナン抗原,抗マンナン血清アッセイの測定によって決定する戦略群(バイオマーカー群)か,14日間治療を推奨している国際ガイドラインに基づいたルーチンケア群に無作為に割り付けた.バイオマーカー群では,早期中止の推奨を,バイオマーカー計測結果に基づいたアルゴリズムを用いて決定した.主要評価項目は,経験的抗真菌薬を7日目までに中止と定義された早期中止を行った生存者の割合とした.

【結 果】
109例の患者が解析された(1例が治療中止(withdrawal)で同意).経験的抗真菌薬の早期中止は,ルーチンケア群で55例中1例であったのに対し,バイオマーカー群で54例中29例であった(54% vs 2%, p<0.001, OR 62.6, 95%CI 8.1–486).全抗真菌薬投与期間はルーチンケア群と比較してバイオマーカー群の方が有意に短かった(
中央値(四分位範囲) 6日(4–13) vs 13日(12–14), p<0.0001).両群間で,侵襲性カンジダ感染確定診断,人工呼吸管理のない日数,ICU滞在日数,コスト,ICU死亡の患者の割合に有意差はみられなかった.

【結 論】
バイオマーカーに基づいた戦略の使用は,侵襲性カンジダ感染症が疑われた重症患者における経験的抗真菌薬の早期中止の割合を増加させた.本結果は,経験的抗真菌薬の早期中止が予後にネガティブな影響を与えなかったことを示唆する既知の知見を裏付けるものである.しかしながら,この戦略の安全性を確認するためにはさらなる研究が必要である.本研究はClinicalTrials.gov NCT02154178で登録した.
本研究のバイオマーカー群のアルゴリズム
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by DrMagicianEARL | 2017-09-27 00:00 | 抗菌薬 | Comments(0)
■ICUでの栄養管理では至適投与カロリーはいまだにわかっておらず,初期は予想される目標エネルギー量より少ないpermissive underfeedingが主流になっています.その目標エネルギー量の一定の指標として,間接熱量計での測定結果でも推算式(Harris-Benedictの式や25-30kcal/kg/日の簡易式)でもよいとガイドライン(日集中医誌 2016; 23: 185-281)で推奨されています.しかし,間接熱量計を用いた上での個々のICU患者へのエネルギーおよびカロリー必要量の投与を検討したRCTはこれまでありませんでした.

■今回紹介する論文は,ICUの人工呼吸器患者に対する間接熱量計と24時間畜尿(尿素窒素)を用いて必要栄養量を投与する栄養管理(EGDN:Early Goal-Directed Nutrition)の有効性を,従来の標準的な25kcal/kg/dayでの栄養管理と比較したRCTであるEAT-ICU trialです.

■ただ,このEGDN群,Methodを見たら明らかに投与エネルギー量が多いんですよね.実際の結果を見ると,EGDN群と標準ケア群の投与エネルギー量はまるでEDEN trial(JAMA 2012; 307: 795-803)のエネルギー投与量を見ているかのようです.EDENではARDS患者1000例を対象として,400kcal/dayと1300kcal/dayを比較した結果,死亡率や人工呼吸器装着期間に有意差はなく,嘔吐・胃内残量増加・便秘が1300kcal群の方が有意に多かったという結果でした.また,2015年に報告されたシステマティックレビュー(Crit Care 2015; 19:180)では,目標エネルギー量の33.3-66.6%の群が最も死亡率が低かったという結果がでています.これらから普通に考えればEAT-ICU trialのEGDN群は分が悪いです(なのでなんでこんな研究デザインにしたのか首をかしげたくなります).

■血糖値を見てみると,15mmol/L(270mg/dL)以上になった患者の割合は52% vs 25%でEGDN群がほぼ倍(RR 2.06, 95%CI 1.40-3.03)で,当然ながらインスリン使用量も中央値で86 vs 0(RR 262, 95%CI 71-453)でEGDN群の方が多いという結果でした.高血糖はICUAWのリスク因子でもありますし(Lancet 2013; 381: 1715),インスリン投与量が増えたぶん筋肉の質も落ちやすくなります(Crit Care Med 2013; 41: 2298-309)

■案の定,結果はネガティブでした.まああくまでも間接熱量計が有効かどうかを見る研究ですので,この結果から,あえて間接熱量計を院内に導入する必要はないかなというのが感想です.
成人集中治療患者における早期目標到達型栄養vs標準ケア:単施設無作為化評価者盲検EAT-ICU trial
Allingstrup MJ, Kondrup J, Wiis J, et al. Early goal-directed nutrition versus standard of care in adult intensive care patients: the single-centre, randomised, outcome assessor-blinded EAT-ICU trial. Intensive Care Med 2017 Sep 22 [Epub ahead of print]
PMID: 28936712

Abstract
【目 的】
成人ICU患者における早期目標到達型栄養(EGDN:Early Goal-Directed Nutrition)vs標準栄養ケアの効果を評価する.

【方 法】
我々は,緊急入院で3日間を超えてICUに在室することが予測された人工呼吸器を装着したICU患者を無作為化した.EGDN群では,経腸と静脈栄養を用いて最初の試験日から100%の必要度をカバーすることを目的として間接熱量計と24時間畜尿により栄養必要度を推定した.標準ケア群では,経腸栄養で25kcal/kg/日を投与することを目標とし,もし7日目までに満たさなければ患者は静脈栄養による補充を受けた.主要評価項目は6ヶ月時点でのSF-36の身体的サマリー(PCS:physical component summart)スコアとした.非回答者のデータについては複数の代用を行った.

【結 果】
203例の患者が無作為化され,Intention-to-Treat解析に199例が登録された.ベースラインの変数は両群間で合理的にバランスがとれていた.標準ケア群と比較して,EGDN群ではICUにおけるエネルギーや蛋白の不足が少なかった.6ヶ月時点でのPCSスコアは二群間で差がなく(平均差 0.0; 95%CI -5.9 to 5.8; p=0.99),死亡率,臓器不全,ICUにおける重篤な有害反応や感染症,ICU在室期間や入院期間,90日時点での生命維持装置なしの生存期間も有意差がみられなかった.

【結 論】
急性期に入院し,人工呼吸器を装着した成人ICU患者において,標準栄養ケアと比較してEGDNは6ヶ月時点での身体的QOLや他の重要なアウトカムに影響を与えなかった.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-26 00:00 | 文献 | Comments(0)
更新履歴
2017年9月25日「敗血症治療の医師力アップセミナー(9月29日佐賀)」掲載
2017年9月25日「北日本支部医学検査学会第6回(10月14日・15日秋田)」掲載
2017年9月25日「第45回日本救急医学会総会・学術集会(10月24日~26日大阪)」更新


研究会,講演会,学会日程
※学会総会に加え,主に敗血症,救急集中治療,感染症の研究会,講演会を適宜掲載していきます(本記事を更新していきます).あくまでも私の知る範囲でのものだけです.これまで研究会については関西圏ばかりでしたが,2016年4月以降私が関西を離れますので,開催地制限ははずします.私自身は東北に移るためそちらの案内が増えるかもしれません.

※ここに掲載されていない研究会・講演会で掲載希望等あればコメント欄に記入するか,以下までメールで御連絡下さい.開催場所に制限はありませんが,内容は本ブログの内容の関係上,敗血症,感染症,救急/集中治療に関連するものに限ります.日時,演題名,会の主な対象や主旨等を記載して下さい.
⇒メールはこちらcum_earl@yahoo.co.jp
敗血症治療の医師力アップセミナー2017
【日時】2017年9月29日(金)19:00-21:00
【会場】マリターレ創世4F「グランデピアッザ」
佐賀県佐賀市神野東2-5-15

19:00-19:15
製品紹介:「リコモジュリン点滴静注用12800」
旭化成ファーマ株式会社

19:15-20:00
座長:青木 洋介先生(佐賀大学医学部国際医療学講座臨床感染症学分野教授)
教育講演:「救急外来での感染症の診方・考え方」
演者:濱田 洋平先生(佐賀大学医学部附属病院感染制御部助教)

20:00-
特別講演:阪本 雄一郎先生(佐賀大学医学部救急医学教授)
特別講演:「敗血症難治例へのアプローチ~救命とwithhold/withdraw~」
演者:DrMagicianEARL(EARLの医学ノート管理人)

主催:旭化成ファーマ株式会社
 佐賀で講演させていただくことになりました。当初は救急医の先生方が参加されるとのことで,演題のような基本をすっとばしたアドバンストな内容で考えていたのですが,救急以外の先生や研修医の皆さんも参加されると後で聞きましたのでスライドを作り変えて内容を変えています。今回大きく変わった循環管理の話とDICの話,最後にwithhold/withdrawの話を少しだけ入れています。
平成29年度日臨技北日本支部医学検査学会第6回
テーマ:「深化×伸化×新化~臨床検査の技と美を追究する~」
【日時】2017年10月14日(土)~15日(日)
【場所】秋田県総合生活文化会館 アトリオン

10月14日(土)15:40~16:40 第5会場(2F第1展示室B)
座長:金田 深樹先生(市立秋田総合病院臨床検査科)
教育講演4:「ローマは一日にして成らず ~臨床現場とAMRアクションプランの狭間で~」
演者:DrMagicianEARL(EARLの医学ノート管理人)

ホームページ:http://kitanihon2017.jpn.org/
 日本臨床検査技師会の北日本支部の学会で教育講演をさせていただくことになりました。耐性菌対策のアクションプランが進んでいますが,現場ではそう簡単にはうまくいきません。そのような葛藤もまじえながらAMR対策についてお話しします。
第45回日本救急医学会総会・学術集会
テーマ:「Love EM(Emergency Medicine):救急への想い」
【日時】2017年10月24日(火)~26日(木)
【会場】リーガロイヤルホテル大阪,大阪国際会議場(グランキューブ大阪)

日本救急医学会・日本集中治療医学会ジョイントセッション「世界からみた敗血症~いま自分たちにできること~」
10月25日(水)16:30~17:30
第3会場(リーガロイヤルホテル大阪 タワーウイング3階 光琳Ⅱ)
司会:松嶋麻子先生(名古屋市立大学大学院医学研究科先進急性期医療学)
世界では、毎年約600万人が敗血症で命を落としており、その多くが「防ぎ得た死」であると言われています。2017年5月、WHO(世界保健機構)は「敗血症の予防、診断、治療を先進国、発展途上国に関わらず推進すること」を世界の健康課題として認定しました。このセッションでは日本集中治療医学会と合同で、世界および日本における敗血症の現状、課題を皆様と共有し、今後の日本の敗血症対策につなげたいと思っています。世界に目を向けた若い先生方の積極的なご参加を期待しています。
演題1:「Global Sepsis Alliance (GSA) の活動と世界敗血症デー」
演者:中川 聡先生(国立成育医療研究センター病院集中治療科)
演題2:「加齢と敗血症」
演者:井上 茂亮先生(東海大学医学部付属八王子病院救命救急医学)
演題3:「小児敗血症を世界的視野で俯瞰する」
演者:川崎 達也先生(静岡県立こども病院小児集中治療科)
演題4:「世界の多剤耐性菌対策による敗血症死の予防 ~AMR対策アクションプラン~」
演者:DrMagicianEARL(EARLの医学ノート管理人)
演題5:「敗血症の研究について(仮題)」
演者:松田 直之先生(名古屋大学大学院医学系研究科救急・集中治療医学分野)
演題6:「世界の敗血症対策 WHOからの提言」
演者:松嶋 麻子先生(名古屋市立大学大学院医学研究科先進急性期医療学)

ホームページ:http://www2.convention.co.jp/45jaam
※アクセスすると突然音声が流れますので音量に注意してください
 学会2日目に救急医学会と集中治療医学会のジョイントセッションで「世界から見た敗血症」をテーマにGlobal Sepsis Alliance委員会メンバー6人での講演を行います。私は4演題目に世界の多剤耐性菌対策について講演させていただきます。
第87回日本感染症学会西日本地方会学術集会/第60回日本感染症学会中日本地方会学術集会/第65回日本化学療法学会西日本支部総会合同学会
テーマ:「進化する感染症学と化学療法~魅力ある領域への展開~」
【日時】2017年10月26日(木)~28日(土)
【場所】長崎ブリックホール

ホームページ:http://www.c-linkage.co.jp/wm-jciid2017/
第66回日本感染症学会東日本地方会学術集会/第64回日本化学療法学会東日本支部総会合同学会
テーマ:「感染症病態の探究と創意ある治療をめざして―基礎と臨床との連携―」
【日時】2017年10月31日(火)~11月2日(木)
【会場】京王プラザホテル新宿

ホームページ:http://www.pcoworks.jp/godo2017/

第45回日本集中治療医学会学術集会
テーマ:「一歩先へ;One Step Forward」
【日時】2018年2月21日(水)~23日(金)
【会場】幕張メッセ,ホテルニューオータニ幕張

ホームページ:http://jsicm2018.jp/
第33回日本環境感染学会総会・学術集会
テーマ:「感染制御におけるBest Practiceの追求」
【日時】2018年2月23日(金)~24日(土)
【会場】グランドプリンスホテル新高輪,国際館パミール

http://www.congre.co.jp/33jsipc/index.html

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by DrMagicianEARL | 2017-09-25 02:38 | 研究会・講演会・学会 | Comments(8)
■免疫不全があると敗血症性ショックの治療が難渋することは多々あります.今回はそのような免疫不全をベースとした敗血症性ショック患者の死亡やICU関連合併症を検討した後ろ向き研究を紹介します.ただ,一口に免疫不全と言っても多種多様です.たとえば固形癌があるからといってそれが即免疫不全に結びつくわけでもありませんし,どのような抗癌剤治療を行っているかでも変わりますし,固形癌で生じる感染症はどちらかというと腫瘍による閉塞等に伴う物理的要因での免疫不全の方が問題になりやすいため,この研究はちょっとざっくりしすぎかもしれません.
免疫不全および非免疫不全における敗血症性ショックの経過
Jamme M, Daviaud F, Charpentier J, et al. Time Course of Septic Shock in Immunocompromised and Nonimmunocompromised Patients. Crit Care Med 2017 Sep 20 [Epub ahead of print]
PMID: 28937407

Abstract
【目 的】
死亡,急性感染症,非感染性合併症の発症に関する敗血症ショックの経過における免疫状態の影響を検討する.

【方 法】
本研究は,ICU入室の48時間以内に敗血症性ショックと診断された患者を登録した8年間(2008-2015)の三次施設内科ICUの単施設後ろ向き研究である.患者は免疫状態に応じて4つのサブグループ(非免疫不全,免疫不全(血液疾患,固形悪性腫瘍,非悪性免疫抑制))に分類された.評価項目は院内死亡,虚血性・出血性合併症の発生,ICU関連感染症とした.死亡と合併症の決定要因は多変量競合リスク解析で検討した.

【結 果】
801例の患者が登録された.そのうち,305例(38%)が免疫不全であり,固形腫瘍122例,血液悪性疾患106例,非悪性免疫抑制77例であった.3日死亡,ICU死亡,院内死亡はそれぞれ14.1%,37.3%,41.3%であった.固形腫瘍患者は院内死亡が増加していた(原因特異的HR 2.20 [95%CI 1.64-2.96]; p<0.001).ICU関連感染症は3日間生存者のうちの211例(33%)に生じていた.加えて,ICU入室中に重篤な虚血性合併症が95例(11.8%),出血性合併症が70例(8.7%)発生していた.免疫状態とICU関連感染症の発生に関連性はみられなかった.非悪性免疫抑制と血液悪性疾患は,重篤な虚血性イベント(原因特異的HR 2.12 [95%CI 1.14-3.96]; p=0.02)と出血性イベント(原因特異的HR 3.17 [95%CI 1.41-7.13]; p=0.005)の増加に関連した独立危険因子であった.
※原文から:非免疫不全vs固形腫瘍vs血液悪性疾患vs非悪性免疫抑制状態で
好中球減少:0.8% vs 13.1% vs 73.8% vs 6.9%(p<0.001)
入院時SOFAスコア中央値[IQR]: 9[6-12] vs 9[6-12] vs 10[6-13] vs 8[5-11](p=0.02)
虚血性イベント:4.6% vs 2.4% vs 0.9% vs 7.8%
重篤な出血:1% vs 0% vs 1.9% vs 3.9%
Withdrawal:9.5% vs 24.6% vs 17% vs 11.7%(p<0.001)
3日死亡率:12.1% vs 24.6% vs 18.9% vs 3.9%(p<0.001)
ICU死亡率:32,9% vs 54.9% vs 39.6% vs 35.1%(p<0.001)
院内死亡率:36.1% vs 59% vs 44.3% vs 42.8%(p<0.001)

【結 論】
ベースの免疫状態は,敗血症性ショックの経過およびICUに関連した合併症の感受性に影響を及ぼす.これは,併存疾患と関連する敗血症症候群の複雑さを強調し,臨床研究における関連エンドポイントの問題を提起する.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-24 16:01 | 敗血症 | Comments(0)
■ヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン;通称「子宮頸がんワクチン」)が世に出てからかなりの年月が経ち,ついに長期追跡結果がでてきました.今回紹介する論文はLancetにonline firstでpublishされた9価HPVワクチン(ガーダシル9®)と4価HPVワクチン(ガーダシル®)を比較したRCTの追跡結果になります.結果は有意な有効性を示しており,「ワクチンで世界の子宮頸がんの90%を予防しうる」と結論づけています.

■日本では有害事象が相次いだとして係争中の状態にあり,現在HPVワクチンの接種推奨はストップしている状況です.その中で,日本からもHPVワクチン接種によって子宮頸がん発生に関連するタイプのHPVの感染率に9倍の差がみられたとするデータが報告され,日本産科婦人科学会は国に接種推奨再開を求める声明を発表しています.現在の接種推奨ストップの状況が続けば,子宮頸がんの領域において日本は後進国になってしまうでしょう.有害事象に関しては真にワクチンの副反応であったかについて議論されている状態ですが,ワクチン未接種群でも同様の症状が一定数見られていること,これまでの調査結果ではワクチンの副反応であったと結論づける結果はでておらず,引き続き調査が行われています.同時に有害事象が見られたが回復された患者の聞き取り調査も開始されています.
16-26歳の女性における9価ヒトパピローマウイルスワクチンの有効性,免疫反応,安全性の最終解析:無作為化二重盲検比較試験
Huh WK, Joura EA, Giuliano AR, et al. Final efficacy, immunogenicity, and safety analyses of a nine-valent human papillomavirus vaccine in women aged 16-26 years: a randomised, double-blind trial. Lancet. 2017 Sep 5. [Epub ahead of print]
PMID: 28886907

Abstract
【背 景】
16-26歳の若年女性における研究の主要解析で,感染やHPV 31, 33, 45, 52, 58に関連する疾患に対する9価ヒトパピローマウイルス(9vHPV; HPV 6, 11, 18, 31, 33, 45, 52, 58)ワクチンの有効性と,4価HPV(qHPV; 6, 11, 16, 18)ワクチンとの比較におけるHPV 6, 11, 16, 18に対する抗体反応の非劣性が示されている.我々の目的は,最初の投与後の6年間までの9vHPVワクチンの有効性と5年間の抗体反応を報告することである.

【方 法】
我々は,18ヶ国の105の研究施設で9vHPVワクチンの無作為化二重盲検での有効性,免疫原性および安全性試験を行った.健常で,異常な子宮頸部細胞診の病歴がなく,以前の異常な子宮頸部生検結果がなく,性的パートナーが4人を超えていない16-26歳の女性を,9vHPVまたはqHPVのワクチンを6ヶ月間で3回筋肉注射で接種するよう中央無作為化およびブロックサイズ4となるように無作為に1:1に割り付けられた.全ての被験者,本研究者,研究施設員,検査スタッフ,スポンサーの研究チームメンバー,病理学的診断スタッフはワクチングループ情報をマスクされた.主要評価項目はHPV 31, 33, 45, 52, 58に関連した高いグレードの子宮頸部疾患(子宮頸部上皮内腫瘍グレード2または3,腺癌,浸潤性子宮頸癌),外陰疾患(外陰上皮内腫瘍グレード2/3,外陰部癌),膣疾患(膣上皮内腫瘍グレード2/3,膣癌)の発生率,および抗HPV6, 11, 16, 18の幾何平均(GMT)抗体価の非劣性(1.5倍の減少を除く)とした.組織検体は組織病理学的診断で判定し,HPV DNA検査を行った.血清抗体反応は競合的ルミネックスイムノアッセイで評価した.有効性の主要評価は,有効性集団のper-protocolでの優越性解析で行い,支持的有効性は調整intention-to-treat集団での解析で行い,免疫の主要評価は非劣性解析で行った.本試験はClinicalTrials.govのNCT00543543で登録されている.

【結 果】
2007年9月26日から2009年12月18日の間に,14215例の参加者を9vHPVワクチン(7106例)とqHPVワクチン(7109例)に無作為に割り付けて登録した.per-protocol集団では,HPV 31, 33, 45, 52, 58に関連した高いグレードの子宮頸部,外陰,膣疾患は,9vHPV群で0.5例/10000患者-年,qHPV群で19.0例/10000患者-年であり,97.4%の効果(95%CI 85.0-99.9)を示した.HPV 6, 11, 16, 18 GMTはワクチン接種後1ヶ月から3年において9vHPV対qHPVで非劣性であった.両群間で重篤な有害事象の臨床的に意義のある差は見られなかった.研究追跡期間の間に11名の参加者(9vHPV群6例,qHPV群5例)の死亡があったが,ワクチンに関連すると考えられた死亡はなかった.

【結 論】
9vHPVワクチンはHPV 31, 33, 45, 52, 58に関連した感染,細胞診異常,高いグレードの病変,子宮頸部処置を予防する.9vHPVワクチンとqHPVワクチンはHPV 6, 11, 16, 18における免疫反応は同等であった.ワクチンの有効性は6年目でも持続していた.9vHPVワクチンは9vHPVワクチンは,潜在的に広い範囲をカバーし,世界中の子宮頸癌症例の90%を予防しうる.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-19 11:03 | 感染対策 | Comments(0)
■近年,重症患者の高酸素血症の有害性が多数報告されており,急性心筋梗塞(AMI)でもその懸念が指摘されてきました.低酸素血症のないAMIに酸素投与を行うとどうなるかですが,これまでの報告では,冠動脈血流量を7.9-28.9%有意に減少させたとする研究(Am Heart J 2009; 158: 371-7)や梗塞範囲,不整脈,心筋梗塞再発を有意に増加させたとするRCTであるAVOID trial(Circulation 2015; 131: 2143-50)などが有害性を報告しています.2013年のコクランのメタ解析(CDSR 2013; 8: CD007160)では,統計学的に有意ではないものの,死亡リスクが2.05倍(95%CI 0.75 to 5.58)増加すると報告され,低酸素血症のないAMIへの酸素投与は有害なのではということが話題になりました.一方,2016年のコクランメタ解析のアップデート(CDSR 2016; 12: CD007160)では,RRは0.99(95%CI 0.50 to 1.95)となりましたが,ルーチンでの酸素投与は支持しないというコクランの結論は変わっていません.

■今回紹介する論文は,同内容の研究としてはこれまでにない6629例を登録した大規模RCT(DETO2X-AMI trial)です.結果は,低酸素血症のないAMIに酸素を投与してもしなくても,死亡率,心筋梗塞再発,トロポニン最高値に有意差はない,という結果で,ルーチンでの酸素投与に有益性は見られなかったと結論づけています.これを見るに,ルーチンでの酸素投与は,有害ではないが,あえてする必要もないということになるでしょうか(一応,酸素も医療資源ですし).AMIのリスク因子である喫煙を考慮するならば,COPDを基礎疾患に持っている患者もそれなりの割合で存在しますから,やはりSpO2を見て酸素投与するかどうか判断する,が一番安全かと思われます.

■このDETO2X-AMI trialと,有害性を報告したAVOID trialの違いについて触れておきます.
・DETO2X-AMIの方がN数が15倍
・「低酸素血症のない」のカットオフが異なる(DETO2X-AMIはSpO2≧90%,AVOIDはSpO2≧94%)
・酸素投与群はDETO2X-AMIが6L/分の開放型マスク,AVOIDが8L/分の閉鎖型マスク
・DETO2X-AMIは,病院前および院内発症のnonSTEMI(STが上昇していないAMI)を含むAMI疑い患者を登録しているのに対し,AVOIDは救急車を要請したSTEMI患者を登録している
N数の違いは大きいですが,それ以外の違いを見ていくと,酸素の有害性を示したAVOIDの方が,低酸素になりにくく,かつ酸素投与群はDETO2X-AMIよりも高酸素になりやすい,登録された患者はAVOIDの方がSTEMIが多い,ということが言えるかと思いますし,そういうセッティングだと酸素の有害性が出やすくなる,とも考えられるかもしれません.
急性心筋梗塞疑いへの酸素療法(DETO2X-AMI trial)
Hofmann R, James SK, Jernberg T, et al; for the DETO2X-SWEDEHEART Investigators. Oxygen Therapy in Suspected Acute Myocardial Infarction. N Engl J Med 2017 Aug.28 [Epub ahead-of-print]

Abstract
【背 景】
ベースラインで低酸素血症がない急性心筋梗塞疑いの患者におけるルーチンの酸素療法の臨床効果は明確ではない.

【方 法】
レジストリーに基づいた本無作為化臨床試験は,患者登録とデータ収集が行われたスウェーデン全国レジストリーを用いた.心筋梗塞疑いで,酸素飽和度が90%以上の患者を酸素投与群(オープンフェイスマスクで6L/分を6~12時間)と室内気群に無作為に割り付けた.

【結 果】
計6629例の患者が登録された.酸素療法の中央期間は11.6時間で,治療期間終了時の酸素飽和度中央値は酸素投与群で99%,室内気群で97%であった.低酸素血症に進展した患者は酸素投与群で62例(1.9%),室内気群で254例(7.7%)であった.入院中のトロポニン値最高値の中央値は,酸素投与群で946.5ng/L,室内気群で983.0ng/Lであった.主要評価項目である無作為化から1年以内全原因死亡率は,酸素投与群で5.0%(166/3311),室内気群で5.1%(168/3318)であった(HR 0.97; 95%CI 0.79-1.21; p=0.80).1年以内の心筋梗塞再入院は酸素投与群で126例(3.8%),室内気群で111例(3.3%)であった(HR 1.13; 95%CI 0.88-1.46; p=0.33).本結果は事前に定められたすべてのサブグループにおいても一貫していた.

【結 論】
低酸素血症のない心筋梗塞疑いの患者におけるルーチンの酸素投与は1年全死亡率を減少させなかった.

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by DrMagicianEARL | 2017-09-01 11:15 | 文献 | Comments(0)

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