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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

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■宣伝になります.Geriatric Medicine誌の2017年11月号が発刊されました.今回の特集は「高齢者肺炎の誤嚥・肺炎予防up-to-date」です.東邦大学リハビリテーション医学講座教授の海老原覚先生がeditorをされ,私も「肺炎を治療しない選択」をテーマに執筆させていただきました(Geriat Med 2017; 55: 1247-50)
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■これまで肺炎領域ではいくつものガイドラインが作られ,2017年に全ガイドラインが統合された成人肺炎診療ガイドライン2017が作成されました.しかしながら,肺炎領域では,他領域に見られたようなブレークスルーはほぼなく,それがゆえに肺炎が日本人の死因の第3位に躍り出たことは,本領域の研究者は猛省すべきであると海老原先生は序文で述べられております.抗菌薬一辺倒の治療ではなく,もっと幅広い視点から見た根本治療を,との考えのもと,本特集では抗菌薬以外の介入等をとりあげております.今後の高齢者肺炎診療の一助となれば幸甚です.
Geriatric Medicine 2017年11月号(Vol.55)
特集:「高齢者の誤嚥・肺炎予防up-to-date」

序文
海老原 覚先生(東邦大学大学院医学研究科リハビリテーション医学講座教授)

総説
1.嚥下と呼吸の協調・連関
越久 仁敬先生(兵庫医科大学生理学講座生体機能部門教授)

2.成人肺炎診療ガイドライン2017』における看護・介護・リハビリテーションのあり方
朝野 和典先生(大阪大学医学部附属病院感染制御部教授)

Seminar
1.喉で感じる嚥下のメカニズム
海老原 覚先生

2.免疫と高齢者肺炎
中山 勝敏先生(東京慈恵会医科大学内科学講座呼吸器内科准教授)

3.誤嚥性肺炎における口腔レンサ球菌の役割
矢満田 慎介先生(一般財団法人厚生会仙台厚生病院呼吸器センター呼吸器内科医長)

4.高齢者肺炎の発症に関わる要因と遺伝子
山谷 睦雄先生(東北大学大学院医学系研究科先進感染症予防学寄附講座教授)

5.脳機能と誤嚥性肺炎―認知症の観点から―
海老原 孝枝先生(杏林大学医学部高齢医学准教授)

6.サルコペニアと誤嚥性肺炎の関係
岡崎 達馬先生(東北大学大学院医学系研究科内科学分野講師)

7.栄養と運動による肺炎予防
後町 杏子先生(独立行政法人国立病院機構東京病院呼吸器内科)

8.ポリファーマシーと誤嚥性肺炎
小島 太郎先生(東京大学医学部附属病院老年病科助教)

9.口腔ケア・嚥下障害対策システムの構築:高度急性期病院における持続可能でシームレスな口腔機能管理システム
関谷 秀樹(東邦大学医学部口腔外科准教授)

臨床に役立つQ&A
1.誤嚥性肺炎の急性期に禁食治療は必要でしょうか?
前田 圭介先生(愛知医科大学緩和ケアセンター講師)

2.肺炎球菌ワクチンを接種しても全肺炎死が減らないのはどうしてですか?
河崎 雄司先生(真誠会セントラルクリニック統括施設長 院長代理)

3.新しい肺炎ガイドラインにおける治療しない選択とはどのような意味ですか?
DrMagicianEARL(EARLの医学ノート管理人)

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by DrMagicianEARL | 2017-11-27 18:26 | 肺炎 | Comments(0)
■TAZ/PIPCとVCMの併用で腎障害が増加するという話は近年かなり話題となりましたが,そのシステマティックレビューがpublishされました.敗血症の初期抗菌薬でTAZ/PIPCかカルバペネム系かならペニシリン系のTAZ/PIPCを選びたいところではありますが,VCMを併用する場合はカルバペネム系よりもTAZ/PIPCの方がAKIを増やすとなると初期抗菌薬選択に影響がでますね.
成人におけるバンコマイシン+ピペラシリン/タゾバクタム併用と急性腎傷害:システマティックレビューおよびメタ解析
Luther MK, Timbrook TT, Caffrey AR, et al. Vancomycin Plus Piperacillin-Tazobactam and Acute Kidney Injury in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Crit Care Med. 2017 Oct 28[Epub ahead of print]
PMID: 29088001

【目 的】
本システマティックレビューおよびメタ解析の目的は,成人患者および重症疾患患者におけるバンコマイシン(VCM)とピペラシリン/タゾバクタム(P/T)の併用療法による急性腎傷害(AKI)を評価することである.AKIの頻度,AKI発生までの時間,AKIのオッズはVCM単剤,VCMとセフェピム(CFPM)またはカルバペネム(CRBs)との併用,P/T単剤と比較した.

【方 法】
研究は,2017年4月まで,PubMed,EMBASE,Web of Science,Cochraneでの検索で検出した.選択された学会のアブストラクトは手動検索した.英語でない論文,小児の研究,症例報告は除外した.2人の執筆者が独立して研究方法,AKIの頻度,AKI発生までの時間についてデータを抽出した.効果推定と95%信頼区間はRevMan 5.3によるランダム効果モデルを用いて算出した.

【結 果】
文献検索により15の出版研究と17の学会アブストラクトの24799例の患者が検出された.AKIの全発生率は16.7%,VCMとP/T併用は22.2%,対照群は12.9%であった.これらにより,有害必要数(NNH)は11であった.AKI発症までの時間はVCMとCFPMまたはCRBsの併用に比してVCMとT/Pの併用の方が短かったが,有意ではなかった(平均差 -1.30日; 95%CI -3.00 to 0.41).VCMとT/P併用によるAKIのオッズは,対VCM単剤(OR 3.40; 95%CI 2.57-4.50),対VCMとCFPMまたはCRBs併用(OR 2.68; 95%CI 1.83-3.91),対P/T単剤(OR 2.70; 95%CI 1.97-3.69)で増加していた.重症疾患患者968例での小規模サブ解析では,AKIのオッズは,対VCM単剤(OR 9.62; 95%CI 4.48-20.68)では増加していたが,VCMとCFPMまたはCRBs併用(OR 1.43l 95%CI 0.83-2.47)やP/T単剤(OR 1.35; 95%CI 0.86-2.11)とは有意差はみられなかった.

【結 論】
VCMとP/Tの併用は,VCM単剤,VCMとCFPMまたはCRBs併用,P/T単剤と比較したAKIのオッズを増加させた.重症疾患患者の限定されたデータでは,AKIのオッズは対VCM単剤では増加し,対その他の比較対象では軽減されることが示唆された.重症疾患集団においてはさらなる研究が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2017-11-09 19:11 | 抗菌薬 | Comments(0)
■機械的心肺蘇生が日本でも普及していっていますが,実際の効果は?というと,徒手的CPRと比較して良好とは言い難いです.5報RCT,12206例のメタ解析(Ann Emerg Med 2016; 67: 349-60)でも生存入院・生存退院・神経予後などの臨床アウトカムを改善しなかったと報告されています.

■今回紹介する論文は,日本のデータでの院外心停止症例に対する機械的CPRの有効性を検討した多施設共同前向き研究です(林田先生,JAHA publishおめでとうございます).結果は,交絡因子で調整すると,機械的CPRは生存退院をむしろ減少させてしまうリスクがあるとのことです.こうなってくるとなかなか導入しづらくなってきますね.
救急部門に搬送された非外傷性院外心停止の成人患者における機械的心肺蘇生と生存退院:日本における前向き多施設共同観察研究(SOS-KANTO[Survey of Survivors after Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest in Kanto Area] 2012 Study)
Hayashida K, Tagami T, Fukuda T, et al. Mechanical Cardiopulmonary Resuscitation and Hospital Survival Among Adult Patients With Nontraumatic Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest Attending the Emergency Department: A Prospective, Multicenter, Observational Study in Japan (SOS‐KANTO [Survey of Survivors after Out‐of‐Hospital Cardiac Arrest in Kanto Area] 2012 Study). J Am heart Assoc 2017; 6: e007430

Abstract
【背 景】
日本では,救急部に搬送される院外心停止患者の機械的心肺蘇生(mCPR)が広く普及している.本研究の目的は,救急部門におけるmCPRと臨床アウトカムの関連性を検討することである.

【方 法】
本前向き多施設共同観察研究では,搬入時に心停止が持続している院外心停止の成人患者が登録された.主要評価項目は退院時生存率とした.副次評価項目は.自己心拍再開と入院の成功とした.mCPRとアウトカムの関連性を分析するため,一般的な推定式を使用して潜在的交絡因子および施設内のクラスタリング効果を調整した多変量解析を使用した.

【結 果】
2012年1月1日から2013年3月31日までで6537例の院外停止患者が登録され,5619例(86.0%)が徒手的CPR群,918例(14.0%)がmCPR群であった.救急部門においてこれらの患者のうち28.1%(1801/6419)で自己心拍再開が見られ,20.4%(1175/5754)が入院となり,2.6%(168/6504)が生存退院し,1.2%(75/6419)は入院から1ヶ月時点で良好な神経学的予後であった.多変量解析ではmCPRは生存退院(調整後OR 0.40; 95%CI 0.20-0.78; p=0.005),自己心拍再開(調整後OR 0,71; 95%CI 0.53-0.94; p=0.018),入院(調整後OR 0.57; 95%CI 0.40-0.80; p=0.001)の減少に関連していた.

【結 論】
潜在的交絡因子で調整すると,成人の非外傷性院外心停止後の救急部門でのmCPRは良好な臨床アウトカムの減少に関連していた.mCPRがこれらの患者において有益となる可能性がある状況を明らかにするためにさらなる検討が必要である.

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by DrMagicianEARL | 2017-11-02 13:58 | 文献 | Comments(0)

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