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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

「敗血症.com」(Global Sepsis Alliance JAPANのサイト)の御紹介
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■世界で3秒に1人が敗血症で亡くなっている,この危機的状況を改善させるため,「Stop Sepsis, Save Lives(ストップ敗血症,命を救え)」をスローガンに,敗血症患者のためにより良い管理体制を整えることを目的とし,致死性疾患である敗血症に対する認識を深めるための世界的活動を行う非営利団体である世界敗血症同盟(GSA;Global Sepsis Alliance)が2012年に設立されております.日本集中治療医学会がGSA日本支部としてGSA委員会を設立し,2015年にはホームページ「敗血症安心プラネット」を開設しております.GSAについては詳しくは以下の本ブログ記事をご参照ください.
http://drmagician.exblog.jp/24135078/

■このたび,2017年3月にホームページが大幅リニューアルとなり,ホームページの名前は「敗血症.com」に変わっております.コンテンツも大幅に増え,一般市民向けのQ&Aを用意した他,医療従事者向けコンテンツとして,日本版敗血症診療ガイドライン2016のpdfファイル,敗血症啓発パンフレット,敗血症の定義・診断の変更に関するスライドを置いております.今後も内容を充実させるべく適宜更新を行っていく予定です.是非ご参照ください.ホームページにはご意見フォームもありますので,敗血症についてもっと知りたいこと,このようなコンテンツを作ってほしい等の御意見もお待ちしております.
※私事ですが,このたび本ブログ管理人はこのGSA委員会に入ることとなりました.
敗血症.com(日本集中治療医学会敗血症情報サイト)
http://xn--ucvv97al2n.com


■また,今回,新たにGSA JAPANとして,シンボルマークを作りました.
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■新しいシンボルマークは5枚の花弁をもつ花です.敗血症の予防から社会復帰までカバーすべく,「予防」「早期発見」「感染症治療」「全身管理」「リハビリテーション」の5つの柱を花で表しています.これらをよりスムーズに進めていくには我々医療従事者のみではなく,一般市民までまきこんだ周知が必要です.今後のGlobal Sepsis Alliance JAPANの活動に一施設でも,一人でも御協力いただければ幸甚です.
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# by DrMagicianEARL | 2017-03-13 17:45 | 敗血症 | Comments(0)
■集中治療領域においては,非外傷性の貧血に対しては制限輸血と非制限輸血でアウトカムは同等,もしくは制限輸血の方が好ましいという結果が各RCTで得られており,その結果の目安として,Hb<7.0 g/dL(心疾患を有する患者では<8.0 g/dL)を輸血開始指標とすることが望ましく,ガイドラインでもそのように推奨されています.今回紹介する研究は,敗血症性ショックを発症した癌患者での輸血制限戦略の検討です.結果は,死亡率において制限戦略の方が予後不良の傾向がみられたというものです.

■ただし,こういう結果となった要因やlimitationは多数あると思います.ただでさえ敗血症にも感染巣による治療戦略の違いなどの要因があることに加え,癌患者という集団を対象にする以上,StageやPS,癌の種類も多彩で,敗血症で救命しても癌で死亡しうる(実際に90日死亡率は6~7割と非常に高い数字),癌患者集団はベースラインのHb濃度が低い,ということを考慮すると,単施設での300例では検討不十分となると思われます.また,輸血開始基準に関係なく,組織低灌流(高乳酸血症,低ScvO2)であるほど輸血で有意な改善が得られるという報告(Rev Bras Ter Intensiva 2015; 27: 36-43)もあり,敗血症病態でもこれが関与している可能性もあり,詳細な検討が必要です.

■もっとも,これまで制限群が非制限群よりも好ましい結果が得られていた根拠の大きな部分として白血球除去製剤の普及率が低さがあり,これは近年大きく変わっています.ABC study(JAMA 2002; 288: 1499-507)とSOAP study(Anesthesiology 2008; 108: 31-9)では白血球除去製剤の普及率は19%から76%に向上しており,それに伴って輸血を行うことによる有効性が増加しています.また,輸血製剤による感染症リスクも製剤管理の改善により大きく減少しました.よって,輸血の安全性が向上していくと,推奨されるHb閾値も変わる(上がっていく)可能性は否定できません.
重症疾患(敗血症性ショック)に罹患した癌患者における非制限vs制限輸血戦略:重症疾患癌患者における輸血必要性の無作為化比較試験
Bergamin FS, Almeida JP, Landoni G, et al. Liberal Versus Restrictive Transfusion Strategy in Critically Ill Oncologic Patients: The Transfusion Requirements in Critically Ill Oncologic Patients Randomized Controlled Trial. Crit Care Med. 2017 Feb 24. [Epub ahead of print]
PMID: 28240687

Abstract
【目 的】
敗血症性ショックの癌患者において,赤血球輸血の非制限戦略と比較して,制限戦略が28日死亡率を減少させるかについて評価した.

【方 法】
本研究は大学病院で行われた単施設二重盲検無作為化比較試験である.対象はICU入室から6時間以内の敗血症性ショックの成人癌患者とした.患者はICU在室中に赤血球輸血の非制限群(ヘモグロビン濃度<9g/dLで輸血)または制限群(Hb<7g/dL)に無作為化に割り付けされた.

【結 果】
患者は149例が非制限群に,151例が制限群に無作為割り付けされた.非制限群の患者は制限群の患者よりもより多くの赤血球輸血単位を受けていた(1[0-3] vs 0[0-2] 単位; p<0.001).無作為化から28日後の時点でICU在室期間や入院期間に差がなく,非制限群の死亡率(本研究の主要評価項目)は45%(67例),制限群は56%(84例)であった(HR 0.74; 95%CI 0.53-1.04; p=0.08).無作為化から90日後の時点で死亡率は非制限群の方が制限群よりも低かった(59% vs 70%,HR 0.72; 95%CI 0.53-0.97; p=0.03).

【結 論】
敗血症性ショックの癌患者においては,輸血制限戦略よりも非制限戦略の方が生存において好ましい結果が観察された.本結果は,既知の仮説および他の研究とは反対の結果であり,確認する必要がある.

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# by DrMagicianEARL | 2017-03-02 15:57 | 敗血症 | Comments(0)
■近年,ICU患者や心筋梗塞患者,PCAS患者において高酸素血症は死亡率悪化等有害であるとする報告が多数でてきており,当ブログにおいても緊急気管挿管の場合を除けば高酸素血症に一利なしどころか有害であると書いてきました.今回紹介する論文は敗血症性ショックでは高酸素血症にしてみるとどうだろうというRCTです.そんなの予後が悪化するに決まってるのになぜこんな研究が,と思ったら研究開始が2012年なんですね.当時は高酸素血症の有害性はそこまで知られてなかった時です.全身臓器の虚血状態,酸素代謝異常が生じる敗血症性ショックで高酸素状態にすれば虚血を改善できるんじゃないか,という考えは確かに当時聞いたことがあります.案の定結果はFiO2 1.0に設定した高酸素血症群で死亡率増加傾向,重篤な有害事象増加,ICUAW増加傾向,無気肺増加という散々な結果で,中間解析結果から442例登録時点で本研究は早期中止となりました.まあ当然ですね.

■一方,この研究は2×2機能RCTとして,初期輸液蘇生の輸液として高張性食塩水と生理食塩水の比較を見ています.高張食塩水の過去の研究では出血性ショック,頭部外傷によるICP降下作用,広範囲熱傷初期における必要輸液量の軽減,腹部コンパートメント症候群などでどうやらいいらしい,というエビデンスがありますが,これらの食塩水濃度はおおむね7.5%のものが多く,この論文では3%が用いられています.こちらも予後を改善させるような効果はなさそうな結果です.
敗血症性ショック患者における高酸素血症と高張食塩水(HYPERS2S):多施設共同2×2機能無作為化比較試験
Hyperoxia and hypertonic saline in patients with septic shock (HYPERS2S): a two-by-two factorial, multicentre, randomised, clinical trial. Lancet Respir Med 2017 Feb 14. [Epub ahead of print]

Abstract
【背 景】
敗血症性ショック患者において,吸入酸素濃度(FiO2)を増加させた人工呼吸および高張生理食塩水による輸液蘇生の使用に関する研究は不十分である.我々はこれらの介入が死亡率の低下に関連しているかどうかを検討した.

【方 法】
本研究はフランス22施設における人工呼吸管理を受けた18歳以上の敗血症性ショック患者を登録した多施設共同2×2機能無作為化臨床試験(HYPERS2S)である.患者は,ランダムサイズの順列ブロックを使用して,施設と急性呼吸窮迫症候群の有無によって層別化されたコンピュータによる無作為化リストによって,無作為に1:1:1:1の4つのグループに割りつけられた.患者は,最初の24時間でオープンラベルでFiO2 1.0で管理(高酸素血症群)または動脈血ヘモグロビン酸素飽和度88-95%を目標とするFiO2管理(正常酸素血症群)による人工呼吸を受けた.また,二重盲検下で,最初の72時間の間の輸液蘇生において,3.0%生理食塩水(高張群)または0.9%生理食塩水(等張群)のいずれかの280mLボーラス投与を受けた.主要評価項目はintention-to-treat集団における無作為化から28日時点での死亡率とした.本研究はClinicalTrials.govの登録番号NCT01722422で登録されている.

【結 果】
2012年11月3日から2014年6月13日までの間に442例の患者が登録され,各治療群(正常酸素血症群233例または高酸素血症群219例,等張群224例または高張群218例)に割り付けられた.本試験は安全性の理由により早期に中止された.28日死亡率は424例の患者で記録され,高酸素血症群で217例中93例(43%),正常酸素血症群で217例中77例(35%)が死亡した(HR 1.27, 95%CI 0,94-1.72; p=0.12).高張群では214例中89例(42%),等張群では220例中81例(37%)が死亡した(HR 1.19, 95%CI 0.88-1.61; p=0.25).すべての重篤な有害事象発生率においては高酸素血症群(185例[85%])と正常酸素血症群(165例[76%])で有意差がみられ(p=0.02),ICU-AW(24例[11%] vs 13例[6%]; p=0.06)や無気肺(26例[12%] vs 13例[6%]; p=0.04)の患者数は高酸素血症群で倍増していた.生理食塩水の2群間では重篤な有害事象に統計学的有意差は見られなかった(p=0.23).

【結 論】
敗血症性ショックの患者において,高酸素血症を誘導するためのFiO2 1.0の設定は死亡リスクを増加させた.高張性(3%)生理食塩水は生存率を改善させなかった.

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# by DrMagicianEARL | 2017-02-25 20:12 | 敗血症 | Comments(0)
■心肺停止患者へのアドレナリンは心拍再開には寄与するけど神経学的予後が悪いといった報告がよくなされるようになり,先日はアンカロンも予後改善しないなんて研究がありましたが,今度は院内心停止で早期の気管挿管はよくないという論文です.そのうち胸骨圧迫以外何もするなって推奨がでるようになるんでしょうか?

■もっともこれは救急集中治療領域でのビッグデータでのpropensity score matching解析ですので,多数の重要な説明変数の欠落が想定されますから(結論でも潜在的交絡についてlimitationとして述べていますが,交絡が大きすぎる気もします),信憑性に関してはまだ何とも言えませんが・・・.こういう研究デザインでガイドラインの推奨に影響を与えるってどうなんでしょうね?普通に考えれば,挿管するか否かはその場での患者状況等に左右されますし,ビッグデータではそういったデータは含まれてきません.挿管した患者の方がベースが重症な可能性がある以上,予後が悪いというのは当然の話とも言えます.なので一概に気管挿管が悪いこととはとらえない方がいいかと思います.関連性と因果関係は別の話ですし.
成人の院内心停止における気管挿管と生存との関連
Andersen LW, Granfeldt A, Callaway CW, et al; American Heart Association’s Get With The Guidelines–Resuscitation Investigators. Association Between Tracheal Intubation During Adult In-Hospital Cardiac Arrest and Survival. JAMA. 2017 Feb 7;317(5):494-506
PMID: 28118660

Abstract
【背 景】
気管挿管は成人の院内心停止の際に一般的に行われているが,このような状況での気管挿管と生存の関連性については知見が少ない.

【目 的】
成人の院内心停止において気管挿管が退院時生存に関連しているかについて検討する.

【方 法】
本研究は,2000年1月から2014年12月まで米国の院内心停止の多施設レジストリであるGet With The Guidelines-Resuscitationレジストリに登録された院内心停止をきたした成人患者の観察コホート研究である.心停止時に侵襲的気道確保がなされていた患者は除外した.任意の時間(0-15分)に挿管された患者は,複数の患者,イベント,病院の特性から計算された時間依存性傾向スコアに基づいて,同じ時間以内(すなわち,まだ蘇生を受けている)に挿管されるリスクのある患者とマッチさせた.曝露(介入)は心停止の気管挿管とした.主要評価項目は退院時生存とした.副次評価項目は心拍再開(ROSC)と良好な機能予後を含めた.脳機能カテゴリースコア(CPCスコア)1点(神経学的欠落が軽度もしくはなし)または2点(中等度の脳機能障害)を良好な機能予後とした.

【結 果】
傾向スコアマッチングコホートは668病院の成人患者108079例が抽出された.年齢中央値は69歳(四分位範囲58-79歳)で,45073例(42%)が女性であり,24256例(22.4%)が生存退院した.71615例(66.3%)は最初の15分以内に挿管され,43314例(60.5%)は同じ時間で挿管されなかった患者とマッチした.生存率は,43314例中7052例(16.3%) vs 43314例中8407例(19.4%)(RR  0.84; 95%CI 0.81-0.87; P<0.001)で,挿管された患者の方が挿管されなかった患者よりも低かった.ROSCが得られた患者の比率は,43311例中25022例(57.8%) vs 43310例中25680例(59.3%)(RR 0.97; 95%CI 0.96-0.99; P<0.001)で,非挿管患者よりも挿管患者の方が低かった.良好な機能予後も,41868例中4439例(10.6%) vs 41733例中5672例(13.6%)(RR 0.78; 95%CI 0.75-0.81; P<0.001)で,非挿管患者よりも挿管患者の方が低かった.事前に規定されたサブグループ解析で差が見られたが,いかなるサブグループでも挿管は予後改善と関連していなかった.

【結 論】
院内心停止の成人患者において,蘇生の最初の15分間での任意の時間での気管挿管は,同じ時間での非挿管に比して,退院時生存の減少に関連していた.研究デザインは潜在的な交絡が除外していないが,本知見は成人の院内心停止において早期の気管挿管を支持しない.

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# by DrMagicianEARL | 2017-02-14 10:17 | 文献 | Comments(0)
■つい先日,天皇陛下も肺炎球菌ワクチンを接種されておられました.肺炎球菌感染症は,インフルエンザと同様に厚生労働省のB群予防疾患としてワクチン接種が推奨されています.このB群予防疾患は重症化予防を重点においていますが,海外では既に,65歳以上の肺炎球菌ワクチン接種(プレベナー®)により重症化予防のみならず肺炎球菌肺炎発症予防効果もあることが84496例を登録した二重盲検RCTであるCAPITA studyで報告されています.

■今回,本邦において肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)の肺炎球菌に対する予防効果を検討した研究が報告されましたので紹介します.結果は全ての肺炎球菌肺炎を27.4%,PPV23に合致する血清型では33.5%減少させる予防効果が示されました.日本において重症化予防のみならず発症予防効果をも示せたことは大変意義のあることです.
65歳以上の成人における肺炎球菌肺炎に対する23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチンの血清特異的効果:多施設前向き症例対照研究
Suzuki M, Dhoubhadel BG, Ishifuji T, et al; Adult Pneumonia Study Group-Japan (APSG-J). Serotype-specific effectiveness of 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine against pneumococcal pneumonia in adults aged 65 years or older: a multicentre, prospective, test-negative design study. Lancet Infect Dis. 2017 Jan 23. [Epub ahead of print]
PMID: 28126327

Abstract
【背 景】
65歳以上の成人において,肺炎球菌肺炎に対する23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPV23)の血清特異的効果はまだ確立されていない.我々は本集団においてPPV23の効果を評価した.

【方 法】
本多施設共同前向き研究においては,2011年9月28日から2014年8月23日まで研究を行う日本の4つの病院を受診した65歳以上の市中肺炎全例を登録した.肺炎球菌は喀痰と血液検体から分離し,莢膜Quellung法によって血清型を決定した.喀痰検体は肺炎球菌DNA抽出のためPCRアッセイによってさらに検査を行い,陽性検体はナノ流体リアルタイムPCRアッセイによって50の血清型に判定した.尿検体は尿中抗原で検査を行った.血清特異的ワクチンの効果は症例対照デザインを用いて推定した.

【結 果】
研究病院に2621例の患者が受診し,そのうち585例は喀痰検体が得られず解析から除外となった.2036例の患者のうち419例(21%)は肺炎球菌感染が陽性であった.(喀痰培養で232例,喀痰PCRで317例,尿中抗原検査で197例,血液培養で14例).522例(26%)の患者はワクチン接種を受けていたと判定された.PPV23による予防効果は,全ての肺炎球菌肺炎を27.4%(95%CI 3.2 to 45.6),PPV23に合致する血清型では33.5%(5.6 to 53.1),PPV23に合致しない血清型を2.0%(-78.9 to 46.3)減少させた.サブグループでは有意差は見られなかったものの,75歳未満,女性,大葉性肺炎または医療ケア関連肺炎においてより高い予防効果がみられた.

【結 論】
PPV23は65歳以上においてワクチン血清型肺炎球菌肺炎に対する低~中等度の予防効果を示した.現在の肺炎球菌ワクチンプログラムを改善させるため,高齢者の異なる集団におけるPPV23効果の変動性についてさらなる検討が必要である.

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# by DrMagicianEARL | 2017-02-01 14:30 | 感染対策 | Comments(0)

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