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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

■日本集中治療医学会/日本救急医学会合同特別委員会による日本版敗血症診療ガイドライン2016がオンライン公開となった.
「日本版敗血症診療ガイドライン2016 (J-SSCG2016)」先行公開のお知らせ
http://www.jsicm.org/haiketu2016senkou.html
■今回のガイドラインは,2012年の日本版の改訂というよりゼロから作り直しである.領域は大幅に増えて19項目,Clinical Questionの数は100個弱に及ぶ.作成メンバーも全体で70名以上の大所帯となっている.2014年の夏にkick offとなり,1年かけて吟味に吟味を重ねて骨格となるClinical Questionを作成,その後1年半かけてシステマティックレビューと推奨作成を行った.COIに関しては,金銭面におけるCOI(economic COI)のみならず学術的COI(academic COI)も公開している.
本ガイドラインの特徴(ICUとCCU 2015; 39: 443-8)

1) 2016年の発表をめざし,名称は「日本版重症敗血症診療ガイドライン2016」とした.(その後Sepsis-3発表があり重症敗血症という病名がなくなったため現在の名前に変更)
2) 単なる改訂版の位置づけではなく,一般臨床家にも理解しやすい内容かつ質の高いガイドラインを作成し,広い普及を目指す.
3) 中立的な立場で活躍するアカデミックガイドライン推進班を作成するなど,先進的な組織作りを行い,本邦における大規模ガイドライン作成のモデルを目指す.
4) システマティック・レビューなどを通して,新たに見出されたエビデンスをガイドラインと独立して論文化し,救急・集中治療領域の資産とする.
5) 将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をワーキンググループメンバーに登用している.
6) 質の担保と作業過程の透明化を図るため,相互査読制度,各班内の討議のオープン化,作業過程と討議過程の最終公開を行う.
7) クリニカルクエスチョンとガイドライン最終案の2回でパブリックコメント募集を行う.

今回のガイドライン作成を通してめざす本当の意義(ICUとCCU 2015; 39: 443-8)

国際的なガイドライン(SSCG)があるのに本邦独自のガイドラインを作成することの意義を疑問視する声も大きい.しかしながら,この議論は,複合産業である自動車産業が,わが国の発展にどれだけ寄与してきたかを議論するに近いものと考えている.かつて輸入車しかなかった時代に,まずは模倣あら始めることで国産車を作る試みを始めた先達のおかげで,我が国の多種多様な産業がどれだけ発展したかは改めて述べるまでもない.本邦独自のガイドラインの作成の意義を考えた時,「諸外国と同等のガイドラインさえも作れない国でいいのか?」と問いかけたい.
■このように質の高さと透明性の確保という面でかなり力の入ったガイドラインとなっており,見た目はかなりしっかりしたガイドラインである.ただし,次回改訂に向けた宿題が多数あるのも事実であり,今回作成にたずさわらせていただいた私もそれを痛感している.よって,ガイドラインの弱点も知った上で活用していただきたい.

(1) システマティックレビューはRCTのみで行っている

■今回のガイドラインは作成メンバーが70名以上とはいえ,CQは100個弱に及んでおり,人数も時間も厳しい状況であった.既知の優れたRCTのシステマティックレビューがあり,かつその後にエビデンスを覆すような新規のRCTがでていなければシステマティックレビューは行わないが,そうでない場合,あるいはシステマティックレビューが不足している等の事情があればシステマティックレビューをワーキンググループで行っている.しかし,質があまり高くないRCTしかなくその一方で大規模観察研究を複数有するような介入があった場合,RCTのみでのシステマティックレビューから出される推奨のみでよいのか?という点はlimitationであろう.

■同時に,RCTがないが観察研究はある介入であった場合,今回は観察研究のシステマティックレビューは行っておらず,エキスパートオピニオンとしてまとめた推奨文を作成している.相互査読,委員会での承認,パブコメを経たものとはいえ,作成時の議論の時間も厳しかったワーキンググループもあり,人によっては解釈がかなり異なってくる可能性もあるため注意が必要である.

(2) システマティックレビューへの不慣れ

■今回の作成メンバーのうち,システマティックレビューに長けたメンバーはごく一部であった.このため,MINDsのシステマティックレビュー講習をメンバーは受講しているが,近年のシステマティックレビューから推奨に至るまでの過程の難解さに直面した.その不慣れさが推奨に現れていることも否定できず,パブコメではGRADEシステムの専門家の先生から厳しい指摘があったのも事実である(ただし今回は,似てはいるもののGRADEではなくMINDs方式である).

■バイアスリスク評価やエビデンスの質評価を行う課程では,ある程度決まった法則はあるもののメンバー間での意見の相違も多数生まれ,議論を要するが,実際に行ってみて痛感したのは,かなり長期間の訓練を要するものだということである.

(3) システマティックレビューの質としては・・・

■前述の通り,限られた人数で時間的制約もある中,近年の一般的なシステマティックレビューと同様の方法をとることは難しかった.たとえば,システマティックレビューでは文献検索エンジンは最低2つ以上用いるべきとされているが,今回はPubMedのみに限定している.検索式にしても,網羅しつつヒット数を絞り込めるような検索式を立てているが,本来ならば対象と介入のtermのみで構成した取りこぼしのない感度100%を目指す検索式が望ましい.しかし,それをやれば領域によっては万単位の文献ヒット数となり,これを仕分けるには膨大な時間を要してしまう.

■includeしたRCTのアウトカムであるが,生物学的研究でのデータは非正規分布であるとの考えから,連続変数については平均値と標準偏差の組み合わせではなく中央値と四分位範囲の組み合わせを提示している論文が増加している.しかし,中央値と四分位範囲ではメタ解析はできず,そのようなRCTは解析から除外しているワーキンググループもあれば,除外せずに中央値と四分位範囲を平均値と標準偏差に変換する手法(当然ながら数値の信頼性は落ちる)をとったワーキンググループもある.

(4) 推奨が提示できなかった項目がある

■今回のガイドラインでとりわけ奇怪と思われても仕方がない部分が2か所ある.免疫グロブリン製剤とリコンビナント・トロンボモデュリンである.これらは,RCTが複数ありシステマティックレビューを行った上で推奨を出すも,委員会での複数回の投票で2/3以上の賛同を得られなかった結果,「明確な推奨を提示できない」となったものである.SSCGどころか他のガイドラインでもこのような文面はまず見かけないし,現場にとっては混乱を招きかねない.修正に修正を重ねても議論が紛糾する領域は必ず存在するのだから,合議制なり何らかの落としどころを規定しておいた方がよかったのではないだろうかと感じている.

(5) 現場で即座に使える形ではない

■これは問題点というよりガイドラインそのものがもつ解決不能の弱点であり,今回のガイドラインに限らず,救急集中治療領域のあらゆるガイドラインに言えることである.本ガイドラインは本編だけで300ページ以上,付録も約150ページにおよぶ.推奨文の案に対するパブコメ期間は2週間ずつ2回設けられたが,その期間ですべての文章を熟読できた人はほとんどいないのではないだろうか?(それくらい情報量が多かったので).

■本来,ガイドラインはその治療に不慣れな医師でも標準レベルの医療の質を提供するものであるが,この分量をポンと渡されて目の前の敗血症患者の救命のために緊急の現場で使うのはかなり厳しいものがある.しかも19領域,CQ&Aの羅列が100個近く並ぶが,これをどのように治療の流れとして組み立てていくかをその場で考えるには本ガイドラインだけでは非現実的である.

■また,4年前にSSCG 2012や2012年の日本版が出たとき,臨床現場や研究会で私が感じたのは,CQ&Aのみしか見ておらず推奨文にも目を通していない医師の存在である.分量が多ければ多いほど,この現象は起こりやすいと推察される.

■よって,とりわけ救急・集中治療が専門でない医師が臨床現場で活用するのであれば,このガイドラインの内容をしっかり理解した上で,各施設の現状に合わせたコンパクトなフローチャート等に「圧縮」「翻訳」する必要がある.

■次回からは本ガイドラインの内容について見ていく.
日本版敗血症診療ガイドライン2016(2) 敗血症の診断→
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# by DrMagicianEARL | 2016-12-27 15:53 | 敗血症 | Comments(0)
■日本で普及している重症急性膵炎に対する膵局所動注療法(CRAI)は,有効であるとするエキスパートオピニオンが多いものの,そのエビデンスは非常に限られています.1996年にAm J Surgに報告したTakedaらの報告が英文誌ではCRAIの最初の報告であり,急性壊死性膵炎53例の観察研究で,CRAIによる死亡率の有意に改善したとしています.その後,多数の動物実験に加え,小規模観察研究もいくつも報告があり,おおむねCRAIが優れているという結果でした.

■一方で,RCTはポーランドで行われた78例をオープンラベルRCTがあり,CRAI群と非CRAI群に割り付け,死亡率5.1% vs 23.1%でCRAI群の方が優れているという結果でした.ただし,症例数が少ないことに加え,患者背景や重症度評価は非CRAI群の方が不利な条件となっており,輸液量の記載すらもなく,これでここまでの死亡率の差がつくことは信頼性がやや欠けると言わざるを得ません.

■2015年にHoribeらが報告したメタ解析では,CRAIが死亡率や外科手術介入必要度を改善させるという結果となっています.

■これらを見るに,CRAIは有用そうなのですが,実際に各施設の先生に聞いてみると,CRAIを用いない施設でも死亡率に遜色はないようで,日本でもCRAIを行わない施設が多数存在します.やはり観察研究であっても多施設での検討が必要ということでしょう.今回,JSEPTIC-CTGにおいて検討された本邦大規模観察研究が報告されたので紹介します.CRAIを検証する上で重要な研究であると同時に,貴重な重症急性膵炎の大規模データベースです.今後も様々なpost-hoc解析がなされることでしょう.結果は,CRAIの有効性は示せずでした.Propensity score matching解析を用いなかったのは意外でしたが・・・.あと,これはDICに対するrTMでもそうですが,これまでの研究や今回のJSEPTICの結果を見るに,ルーチンでCRAIをやる必要はなさそうだけど,重症度が高い症例ほど有効な可能性はあるかなと感じました.
重症急性膵炎の治療におけるプロテアーゼ阻害薬の持続局所動注は有効性なし
Horibe M, Sasaki M, Sanui M, et al. Continuous Regional Arterial Infusion of Protease Inhibitors Has No Efficacy in the Treatment of Severe Acute Pancreatitis: A Retrospective Multicenter Cohort Study. Pancreas. 2016 Dec 13. [Epub ahead of print]
PMID:27977624

Abstract
【目 的】
本研究の目的は,急性壊死性膵炎を含む重症急性膵炎(SAP)の患者におけるプロテアーゼ阻害薬の持続局所動注(CRAI)の効果を評価することである.

【方 法】
本研究は2009年から2013年までの日本の44施設において行われた後ろ向き研究である.日本の厚生労働省研究班(2008年)の基準によりSAPと診断された18歳以上の患者を連続的に登録した.我々はプロテアーゼ阻害薬のCRAIと死亡率,感染症発生率,外科手術介入の必要度の関連性を多変量ロジスティック回帰解析を用いて評価した.

【結 果】
1159例の患者が登録され,必要なデータが全て揃っている1097例の患者が解析に組み込まれた.プロテアーゼ阻害薬のCRAIを施行された患者は374例(34.1%)であり,施行されていない患者は723例(65.9%)であった.多変量解析では,プロテアーゼ阻害薬のCRAIは死亡率(OR 0.79, 95%CI 0.47-1.32, p=0.36),感染症発生率(OR 0.97, 95%CI 0.61-1.54, p=0.89),外科手術介入の必要度(OR 0.76, 95%CI 0.50-1.15)の減少に関連していなかった.

【結 論】
SAP患者の治療においてプロテアーゼ阻害薬のCRAIに有効性は見られなかった.

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# by DrMagicianEARL | 2016-12-26 17:17 | 文献 | Comments(0)
■ジャーナリストであり医師でもある村中璃子氏がウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿した「日本の反ワクチンパニック拡散を止めること」の記事が日本語訳がでないとのことですので,本ブログでざっと日本語での要約と補足資料を置いておきます.全文および原文はWSJサイトで御確認ください.内容は主にHPVワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン:子宮頸がんワクチン)と池田修一氏の不適切な研究についてですが,MMRワクチンで自閉症を発症するという捏造を行い医師免許取り消しとなったウェイクフィールド氏にも触れています.

■読んでいただければ分かる通り,反HPVワクチン騒動は日本の問題のみではなくなってきているようです.ワクチンに限った話ではないですが,根拠なき恐怖がもたらす実害は想像をはるかに超えた大きなものとなりえます.
全文・原文
Stopping the Spread of Japan’s Antivaccine Panic
Riko Muranaka
http://www.wsj.com/articles/stopping-the-spread-of-japans-antivaccine-panic-1480006636
日本の反ワクチンパニック拡散を止めること
寄稿:村中璃子氏

主な内容

■2013年6月、HPVワクチンが全国予防接種プログラムに含まれてからわずか2カ月後に有害な副反応疑いの報告が多数明らかとなったため、日本政府は積極的接種推奨を中止し、接種対象年齢層の女子のワクチン接種率は約70%から1%以下に低下した。
※日本産婦人科学会が同様のデータを発表しています。

■子宮頸がんは日本では毎年約9,300例の浸潤性子宮頸癌があり3,000例が死亡しており、多くは、HPVワクチンによって予防することができるものである。HPVワクチンの効果、有効性、安全性は何度も証明されていて、世界保健機構(WHO)および日本の医療機関によって支持され推奨されている。
※疫学データ,ワクチンについての詳細は以下の国立がん研究センターサイト,厚生労働省ホームページが参考になります
http://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_shikyukeigan_vaccine.html

■日本の厚生労働省の厚生科学審議会が策定した「ワクチン副反応検討部会」は、HPVワクチンと症状に因果関係はなく、ほとんどの症例は心身症の可能性が高いと結論づけた。名古屋市での約7万例の解析でも、ワクチン誘発症状とHPVワクチンとの間には有意な関連性は見られなかった。
※名古屋市のデータに関しては以下を参照ください(Wedge2016年6月)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7148

■しかし、2016年3月16日に、有害事象を調査するために政府から委託された主任研究者である信州大学の池田修一氏が、厚生労働省の科学研究費補助金の委員会で誤解を招く遺伝子やマウスの実験データを提示し、同日にテレビで「間違いなく脳障害の徴候がある。この結果は、このような脳障害を訴える患者に共通する客観的な所見を明確に反映している」と語っている。

■Wedge誌(2016年7月号参照)で村中璃子氏が報告した通り、ワクチン接種患者に統計的に有意な遺伝型はないことが判明、また、自己抗体沈着の証拠として提示された緑色蛍光の脳切片はワクチンを接種されたマウスのものではなく、1匹のマウスのみが使用されたチャンピオンデータであった。この告発のもと、信州大学は調査委員会を設置して調査を行い、11月15日に、信州大学は村中璃子氏の告発内容に同意する内容の記者会見を行ったが、データ捏造にはあたらないとした。一方で池田氏は実験の再現性を実証することを要求され、厳重注意を受けた。
※厚生労働省ホームページ参照
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/tp160316.html
※2016年11月16日読売新聞を参照
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161116-OYTET50005/

■厚生労働省は「厚生労働省としては、厚生労働科学研究費補助金という国の研究費を用いて科学的観点から安全・安心な国民生活を実現するために池田班への研究費を補助しましたが、池田氏の不適切な発表により、国民に対して誤解を招く事態となったことについての池田氏の社会的責任は大きく、大変遺憾に思っております。また、厚生労働省は、この度の池田班の研究結果ではHPVワクチン接種後に生じた症状がHPVワクチンによって生じたかどうかについては何も証明されていない、と考えております。」という前例のない声明を発表した。
※厚生労働省ホームページ参照
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/tp161124.html

■2016年7月以降、数十名の副反応疑いの被害者が、各地の地方裁判所に日本政府とワクチン製造会社に対して訴訟を起こした。日本のメディアはこの訴訟を取り上げたが、医学的根拠については無視しており、これは、原告の主張に対する信頼性を不当に高めている。

■HPVワクチンの問題は過去最大のワクチンスキャンダルであるウェイクフィールド事件を連想させる。1998年、アンドリュー・ウェイクフィールド氏はMMRワクチンが自閉症を引き起こしたという証拠としてLancet誌に「科学的データ」を発表したが、後に捏造であったことが判明し、2010年に論文は取り下げ、医師免許は取り消しとなっている。
※下の方にあるリンク参照

■今年の初めに、ウェイクフィールド氏は「Vaxxed:From Cover-Up to Catastrophe」という映画を発表した。自閉症の子どもをもつロバート・デ・ニーロがトライベッカ映画祭でこの映画を上映しようとした。これにより、米国での反ワクチン感情が再び高まった。
※補足:実際にはトライベッカ映画祭で上映されることが発表されると「科学的な信憑性が低い」との批判を浴び、上映中止となった。しかし、配給会社はマンハッタンのアンジェリカ・フィルム・センターで公開した。

■我々は傍観して科学的ではない主張が全世界の人命を危険にさらすような状況を許容すべきでない。日本政府はHPVワクチンの積極的な接種勧告を復活させ、他国もワクチンの不合理な恐怖がさらに勢いづく前に、肯定的な範を示すべきである。
【文献】ワクチンやそれに含まれるチメロサール,水銀は自閉症と関連しない.メタ解析(Wakefieldの論文捏造の詳細含む)
http://drmagician.exblog.jp/22025386/

MMRワクチンと自閉症の関連性に関する2014年8月の騒動について(Brian Hookerの不適切論文撤回)
http://drmagician.exblog.jp/22464500/

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# by DrMagicianEARL | 2016-12-19 11:06 | 感染対策 | Comments(0)
■救急集中治療領域に限った話ではありませんが,RCTで得られたエビデンスを,そのRCTの患者登録基準の範囲を超えて解釈してしまうということが臨床現場ではよくあり,結果的にその医療介入が不適切になる,効果が得られない,有害事象が増す,ということが起こってきます.エビデンスを臨床に活かす際は必ずそのRCTの登録基準,除外基準を熟読しておく必要がありますし,また,実際に登録された患者の背景データもチェックし,それが実臨床において目の前の患者に適応できるかを見極める必要があります.そしてその乖離が目に見える形でまとめられたのが観察研究です.当然ながらRCTよりエビデンスの質は落ちますが,観察研究の方が圧倒的にリアルワールドに近いものであるという大きなメリットがあり,私はRCT論文だけを読むというスタイルはおすすめしません.

■今回紹介する研究は,過去の救急集中治療領域でのメジャーな15のRCTの登録・除外基準を抽出し,それがリアルワールドでどのくらいの患者が適格性を有するのかを検討したものです.結果は,半数以上が脱落.救急集中治療でのRCTは「質のいい」「きれいな」重症患者を対象にしていますので,いざ実臨床に応用してみると違った結果になってくることはよく経験されるかと思います.
救急集中治療の無作為化比較試験における患者適格性:国際的2施設観察研究
Ivie RM, Vail EA, Wunsch H, et al. Patient Eligibility for Randomized Controlled Trials in Critical Care Medicine: An International Two-Center Observational Study. Crit Care Med. 2016 Oct 24. [Epub ahead of print]
PMID: 27779514

Abstract
【目 的】
本研究の目的は,各試験の患者適格性の率を評価することにより,重症患者における無作為化比較試験(RCT)から得られた情報が一般化できるかを検討した.

【方 法】
本研究は前向き観察コホート研究である.我々は1998年から2008年の間に出版された,救急領域で最も引用された15のRCTを抽出した.各RCTの登録基準と除外基準を検討し,各RCTごとに本研究ICUに入室した各患者の適格性を評価し,コホートにおける潜在的試験適格性の率を計算した.研究はカナダおよび米国の2つの大学病院の3つのICUで行った.対象は,2010年11月または2011年7月に内科または外科ICUに入室した成人患者とした.

【結 果】
15の研究のうち,特によく見られた登録基準は,敗血症(6研究)または急性呼吸窮迫症候群(4研究),侵襲的人工呼吸(5研究),ICUタイプやICU在室期間関連(5研究)の臨床基準であった.本研究ICUに入室した93例の患者のうち,52%(48例)の患者はいかなるRCTの登録基準も満たさなず,30%(28例)は適格性が15研究のうち1つしか満たさなかった.試験の非適格性は,特異的除外基準への該当(スクリーニング評価で52%)よりもむしろ,ほとんどが登録基準を満たさなかった(87%)ことによるものであった.陽性スクリーニング評価のうち,85%はICU入室初日に満たしていた.

【結 論】
評価された患者の半数以上が,救急領域の15の主要なRCTのいずれにも登録する適格性がなく,ほとんどが研究の特定の臨床的条件がないことによるものであった.RCTの登録基準を満たした患者のほとんどはICU入院初日にその基準を満たしていた.

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# by DrMagicianEARL | 2016-12-15 11:16 | 文献 | Comments(0)
■敗血症性ショックを疑ったけど,感染巣が不明で感染症かどうかも分からない,なんて患者に遭遇することは珍しくないと思いますし,ICTもそのような状況でコンサルトを受けることがあると思います.そのような患者は予後が悪いのかなと思ってましたが,そうでもないようです.今回紹介する論文はフランスのICUから,多施設共同前向き観察研究です.発症から敗血症性ショックが疑われてICUに入室し,24時間以内に感染巣や病原微生物の根拠が得られたか否かで患者を評価しています.

■結果は,予後に有意差なし.早期に感染症の根拠が得られなかった患者は26%,そのうち別疾患と診断したものが44%(全体の11%),あとで敗血症性ショックと診断できたものが28%(全体の7%)でした.また早期診断群の方が,糖尿病患者が少なく,発熱がより高く,意識レベルが高く,CRPやプロカルシトニンが高いという患者背景でした.24時間以降に診断がついた敗血症性ショックの感染巣は何か特殊なのかなと思ったら,通常の敗血症の疫学とほぼ変わらない結果でした.敗血症性ショックもどきを呈した薬剤副作用としては,ビグアナイド系経口血糖降下薬(メトホルミン)が最多で,次いでレニンアンギオテンシン系降圧薬,β遮断薬,プロポフォールが続いていました.

■これを見るに,感染巣が特定できようができまいが,やはり初期の循環管理をしっかり適切に行うことが要であろうと思われます.私自身は敗血症に対して抗菌薬投与を1時間以内に投与することをpracticeとしていますが,本心ではおそらく1時間以内じゃなくてもいいと思っています.抗菌薬の早期投与がいいという過去の研究はすべて観察研究であり,いかに多変量解析を行っているとはいえ,抗菌薬投与が全治療のスタートラインとなっていて循環管理が遅れているのを反映しているだけ,という可能性がそれなりにあるからです.実際に予後に影響を与えるのは抗菌薬早期投与よりも早期のショック治療だと思います(かといって抗菌薬投与が遅すぎるのもよくないでしょうけど).まあこのあたり,いろいろ思うところがあるなと感じながらも1時間以内に適切な抗菌薬を選択して投与をすべくやってます.
24時間時点で診断がついていない敗血症性ショック:実際的多施設前向きコホート研究
Contou D, Roux D, Jochmans S, et al. Septic shock with no diagnosis at 24 hours: a pragmatic multicenter prospective cohort study. Crit Care. 2016 Nov 6;20(1):360
PMID:27816060

Abstract
【背 景】
敗血症と考えられたショック管理の24時間後の明らかな感染巣の欠如はよく見られ,シナリオの妨げになる.我々の目的は,発症から24時後に未診断のショックの頻度と原因を検討し,早期に診断された敗血症性ショック患者の予後と比較することである.

【方 法】
我々はフランスの10の集中治療室(ICU)において,実際的前向き多施設共同観察コホート研究を行った.抗菌薬処方につながる感染症が臨床的に疑われ,循環作動薬を要する循環不全があると定義された敗血症性ショック疑いでICUに入室した患者を全例連続的に登録した.

【結 果】
計508例の患者が敗血症性ショックの疑いでICU入室となった.それらのうち,374例(74%)が早期に敗血症性ショックと診断され,一方で134例(26%)がショック発症から24時間の検索で感染巣も微生物学的根拠も同定できなかった.これらのうち,37/134例(28%)は24時間移行に敗血症性ショックと診断され,59/134例(44%)は敗血症を模倣した状態(敗血症性ショック様.ほとんどは薬剤有害反応,急性腸間膜虚血,悪性疾患に関連)であり,38/134例(28%)はICU在室終了まで原因不明のショックであった.早期に診断された敗血症性ショック患者とそうでない患者では,ICU死亡,ICU在室期間,気管挿管期間,循環作動薬使用期間に差はなかった.多変量Coxモデルでは,敗血症性ショックの早期診断有無で60日死亡リスクに差はみられなかった.Sepsis-3の定義による基準に合致した患者のサブグループ(369/508例)における感度解析でも同様の結果であった.

【結 論】
敗血症性ショック疑いでICUに入室した患者の1/4は発症から24時間以内に感染症の根拠が検出できず,そのうちのほぼ半数は最終的に敗血症性ショック模倣疾患と診断された.早期診断の敗血症性ショックとそれ以外の患者で予後に差はみられなかった.

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# by DrMagicianEARL | 2016-12-12 20:10 | 敗血症 | Comments(0)

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