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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

■敗血症においては,血液分布が変わったり代謝や血行力学的変動により抗菌薬の効力が低下する懸念が以前から指摘されてきました.特に敗血症早期においては,腎血流量増加,腎糸球体ろ過率(GFR)増加,腎クレアチニンクリアランス増加を伴う代謝亢進状態にあり,抗菌薬も例外ではありません.よって,通常の抗菌薬投与レジメンでは有効血中濃度を維持できず,敗血症患者においては不利になるのではないかと考えられています.これもあって私も初期投与量は腎機能に関わらず最大投与量としてできる限り早く定常状態に達するような抗菌薬投与プランを用いてきました.この過大腎クリアランス(Augmented Renal Clearance;ARC)の状態が臨床アウトカムに関連するかについて検討した報告がIJAAにpublishされました.

■本研究はANZICSが行った重症敗血症での抗菌薬持続投与と間欠投与を比較したRCTであるBLING-II trialの二次解析です.結果は,ARCは予後をに影響を与えないというものでした.最もARCを有する患者は若年で臓器障害が少ないという特徴があるため,背景因子として予後は比較的良好な患者集団とも言えます.RCTでの再評価が待たれます.

■ただ,個人的考えですが,このようなPK/PDの理論は,敗血症の予後に影響を与えるほどのインパクトはないのではないかと諸研究を見て最近感じています.敗血症の本体は炎症であり臓器障害であり,いわゆる宿主側の問題であって,感染症治療については抗菌薬が原因菌に当たってさえいれば非敗血症での投与方法・投与期間でも変わらないのではないかとつくづく思います.敗血症患者でのプロカルシトニンガイド下での抗菌薬投与で投与日数がこれまでの経験的日数よりかなり少なくてすんでいる知見がでてきたのもそういうことではないかと.
持続的または間欠的静脈内投与によるβラクタム系抗菌薬治療を受けた患者における過大腎クリアランス(ARC)と臨床アウトカムの関連性:BLING-II無作為化プラセボ対照比較試験のコホート内研究
Udy AA, Dulhunty JM, Roberts JA, et al; BLING-II Investigators; ANZICS Clinical Trials Group. Association between augmented renal clearance and clinical outcomes in patients receiving β-lactam antibiotic therapy by continuous or intermittent infusion: a nested cohort study of the BLING-II randomised, placebo-controlled, clinical trial. Int J Antimicrob Agents. 2017 Mar 9 [Epub ahead of print]
PMID: 28286115

Abstract
【背 景】
過大腎クリアランス(ARC)はβラクタム系抗菌薬の薬物動態に影響するものとして知られている.

【目 的】
BLING-II試験の本サブ研究の目的は,大規模無作為化比較試験におけるARCと患者アウトカムの関連性について検討することである.

【方 法】
BLING-II試験は,βラクタム系抗菌薬による治療を持続的投与か間欠的投与かで無作為化された重症敗血症患者432例を登録した.CLCr≧130 mL/minで定義されるARCを抽出するため,第1病日に8時間でのクレアチニンクリアランス(CLCr)を用いた.腎代替療法を受けた患者は除外された.主要評価項目は28日時点でのICU非在室生存日数とした.副次評価項目は90日死亡率と抗菌薬中止から14日時点での臨床的治癒とした.

【結 果】
計254例の患者が登録され,45例(17.7%)がARCとされた[CLCr中央値(四分位範囲) 165 (144-198) mL/min].ARC患者は,若年であり(p<0.001),男性に多く(p=0.04),臓器障害が少なかった(p<0.001).28日時点でのICU非在室生存日数に有意差はみられなかったが[ARCあり 21 (12-24)日; ARCなし 21(11-25)日; p=0.89],未調整解析ではARCを有する方が有意に臨床的治癒率が高かった[33/45 (73.3%) vs 115/209 (55.0%), p=0.02].多変量解析においては本結果は減衰していた.90日死亡率に差は見られなかった.

【結 論】
ARC患者の臨床アウトカムに統計的に有意な差はなかった.重症敗血症におけるβラクタム系抗菌薬の大規模臨床試験の本サブ研究において,ARCは投薬戦略にかかわらずいかなるアウトカムの差異にも関連していなかった.

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# by DrMagicianEARL | 2017-03-27 17:43 | 敗血症 | Comments(0)
■近年,ICU患者の鎮静の研究がさかんで,近年の知見では①ベンゾジアゼピンは避けた方がいい,②鎮静による抗炎症作用が期待できる,③デクスメデトミジンはせん妄を減少させる可能性がある,などが主に分かっています.

■昨日,人工呼吸器を要する敗血症患者へのデクスメデトミジンを検討した本邦8施設共同RCTであるDESIRE trialがJAMA誌にonline firstでpublishされたので御紹介します.サンプル数201例であり,検出力不足のためか死亡率や人工呼吸器非装着期間に有意差はなし,良好な鎮静管理はデクスメデトミジンの方が有意に多く,サブ解析ではAPACHEⅡスコア23以上の重症例に限定するとデクスメデトミジンが有意に死亡率を改善するという結果でした.

■この結果,いろんなことが言えるとは思います.まず第一に死亡率の絶対差が8%もあることです.サンプル数不足のため統計学的有意差はありませんが,臨床的には無視できない大きな差です.問題はこの8%が偶然の産物なのかですが,過去の報告を見ると,ICU患者を対象とした16報RCTのメタ解析であるCrit Care Med 2014; 42: 1442-54においては死亡リスクをアウトカムとしてデクスメデトミジンはOR 0.90,95%CI 0.76-1.06で改善傾向を示しており,本研究結果の効果推定値を考慮しても非一貫性はほぼないものと考えられ,偶然ではないであろうと推測できます(ただこのメタ解析は患者集団や介入の統一性が乏しく,もう少し絞り込んだシステマティックレビューが必要だろうとは思います).

■サブ解析ではAPACHEⅡスコア23以上でデクスメデトミジン群が有意に死亡率を改善しています.これは昨今の集中治療領域での研究でよく見られる「重症例ほど死亡率改善効果が得られやすい」と矛盾しないものです.ただし,確かにAPACHEⅡ≧23と<23とで効果推定値のベクトルは真逆ですが,95%信頼区間は半分ほど重なっています(なのでおそらく交互解析をしても有意差はでません).サブ解析はあくまでも恣意的に選んだ患者集団ですから,これをもってAPACHEⅡスコア23以上に対象を絞って再度RCTをやり直しても有意差がつくとは限りません(特に集中治療領域ではサブ解析を元にRCTを組んで有意差がだせた研究はほとんどありません).

■では,さらなるRCTを組むとしたらどれだけサンプル数を集めるかですが,ICU患者の死亡率が30%以下に突入している昨今,統計学的有意差という意味では限界が見えると最近感じています.差がまずつかないため,p値に縛られない解釈が必要だとは思います.例えば今回と同じデザインで行うならば,効果推定値0.69(相対死亡リスク31%減少),対照群の死亡率30.8%と仮定して死亡率で統計学的有意差を得るためにはサンプル数は約1000例は必要です.こんなサンプル数は日本だとまず無理でしょうし海外でもできるのはANZICSぐらいじゃないでしょうか?

■もしサブ解析結果をそのまま信じるなら,効果推定値0.39(相対死亡リスク61%減少),対照群死亡率が40%と仮定した場合120例で済みますが(と言っても患者集団を絞っているので患者登録期間は今回より長期化しやすくなってしまいますので,試験参加施設を増やす必要があります),前述の通りサブ解析を元にしたRCTはある意味博打です.次の研究でどのようなデザインを組むのかは悩ましい話だと思いますが頑張っていただきたいです.できればPICSの評価も・・・
敗血症で人工呼吸管理を要する患者における死亡率と人工呼吸器非装着日数におけるデクスメデトミジンの効果:無作為化比較試験(DESIRE trial)
Kawazoe Y, Miyamoto K, Morimoto T, et al; for the Dexmedetomidine for Sepsis in Intensive Care Unit Randomized Evaluation (DESIRE) Trial Investigators. Effect of Dexmedetomidine on Mortality and Ventilator-Free Days in Patients Requiring Mechanical Ventilation With Sepsis: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2017, Mar21 [Epub ahead-of-print]

Abstract
【背 景】
デクスメデトミジンは人工呼吸管理下の患者に鎮静作用を与えるが,敗血症患者の死亡率や人工呼吸器非装着日数への効果についてはよく研究はされていない.

【目 的】
デクスメデトミジンによる鎮静戦略が人工呼吸管理を受ける敗血症患者の臨床アウトカムを改善できるかについて検討する.

【方 法】
本研究は2013年2月から2016年1月までに日本の8つの集中治療室において行われた,少なくとも24時間の人工呼吸管理を要する成人敗血症患者201例を連続的に登録したオープンラベル多施設共同無作為化臨床試験である.患者はデクスメデトミジンによる鎮静(n=100)またはデクスメデトミジンを用いない鎮静(対照群;n=101)を受ける群に無作為化された.両群で他に用いた薬剤はフェンタニル,プロポフォール,ミダゾラムであった.主要評価項目は死亡率と人工呼吸器非装着日数(28日間)とした.Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア(1,2,4,6,8病日),鎮静管理,せん妄・昏睡の発生,集中治療室入室期間,腎機能,炎症,栄養状態を副次評価項目として評価した.

【結 果】
203例の患者がスクリーニングされ,201例が無作為化された.平均年齢は69歳(標準偏差14年)であり,63%が男性であった.28日死亡率はデクスメデトミジン群と対照群で有意差はみられなかった(19例[22.8%] vs 28例[30.8%]; HR 0.69; 95%CI 0.38-1.22; p=0.20).28日での人工呼吸器非装着期間は両群間で有意差が見られなかった(デクスメデトミジン群中央値20日[四分位範囲5-24日] vs 対照群中央値18日[四分位範囲 0.5-23日]; p=0.20).デクスメデトミジン群は人工呼吸管理中の良好な鎮静管理率が有意に高かった(範囲17-58% vs 20-39%; p=0.01).その他の評価項目は両群間で有意差は見られなかった.有害事象はデクスメデトミジン群と対照群でそれぞれ8例(8%)と3例(3%)であった.
※本文より:APACHEⅡスコアが23以上のサブ解析ではデクスメデトミジン群が有意に死亡率が低かった(APACHEⅡスコア≧23:OR 0.39; 95%CI 0.16-0.91,APACHEⅡスコア<23:HR 1.13; 95%CI 0.36-3.57).

【結 論】
人工呼吸器を要する患者において,デクスメデトミジンの使用はデクスメデトミジンがない場合に比して死亡率や人工呼吸器非装着日数を統計学的に有意に改善した結果とはならなかった.しかし,本研究は死亡率については検出力不足の可能性があり,追加研究としてさらなる評価が必要である.

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# by DrMagicianEARL | 2017-03-22 18:59 | 敗血症 | Comments(0)
Post-Intensive Care Syndrome(PICS)~Life after ICU~ (1)総論
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■PICS「ピックス」という言葉を聞いたことがあるだろうか?PICSはPost-Intensive Care Syndromeの略であり,一言で言えば「ICU患者の後遺症」である.「ICU退室後の慢性期の概念なのであれば救急・集中治療医は関係ない」と思われるかもしれない.しかし実際には,ICU在室中も深くかかわってくる,近年登場した重要な概念である.ここにPICSについて概説する.
※本ブログ管理人のPICSに関連したeconomic COIとして,Pfizer株式会社より講演料,丸石製薬,日本静脈経腸栄養学会より原稿料を受け取っている.また,Academic COIとして日本集中治療医学会/日本救急医学会による日本版敗血症診療ガイドライン改訂特別委員会(PICS/ICUAWワーキンググループ),日本集中治療医学会による早期リハビリテーション検討委員会の集中治療における早期リハビリテーション~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~(ICUAWワーキンググループ)に所属している.

1.ICU患者のアウトカムをどうとらえるか?

■以下に2つの症例を提示する.
症例1.80歳女性.ADL自立,認知症なし,糖尿病既往.急性腎盂腎炎による敗血症性ショックでICUに入院,APACHE II score 30点,SOFA score 12点.28日後も生存.

症例2.80歳女性.ADL自立,認知症なし,糖尿病既往.急性腎盂腎炎による敗血症性ショックでICUに入院,APACHE II score 30点,SOFA score 12点.28日後も生存.
この2つの症例は1字1句まったく同じであり,いずれも治療によって28日間生存している.次に各症例の2年後はどうなっているだろうか?
症例1.車椅子生活となり,認知症が進行し,ADL低下による誤嚥性肺炎の入退院を繰り返し,心不全を併発して死亡.

症例2.杖歩行ではあるが外出も可能.認知症はごく軽度で,来週家族と旅行に行く.
この2つの症例は何が違ったのか?年齢,背景,既往,疾患,重症度すべて同じにもかかわらず,2年後にこのような違いがなぜでてくるのであろうか?

■集中治療の進歩により敗血症の予後は大きく改善し,集中治療は次なる目標に舵を切り始めている.近年,ICU患者の死亡率は28日死亡率だけでなく90日死亡率でも評価している報告が多い.これは,28日死亡率はプライマリアウトカムとしては妥当でない可能性が指摘されており[1],退院後もQOLの障害は続き,これが死亡率に影響を与える可能性がある.実際に,初期治療が不十分なケースや臓器不全を残したケースにおいては28日以上生存することも珍しくはなく,90日という期間で見れば28日死亡率より悪化しうることはよく知られている事実である.また,退院後でも後遺症が発端となって状態が悪化して再入院,死亡に至るケースなどもある.このことから,より長期的な患者状態の評価をアウトカムとする流れがでてきている.

2.長期的アウトカムに影響を与えるのは疾患そのものによる侵襲だけか?

■Nesselerら[2]はフランス単施設での敗血症性ショック96例の6ヶ月の長期予後を検討したところ,6ヶ月死亡率は45%であり,生存者は死亡者に比べて,有意に若く,乳酸値とSAPSⅡが低く,腎代替療法やステロイド使用頻度が少なく,入院期間が長い傾向があった.一方で,生存者でも6ヶ月後のQOLは低下していた.

■さらに,近年,敗血症をはじめとする,ICU退室後の生存者の長期的機能予後について非常に多数の観察研究が報告されるようになっている.例えば,ICUからの生存患者は長期的な認知機能や運動機能を悪化させる[3,4],PTSDの発生はレイプ,戦争の次にICU入院が多い[5,6],重症敗血症生存者は非重症敗血症患者と比較して1年間の福祉利用が増加する[7]など,ICU退室後の長期的な機能予後やQOLの低下を示唆する報告は多い.

■これらの長期的アウトカムの悪化について,「ICUに入室する患者は疾患そのものが重症なのだから,後遺症で長期的機能予後が悪化することは仕方がない.」とこれまで考えられてきたが,はたしてそうであろうか?ひとつの研究を紹介する.Givensら[8]は,米国の22の介護施設で認知症が進行した肺炎患者225例の前向き観察研究(CASCADE study)を行っており,登録された患者のうち,DNH希望(Do-not-hospitalized order;入院しない意思表示)が50.7%を占めていた.当然ながら,肺炎であることから抗菌薬を投与することで死亡リスクは80%減少し,DNHの意思表示は死亡リスクを2.21倍に有意に増加させた.一方,この研究はQOLも評価しており,人生最期のQOLを評価したEnd-of-Lifeスコアは抗菌薬投与や入院により著しく低下していたのである.このような身体機能が衰えだしたfrailtyの状態にある高齢患者は医療介入による影響が非常に大きい.すなわち,入院,医療行為もまた侵襲である.ICU患者においては医療介入による侵襲は非常に大きく,疾患そのものによる侵襲以外にも我々医療従事者が患者に与える侵襲の大きさを認識しなければならない.ICUとはいわば「Invasive Care Unit」とも言える.

■このように,集中治療の進歩によりICU生存退室患者は増えたが,同時に機能予後が悪い患者も増えてしまったのである.はたして,集中治療の最終ゴールは救命でよいのであろうか?

3.PICSという概念の提唱

■ここまで述べた通り,急性期は救命できても,長期的には死亡率上昇やQOLが低下しているという事実が無視できない状況であることが明らかにされてきた中で,2010年の米国集中治療医学会(SCCM;Society of Critical Care Medicine)の合同カンファレンスにおいて,ICU退室後の長期アウトカムを改善する指針が提示された[9].その中で,PICS(Post-Intensive Care Syndrome;直訳するならば集中治療後症候群)という概念が初めて提唱された.PICSの概念図を以下に示す.
※「集中治療後症候群」は2017年3月時点ではまだ正式な日本語名称としては認定されていませんので,使用する際はご注意ください.
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■PICSはICUで集中治療を受けた生存患者のみならず家族をも巻き込んでしまうこと,呼吸障害や神経筋障害などの身体的障害や認知機能障害のみならず精神的障害も生じうることを重要視している.救命のために不可避な治療行為の侵襲性は想像している以上に患者の長期予後に大きな影響を与えており,救命という短期予後改善の引き換えに医原性の長期予後悪化を伴うというジレンマが生じている.
※なお,用語の定義として,PICSはPost-ICU syndromeと言われる場合もあるが,PICSはICU在室中から生じうるため,この表現は適切ではない.

■ICU患者のPICSを踏まえた転帰の図を示す[10]
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■これまで,ICUで治療を受けたICU患者は救命か治療限界かの2択と考えられてきた.しかし,治療成績が向上し,多くのICU患者が救命されるようになってきた中で,ICU退室後に一般病棟に移ってそのまま軽快退院し,社会復帰するとは限らない患者,すなわちPICSに陥った患者も増加してきた.PICS患者には著しい機能低下により余生をどう過ごすかの判断が迫られる患者も存在し,慢性期のEnd-of-Lifeケアの対象となることがある.その一方で,リハビリテーションなどを積極的に行い,PICSから社会復帰を目指すこともできる.これまで救命のみを目指してきた救急・ICUの治療から脱却し,その先にある社会復帰を目指す上でPICSという概念は非常に重要である.

■現在,救急・集中治療分野において,PICSはEnd-of-Lifeと双璧をなす新たな課題となっているが,まだまだ質の高いエビデンスは少ない.Gaudryら[11]は2013年に報告された重症患者の112のRCTをスクリーニングしたところ,ハードアウトカム(死亡率,退院後のQOLと機能予後)を主要評価項目で報告していたのは27報(24%)であり,そのうち死亡率をアウトカムとしていたのが21報であり,機能予後とQOLはそれぞれ4報,2報しかなかった.598の副次評価項目でも,ハードアウトカムは133個(22%)にとどまり,死亡率が92個に対してQOLは20個,機能予後は21個であった.全体で見ても,ICU退室後のQOLや機能予後を評価していたRCTは11報(10%)に満たなかったとしている.

■また,2012年に発表された日本版重症敗血症診療ガイドラインもSSCG 2012やSSCG 2016にもPICSに関しては一切触れられていない.しかし,2017年に発表された日本版敗血症診療ガイドライン2016[12]においては,PICSは新たに大項目として追加されており,世界で初めてPICSをガイドラインで取り上げている(現時点では概説と早期リハビリテーション推奨に留まる).また,ガイドラインではないが,Global Sepsis Alliance(GSA;世界敗血症同盟)はWorld Sepsis Dayを通じて既に2014年からPICSを強調しており,GSA日本支部である日本集中治療医学会GSA委員会でもホームページを通じてPICSに関する情報を提供している[13]

4.PICSの原因となる医療介入と予防・治療

■長期アウトカムに影響を与える因子は数多くの報告があり,またそれらの因子に影響を与える因子も様々であるため,PICSの原因は非常に多岐にわたる.つきつめていけば,ほとんどすべての医療介入はPICSの原因となりうるのである.これらの医療介入側の原因を大きく3つに分けるならば,①検査・治療・ケア因子,②環境因子,③精神因子が挙げられる.詳細は各論で述べるが,大まかな内容を以下に示す.

■①検査・治療・ケア因子としては,各種薬剤の副作用,過剰輸液,血液浄化療法,挿管人工呼吸,各種カテーテル,各種血液製剤,体位変換,気道吸引,各種侵襲的検査などであり,ほぼすべてが何らかの侵襲を伴う.これらの対策で考えられるものとして,根拠の乏しい治療の回避,低侵襲治療,ABCDEバンドルを活用した人工呼吸器・ICU早期離脱,PADガイドラインを活用したせん妄予防,リハビリテーション,各種ルーチンの見直しなどが考えられる.

■②環境因子としては,アラーム音,光,閉塞空間,ICU環境菌による二次感染リスクなどがある.これらの対策としてICU環境整備,耳栓,音楽,アイマスク,接触感染予防の徹底などがある.

■③精神因子としては,不眠,ICU滞在による精神ストレス,自身の病状や社会的・経済的背景等に対する不安などがある.これらの対策として,患者や家族のメンタルケア,日記をつける,面会時間を見直す,などがある.

5.PICSの課題,エビデンスの注意点

■PICSへの適切な予防介入を行う以上はPICSそのもののリスク因子を知る必要があるが,様々な課題が山積している.

(1) 研究デザインのバイアス
■特定の医療介入が長期アウトカム悪化の原因となりうることを示唆する研究は多数存在するが,これらには注意が必要である.PICS関連を主要評価項目として検討したRCTは実はほとんど存在せず,観察コホート研究かRCT二次解析研究(多数の脱落例が生じる可能性あり)しかない.すなわち,質の低い研究結果にもとづいていることになる.これらの研究デザインでは種々の交絡因子の排除が困難であるがためにRCTと結果に乖離が生じうる[14]

■さらに,これらの研究では多変量解析を用いた研究が多いが,事後で組み込む変数を決定しているために恣意的バイアスがかかることになる.また,統計学的処理の限界により,重症患者に優先的に行われる医療介入が長期予後を悪化させるという偏った結果を招いてしまう懸念もある.

■近年,Propensity Score matching解析[15]により観察研究の質を高める手法もとられているが,解釈に注意を要する[16].この手法は,患者の背景因子をもとに,特定の治療介入が行われる確率(割り付け確率)を多重ロジスティック解析を用いて算出したスコア(Propensity Score:傾向スコア)を用いた解析であり,このスコアの近い患者同士(≒介入を受けるか否かがランダム)をマッチングしてペアを作ることで介入群と非介入群の背景をそろえることができる.ただし,できる限り多くの共変量を組み込まなければならないこと,マッチングの結果多くの症例が削ぎ落とされてしまうため母集団を反映するかどうかの妥当性が乏しくなりやすいこと(集中治療領域ではほとんどの研究が1/3~1/10まで削ぎ落とされている),マッチング後の患者背景がどちらかの群に偏ってしまうため観察研究のメリットであるリアルワールドの患者層と乖離が生じること,RCTに比してeffect sizeに乖離が生じる[17-20]ことなどの問題点がある.

(2) 先入観によるバイアス
■我々医療従事者は先入観によるバイアスが常にかかってくることがある.例えば「おそらく標準レベルよりもさらに強化された早期リハビリテーションはいいものだろう」もRCTで検証すると予後が悪化したという報告が近年でてきている[21,22].本邦ではRCTを行うことは難しいが,かといって観察研究のみで検証をすませてしまうと,このような逆効果などを見逃してしまう可能性がある.

(3) PICSをとりまく国・地域ごとの違い
■長期機能予後の評価に伴う多数の交絡因子の存在による信頼性の限界も存在する.そこには社会的要素もおおいに関与してくる可能性もあり,国や地域,患者の背景(医療福祉,宗教,文化,経済,社会,政治法律)にも左右されうる.このため,日本独自の長期予後の検討も必要である.しかしながら,長期予後の評価は追跡調査が必要なため非常に難しく,特にコホートシステムが乏しい本邦ではさらに困難となることが予想される.

■それを補助する手段としてDPC診療データの解析が目安になりうるが,DPC診療データは検査値などが含まれず,病名がアップコーディングされているケースもあるため,評価が難しい側面を有する.これらのことから長期予後の現状を把握するのは困難といえる.最良の評価方法はRCTということになるが,長期的に追跡しながらQOLを評価するアンケート調査を行うのは非常に難しい.現実的には大規模かつ質の高い前向きコホート研究に頼らざるを得ないと推察される.

(4) 治療ゴール設定
■PICSとなった患者が全員改善できるわけではない.医療の限界は必ず存在するため,そのような限界につきあたった患者においてはEnd-of-Lifeケアへの転換も必要である.いわゆる終末期とも言える状況の患者に栄養やリハビリテーションの積極的介入を行うことは合理的ではない.ICU患者においては,PICS予防・ケアによるQuality of LifeとEnd-of-LifeケアによるQuality of Deathを患者ごとに考える必要性がある.

(5) 代替アウトカムの解釈
■近年のPICSに関する報告や学会発表で多く見られるアウトカムは早期離床,せん妄,人工呼吸器装着期間,ICU在室日数,6分間歩行距離,ICUAWなどである.これらは確かにPICSを反映するのではないかと考えられているものではあるが,あくまでもPICSの短期代替アウトカムに過ぎない.PICSの真のアウトカムはPICS(退院後の各種機能予後)であり,そのような指標はある程度存在する.短期代替アウトカムはあくまでもICU介入しか反映せず,ICU退室後の切れ目ないケアがなければその効果は消える可能性もある.また,ICU退室後から退院後6ヶ月後,1年後といった長期機能予後評価には多数の交絡因子が関与しうるため,現時点では短期代替指標は確実にPICSを反映しうるものではないことに注意が必要である.

(6) その他
■その他の問題点として,PICSの実態を知るには日本はサーベランスシステムが脆弱であること,ICUでのリハビリテーションへの無理解(いまだにICUリハがレセプトで切られる地域が存在する),超高齢化社会における介入限界の問題,医療予算(診療報酬改訂)やソース(PT/OT/ST/施設)の確保が困難などがあげられる.

6.PICSの今後の展望

■今後行っていくこととして,まずPICSの実態を知るためのサーベランスシステムの構築である.そして,それらのデータからリスク因子等を抽出し,診断基準となるentry criteriaを設定しなければならない.その上でPICSへの予防・治療介入の厳密な研究を走らせる必要がある.

■現時点ではまだまだ定まっていないことだらけであるが,まずはPICSの周知が最優先であると米国集中治療医学会も考えているようである.同学会では様々な学会・団体を交え,2012年に2回目のステークホルダーカンファレンスを行った[23].そこでは,PICSの周知を進めること,ICU退室後も切れ目ないサポート体制を構築すること,そしてPICSの研究のための研究機関提携と資金確保の重要性が強調された.以下に今後行われるべきPICSの研究の分類を示す(2回目のカンファレンスより日本語に改変).
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■長期予後評価においてはQALYs[24]という概念がある.これはとりわけ薬剤経済学(Pharmacoeconomics)において重要視されている.QALYs(Quality Adjusted Life Years;質調整生存年)とは,生存年数とQOLを統合した指標である.すなわち,横軸に生存年数,縦軸にQOLを設定したときのKaplan-Meier曲線下面積がQALYsに相当する.現時点では目安となるような具体的数値目標設定は困難な状況にあるが,概念として知っておくとよいものである.

■今やPICSはEnd-of-Lifeと双璧をなす集中治療領域の新たな課題となっており,入院前から退院後までより幅広い視点での重症疾患のマネージメントが要求される時代に舵が切られている.PICSの患者は今後さらに増加することが予想されるが,PICSの予防を行うことが当たり前の時代が来ることを期待する.

→Post-Intensive Care Syndrome(PICS)~Life after ICU~ (2)各論:身体障害(4月上旬頃UP予定)

[1] Winters BD, Eberlein M, Leung J, et al. Long-term mortality and quality of life in sepsis: a systematic review. Crit Care Med 2010; 38: 1276-83
[2] Nesseler N, Defontaine A, Launey Y, et al. Long-term mortality and quality of life after septic shock: a follow-up observational study. Intensive Care Med 2013; 39: 881-8
[3] Pandharipande PP, Girard TD, Jackson JC, et al; BRAIN-ICU Study Investigators. Long-term cognitive impairment after critical illness. N Engl J Med 2013; 369: 1306-16
[4] Iwashyna TJ, Ely EW, Smith DM, et al. Long-term cognitive impairment and functional disability among survivors of severe sepsis. JAMA 2010; 304: 1787-94
[5] Kessler RC, Sonnega A, Bromet E, et al. Posttraumatic stress disorder in the National Comorbidity Survey. Arch Gen Psychiatry 1995; 52: 1048-60
[6] Davydow DS, Gifford JM, Desai SV, et al. Posttraumatic stress disorder in general intensive care unit survivors: a systematic review. Gen Hosp Psychiatry 2008; 30: 421-34
[7] Prescott HC, Langa KM, Liu V, et al. Increased 1-year healthcare use in survivors of severe sepsis. Am J Respir Crit Care Med 2014; 190: 62-9
[8] Givens JL, Jones RN, Shaffer ML, et al. Survival and comfort after treatment of pneumonia in advanced dementia. Arch Intern Med 2010; 170: 1102-7
[9] Needham DM, Davidson J, Cohen H, et al. Improving long-term outcomes after discharge from intensive care unit: report from a stakeholders' conference. Crit Care Med 2012; 40: 502-9
[10] 福家良太,井上茂亮,一二三享,他.Post-Intensive Care SyndromeとICU-acquired weakeness. ICUとCCU 2015; 39: 477-85
[11] Gaudry S, Messika J, Ricard JD, et al. Patient-important outcomes in randomized controlled trials in critically ill patients: a systematic review. Ann Intensive Care 2017; 7: 28
[12] 日本集中治療医学会/日本救急医学会合同日本版敗血症診療ガイドライン2016改訂特別委員会.日本版敗血症診療ガイドライン2016(J-SSCG 2016). http://敗血症.com/assets/jjsicm24suppl2.pdf
[13] 日本集中治療医学会GSA委員会(Global Sepsis Alliance JAPAN).敗血症.com(日本集中治療医学会敗血症情報サイト).http://xn--ucvv97al2n.com
[14] Anglemyer A, Horvath HT, Bero L. Healthcare outcomes assessed with observational study designs compared with those assessed in randomized trials. Cochrane Database Syst Rev 2014 ; 4 : MR000034
[15] Rousenbaum PR, Rubin DB. The central role of the propensity score in observational studies for causal effects. Biometrika 1983; 70: 41-55
[16] Rubin D. Estimating causal effects from large data sets using propensity scores. Ann Internal Med 1997; 127: 757–63
[17] Zhang Z, Ni H, Xu X. Observational studies using propensity score analysis underestimated the effect sizes in critical care medicine. J Clin Epidemiol 2014; 67: 932-9
[18] Dahabreh IJ, Sheldrick RC, Paulus JK, et al. Do observational studies using propensity score methods agree with randomized trials? A systematic comparison of studies on acute coronary syndromes. Eur Heart J 2012; 33: 1893-901
[19] Zhang Z, Ni H, Xu X. Do the observational studies using propensity score analysis agree with randomized controlled trials in the area of sepsis? J Crit Care 2014; 29: 886.e9-15
[20] Kitsios GD, Dahabreh IJ, Callahan S, et al. Can We Trust Observational Studies Using Propensity Scores in the Critical Care Literature? A Systematic Comparison With Randomized Clinical Trials. Crit Care Med 2015; 43: 1870-9
[21] Greening NJ, Williams JE, Hussain SF, et al. An early rehabilitation intervention to enhance recovery during hospital admission for an exacerbation of chronic respiratory disease: randomised controlled trial. BMJ 2014; 349: g4315
[22] AVERT Trial Collaboration group, Bernhardt J, Langhorne P, Lindley RI, et al. Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset (AVERT): a randomised controlled trial. Lancet 2015; 386: 46-55
[23] Elliott D, Davidson JE, Harvey MA, et al. Exploring the scope of post-intensive care syndrome therapy and care: engagement of non-critical care providers and survivors in a second stakeholders meeting. Crit Care Med 2014; 42: 2518-26
[24] Raisch DW. Understanding quality-adjusted life years and their application to pharmacoeconomic research. Ann Pharmacother 2000; 34: 906-14
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# by DrMagicianEARL | 2017-03-15 20:05 | 敗血症 | Comments(0)
「敗血症.com」(Global Sepsis Alliance JAPANのサイト)の御紹介
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■世界で3秒に1人が敗血症で亡くなっている,この危機的状況を改善させるため,「Stop Sepsis, Save Lives(ストップ敗血症,命を救え)」をスローガンに,敗血症患者のためにより良い管理体制を整えることを目的とし,致死性疾患である敗血症に対する認識を深めるための世界的活動を行う非営利団体である世界敗血症同盟(GSA;Global Sepsis Alliance)が2012年に設立されております.日本集中治療医学会がGSA日本支部としてGSA委員会を設立し,2015年にはホームページ「敗血症安心プラネット」を開設しております.GSAについては詳しくは以下の本ブログ記事をご参照ください.
http://drmagician.exblog.jp/24135078/

■このたび,2017年3月にホームページが大幅リニューアルとなり,ホームページの名前は「敗血症.com」に変わっております.コンテンツも大幅に増え,一般市民向けのQ&Aを用意した他,医療従事者向けコンテンツとして,日本版敗血症診療ガイドライン2016のpdfファイル,敗血症啓発パンフレット,敗血症の定義・診断の変更に関するスライドを置いております.今後も内容を充実させるべく適宜更新を行っていく予定です.是非ご参照ください.ホームページにはご意見フォームもありますので,敗血症についてもっと知りたいこと,このようなコンテンツを作ってほしい等の御意見もお待ちしております.
※私事ですが,このたび本ブログ管理人はこのGSA委員会に入ることとなりました.
敗血症.com(日本集中治療医学会敗血症情報サイト)
http://xn--ucvv97al2n.com


■また,今回,新たにGSA JAPANとして,シンボルマークを作りました.
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■新しいシンボルマークは5枚の花弁をもつ花です.敗血症の予防から社会復帰までカバーすべく,「予防」「早期発見」「感染症治療」「全身管理」「リハビリテーション」の5つの柱を花で表しています.これらをよりスムーズに進めていくには我々医療従事者のみではなく,一般市民までまきこんだ周知が必要です.今後のGlobal Sepsis Alliance JAPANの活動に一施設でも,一人でも御協力いただければ幸甚です.
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# by DrMagicianEARL | 2017-03-13 17:45 | 敗血症 | Comments(0)
■集中治療領域においては,非外傷性の貧血に対しては制限輸血と非制限輸血でアウトカムは同等,もしくは制限輸血の方が好ましいという結果が各RCTで得られており,その結果の目安として,Hb<7.0 g/dL(心疾患を有する患者では<8.0 g/dL)を輸血開始指標とすることが望ましく,ガイドラインでもそのように推奨されています.今回紹介する研究は,敗血症性ショックを発症した癌患者での輸血制限戦略の検討です.結果は,死亡率において制限戦略の方が予後不良の傾向がみられたというものです.

■ただし,こういう結果となった要因やlimitationは多数あると思います.ただでさえ敗血症にも感染巣による治療戦略の違いなどの要因があることに加え,癌患者という集団を対象にする以上,StageやPS,癌の種類も多彩で,敗血症で救命しても癌で死亡しうる(実際に90日死亡率は6~7割と非常に高い数字),癌患者集団はベースラインのHb濃度が低い,ということを考慮すると,単施設での300例では検討不十分となると思われます.また,輸血開始基準に関係なく,組織低灌流(高乳酸血症,低ScvO2)であるほど輸血で有意な改善が得られるという報告(Rev Bras Ter Intensiva 2015; 27: 36-43)もあり,敗血症病態でもこれが関与している可能性もあり,詳細な検討が必要です.

■もっとも,これまで制限群が非制限群よりも好ましい結果が得られていた根拠の大きな部分として白血球除去製剤の普及率が低さがあり,これは近年大きく変わっています.ABC study(JAMA 2002; 288: 1499-507)とSOAP study(Anesthesiology 2008; 108: 31-9)では白血球除去製剤の普及率は19%から76%に向上しており,それに伴って輸血を行うことによる有効性が増加しています.また,輸血製剤による感染症リスクも製剤管理の改善により大きく減少しました.よって,輸血の安全性が向上していくと,推奨されるHb閾値も変わる(上がっていく)可能性は否定できません.
重症疾患(敗血症性ショック)に罹患した癌患者における非制限vs制限輸血戦略:重症疾患癌患者における輸血必要性の無作為化比較試験
Bergamin FS, Almeida JP, Landoni G, et al. Liberal Versus Restrictive Transfusion Strategy in Critically Ill Oncologic Patients: The Transfusion Requirements in Critically Ill Oncologic Patients Randomized Controlled Trial. Crit Care Med. 2017 Feb 24. [Epub ahead of print]
PMID: 28240687

Abstract
【目 的】
敗血症性ショックの癌患者において,赤血球輸血の非制限戦略と比較して,制限戦略が28日死亡率を減少させるかについて評価した.

【方 法】
本研究は大学病院で行われた単施設二重盲検無作為化比較試験である.対象はICU入室から6時間以内の敗血症性ショックの成人癌患者とした.患者はICU在室中に赤血球輸血の非制限群(ヘモグロビン濃度<9g/dLで輸血)または制限群(Hb<7g/dL)に無作為化に割り付けされた.

【結 果】
患者は149例が非制限群に,151例が制限群に無作為割り付けされた.非制限群の患者は制限群の患者よりもより多くの赤血球輸血単位を受けていた(1[0-3] vs 0[0-2] 単位; p<0.001).無作為化から28日後の時点でICU在室期間や入院期間に差がなく,非制限群の死亡率(本研究の主要評価項目)は45%(67例),制限群は56%(84例)であった(HR 0.74; 95%CI 0.53-1.04; p=0.08).無作為化から90日後の時点で死亡率は非制限群の方が制限群よりも低かった(59% vs 70%,HR 0.72; 95%CI 0.53-0.97; p=0.03).

【結 論】
敗血症性ショックの癌患者においては,輸血制限戦略よりも非制限戦略の方が生存において好ましい結果が観察された.本結果は,既知の仮説および他の研究とは反対の結果であり,確認する必要がある.

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# by DrMagicianEARL | 2017-03-02 15:57 | 敗血症 | Comments(0)

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