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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

■久々の更新になります.今回は基礎研究ですがなかなか興味深かったのでとりあげました.

■肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)の代表的な毒素にpneumolysin(ニューモリシン)があります.肺炎球菌が気道に感染するとそこで増殖し,autolysin(オートリシン)により一定の割合の菌体が自己融解を起こし,ニューモリシンを放出します.ニューモリシンは感染した気道上皮細胞の細胞膜上にmembrane pore formationを形成して細胞膜を穿孔させ,細胞を死滅させます(J Mol Biol 1998; 284: 449–61).また,ニューモリシンはこれとは異なる機序でマクロファージのリソソーム膜を透過させてマクロファージのアポトーシスを誘導させることも知られています(MBio 2014; 5: e01710-14).さらに,RSウイルスのGグリコプロテインは肺炎球菌のペニシリン結合蛋白(PBP)1aに結合することでニューモリシンなどの毒素産生遺伝子の発現をアップレギュレーションし,RSウイルスと肺炎球菌の混合感染が重症度と死亡率を悪化させることも報告されています(Am J Respir Crit Care Med 2014;190:196-207)

■このように厄介な毒素ニューモリシンですが,マクロライド系抗菌薬は,抗菌作用以外にニューモリシン抑制効果を有することも知られています(Eur Respir J 2006; 27: 1020-5).今回,このニューモリシンによる毒素を投与されたマウスにNSAIDsを投与すると死亡率が悪化し,抗ロイコトリエン拮抗薬(モンテルカスト)を投与すると死亡率が改善されたという報告が出ましたので御紹介します(前者はアブストラクトになく本文参照).抗ロイコトリエン拮抗薬がこのような作用を有していたとは驚きでした.ぜひ臨床研究に繋げていただきたい知見です.また,敗血症や肺炎球菌肺炎ではNSAIDsはよくないであろうとは言われていましたが,今回肺炎球菌肺炎でのNSAIDsによる増悪機序(ニューモリシンに対する保護作用を有する12-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸をNSAIDsが抑制)がこのように分かったのは非常に興味深いなと思いました.
ロイコトリエンB4第2受容体はニューモリシンによる急性肺傷害から個体を防御する
Shigematsu M, Koga T, Ishimori A, et al. Leukotriene B4 receptor type 2 protects against pneumolysin-dependent acute lung injury. Sci Rep 2016 Oct 5;6:34560
PMID:27703200

Abstract
【背 景】肺炎球菌感染は世界的に深刻な問題であり,死亡率も高いにもかかわらず,肺炎球菌による致死的な分子機序は発見されていないままである.我々はロイコトリエンB4および12(S)-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸(12-HHT)のG蛋白共役受容体であるBLT2が肺炎球菌毒素ニューモリシン(PLY)による肺傷害からマウスを保護することを示した.

【結 果】BLT2欠損マウスにおいて,PLYの気道内投与は血管外漏出と気管支収縮を伴う致死的な急性肺傷害(ALI)を引き起こした.アナフィラキシーの低速反応物質として古典的に知られている大量のシステイニルロイコトリエン(cysLTs)がPLY投与肺から検出された.PLYに依存した血管外漏出,気管支収縮,死亡はCysLT1受容体拮抗薬の投与により著明に改善した.PLY刺激下では,血管内皮細胞および気管支平滑筋細胞に発現する,CysLT1により活性化された致死的血管外漏出と気管支収縮を誘導するcysLTsをマスト細胞が産生していた.12-HHTの産生を阻害し,PLYへの感受性を増加させるアスピリンまたはロキソプロフェンを投与されたマウスもまたCysLT1拮抗薬によって改善した.

【結 論】本研究ではPLY依存性ALIの分子機序を発見し,肺炎球菌感染によるALIに対する保護的治療手段としてCysLT1拮抗薬が使用できる可能性が示唆された.

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# by DrMagicianEARL | 2016-10-12 00:00 | 肺炎 | Comments(0)
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世界敗血症啓蒙月間(Sepsis Awareness Month) (1)2020年への目標
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■「Around every 3rd heart beat someone dies of sepsis(我々の心臓の鼓動が3心拍打つたびに誰かが敗血症で命を落としている)」.この敗血症の世界的な危機的状況を改善させるため,「Stop Sepsis, Save Lives(ストップ敗血症,命を救え)」をスローガンに,非営利団体である世界敗血症同盟(GSA;Global Sepsis Alliance)設立され,敗血症患者のためにより良い管理体制を整えることを目的とし,致死性疾患である敗血症に対する認識を深めるための世界的活動の一貫として,2012年に9月13日をWorld Sepsis Day(WSD;世界敗血症デー)と定め,世界各地で各種イベントが開催され,世界敗血症宣言が発表された.また,2015年からは9月全体を敗血症啓蒙月間に定め,さまざまなキャンペーン等が行われており,今年は第一回世界敗血症会議(World Sepsis Congress)も開催される.

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The World Sepsis Declaration(世界敗血症宣言)
 敗血症は先進国,発展途上国を問わず,世界で最もよく見られる,しかしながら最も認知度が低い疾患の1つである.世界的には年間2000万~3000万の患者が敗血症に罹患しており,その中には疾患新生児・乳児600万人以上,母体10万人以上が含まれている.世界では3-4秒に1人が敗血症で命を落としている
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 先進国では敗血症の罹患率は毎年8-13%の割合で劇的に増加しており[1],大腸癌と乳癌を合わせた数よりも多くの命を奪っている.理由は様々であるが,高齢者を含む全年齢層へのハイリスクな薬剤の使用,抗菌薬への耐性化の進行,毒素の多様化などが挙げられる.発展途上国においては,栄養失調,ワクチンや適切なタイミングでの治療を受ける機会の不足は全て敗血症死に寄与している.

 その警戒すべき発生率にもかかわらず,敗血症は一般市民にはほとんど知られておらず,しばしば血液の中毒と誤解されている.感染症に対する生体反応が自己の組織や器官に傷害を与えることにより敗血症が生じる.特に早期に発見され,適切に治療されない場合,ショック状態,多臓器不全,死に至ることがある[2].ワクチン,抗菌薬,救急治療などの先進医療で進歩が見らているにもかかわらず,敗血症は感染症を原因とする死亡の主因となっており,その院内死亡率は30-60%にも達する.

 この悪化の流れをくい止め,最終的に敗血症による死亡数の増加を減少に転じるたの適切な措置を講じるため,我々 ―世界的敗血症コミュニティー― は世界的行動を広く呼びかける.

 我々は必要な事前の行動を開始し,以下に示す5つの鍵となる目標に委ねることで,政府,開発者,プロフェッショナルな組織や健康管理団体,慈善家や後援者,民間部門,あるいは全社会から資源と支持を得られるよう,すべての関連した診療関係者に働きかける.

 2020 年までにこれらの目標を周知し,全世界で達成できる,段階的な発展計画を公に行うよう,我々は各国に呼びかける.

世界的目標(Global Goals)
1.敗血症の政策の課題化を行う(Place sepsis on the development agenda).敗血症の増大する医学的・経済的負担に関する認知度を上げることによって,敗血症に与えられる政治的な優先度を高める.

2.世界的に敗血症の与える影響を予防かつ制御する戦略が最も必要とされる人々に適切に提供できるようにするため,敗血症診療関係者と連携して活動する(Mobilize stakeholders)

3.敗血症の初期認知とより効果的な治療が行われるよう改善し,世界中ですべての人々に適切な予防と治療を可能にするために,国際的な敗血症ガイドライン[4,5]の遂行を支持する(Support the implementation of international sepsis guidelines)

4.地域および国レベルで敗血症の発症率を減少させ,敗血症の予後を改善させるための戦略を計画する上で,敗血症の生存者や敗血症遺族とも連携する(Involve sepsis survivors and those bereaved by sepsis)

5.十分な治療と敗血症患者において急性期でも長期ケアでも利用可能であるリハビリテーション施設とよく訓練されたスタッフを確保する(Ensure that sufficient treatment and rehabilitation facilities and well-trained staff)

2020年までの5つの目標(Key targets to be achieved by 2020)
1.敗血症を予防する戦略により敗血症発症率を世界的に減少させる(The incidence of sepsis will decrease globally through strategies to prevent sepsis)
 手洗い,清潔操作,公衆衛生の改善,栄養と清潔な水の供給,そして資源の少ない地域でのリスクのある患者集団におけるワクチン接種プログラムなど,良好な幅広い衛生実行を促進することにより,2020年までに敗血症発症率を20%減じる

2.早期の認知システムと救命救急治療の標準化の促進,採用により,全世界で小児(新生児を含む)と成人の敗血症生存者を増加させる(Sepsis survival will increase for children (including neonates) and adults in all countries through the promotion and adoption of early recognition systems and standardised emergency treatment)
 2020年までに,宣言を支持する国の急性期保健システム,地域,プライマリーケア組織の少なくとも3分の2は,ルーチン化された敗血症スクリーニングを急性期患者のケアに盛り込む.
 2020年までに,継続可能な送達系が,全ての国で利用できる効果的な敗血症コントロールプログラムを確保した状態にする.すべての国は,敗血症患者が国際的なコンセンサス・ガイドラインに従って最も重要な基本的な医療介入,抗菌薬,静脈内輸液を受けるまでにかかる時間をモニタリングする.
 2020年までに,小児(新生児を含む)と成人の敗血症生存率を2012年よりさらに10%改善させる.これは,敗血症レジストリーの設立によりモニタリング,提示され,Surviving Sepsis CampaignとInternational Pediatric Sepsis Initiativeの始動により改善がみられたことに基づき行われる.

3.敗血症の公的かつ専門的な知識と認識を改善する(Public and professional understanding and awareness of sepsis will improve)
 2020年までに敗血症を一般的に周知された言葉とし,緊急の医療介入を要することと同義とする.後の人達は敗血症の早期警戒徴候が何であるかについて非常によく理解する.日常的に治療の遅れが疑われるように,治療が必要であろうという家族の予測をより鋭敏にする.
 2020年までにすべての加盟国は,医療専門職の間で敗血症を学習する必要性を確立し,関連するすべての大学生や大学院生のカリキュラムにおいて,敗血症を医療の緊急事態としてトレーニングされることを盛り込むことを確実なものとする.

4.適切なリハビリテーション・サービスの利用(Access to appropriate rehabilitation services)により世界中のすべての患者を改善する.
 2020年までにすべての加盟国は,敗血症罹患患者の退院後も継続したケアの供給を行うよう標準化し,資源を確保する.

5.敗血症の世界的な観測(The measurement of the global burden of sepsis)と,敗血症のコントロールと管理の影響を著明に改善させる. 
 2020年までにすべての加盟国は,国際社会のデータ条件と一致しかつ相補的である,任意もしくは指示により敗血症レジストリーを確立し,敗血症を一般の健康問題として確立するのを補助する.国際社会は,国際的な敗血症レジストリの設立へ向けて働きかける.
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■東京オリンピックが開催されるのと同じ年である2020年までの目標が提示された.そして今年2015年も9月13日にWorld Sepsis Dayのイベントが世界中で開催される.GSAの設立の基礎となっている学術集団は,世界集中治療連盟(WFSICCN;World Federation of Society of Intensive and Critical Care Medicine),世界小児集中治療連盟(WFPICCS;World Federation of Pediatric Intensive and Critical Care Medicine),世界集中治療看護師連盟(World Federation of Critical Care Nurses),国際敗血症フォーラム(International Sepsis Forum),敗血症同盟(Sepsis Alliance)の5団体である.これらの団体に加え,70カ国の団体が参加している.

■日本集中治療医学会では,2012年3月のブリュッセルにおけるGSAの準備会議に参加し,World Sepsis Dayの趣旨に賛同し,8月には日本GSA委員会(中川聡委員長)を発足させ,活動を開始した.また,GSA Japanのホームページも開設された.
SEPSIS JAPAN 敗血症プラネットhttp://sepsisjapan.com/index.html


■今年は9月8~9日に第1回世界敗血症会議(1st World Sepsis Congress)がWeb上で開催され,インターネットで無料参加可能である.敗血症の豪華な専門家陣が多数講演されるので是非参加を.
http://www.worldsepsiscongress.org
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■日本では9月5~11日の6~24時にかけて,毎日6分おきに東海道新幹線の東京駅,名古屋駅,新大阪駅の改札口付近の大型スクリーンで敗血症啓蒙のためのデジタルサイネージを流す予定である.

[1] Vincent JL, Sakr Y, Sprung CL, et al. Sepsis in European intensive care units: results of the SOAP study. Crit Care Med 2006; 34: 344-53
[2] Kumar A, Roberts D, Wood KE, et al. Duration of hypotension before initiation of effective antimicrobial therapy is the critical determinant of survival in human septic shock. Crit Care Med 2006; 34: 1589-96
[3] Dellinger RP, Levy MM, Rhodes A, et al; and the Surviving Sepsis Campaign Guidelines Committee including the Pediatric Subgroup. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Severe Sepsis and Septic Shock: 2012. Critical Care Medicine 2013; 41: 580-637
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# by DrMagicianEARL | 2016-09-01 01:43 | 敗血症 | Comments(0)
■非心臓手術後のICU患者において,DEX(デクスメデトミジン,商品名プレセデックス®)がせん妄を予防するというRCTがLancetにonline publishされました.これまで,せん妄そのものにはDEXでは対処しきれないもののせん妄予防効果はさまざまな研究があるため,今回は予想された結果ではありますが,データを見ても,NNPは7.1と,予防的治療としてはなかなかすごい数値です.レジメンは,DEXを0.1μg/kg/hrで翌朝8時まで持続投与なので,実臨床でも無理のないやり方ですね.
非心臓手術後の高齢患者におけるせん妄予防としてのデクスメデトミジン:無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験
Su X, Meng ZT, Wu XH, et al. Dexmedetomidine for prevention of delirium in elderly patients after non-cardiac surgery: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 2016 Aug 16 [Epub ahead of print]
PMID: 27542303

Abstract
【背 景】
65歳以上の患者において,せん妄は頻回に生じる手術後の合併症であり,有害なアウトカムと予測される.我々はα2アドレナリン受容体高選択性アゴニストである低用量デクスメデトミジンの予防的投与が非心臓手術後の高齢患者においてせん妄発生を安全に減じることができるかについて検討した.

【方 法】
我々は中国北京の2つの三次医療病院において,無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った.インフォームドコンセントを得た,非心臓手術後に集中治療室に入室した65歳以上の患者を登録した.コンピューターで集約化した連続的な無作為化(1:1割り付け)を用いて,デクスメデトミジン静脈内投与(手術した日の集中治療室入室時から術後1日目の午前8時まで0.1μg/kg/hr)またはプラセボ(標準的生理食塩水静脈内投与)に無作為に割り付けた.参加者,治療にあたる医療従事者,研究者は,群割り付けをすべてマスクされた.主要評価項目は,手術後7日間で毎日2回ずつのConfusion Assessment Method for intensive care units(CAM-ICU)により評価されたせん妄発生とした.解析は,intention-to-treatと安全性評価の集団で行った.本研究はChinese Clinical Trial Registry, www.chictr.org.cn, number ChiCTR-TRC-10000802に登録された.

【結 果】
2011年8月17日から2013年11月20日までで,2016年に評価された700例が,プラセボ群(350例)またはデクスメデトミジン群(350例)に無作為に割り付けられた.術後せん妄の発生率はプラセボ群(350例中79例[23%])よりもデクスメデトミジン群(350例中32例[9%])の方が有意に低かった(OR 0.35, 95%CI 0.22-0.54; p<0.0001).安全性に関しては,高血圧の発生はデクスメデトミジン群(350例中34例[10%])よりもプラセボ群(350例中62例[18%])の方が有意に高かった(OR 0.50, 95%CI 0.32-0.78; p=0.002).頻脈もデクスメデトミジン群(350例中23例[7%])よりもプラセボ群(350例中48例[14%])の方が有意に高かった(OR 0.44; 95%CI 0.26-0.75; p=0.002).低血圧および徐脈の発生は両群間で差は見られなかった.

【結 論】
非心臓手術後に集中治療室に入室した65歳以上の患者において,予防的な低用量デクスメデトミジンは,手術後7日間のせん妄発生を有意に減少させた.その治療は安全であった.

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# by DrMagicianEARL | 2016-08-29 21:12 | 文献 | Comments(0)
■現在,敗血症性ショックにおける昇圧薬としてはノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が第一選択であり,cold shockでなければバソプレシン追加が考慮されうる(もっとも本邦ではステロイドの方が好まれ,バソプレシンは四肢末梢虚血の経験が原因で敬遠されがちではある).しかし,ノルアドレナリンはドパミンほどではないものの炎症増加作用を有するカテコラミンであり,バソプレシンの方が24時間後のサイトカイン濃度が低かったとする394例の研究がある(Am J Respir Crit Care Med 2013;188:356-64)

■死亡率評価では,現時点ではどちらが予後良好という明確なものはなく,7報RCT(2323例)メタ解析では死亡リスクのみならず心拍数,平均動脈圧,心係数,全身血管抵抗係数,DO2,VO2に有意差はみられていない(Mil Med Res 2014; 1: 6)

■敗血症性ショックに対するノルアドレナリンとバソプレシンVASST studyの二次解析においては,ステロイド非使用下ではノルアドレナリンの方が予後良好だが,ステロイド使用下ではバソプレシンの方が予後良好という結果が得られおり(Crit Care Med 2009; 37: 811-8),他にもステロイドとバソプレシンの併用が予後良好に関連したとする報告(Intensive Care Med 2011; 37: 1432-7)はあるが,近年Gordonらが報告した二重盲検RCT(61例のpilot study)では,バソプレシンに対するステロイド併用はバソプレシンの投与量・投与期間を減少させるものの,死亡率や臓器不全については有意差がみられなかった(Crit Care Med 2014;42:1325-33)

■今回紹介するVANISH trialは,敗血症性ショックに対するノルエピネフリンvsバソプレシン,およびステロイド併用有無での腎不全を同時に評価した2x2機能RCTであり,前述のpilot studyを報告したGordonらが検討している.今回はステロイドに関しては報告はなく,結果は,バソプレシンの方がやや好ましい傾向がみられるも有意差はなし,腎代替療法導入はバソプレシンの方が有意に少ないという結果であった.
敗血症性ショック患者の腎不全における早期のバソプレシンvsノルエピネフリン:VANISH trial
Gordon AC, Mason AJ, Thirunavukkarasu N, et al; VANISH Investigators. Effect of Early Vasopressin vs Norepinephrine on Kidney Failure in Patients With Septic Shock: The VANISH Randomized Clinical Trial. JAMA 2016 Aug 2; 316(5): 509-18
PMID:27483065

Abstract
【背 景】
ノルエピネフリンは敗血症性ショックにおいて,循環作動薬の第一選択として近年推奨されているが,早期のバソプレシン使用が代替として提案されている.

【目 的】
敗血症性ショック患者の腎不全における早期のバソプレシンとノルエピネフリンの効果を比較する.

【方 法】
本研究は,2013年2月から2015年5月に英国の18の成人ICUで行われた,ショック発症後最大6時間以内に輸液蘇生を行っても循環作動薬を要する敗血症性ショックの成人患者を登録した,二重盲検無作為化機能(2x2)試験である.患者は無作為に,バソプレシン(0.06 U/分まで漸増)とヒドロコルチゾン併用群(101例),バソプレシンとプラセボ併用群(104例),ノルエピネフリンとヒドロコルチゾン併用群(101例),ノルエピネフリンとプラセボ併用群(103例)に割り付けられた.主要評価項目は,(1)腎不全に全く進展しなかった患者の比率,(2)腎不全を発症または死亡した患者の生存中に腎不全のなかった日数の中央値として計測された,無作為化から28日までの期間で腎不全がない日数とした.腎代替療法,死亡,重篤な有害事象の頻度を副次評価項目とした.

【結 果】
計409例の患者(年齢中央値66歳,男性58.2%)が本研究に登録され,試験薬の投与時間中央値はショック診断後から3.5時間であった.腎不全に全く進展しなかった生存者数は,バソプレシン投与群で165例中94例(57.0%),ノルエピネフリン群で157例中93例(59.2%)であった(絶対差 -2.3% [95%CI -13.0% to 8.5%]).腎不全を発症または死亡した患者の腎不全のない日数の中央値は,バソプレシン投与群で9日間(四分位範囲[IQR], 1 to -25),ノルエピネフリン投与群で13日間(IQR 1 to -25)であった(絶対差 -4日 [95%CI -11 to 5]).バソプレシン投与群はノルエピネフリン投与群に比して腎代替療法の施行が少なかった(25.4% vs 35.3%; 絶対差 -9.9% [95%CI -19.3% to -0.6%]).死亡率は両群間で有意差は見られなかった.バソプレシン投与群では205例中22例の患者(10.7%),エピネフリン投与群では204例中17例の患者(8.3%)に重篤な有害事象があった(絶対差 2.5% [95%CI -3.3% to 8.2%]).

【結 論】
敗血症性ショックの成人において,バソプレシンの早期使用はノルエピネフリンと比して腎不全のない日数を改善しなかった.これらの知見は,本シチュエーションにおける初期治療として,ノルエピネフリンの代替としてのバソプレシンの使用を支持するものではないが,信頼区間は潜在的にバソプレシンの臨床的に重要な益を含んでおり,さらなる評価のため,大規模試験が必要である可能性がある.

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# by DrMagicianEARL | 2016-08-17 12:12 | 敗血症性AKI | Comments(0)
■最近の集中治療領域のリハビリテーションはなかなかいい結果がでませんね.今回はJAMA誌にpublishされたRCTですが,標準的リハビリテーション(毎日)は通常ケア(臨床チームが要請した場合のみ平日に理学療法)に比して入院期間,ICU在室日数,人工呼吸期間,その他多くのPICS関連項目に有意差はないという結果でした.ただし,PICS関連項目の結果の95%CIを見るに,標準的リハビリテーションの方がよい傾向はみられており,検出力が300例では足りなかった可能性も否定できません(とはいってもこれらは主要評価項目ではありませんが・・・).
急性呼吸不全患者における標準的リハビリテーションと入院期間:無作為化比較試験
Morris PE, Berry MJ, Files DC, et al. Standardized Rehabilitation and Hospital Length of Stay Among Patients With Acute Respiratory Failure: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016 Jun 28; 315(24): 2694-702
PMID: 27367766

Abstract
【背 景】
集中治療室(ICU)におけるリハビリテーションは急性呼吸不全患者のアウトカムを改善させる可能性がある.

【目 的】
急性呼吸不全において,標準的リハビリテーション(SRT)と通常ICUケアを比較する.

【方 法】
本研究はノースカロライナ州のウェイクフォレスト・バプティスト医療センターにおける単施設無作為化比較試験である.2009年10月から2014年5月までで人工呼吸器を要する急性呼吸不全でICUに入室した成人患者(平均年齢58歳;女性55%)をSRT群(n=150)と通常ケア群(n=150)に無作為化し,6ヶ月間追跡した.SRT群の患者は退院まで,受動的可動域訓練,理学療法,漸増抵抗運動を含む毎日のリハビリテーションを受けた.通常ケア群は,臨床チームから要請があったときにのみ平日に理学療法を受けた.SRT群では,リハビリテーションの中央日数(四分位範囲[IQR])は,受動的可動域訓練が8.0日(5.0-14.0),理学療法が5.0日(3.0-8.0),漸減抵抗運動が3.0日(1.0-5.0)であった.通常ケア群の理学療法の中央日数は1.0日(0.0-8.0)であった.両群とも,ICU退室時,退院時,2ヶ月,4ヶ月,6ヶ月時点で解析者盲検で解析を行った.主要評価項目は入院期間(LOS)とした.副次評価項目は人工呼吸日数,ICU在室日数,簡易身体能力バッテリー(Short Physical Performance Battery;SPPB),メンタルヘルスと身体機能スケールスコアにおける36項目Short-Form Health Surveys(SF-36),Functional Performance Inventory (FPI)スコア,Mini-Mental State Examination(MMSE)スコア,握力,ハンドヘルドダイナモメーターによる筋力とした.

【結 果】
300例の患者が無作為化され,LOSはSRT群で10日間(IQR 6-17),通常ケア群で10日間(IQR 7-16)であった(中央値差 0日[95%CI -1.5 to 3], p=0.41).人工呼吸期間,ICUケア期間に差は見られなかった.6ヶ月時点での握力(差 2.0kg[95%CI -1.3 to 5.4], p=0.23),ハンドヘルドダイナモメーターによる筋力(差 0.4lb[95%CI -2.9 to 3.7], p=0.05),SF-36身体健康スコア(差 3.4[95%CI -0.02 to 7.0], p=0.05),SF-36メンタルヘルススコア(差 2.4[95%CI -1.2 to 6.0], p=0.19),MMSEスコア(差 0.6[95%CI -0.2 to 1.4], p=0.17)に効果はなかった.6ヶ月時点でのSPPBスコア(差 1.1[95%CI 0.04 to 2.1], p=0.04),SF-36身体機能スケールスコア(差 12.2[95%CI 3.8 to 20.7], p=0.001),FPIスコア(差 0.2[95%CI 0.04 to 0.4], p=0.02)はSRT群でより高いスコアがみられた.

【結 論】
急性呼吸不全で入院した患者において通常ケアと比較してSRTは入院期間を短縮させなかった.

試験登録:clinicaltrials.gov Identifier: NCT00976833.

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# by DrMagicianEARL | 2016-07-07 09:34 | 文献 | Comments(0)

by DrMagicianEARL