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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

■敗血症発症時には,正常時と同じ体内水分量であっても,末梢血管拡張・抵抗低下によって血圧低下が起こる.よって十分な輸液を投与するだけでもある程度の昇圧は期待できる.逆に,十分な輸液負荷がない状態では,血管透過性亢進による絶対的血管内血液容量減少や血管内皮細胞の障害による微小循環不全,それによる主要臓器の機能低下などが生じる.よって,輸液負荷が十分になされていない早期からのカテコラミン投与は改善を得られない[1]どころか,低血圧や頻脈が助長されることになり,ショックバイタルや組織酸素運搬が悪化することにもなりかねない.よって,EGDTのプロトコル通り,大量輸液によりCVPがある程度安定してから,平均動脈圧(MAP)が65mmHgを保てないようであればカテコラミンを使用する
→平均動脈圧について詳しくはこちらを参照「重症敗血症における循環動態モニタリング(2)(MAP,PiCCO)

■SSCG 2008ではwarm shockにおけるカテコラミン第一選択薬をドパミン(DOA),ノルアドレナリン(NA)のいずれでもよいとしている.しかしながら,敗血症性ショック初期は末梢血管拡張を特徴としたwarm shockであり,血管トーヌスを戻す目的でのα1受容体刺激が原則とすべきであり,NAを用いることが病態生理学的に理にかなっている.DOAでα1受容体刺激を期待するためには10γを越える高用量が必要となり,β受容体という不必要な受容体刺激をしてしまうことを留意しておく必要がある.

■敗血症性ショックではβ1受容体のdown regulationが生じたり,β1シグナルが阻害されるため,DOAでは陽性変力作用が期待できないばかりか,β2受容体を介して血管拡張や頻脈が生じ,むしろ昇圧を妨げてしまう[2-5]

■細菌にもβ受容体は存在し,DOA,DOB5γ以上の投与で菌増殖やバイオフィルム形成を促進してしまう[6]

■β受容体は単球/マクロファージ,リンパ球,好酸球,肥満細胞にも発現し,単球/マクロファージやリンパ球では特にβ2受容体を介して炎症性物質の産生に関与する.結果としてDOA・DOBによるβ受容体刺激は,転写因子NF-κBを活性化させ,炎症性サイトカインや血管拡張性物質の産生を高めてしまう.また,マクロファージはβ受容体刺激により泡沫化傾向が高まり,一時的に炎症活性が高まった後に機能不全となることも確認されている[7].また,β受容体刺激でリンパ球のアポトーシスが進行したり[8],好中球の遊走能が阻害される[9]ことも報告されている.

■これらのことから,warm shockにおいてはNAを第一選択とすべきであり,DOAは推奨されない.実際に,DOAよりもNAを推奨する報告が相次いでおり[10-12],2011年4月にはNAがDOAより有意に死亡率が低いとするシステマティックレビューが報告された[13].一方,NAは循環動態改善,腹腔内臓器血流(splanchnic perfusion)も改善し,心係数も上昇させず,28日後の予後もよいとされ,輸入・輸出細動脈ともに拡張している敗血症性急性腎傷害に対してもNAは著効する[14]
【2012/2/21追加更新】2つ目のメタ解析が報告され(Crit Care Med 2012; 40: 725-30),ドパミンはノルアドレナリンよりも死亡率・不整脈発生率が高いと結論され,ノルアドレナリン第一選択を支持する内容となった.今後のEBMに組みこまれると思われる.⇒詳しくはこちら

■SSCGでは目標血圧は平均血圧≧65mmHgとしており,上限は定めていない.しかし,EGDTを行う患者の9%は,カテコラミンを注視しても血圧が高くなりすぎるケースがあり,この場合は平均血圧を90mmHg以下にしなければならない

■Warm ShockからCold Shockに転じる過程において,全ての血管が一斉に収縮に転じるわけではない.血管内皮細胞の障害度は部位によって異なり,ある部位は拡張していてもある部位は収縮しているという状態が併存する.重症病態では血液再配分機序(redistribution)が働き,脳,心臓などの重要臓器,組織へ血流がシフトし,皮膚,皮下組織,骨格筋,腸管などは真っ先に血液灌流が減少するため,部位によっては虚血の度合いが強く,早くに血管内皮細胞が傷害されてしまう.よって,血圧が回復しても臓器への血流灌流不全が続くことがあり,これをcryptic shock(神秘的ショック)と呼ぶ.血圧が維持されていても個々の臓器への血液灌流と微小循環は必ずしも保証されない.

■平均血圧が90mmHg以上に上昇したのは末梢血管が収縮に転じて後負荷が増大した可能性があるからである.心収縮力低下が軽度で済んでいる場合などではこのような血圧上昇現象が起こりえるため注意が必要である.この場合,末梢の微小循環が虚血状態に陥っている可能性があり,硝酸薬による末梢血管の拡張を行うべきである.

■warm shockの中にはNAに反応しないケースがある.乳酸蓄積によりATP依存性Kチャネルが開放し,Caが細胞内に流入できず,NOによる血管拡張の働きのみが残ることがあり,この状態はカテコラミン不応性である.このような病態においてはバソプレシンが有効とされている.バソプレシンは血管平滑筋を収縮させ,カテコラミンに対する反応性を改善し,血圧上昇に働く.本来は血圧が下がるとバソプレシンの血液中濃度は上昇する.

■実際に,敗血症罹患初期は血中バソプレシン濃度は一過性に上昇し,その後徐々に低下することが知られている[15].一般病棟ではこの低下の時期に敗血症が診断される場合も多い.NAとバソプレシンを比較したVASST study[16]では,28日死亡率に有意差がでなかったが,サブセット解析で低用量ステロイド療法を施行しなければならないような難治性warm shockにおいては,バソプレシンはNAより28日死亡率を有意に低下させたと報告している[17].実際,カテコラミン抵抗性の患者にNA単独とNA+バソプレシン併用を施行・比較検討したところ,併用した方が頻脈は減少し,平均動脈圧や心拍出量が増加,腸管血流が維持できたと報告している[18].また,バソプレシンには尿量とクレアチニンクリアランスを増加させることが報告されている[19].以上より,NAでも改善が得られないwarm shockに対してバソプレシン少量投与追加を推奨される

■低用量ステロイド療法については賛否両論がある.この効果の是非については別の項目で述べるが,近年,バソプレシンとステロイドの相乗効果が注目されており,ノルアドレナリン+ステロイド併用群よりもバソプレシン+ステロイド併用群の方が反応がみられるとの報告が2篇あり[18,20],バソプレシン使用中で反応が乏しい場合にヒドロコルチゾンによる低用量ステロイド療法の併用を考慮する.

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# by DrMagicianEARL | 2011-11-23 11:38 | 敗血症 | Comments(3)
■EGDTではショック出現後6時間までの輸液を重視している.これは単に血圧低下に対応しているだけではない(もっとも輸液のみで血圧が改善するケースも多いが).病態生理学的には敗血症性ショックに限ったものではなく,Alert細胞を活性化させるリガンドを希釈し,尿中排泄させる利点があるからであり,SIRS病態を抑える第一選択である[1,2].平均的には初期の6時間で晶質液を6-10L投与することが多い.

■敗血症における急性腎傷害(AKI)は,以前は他のAKIと同じく,高度の腎灌流の減少に伴う急性尿細管壊死(ATN)と考えられていた.しかしながら,実際にはヒトの敗血症性AKIの病理所見では尿細管の壊死所見がみられたのは25%未満と報告されている[3].Bellomoらの報告[4]では,敗血症においては腎灌流は減少しているどころか,逆にhyperdynamic stateのために増加していた.よって,現在では敗血症性AKIは輸出細動脈が高度に拡張し,糸球体内圧の低下が生じているために糸球体濾過率が減少していると考えられている.よって糸球体内圧を上昇させる輸液負荷,ノルアドレナリンによる血管収縮が有効である.

■2つのメタ解析で晶質液と膠質液では予後に有意差はないと報告されており[5,6],SSCG 2008ではこの2つの報告とコスト面から晶質液を用いることを推奨している.SAFE studyのサブ解析[7]においては重症敗血症への輸液負荷時は生理食塩水と比較してアルブミン投与が腎障害やその他臓器障害を起こさず死亡率を減らす可能性が示唆されたが,あくまでもサブ解析であり,新たな大規模RCTが必要である.アルブミンなどの膠質液は血管内ボリュームの早期改善とその効果の持続性がメリットではあるが,晶質液も十分量を投与すれば膠質液と同等の効果が得られる.また,どの種の輸液製剤が敗血症において優れているかというエビデンスはないが,そもそも研究した大規模スタディが少ない.

■生理食塩水は最も安価という利点がある一方で,大量急速投与で血中の重炭酸イオン濃度を希釈し,希釈性代謝性アシドーシスを起こしうる.また,高クロール血症も伴うと,重炭酸イオンはさらに減少し,代謝性アシドーシスが持続することがある.

■乳酸加リンゲルは,臨床的に乳酸が蓄積するような敗血症病態であっても,末梢組織の酸素代謝が改善して血中乳酸値が低下することから,ショック時でも頻用されている.その理由として,乳酸イオンそのものが生理的な物質であること,乳酸イオンも重炭酸イオンと同じくアルカリ化剤であること,他のリンゲル液に比して安価(118円)であることが挙げられる.一方で,乳酸代謝半減期は30分であるが,生体の代謝速度を上回る量が投与された場合は乳酸加リンゲル液投与による高乳酸血症を起こすことであり,特に肝不全や敗血症性ショックでは注意が必要である.また,乳酸加リンゲル大量輸液により,乳酸イオンの過剰負荷によるアルカリ化作用でショック回復後2-3日して高度の代謝性アルカローシスを起こすことがある.

■乳酸加リンゲルの問題点を解決したのが酢酸加リンゲルである(175円).さらに,細胞外補充液の中で最も生理的である重炭酸加リンゲルがあるが,高価(269円)であるのが難点である.

■以上の3種の細胞外補充液は,高価なものほどショック病態に向いてはいるが,実際の臨床的有意差は明らかではない.

■中心静脈圧(CVP)は前負荷(血管内容量)の指標として用いられ,これが低下することはすなわち心拍出量の低下につながり,組織酸素代謝に影響を与える.EGDTではCVPの目標値を8-12mmHgに設定している.しかしながら,近年,CVPは血管内容量の指標となりえない,CVPが輸液蘇生の指標としては不適切であるとの報告もあることを留意する必要がある.一方,CVPの呼吸性変動が1mmHg以上,あるいは5%以上あると輸液負荷により心拍出量が増加する反応群である,とも報告されており,CVPが正確に計測できない症例においてはこの指標を用いてもよいかもしれない.
→詳しくはこちら「重症敗血症における循環動態モニタリング(1)(ScvO2,CVP,PAC)

■ヒドロキシエチルスターチ(HES;ヘスパンダー®,サリンヘス®)は晶質液に比して凝固線溶障害を助長したり,急性腎傷害リスクが2倍になるなどリスクが指摘されてきており,実際に多くの研究報告で敗血症に対するHESによる有害事象が報告されている[8-11].重症患者の敗血症頻度や特徴を調査した多施設前向き観察研究であるSOAP研究[12]でもHES群は非HES群に比べ,敗血症発症率,死亡率が優位に高く,ICU入室期間,入院期間も有意に長かった.

■一方,Sakrらは2002年に行われたSOAP研究のデータベースから,HES投与の腎機能に及ぼす影響を抽出して検討したところ,HESは腎障害をきたす危険因子になりえないと結論づけており[13],SSCG 2008ではこれらの研究結果から「敗血症患者ではHESの投与によって急性腎不全のリスクが増大しうるが,多くの研究結果によりある種の輸液を限定的に推奨することはない」と控えめな見解で終わっている.

■しかしながら,Sakrの解析したSOAP研究ではHES投与は500-1000mL程度であり,腎に及ぼす影響を検討するには無理がある.そして,2008年に発表されたVISEP study[9]では輸液蘇生においてHESと乳酸リンゲル液のいずれかに無作為に割り付けて比較したが,途中段階でHES群で有害事象が有意に多いという理由で早期に中断された.最終的に評価可能であった患者537人において,28日死亡率は両群間で有意差がなかったものの,HES群では乳酸リンゲル液群よりも急性腎不全の頻度(34.9%vs22.8%)および腎代替療法の割合(31.0%vs22.8%)が有意に高かった.また,HESの累積投与量の増加とともに腎代替療法の頻度および90日死亡率が有意に上昇した.HESの腎障害については,膠質液の特徴である高浸透圧が関与している可能性がある[14].CRYCO研究グループの発表では,高浸透圧である膠質液を輸液蘇生に使用すると腎障害を発症する危険性が高まる(OR 2.48)という結果が報告されている[15].以上から,敗血症病態における初期蘇生でのHES製剤は用いるべきでない

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# by DrMagicianEARL | 2011-11-22 11:56 | 敗血症 | Comments(0)
4.動脈カテーテルと平均血圧(MAP)
■動脈カテーテル(AC)挿入については敗血症性ショックでは極力施行すべきかもしれないが,ショックでなければ挿入は不要と考えられる.理由としては,敗血症性ショック病態では後述の通りACの計測圧が正確でなく,カテーテル感染のリスクも中心静脈カテーテルより高いからである.

■圧波形がどのような管の中を伝わろうが,主に管の物理的特性により共振と減衰は避けられない.心臓から血管内を伝わる血圧波形も例外でない.大動脈内では末梢血管と違い,血管収縮の影響は少ないとされているが,大動脈弁部,弓部,横隔膜部,分岐部の心臓カテーテルで計測した圧波形を見ても,共振の影響で遠位になるほど波形が尖鋭化する[1].さらに末梢に伝わると,正常時は共振と減衰,反射の影響を受け,波形はさらに尖った波形となる,すなわち撓骨動脈では収縮期血圧は高く表示される.

■心臓近くの血圧波形は末梢からの反射の影響はないが,末梢の動脈圧は末梢からの反射の影響を大きく受ける.基本的に心臓からの圧に末梢からの反射波が少し遅れて加わるため波形の幅は広くなる.逆に反射の影響が少ないと細い波形になりやすい.末梢血管が拡張していると反射の影響が少なくなり,静脈圧に近くなり,末梢動脈での血圧上昇は抑えられる.敗血症性ショックなどで末梢血管抵抗が極端に低い場合は動脈カテーテルでの圧がむしろ異常に低くなることがあるので注意が必要である.実際,敗血症性ショック患者の撓骨動脈にカテーテルが挿入されている状態で手を握ることで末梢血管抵抗を高めると血圧は10mmHg程度容易に高く表示される.

■このように,動脈カテーテル圧は共振だけでなく末梢血管抵抗にも左右されるが,非観血的血圧(NIBP)は末梢血管抵抗の影響をほとんど受けず,上腕よりも心臓側の圧をよく反映しているので,NIBPは末梢血管抵抗の変化や圧測定回路による圧変化に左右される撓骨動脈カテーテル圧よりも信頼度は高い.一方で,中心部の大動脈圧をより正確に反映するのは鼠径動脈であると報告されており[2],血圧の正確さで見れば撓骨動脈よりも鼠径から動脈カテーテルを挿入する方がよい.ただし,感染リスク上昇を加味する必要がある.先述の内頸と大腿での静脈カテーテルでの感染率に有意差がないという報告[3]は動脈カテーテルでそのままあてはまるわけではない.実際に中心静脈カテーテルでの感染確率は一定である[4]のに対し,動脈カテーテルの感染確率は留置日数に比例すると報告されている[5].短期で抜去できる見込みがあるのであれば大腿動脈が推奨されるが,最終的には主治医の判断ということになる.

■一方で,NIBP(非観血的血圧:自動血圧計による測定値)にも測定機器の違い,カフ選択,カフ装着部位,不整脈,体動など様々な誤差要因が存在する.また,NIBP測定器は本来は高血圧の検知を目的にしているよう精度が設計されており,それゆえに特に低血圧時には正確性に欠けると指摘する論文がいくつかある[6,7].しかし,平均動脈圧<65mmHgの患者群に対してNIBPと動脈カテーテル圧を比較した報告では,NIBPが十分な代用となる可能性が示されている[8].加えて,先の撓骨動脈カテーテル圧の誤差要因を考慮すれば,敗血症性ショックにおいてはNIBPの方が正確と言える.それでも動脈カテーテル挿入が必要な理由は,頻回の採血が必要であることに加え,血圧のみならず連続的な血圧変化がとらえられ,呼吸性変動などの波形変化から得られる情報も非常に有用であるからである.

■なお,ゼロ点は心臓の高さに合わせるのが基本である.しかし,動脈カテーテル圧と異なる場合は,便宜的にNIBPの平均血圧に合わせて圧トランスデューサの高さを変えることがよく行われているが(1cmあたり0.736mmHg変化する),先述の通り,末梢血管抵抗が急性期に大きく変化する敗血症性ショック病態においてはこの方法は行うべきではない.

■血圧には,収縮期血圧SBP,拡張期血圧DBP,平均血圧MAPの3つの数字がある.重症管理患者におけるそれぞれの臨床的な意義は,
SBP:左室後負荷と動脈性出血リスクに関与
DBP:冠血流の決定因子
MAP:心臓以外の臓器灌流の決定因子
となる.血圧が低いことが問題になるのは臓器血流量が減少するからであり,それを決定するのは冠血流を除いてはMAPである.よって,集中治療においてはMAPが最も重視されるべき項目である[9].NIBPの場合はMAPを以下の式から推測する.

MAP=DBP+(SBP-DBP)/3=SBP/3 + DBP×2/3

つまり,MAPを推測する場合,DBPがSBPの2倍重要であることを意味しており,敗血症性ショックにおいてはSBPの価値は高くない.実際に敗血症においてはMAPが60mmHgと28日死亡率の関連が強く,SBPと死亡率の関連閾値は見出せなかったと報告されている[10]

■血圧89/68と102/50では,昔のショックの定義であれば前者がショックで後者が正常である.しかし,MAPを見ると前者は75,後者は59であり,後者の方が臓器灌流障害が生じている可能性がある.このように,SBPを当たり前のように臨床で使用しているとショックを見逃す可能性があること肝に銘じる必要がある.

5.肺経由動脈熱希釈法(PiCCOシステム)
■CVP,PAWPについては,近年その信頼性におおいに疑問を持たれている[11,12].所有施設は限られるが,近年,CVPやPAWPに代わる指標として,肺経由動脈熱希釈法(PiCCOシステム)による計測値が研究されている.

■PiCCOの測定原理は,①脈圧波形解析(CO, ABP, HR, SV, SVR),②熱希釈法(CO, GEDV, ITBV, EVLW)である.PiCCOにより計測される心拡張末期容量global enddiastolic volume(GEDV)と胸腔内血液容量Intrathoracic blood volume(ITBV)が血管内容量の信頼性のある指標として報告された[12,13]

■また,肺血管外水分量としてEVLWが,肺血管の透過性指数としてPI(permeability index : PI=EVLW/ITBV)が注目されている.EVLWについては,2004年に動物実験モデルを用いて,PiCCOで計測されるEVLW値が,肺血管外水分量測定のgold standardである重量計測法による測定値とよく相関することが示されている[14]

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# by DrMagicianEARL | 2011-11-19 16:24 | 敗血症 | Comments(0)
■重症敗血症においては中心静脈カテーテルを全例で挿入し,管理すべきである.その上でモニタリングするのは中心静脈酸素飽和度(ScvO2),中心静脈圧(CVP)である.

■内頸静脈カテーテルと大腿静脈カテーテルの比較では肥満例(BMI>28.4)を除いて感染の確率に有意差がないという衝撃的な多施設RCT「Cathedia Study」が2008年に報告[1]されていることから,感染予防目的の観点ではどうやら必ずしも内頸静脈から中心静脈カテーテルを挿入しなければならないわけではないようである.いずれにしても,中心静脈圧を正確にモニタリングするために,出来る限り右房近くのベストポジションにまで留置する必要がある.しかしながら,実際には右房よりやや末梢側に留置されることが多く,大腿静脈からの挿入では位置が不適切になりやすいため,できれば内頸静脈から挿入すべきかもしれない.

1.中心静脈酸素飽和度(ScvO2)
■ScvO2の持続モニタリングはPreSep CV Oxymetory Catheter®という特殊な中心静脈カテーテルを用いる.しかしながらコストが高く,導入している施設も限られている.そこで,中心静脈血を採取し,血液ガス分析機にかけてSO2の項目を見るとよい.蘇生期は1-2時間毎に計測を行う.

■肺動脈カテーテル(Swan-Gantzカテーテル)で得られる混合静脈血酸素飽和度SvO2は酸素需給バランスの指標であり
 SvO2=SaO2-VO2/(1.34×Hb×CO)
で表されることから,SvO2の決定因子は動脈血酸素飽和度SaO2,酸素消費量VO2,Hb濃度,心拍出量COの4因子である.SaO2が正常であれば(SaO2はSpO2で判断できる),SvO2は全身の酸素消費量と酸素供給量の比に反比例することがわかる.すなわち,SvO2は全身の酸素供給量バランスの指標として臨床的に重要な意義をもつ[2-5].重症敗血症病態のような組織低灌流状態では,組織における酸素供給量を酸素消費量が上回るため,SvO2の低下を認める.

■SvO2の正常値は70-80%である.敗血症初期はSvO2はhyperdynamic stateにより上昇する.さらに病態が進行すると,末梢組織の灌流障害が生じSvO2は低下に転じる.60%以下になると前身の酸素需給バランスがうまくいかなくなっている状況が出現している.50%以下になると,生命に危険な状態が近づいていることを示しており,緊急に対策を立てる必要がある.SvO2は終末細動脈の酸素飽和度を反映する.組織への酸素拡散には終末細動脈での酸素分圧40mmHg以上を必要とし,ヘモグロビン酸素解離曲線においてこれは酸素飽和度70%に相当する.

■実際にはSvO2を測定するには肺動脈カテーテルを挿入しなければならないが,重症敗血症全例に施行するのはナンセンスである.そこで,SvO2の代用として頸静脈からの中心静脈カテーテルで計測するScvO2計測が簡便で有用である.このことから,ScvO2≧70%という目標が設定されている.

■しかしながら,重症化してもScvO2が正常や高値を示すケースがある.そのようなケースにおいては,組織に酸素が行かず静脈系に帰ってきている,すなわち組織酸素代謝異常により酸素利用障害が生じている可能性を留意する必要がある.そのため,ScvO2は乳酸値とセットで評価する必要がある.実際,敗血症性ショック後期のScvO2高値は死亡率と有意に関連することが報告されている[6].この報告によると,生存者の平均ScvO2が72-87%(中央値79%)であるのに対し,死亡者の平均ScvO2は78-89%(中央値85%)となっている.

■なお,末梢や大腿静脈などから採取した静脈血酸素飽和度はScvO2と有意差があるため,ScvO2の代用とするのは不適切である[7]

2.中心静脈圧(CVP)
■中心静脈圧(CVP)は前負荷(血管内容量)の指標として用いられ,これが低下することはすなわち心拍出量の低下につながり,組織酸素代謝に影響を与える.EGDTではCVPの目標値を8-12mmHgに設定している.しかしながら,近年,CVPは血管内容量の指標となりえない[8],CVPが輸液蘇生の指標としては不適切である[9],との報告がある.実際,輸液による蘇生の指標として,心室充満圧を用いることの限界はよく知られている[10,11]

■CVPは心拍出量と静脈還流量の両者を有用な指標としては,肺経由動脈熱色素希釈法(PiCCOシステム)による胸腔内血液容量指数(ITBVI)があるが[12],行える施設は限られる.輸液負荷の指標としてどの施設でも行え,簡便なものとしてはCVP以外にはなく,CVPでも十分に有用であるとする報告も多い[13-17].実際にVASST study[18]では,CVP 8-12mmHgとしたEGDT群とそれ以外のCVPの群では死亡率はAPACHEⅡとは独立して有意にEGDT群で低いことを考慮すると,現時点ではPiCCOシステムなどの他の代替がきかない施設ではCVPを指標にした大量輸液療法が妥当と言わざるを得ない.

■一方,近年,ある一点における生体情報(静的パラメータ)よりも,生体情報の呼吸性変動などの動的パラメータの方が,輸液反応性の指標として有用とされている[19-22].この観点から,CVPの呼吸性変動に着目してその輸液反応性について検討し,その有用性が報告されている[23,24].具体的には,CVPの呼吸性変動が1mmHg以上,あるいは5%以上あると輸液負荷により心拍出量が増加する反応群である,としており,CVPが正確に計測できない症例においてはこの指標を用いてもよいかもしれない.

ICUに入室した重症疾患で,CVPが指標になるのは12時間後までで,12時間後の累積In/Outバランスが+3Lのときに予後が最もよい[25]

3.肺動脈カテーテル(PAC)
■CVP,PAWPのモニタリング目的でPACは循環動態管理で頻用されてきた.重症敗血症でも管理に非常に有用であるのかと思う人も少なくはないが,近年では心疾患以外でのPACの有用性に関しては否定的見解が多い.

■1988年にShoemakerらがPACを用い,supranormal valueを指標としたgoal-directed therapyという手法を発表した[26]のを皮切りに,敗血症に代表される重症症例にPACを挿入する施設が頻発した.しかし,その後,このgoal-directed therapyを用いたGattinoniらによる大規模試験では重症患者における予後の改善は認めなかった[27].1996年にはICU入室患者5735例の大規模比較コホート研究が行われたが,PACの使用により死亡率,入院日数,コストは増加し,PACは有用でないとの報告がなされた[28].これらの報告を受け,PACについて賛否両論,議論が百出するという状況が続いた.

■2003年にはPACを使用しても敗血症,ARDSなどの重症患者の予後が改善しないが,その半面,その使用によって死亡率が高まることもないという大規模無作為試験の結果が報告されている[29,30].英国ICUにおける1041人の重症患者を対象にしたBritish PAC-Man studyにおいてもPACは有害でないが,はっきりとした有用性は見出されていない[31].ARDS Net-WorkはARDSの管理におけるPACとCVCの比較を検討した(PAC study and FACCT).このRCTではPACとCVCの使用効果は有意差がなかった[32]

■Shahらは,これまで行われた13のRCTを用いてメタ解析を行い,重症患者に対するPACの使用は死亡率の増加をもたらさないが,かといって明らかな利益をもたらさないと結論した[33].しかしながら,彼らは同時にPACから得られる情報に対する適切な治療法が確立していないことが大きな原因であるかもしれないと述べている.

■以上から,重症敗血症に対してPACを挿入することによるメリットはCVCと変わらず,コストのことを考慮すると用いるべきではない.ただし,重度の低心機能状態や大動脈弁狭窄症などを重症敗血症に合併した症例においてはPACは推奨されうる.これは,低心機能状態や重症ASにおいては輸液許容領域が狭く,コントロールが困難であるからである.

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# by DrMagicianEARL | 2011-11-13 11:26 | 敗血症 | Comments(0)
■敗血症性ショック全例に酸素投与を行う理由は,諸臓器が灌流障害による酸素欠乏状態にあるからである.たとえパルスオキシメータでのSpO2やPaO2が正常値を示していても,それが体内臓器に酸素が足りている根拠にはならない.別の項でも解説するが,ScvO2が正常値であっても酸素が足りているとは限らないケースがある.

■組織の酸素需要増加に見合った酸素供給がなされていない状態では,相対的虚血により嫌気性代謝が亢進し,H+や乳酸の産生が高まり,代謝性アシドーシスが進行する.呼吸数増加はこの代償機構の現れである.呼吸代償によっても平衡が保てなくなったとき,アシデミアが出現し,酸素解離曲線が右方にシフトするため,肺におけるヘモグロビンの酸素飽和度が低下することを念頭におかなければならない.よって,PaO2 100-150mmHg程度になるような酸素投与が急性期は優先される.

■挿管適応のない敗血症性ショック全例に非侵襲的陽圧換気NPPV(主にCPAP mode)を装着開始するとよい.理由は,循環動態管理,臓器障害を防ぐためにも大量の輸液は不可避であり,それに伴う肺間質浮腫のリスクも高まるためである(敗血症性ショックではある程度うっ血をきたしてでも大量輸液が優先される).事前にNPPVを導入することで,患者の速やかなNPPV受けいれができ,さらに間質浮腫をおさえることができる.また,肺血管拡張により肺胞に隣接する血流が速まり,ガス交換効率が減少し,シャントが出現するが,CPAPをかけることで肺胞が膨張し,肺毛細血管が扁平化し,シャントが減少する.

■あくまでも増悪時は挿管人工呼吸を行うことを念頭にすべきであるが,ある程度までの呼吸不全患者に対して良好な補助換気を与え,挿管を回避できる可能性がある.

■人工呼吸器患者では現在肺保護療法が原則であり,「肺胞虚脱をつくらず,肺胞を開き続け,酸素濃度は低く保ち,過大な圧・容量負荷を避ける」に集約される.具体的な戦略としてopen lung strategy,低1回換気量換気,高二酸化炭素血症の許容(permissive hypercapnia)があり,とりわけALI/ARDSリスクが非常に高い敗血症病態においてはALI/ARDSにおける換気療法に準じた呼吸管理が必要である.

■重症敗血症において鎮静を行う理由は,酸素消費量の軽減だけではない.敗血症病態に限らず,SIRS病態では,その初期には交感神経緊張により血漿カテコラミン濃度が高まっている.実際に呼吸が促迫していることなどからも交感神経緊張度を評価できる.しかし,このような交感神経緊張度は長く持続できるものではなく,やがては内因性カテコラミンが枯渇し,ショックが具現化される.交感神経緊張状態を早期より回避し,生体のホメオスタシスをコントロールする必要があり,ここに鎮静と鎮痛の役割がある.

■近年,交感神経と副交感神経のバランスは,免疫担当細胞に影響を与えることが分子レベルでも明らかにされてきている[1-3].アドレナリン作動性β受容体は,心血管系に限らず,単球/マクロファージ,リンパ球,好酸球,肥満細胞にも発現し,単球/マクロファージやリンパ球では特にβ2受容体を介して炎症性物質の産生に関与する.結果として,β受容体刺激は,転写因子NF-κBを活性化させ,炎症性サイトカインや血管拡張作用のあるiNOS,プロスタノイドの産生を転写段階で高める.また,β受容体刺激によりマクロファージは泡沫化傾向が高まり,一時的に炎症活性が高まった後に機能不全となることも確認されている[4].このような観点からも,単球やリンパ球などの性状を維持させるために,敗血症の病態では鎮静の抗炎症作用が期待される[5]

■一方,副交感神経活性は,敗血症病態の炎症活性を抑止することや,単球/マクロファージの活性を低下させることが確認されている[6,7]

■以上の観点から,敗血症病態の交感神経緊張をまず鎮静,鎮痛により緩和し,さらに鎮静のレベルに日内変動をもたせ,交感神経と副交感神経の緊張バランスを1日の中でバランスよく変化させることにより,免疫担当細胞のホメオスタシスを維持できる.鎮静はSSCGにおいても積極推奨されている.また,同様の作用であるβ遮断薬が近年敗血症治療のひとつとしてその効果が期待されている.

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# by DrMagicianEARL | 2011-11-12 12:01 | 敗血症 | Comments(0)

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