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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

Summary
・海外ではDICそのものは治療せず,原疾患治療のみであるのに対し,本邦では多数のDIC治療薬が存在する.
・DICは消費性凝固障害,虚血性臓器障害,炎症性臓器障害の3つの障害を有する.
・近年,炎症と凝固のCross-talkの概念が提唱され,コンセンサスを得ており,炎症性疾患とDICの増悪の機序として理解されている.
・DICは多臓器不全の原因となりうる.
・敗血症性DICは治療のみならず,敗血症の早期治療によるDIC予防も重視されるべきである.

■播種性血管内凝固(DIC:Disseminated Intravascular Coagulation)の原因疾患として敗血症は主たる病態の1つであり,敗血症に続発する重篤疾患と捉えられてきた.それゆえ,DICを“Death is Coming.”と揶揄されたこともあった.しかしながら,近年,敗血症病態は炎症と凝固のcross-talkにより相互に作用して過剰状態に至るものであることが分かっており,DICを敗血症に続発する一疾患として捉える時代は終焉を迎えた.

■DICの二大症状は、出血症状と臓器症状であるが,臨床症状が出現すると予後不良となるため(厚労省研究班の疫学調査では死亡率56%),臨床症状の出現がない時点で治療開始できるのが理想である.DICは従来の①②に新たに③を加えた,3つの障害が本体であると現在は考えられている.

①消費性凝固障害(PLTや凝固因子の減少)
②虚血性臓器障害(血栓による虚血性微小循環障害)
③炎症性臓器障害(細胞傷害性因子放出や血管内皮細胞傷害による炎症性微小循環障害)

すなわち,DICを単純な凝固線溶の異常としてだけ捉えるのは間違いであり,凝固線溶反応と免疫炎症反応の異常がcross talk(密接な相互連関)して生じるcytokine stormと理解するのが正しい.そうしたcross talkの分子機序には既に詳細な検討がなされている.臨床的にも,SIRSが重症化して敗血症から重症敗血症へ,さらには敗血症性ショックへ進むにつれてDICの合併率が高まり,MODSによる死亡率も上昇することが知られている.このように炎症の程度とDICの発症率が相関することからも,凝固と炎症のcross talk(相互連関)が強く示唆される.さらに,最近では,凝固炎症cross talkからMODSに至る過程,すなわち“sustained SIRS+DIC=MODS”の構図についても全体像が明らかにされている.DICを発症した際には,過剰に産生されたthrombinによりfibrin形成が生じ,播種性fibrin沈着を起こすことで虚血性臓器障害に至る.これにPARs(Protease Activative Receptors)が関与することで,炎症凝固が病的生体反応として振舞い,MODSを起こすと考えられている.

■加えて,DICにおける微小循環が障害されると,治療薬が該当部位にdeliverできない状態に陥り,治療効果が得られなくなる.これを防ぐ上でもDIC治療は必要であり,DICを治療することで他の治療が奏功しやすくなる相乗効果も期待される.

■PARsは4種類あり,その発現は血小板,単球,好中球,リンパ球,ならびに血管内皮細胞をはじめとする全身の細胞に認められ,多彩な生理作用を発揮すると同時に,CICTで中心的役割を担って病的生体反応を助長している.臨床的にはARDSなどにおいて,PARsとDIC/MODSの関係が調べられている.ARDSでは肺や血管内にフィブリン血栓が生じ,およそ2/3の症例でDICを合併するが,その全てにおいてPARsの発現が認められる.そして,PARsをブロックすることで凝固と炎症の両面が抑制でき,臓器障害もある程度まで軽減可能なことが示されている.

■このように,炎症と凝固の関係はこれまで重症化に向かう車の両輪と考えられてきており[1],炎症,凝固それぞれに対する治療が互いに相乗効果をもたらす.最近はさらにすすんで,2つは不可分と考えられるようになってきている.すなわち,炎症と凝固を一纏めにした治療戦略が最新の考え方である.よって,DICを単なる敗血症続発性疾患と捉えてはならない.敗血症初期から凝固系は亢進してきており,DIC発見の契機となる血小板低下は凝固亢進の成れの果てを見ているに過ぎず,より速い治療介入が必要となる可能性を有する.DICは敗血症病態の進行レベルの指標という考え方も必要である.

■海外と本邦の敗血症治療法の大きな違いとして,DIC治療の有無がある.すなわち,欧米ではDICは原疾患治療により改善すると考えられており,DIC治療はほとんど行われない上,行ってもヘパリン投与に留まる.DICに効果を示すであろうrhAPC製剤が海外にはあったが,これはDICではなく敗血症に対する治療薬として承認を受けた薬剤である(2011年11月に販売中止).一方,本邦ではプロテアーゼ阻害薬,アンチトロンビン製剤などの抗DIC治療薬が開発,使用されており,DICに対しての治療が積極的に行われている.そして近年,リコンビナント・トロンボモデュリン(rTM)製剤が本邦で開発,使用開始となり,DIC治療は大きな転機を迎えている.現在,rTM製剤は米国でPhaseⅢに移行しており,海外での大規模比較試験の結果が待たれるところである.

■何よりも重要なのはDICの治療ではなくDICの予防であるが,その警鐘がDIC先進国である本邦でもまだ浸透していない.重症敗血症においてEGDT,ELGTをはじめとする適切な初期蘇生バンドルの施行を行うことで血管内皮細胞傷害を主体とする敗血症性DICの発症を抑える,もしくは発症しても軽度ですませることができる.つまり,重症敗血症の初期治療は凝固系過剰状態に対する治療でもあり,DIC発症の予防に直結する.逆にDICが生じるということは血管内皮細胞がかなり傷害されていることを意味し,それだけ敗血症が重症であるか治療に遅れが生じているという可能性を認識しなければならない.

[1] Matthay MA. Severe sepsis--a new treatment with both anticoagulant and antiinflammatory properties. N Engl J Med 2001; 344: 759-62
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# by DrMagicianEARL | 2011-11-25 11:48 | 敗血症性DIC | Comments(0)
■EGDTでは尿量を0.5mL/kg/hr以上確保することが目標となる.

■敗血症性ショック初期に生じる乏尿は血管内水分量の相対的不足に他ならない.よって,この状態は腎前性による乏尿であり大量輸液を行うのが原則で,利尿剤投与は有効血液循環量を減少させるためむしろ禁忌であることは今や常識である.

■一方,敗血症がある程度進行すれば急性腎傷害(AKI)が生じるが,敗血症におけるAKIは他のAKIと違い,腎灌流量は増加しており,輸出細動脈の過剰な拡張により糸球体濾過圧が低下して乏尿となっている[1].また,尿細管上皮細胞はサイトカインによりアポトーシスが誘導されており,これらの脱落が尿細管閉塞を招く.フロセミドなどのループ利尿薬はHenle上行脚の管腔側に存在するNa+-K+-2Cl-チャネルに尿細管管腔側より作用し,NaCl再吸収を抑制することで利尿効果を発揮し,尿細管の酸素需要を抑制したり[1],尿量を保つことにより尿細管の閉塞を予防し,閉塞による尿細管内圧の上昇からback-leakをきたすことを軽減することが期待されて用いられる.しかしながら,この機序ではループ利尿薬が糸球体濾過圧上昇が原因の敗血症性AKIに対しては効果が乏しいことが推察され,実際にこれまで敗血症性のみならず一般的AKIに対する数多くのメタ解析や観察研究がなされており,ループ利尿薬の有効性は認められていない[2].以上よりwarm shock期における乏尿およびAKIに対しての利尿剤投与は行ってはならない.

■低用量ドパミンは腎保護作用のあるカテコラミンと言われて汎用されてきた.これが,ドパミン神話である.しかし,その有効性を示す研究の多くはケースシリーズであり,EBMが確立してきた1990年代に入ってその有効性に疑問が投げかけられるようになった.1991年のSzerlipの報告から始まり[3],1994年にはLancetにも有効性を否定する報告がでている[4].その後,多くのドパミンの腎保護作用に関するRCTが行われているが,有効であるとのエビデンスは存在しない.これらの結果をまとめたレビューでは,急性腎不全患者[5],周術期患者[6],敗血症患者[7]のいずれにおいても腎保護目的にルーティンでドパミンを使用すべきでないとしており,ドパミン神話は崩壊への道をたどるようになる.ただし,1990年代のRCTの多くは単一施設での小規模なオープンラベル試験であり,エビデンスの質は高くないものが多い.

■そのような中,2000年に多施設無作為二重盲検比較試験であるANZICS trialが発表された[8].この発表では,SIRS患者におけるAKIでは低用量ドパミン群とプラセボ群では同等の効果しか示さず,有意な腎保護作用・利尿作用はないと結論づけられている.その後に発表されたレビューでも低用量ドパミンの腎保護作用はなく,その副作用を考慮に入れると,腎保護目的に使用すべきではないとしている[9-11].この結果はSSCGでも引用され,腎保護目的での低用量ドパミンの使用は支持されていない.

■以上よりAKIの治療は適切な循環動態を維持し,腎毒性物質を避けることにつき[12],また,先述のドパミン自体の敗血症性ショックに与える悪影響の懸念から,腎保護目的のドパミン低用量投与は行ってはならない.

[1] Nephron Exp Nephrol 2008; 109: 95-100
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[12] NDT Plus 2008; 1: 392-402
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# by DrMagicianEARL | 2011-11-24 11:46 | 敗血症 | Comments(0)
■敗血症発症時には,正常時と同じ体内水分量であっても,末梢血管拡張・抵抗低下によって血圧低下が起こる.よって十分な輸液を投与するだけでもある程度の昇圧は期待できる.逆に,十分な輸液負荷がない状態では,血管透過性亢進による絶対的血管内血液容量減少や血管内皮細胞の障害による微小循環不全,それによる主要臓器の機能低下などが生じる.よって,輸液負荷が十分になされていない早期からのカテコラミン投与は改善を得られない[1]どころか,低血圧や頻脈が助長されることになり,ショックバイタルや組織酸素運搬が悪化することにもなりかねない.よって,EGDTのプロトコル通り,大量輸液によりCVPがある程度安定してから,平均動脈圧(MAP)が65mmHgを保てないようであればカテコラミンを使用する
→平均動脈圧について詳しくはこちらを参照「重症敗血症における循環動態モニタリング(2)(MAP,PiCCO)

■SSCG 2008ではwarm shockにおけるカテコラミン第一選択薬をドパミン(DOA),ノルアドレナリン(NA)のいずれでもよいとしている.しかしながら,敗血症性ショック初期は末梢血管拡張を特徴としたwarm shockであり,血管トーヌスを戻す目的でのα1受容体刺激が原則とすべきであり,NAを用いることが病態生理学的に理にかなっている.DOAでα1受容体刺激を期待するためには10γを越える高用量が必要となり,β受容体という不必要な受容体刺激をしてしまうことを留意しておく必要がある.

■敗血症性ショックではβ1受容体のdown regulationが生じたり,β1シグナルが阻害されるため,DOAでは陽性変力作用が期待できないばかりか,β2受容体を介して血管拡張や頻脈が生じ,むしろ昇圧を妨げてしまう[2-5]

■細菌にもβ受容体は存在し,DOA,DOB5γ以上の投与で菌増殖やバイオフィルム形成を促進してしまう[6]

■β受容体は単球/マクロファージ,リンパ球,好酸球,肥満細胞にも発現し,単球/マクロファージやリンパ球では特にβ2受容体を介して炎症性物質の産生に関与する.結果としてDOA・DOBによるβ受容体刺激は,転写因子NF-κBを活性化させ,炎症性サイトカインや血管拡張性物質の産生を高めてしまう.また,マクロファージはβ受容体刺激により泡沫化傾向が高まり,一時的に炎症活性が高まった後に機能不全となることも確認されている[7].また,β受容体刺激でリンパ球のアポトーシスが進行したり[8],好中球の遊走能が阻害される[9]ことも報告されている.

■これらのことから,warm shockにおいてはNAを第一選択とすべきであり,DOAは推奨されない.実際に,DOAよりもNAを推奨する報告が相次いでおり[10-12],2011年4月にはNAがDOAより有意に死亡率が低いとするシステマティックレビューが報告された[13].一方,NAは循環動態改善,腹腔内臓器血流(splanchnic perfusion)も改善し,心係数も上昇させず,28日後の予後もよいとされ,輸入・輸出細動脈ともに拡張している敗血症性急性腎傷害に対してもNAは著効する[14]
【2012/2/21追加更新】2つ目のメタ解析が報告され(Crit Care Med 2012; 40: 725-30),ドパミンはノルアドレナリンよりも死亡率・不整脈発生率が高いと結論され,ノルアドレナリン第一選択を支持する内容となった.今後のEBMに組みこまれると思われる.⇒詳しくはこちら

■SSCGでは目標血圧は平均血圧≧65mmHgとしており,上限は定めていない.しかし,EGDTを行う患者の9%は,カテコラミンを注視しても血圧が高くなりすぎるケースがあり,この場合は平均血圧を90mmHg以下にしなければならない

■Warm ShockからCold Shockに転じる過程において,全ての血管が一斉に収縮に転じるわけではない.血管内皮細胞の障害度は部位によって異なり,ある部位は拡張していてもある部位は収縮しているという状態が併存する.重症病態では血液再配分機序(redistribution)が働き,脳,心臓などの重要臓器,組織へ血流がシフトし,皮膚,皮下組織,骨格筋,腸管などは真っ先に血液灌流が減少するため,部位によっては虚血の度合いが強く,早くに血管内皮細胞が傷害されてしまう.よって,血圧が回復しても臓器への血流灌流不全が続くことがあり,これをcryptic shock(神秘的ショック)と呼ぶ.血圧が維持されていても個々の臓器への血液灌流と微小循環は必ずしも保証されない.

■平均血圧が90mmHg以上に上昇したのは末梢血管が収縮に転じて後負荷が増大した可能性があるからである.心収縮力低下が軽度で済んでいる場合などではこのような血圧上昇現象が起こりえるため注意が必要である.この場合,末梢の微小循環が虚血状態に陥っている可能性があり,硝酸薬による末梢血管の拡張を行うべきである.

■warm shockの中にはNAに反応しないケースがある.乳酸蓄積によりATP依存性Kチャネルが開放し,Caが細胞内に流入できず,NOによる血管拡張の働きのみが残ることがあり,この状態はカテコラミン不応性である.このような病態においてはバソプレシンが有効とされている.バソプレシンは血管平滑筋を収縮させ,カテコラミンに対する反応性を改善し,血圧上昇に働く.本来は血圧が下がるとバソプレシンの血液中濃度は上昇する.

■実際に,敗血症罹患初期は血中バソプレシン濃度は一過性に上昇し,その後徐々に低下することが知られている[15].一般病棟ではこの低下の時期に敗血症が診断される場合も多い.NAとバソプレシンを比較したVASST study[16]では,28日死亡率に有意差がでなかったが,サブセット解析で低用量ステロイド療法を施行しなければならないような難治性warm shockにおいては,バソプレシンはNAより28日死亡率を有意に低下させたと報告している[17].実際,カテコラミン抵抗性の患者にNA単独とNA+バソプレシン併用を施行・比較検討したところ,併用した方が頻脈は減少し,平均動脈圧や心拍出量が増加,腸管血流が維持できたと報告している[18].また,バソプレシンには尿量とクレアチニンクリアランスを増加させることが報告されている[19].以上より,NAでも改善が得られないwarm shockに対してバソプレシン少量投与追加を推奨される

■低用量ステロイド療法については賛否両論がある.この効果の是非については別の項目で述べるが,近年,バソプレシンとステロイドの相乗効果が注目されており,ノルアドレナリン+ステロイド併用群よりもバソプレシン+ステロイド併用群の方が反応がみられるとの報告が2篇あり[18,20],バソプレシン使用中で反応が乏しい場合にヒドロコルチゾンによる低用量ステロイド療法の併用を考慮する.

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# by DrMagicianEARL | 2011-11-23 11:38 | 敗血症 | Comments(3)
■EGDTではショック出現後6時間までの輸液を重視している.これは単に血圧低下に対応しているだけではない(もっとも輸液のみで血圧が改善するケースも多いが).病態生理学的には敗血症性ショックに限ったものではなく,Alert細胞を活性化させるリガンドを希釈し,尿中排泄させる利点があるからであり,SIRS病態を抑える第一選択である[1,2].平均的には初期の6時間で晶質液を6-10L投与することが多い.

■敗血症における急性腎傷害(AKI)は,以前は他のAKIと同じく,高度の腎灌流の減少に伴う急性尿細管壊死(ATN)と考えられていた.しかしながら,実際にはヒトの敗血症性AKIの病理所見では尿細管の壊死所見がみられたのは25%未満と報告されている[3].Bellomoらの報告[4]では,敗血症においては腎灌流は減少しているどころか,逆にhyperdynamic stateのために増加していた.よって,現在では敗血症性AKIは輸出細動脈が高度に拡張し,糸球体内圧の低下が生じているために糸球体濾過率が減少していると考えられている.よって糸球体内圧を上昇させる輸液負荷,ノルアドレナリンによる血管収縮が有効である.

■2つのメタ解析で晶質液と膠質液では予後に有意差はないと報告されており[5,6],SSCG 2008ではこの2つの報告とコスト面から晶質液を用いることを推奨している.SAFE studyのサブ解析[7]においては重症敗血症への輸液負荷時は生理食塩水と比較してアルブミン投与が腎障害やその他臓器障害を起こさず死亡率を減らす可能性が示唆されたが,あくまでもサブ解析であり,新たな大規模RCTが必要である.アルブミンなどの膠質液は血管内ボリュームの早期改善とその効果の持続性がメリットではあるが,晶質液も十分量を投与すれば膠質液と同等の効果が得られる.また,どの種の輸液製剤が敗血症において優れているかというエビデンスはないが,そもそも研究した大規模スタディが少ない.

■生理食塩水は最も安価という利点がある一方で,大量急速投与で血中の重炭酸イオン濃度を希釈し,希釈性代謝性アシドーシスを起こしうる.また,高クロール血症も伴うと,重炭酸イオンはさらに減少し,代謝性アシドーシスが持続することがある.

■乳酸加リンゲルは,臨床的に乳酸が蓄積するような敗血症病態であっても,末梢組織の酸素代謝が改善して血中乳酸値が低下することから,ショック時でも頻用されている.その理由として,乳酸イオンそのものが生理的な物質であること,乳酸イオンも重炭酸イオンと同じくアルカリ化剤であること,他のリンゲル液に比して安価(118円)であることが挙げられる.一方で,乳酸代謝半減期は30分であるが,生体の代謝速度を上回る量が投与された場合は乳酸加リンゲル液投与による高乳酸血症を起こすことであり,特に肝不全や敗血症性ショックでは注意が必要である.また,乳酸加リンゲル大量輸液により,乳酸イオンの過剰負荷によるアルカリ化作用でショック回復後2-3日して高度の代謝性アルカローシスを起こすことがある.

■乳酸加リンゲルの問題点を解決したのが酢酸加リンゲルである(175円).さらに,細胞外補充液の中で最も生理的である重炭酸加リンゲルがあるが,高価(269円)であるのが難点である.

■以上の3種の細胞外補充液は,高価なものほどショック病態に向いてはいるが,実際の臨床的有意差は明らかではない.

■中心静脈圧(CVP)は前負荷(血管内容量)の指標として用いられ,これが低下することはすなわち心拍出量の低下につながり,組織酸素代謝に影響を与える.EGDTではCVPの目標値を8-12mmHgに設定している.しかしながら,近年,CVPは血管内容量の指標となりえない,CVPが輸液蘇生の指標としては不適切であるとの報告もあることを留意する必要がある.一方,CVPの呼吸性変動が1mmHg以上,あるいは5%以上あると輸液負荷により心拍出量が増加する反応群である,とも報告されており,CVPが正確に計測できない症例においてはこの指標を用いてもよいかもしれない.
→詳しくはこちら「重症敗血症における循環動態モニタリング(1)(ScvO2,CVP,PAC)

■ヒドロキシエチルスターチ(HES;ヘスパンダー®,サリンヘス®)は晶質液に比して凝固線溶障害を助長したり,急性腎傷害リスクが2倍になるなどリスクが指摘されてきており,実際に多くの研究報告で敗血症に対するHESによる有害事象が報告されている[8-11].重症患者の敗血症頻度や特徴を調査した多施設前向き観察研究であるSOAP研究[12]でもHES群は非HES群に比べ,敗血症発症率,死亡率が優位に高く,ICU入室期間,入院期間も有意に長かった.

■一方,Sakrらは2002年に行われたSOAP研究のデータベースから,HES投与の腎機能に及ぼす影響を抽出して検討したところ,HESは腎障害をきたす危険因子になりえないと結論づけており[13],SSCG 2008ではこれらの研究結果から「敗血症患者ではHESの投与によって急性腎不全のリスクが増大しうるが,多くの研究結果によりある種の輸液を限定的に推奨することはない」と控えめな見解で終わっている.

■しかしながら,Sakrの解析したSOAP研究ではHES投与は500-1000mL程度であり,腎に及ぼす影響を検討するには無理がある.そして,2008年に発表されたVISEP study[9]では輸液蘇生においてHESと乳酸リンゲル液のいずれかに無作為に割り付けて比較したが,途中段階でHES群で有害事象が有意に多いという理由で早期に中断された.最終的に評価可能であった患者537人において,28日死亡率は両群間で有意差がなかったものの,HES群では乳酸リンゲル液群よりも急性腎不全の頻度(34.9%vs22.8%)および腎代替療法の割合(31.0%vs22.8%)が有意に高かった.また,HESの累積投与量の増加とともに腎代替療法の頻度および90日死亡率が有意に上昇した.HESの腎障害については,膠質液の特徴である高浸透圧が関与している可能性がある[14].CRYCO研究グループの発表では,高浸透圧である膠質液を輸液蘇生に使用すると腎障害を発症する危険性が高まる(OR 2.48)という結果が報告されている[15].以上から,敗血症病態における初期蘇生でのHES製剤は用いるべきでない

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# by DrMagicianEARL | 2011-11-22 11:56 | 敗血症 | Comments(0)
4.動脈カテーテルと平均血圧(MAP)
■動脈カテーテル(AC)挿入については敗血症性ショックでは極力施行すべきかもしれないが,ショックでなければ挿入は不要と考えられる.理由としては,敗血症性ショック病態では後述の通りACの計測圧が正確でなく,カテーテル感染のリスクも中心静脈カテーテルより高いからである.

■圧波形がどのような管の中を伝わろうが,主に管の物理的特性により共振と減衰は避けられない.心臓から血管内を伝わる血圧波形も例外でない.大動脈内では末梢血管と違い,血管収縮の影響は少ないとされているが,大動脈弁部,弓部,横隔膜部,分岐部の心臓カテーテルで計測した圧波形を見ても,共振の影響で遠位になるほど波形が尖鋭化する[1].さらに末梢に伝わると,正常時は共振と減衰,反射の影響を受け,波形はさらに尖った波形となる,すなわち撓骨動脈では収縮期血圧は高く表示される.

■心臓近くの血圧波形は末梢からの反射の影響はないが,末梢の動脈圧は末梢からの反射の影響を大きく受ける.基本的に心臓からの圧に末梢からの反射波が少し遅れて加わるため波形の幅は広くなる.逆に反射の影響が少ないと細い波形になりやすい.末梢血管が拡張していると反射の影響が少なくなり,静脈圧に近くなり,末梢動脈での血圧上昇は抑えられる.敗血症性ショックなどで末梢血管抵抗が極端に低い場合は動脈カテーテルでの圧がむしろ異常に低くなることがあるので注意が必要である.実際,敗血症性ショック患者の撓骨動脈にカテーテルが挿入されている状態で手を握ることで末梢血管抵抗を高めると血圧は10mmHg程度容易に高く表示される.

■このように,動脈カテーテル圧は共振だけでなく末梢血管抵抗にも左右されるが,非観血的血圧(NIBP)は末梢血管抵抗の影響をほとんど受けず,上腕よりも心臓側の圧をよく反映しているので,NIBPは末梢血管抵抗の変化や圧測定回路による圧変化に左右される撓骨動脈カテーテル圧よりも信頼度は高い.一方で,中心部の大動脈圧をより正確に反映するのは鼠径動脈であると報告されており[2],血圧の正確さで見れば撓骨動脈よりも鼠径から動脈カテーテルを挿入する方がよい.ただし,感染リスク上昇を加味する必要がある.先述の内頸と大腿での静脈カテーテルでの感染率に有意差がないという報告[3]は動脈カテーテルでそのままあてはまるわけではない.実際に中心静脈カテーテルでの感染確率は一定である[4]のに対し,動脈カテーテルの感染確率は留置日数に比例すると報告されている[5].短期で抜去できる見込みがあるのであれば大腿動脈が推奨されるが,最終的には主治医の判断ということになる.

■一方で,NIBP(非観血的血圧:自動血圧計による測定値)にも測定機器の違い,カフ選択,カフ装着部位,不整脈,体動など様々な誤差要因が存在する.また,NIBP測定器は本来は高血圧の検知を目的にしているよう精度が設計されており,それゆえに特に低血圧時には正確性に欠けると指摘する論文がいくつかある[6,7].しかし,平均動脈圧<65mmHgの患者群に対してNIBPと動脈カテーテル圧を比較した報告では,NIBPが十分な代用となる可能性が示されている[8].加えて,先の撓骨動脈カテーテル圧の誤差要因を考慮すれば,敗血症性ショックにおいてはNIBPの方が正確と言える.それでも動脈カテーテル挿入が必要な理由は,頻回の採血が必要であることに加え,血圧のみならず連続的な血圧変化がとらえられ,呼吸性変動などの波形変化から得られる情報も非常に有用であるからである.

■なお,ゼロ点は心臓の高さに合わせるのが基本である.しかし,動脈カテーテル圧と異なる場合は,便宜的にNIBPの平均血圧に合わせて圧トランスデューサの高さを変えることがよく行われているが(1cmあたり0.736mmHg変化する),先述の通り,末梢血管抵抗が急性期に大きく変化する敗血症性ショック病態においてはこの方法は行うべきではない.

■血圧には,収縮期血圧SBP,拡張期血圧DBP,平均血圧MAPの3つの数字がある.重症管理患者におけるそれぞれの臨床的な意義は,
SBP:左室後負荷と動脈性出血リスクに関与
DBP:冠血流の決定因子
MAP:心臓以外の臓器灌流の決定因子
となる.血圧が低いことが問題になるのは臓器血流量が減少するからであり,それを決定するのは冠血流を除いてはMAPである.よって,集中治療においてはMAPが最も重視されるべき項目である[9].NIBPの場合はMAPを以下の式から推測する.

MAP=DBP+(SBP-DBP)/3=SBP/3 + DBP×2/3

つまり,MAPを推測する場合,DBPがSBPの2倍重要であることを意味しており,敗血症性ショックにおいてはSBPの価値は高くない.実際に敗血症においてはMAPが60mmHgと28日死亡率の関連が強く,SBPと死亡率の関連閾値は見出せなかったと報告されている[10]

■血圧89/68と102/50では,昔のショックの定義であれば前者がショックで後者が正常である.しかし,MAPを見ると前者は75,後者は59であり,後者の方が臓器灌流障害が生じている可能性がある.このように,SBPを当たり前のように臨床で使用しているとショックを見逃す可能性があること肝に銘じる必要がある.

5.肺経由動脈熱希釈法(PiCCOシステム)
■CVP,PAWPについては,近年その信頼性におおいに疑問を持たれている[11,12].所有施設は限られるが,近年,CVPやPAWPに代わる指標として,肺経由動脈熱希釈法(PiCCOシステム)による計測値が研究されている.

■PiCCOの測定原理は,①脈圧波形解析(CO, ABP, HR, SV, SVR),②熱希釈法(CO, GEDV, ITBV, EVLW)である.PiCCOにより計測される心拡張末期容量global enddiastolic volume(GEDV)と胸腔内血液容量Intrathoracic blood volume(ITBV)が血管内容量の信頼性のある指標として報告された[12,13]

■また,肺血管外水分量としてEVLWが,肺血管の透過性指数としてPI(permeability index : PI=EVLW/ITBV)が注目されている.EVLWについては,2004年に動物実験モデルを用いて,PiCCOで計測されるEVLW値が,肺血管外水分量測定のgold standardである重量計測法による測定値とよく相関することが示されている[14]

[1] Watanabe H, et al. The discrepancy between invasive and noninvasive blood pressure. Sapp Med J 1990; 59: 111-7
[2] Dorman T, et al. Radial artery pressure monitoring underestimates central arterial pressure during vasopressor therapy in critically ill surgical patients. Crit Care Med 1998; 26: 1646-9
[3] Parienti JJ, et al. Femoral vs jugular venous catheterization and risk of nosocomial events in adults requiring acute renal replacement therapy: a randomized controlled trial. JAMA 2008; 299: 2413-22
[4] Infect Cont Hosp Epidemiol 2000; 21: 371-4
[5] Lucet JC, et al. Infectious risk associated with arterial catheters compared with center venous catheters. Crit Care Med 2010; 38: 1030-5
[6] Dellinger RP, et al. Surviving Sepsis Campaign: international guidelines for management of severe sepsis and septic shock: 2008. Intensive Care Med 2008; 34: 17-60
[7] Antonelli M, et al. Hemodynamic monitoring in shock and implications for management. International Consensus Conference, Paris, France, 27-28 April 2006. Intensive Care Med 2007; 33: 575-90
[8] Lakhal K, et al. Tracking hypotension and dynamic changes in arterial blood pressure with brachial cuff measurements. Anesth Analg 2009; 109: 494-501
[9] Lamia B, et al. Clinical review: interpretation of arterial pressure wave in shock states. Crit Care 2005; 9: 601-6
[10] Dunser MW, et al. Arterial blood pressure during early sepsis and outcome. Intensive Care Med 2009; 35: 1225-33
[11] Marik P. Handbook of evidence-based critical care. New York : Springer-Verlag, 2001
[12] Lichtwarck-Aschoff M, et al. Intrathoracic blood volume accurately reflects circulatory volume status in critically ill patients with mechanical ventilation. Intensive Care Med 1992; 18: 142-7
[13] Sakka SG, et al. Assessment of cardiac preload and extravascular lung water by single transpulmonary thermodilution. Intensive Care Med 2000; 26: 180-7
[14] Katzenelson R, et al. Accuracy of transpulmonary thermodilution versus gravimetric measurement of extravascular lung water. Crit Care Med 2004; 32: 1550-4
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# by DrMagicianEARL | 2011-11-19 16:24 | 敗血症 | Comments(0)

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