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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

■重症敗血症においては中心静脈カテーテルを全例で挿入し,管理すべきである.その上でモニタリングするのは中心静脈酸素飽和度(ScvO2),中心静脈圧(CVP)である.

■内頸静脈カテーテルと大腿静脈カテーテルの比較では肥満例(BMI>28.4)を除いて感染の確率に有意差がないという衝撃的な多施設RCT「Cathedia Study」が2008年に報告[1]されていることから,感染予防目的の観点ではどうやら必ずしも内頸静脈から中心静脈カテーテルを挿入しなければならないわけではないようである.いずれにしても,中心静脈圧を正確にモニタリングするために,出来る限り右房近くのベストポジションにまで留置する必要がある.しかしながら,実際には右房よりやや末梢側に留置されることが多く,大腿静脈からの挿入では位置が不適切になりやすいため,できれば内頸静脈から挿入すべきかもしれない.

1.中心静脈酸素飽和度(ScvO2)
■ScvO2の持続モニタリングはPreSep CV Oxymetory Catheter®という特殊な中心静脈カテーテルを用いる.しかしながらコストが高く,導入している施設も限られている.そこで,中心静脈血を採取し,血液ガス分析機にかけてSO2の項目を見るとよい.蘇生期は1-2時間毎に計測を行う.

■肺動脈カテーテル(Swan-Gantzカテーテル)で得られる混合静脈血酸素飽和度SvO2は酸素需給バランスの指標であり
 SvO2=SaO2-VO2/(1.34×Hb×CO)
で表されることから,SvO2の決定因子は動脈血酸素飽和度SaO2,酸素消費量VO2,Hb濃度,心拍出量COの4因子である.SaO2が正常であれば(SaO2はSpO2で判断できる),SvO2は全身の酸素消費量と酸素供給量の比に反比例することがわかる.すなわち,SvO2は全身の酸素供給量バランスの指標として臨床的に重要な意義をもつ[2-5].重症敗血症病態のような組織低灌流状態では,組織における酸素供給量を酸素消費量が上回るため,SvO2の低下を認める.

■SvO2の正常値は70-80%である.敗血症初期はSvO2はhyperdynamic stateにより上昇する.さらに病態が進行すると,末梢組織の灌流障害が生じSvO2は低下に転じる.60%以下になると前身の酸素需給バランスがうまくいかなくなっている状況が出現している.50%以下になると,生命に危険な状態が近づいていることを示しており,緊急に対策を立てる必要がある.SvO2は終末細動脈の酸素飽和度を反映する.組織への酸素拡散には終末細動脈での酸素分圧40mmHg以上を必要とし,ヘモグロビン酸素解離曲線においてこれは酸素飽和度70%に相当する.

■実際にはSvO2を測定するには肺動脈カテーテルを挿入しなければならないが,重症敗血症全例に施行するのはナンセンスである.そこで,SvO2の代用として頸静脈からの中心静脈カテーテルで計測するScvO2計測が簡便で有用である.このことから,ScvO2≧70%という目標が設定されている.

■しかしながら,重症化してもScvO2が正常や高値を示すケースがある.そのようなケースにおいては,組織に酸素が行かず静脈系に帰ってきている,すなわち組織酸素代謝異常により酸素利用障害が生じている可能性を留意する必要がある.そのため,ScvO2は乳酸値とセットで評価する必要がある.実際,敗血症性ショック後期のScvO2高値は死亡率と有意に関連することが報告されている[6].この報告によると,生存者の平均ScvO2が72-87%(中央値79%)であるのに対し,死亡者の平均ScvO2は78-89%(中央値85%)となっている.

■なお,末梢や大腿静脈などから採取した静脈血酸素飽和度はScvO2と有意差があるため,ScvO2の代用とするのは不適切である[7]

2.中心静脈圧(CVP)
■中心静脈圧(CVP)は前負荷(血管内容量)の指標として用いられ,これが低下することはすなわち心拍出量の低下につながり,組織酸素代謝に影響を与える.EGDTではCVPの目標値を8-12mmHgに設定している.しかしながら,近年,CVPは血管内容量の指標となりえない[8],CVPが輸液蘇生の指標としては不適切である[9],との報告がある.実際,輸液による蘇生の指標として,心室充満圧を用いることの限界はよく知られている[10,11]

■CVPは心拍出量と静脈還流量の両者を有用な指標としては,肺経由動脈熱色素希釈法(PiCCOシステム)による胸腔内血液容量指数(ITBVI)があるが[12],行える施設は限られる.輸液負荷の指標としてどの施設でも行え,簡便なものとしてはCVP以外にはなく,CVPでも十分に有用であるとする報告も多い[13-17].実際にVASST study[18]では,CVP 8-12mmHgとしたEGDT群とそれ以外のCVPの群では死亡率はAPACHEⅡとは独立して有意にEGDT群で低いことを考慮すると,現時点ではPiCCOシステムなどの他の代替がきかない施設ではCVPを指標にした大量輸液療法が妥当と言わざるを得ない.

■一方,近年,ある一点における生体情報(静的パラメータ)よりも,生体情報の呼吸性変動などの動的パラメータの方が,輸液反応性の指標として有用とされている[19-22].この観点から,CVPの呼吸性変動に着目してその輸液反応性について検討し,その有用性が報告されている[23,24].具体的には,CVPの呼吸性変動が1mmHg以上,あるいは5%以上あると輸液負荷により心拍出量が増加する反応群である,としており,CVPが正確に計測できない症例においてはこの指標を用いてもよいかもしれない.

ICUに入室した重症疾患で,CVPが指標になるのは12時間後までで,12時間後の累積In/Outバランスが+3Lのときに予後が最もよい[25]

3.肺動脈カテーテル(PAC)
■CVP,PAWPのモニタリング目的でPACは循環動態管理で頻用されてきた.重症敗血症でも管理に非常に有用であるのかと思う人も少なくはないが,近年では心疾患以外でのPACの有用性に関しては否定的見解が多い.

■1988年にShoemakerらがPACを用い,supranormal valueを指標としたgoal-directed therapyという手法を発表した[26]のを皮切りに,敗血症に代表される重症症例にPACを挿入する施設が頻発した.しかし,その後,このgoal-directed therapyを用いたGattinoniらによる大規模試験では重症患者における予後の改善は認めなかった[27].1996年にはICU入室患者5735例の大規模比較コホート研究が行われたが,PACの使用により死亡率,入院日数,コストは増加し,PACは有用でないとの報告がなされた[28].これらの報告を受け,PACについて賛否両論,議論が百出するという状況が続いた.

■2003年にはPACを使用しても敗血症,ARDSなどの重症患者の予後が改善しないが,その半面,その使用によって死亡率が高まることもないという大規模無作為試験の結果が報告されている[29,30].英国ICUにおける1041人の重症患者を対象にしたBritish PAC-Man studyにおいてもPACは有害でないが,はっきりとした有用性は見出されていない[31].ARDS Net-WorkはARDSの管理におけるPACとCVCの比較を検討した(PAC study and FACCT).このRCTではPACとCVCの使用効果は有意差がなかった[32]

■Shahらは,これまで行われた13のRCTを用いてメタ解析を行い,重症患者に対するPACの使用は死亡率の増加をもたらさないが,かといって明らかな利益をもたらさないと結論した[33].しかしながら,彼らは同時にPACから得られる情報に対する適切な治療法が確立していないことが大きな原因であるかもしれないと述べている.

■以上から,重症敗血症に対してPACを挿入することによるメリットはCVCと変わらず,コストのことを考慮すると用いるべきではない.ただし,重度の低心機能状態や大動脈弁狭窄症などを重症敗血症に合併した症例においてはPACは推奨されうる.これは,低心機能状態や重症ASにおいては輸液許容領域が狭く,コントロールが困難であるからである.

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[33] Shah MR, et al. Impact of the pulmonary artery catheter in critically ill patients : meta-analysis of randomized clinical trials. JAMA 2005; 294: 1664-70
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# by DrMagicianEARL | 2011-11-13 11:26 | 敗血症 | Comments(0)
■敗血症性ショック全例に酸素投与を行う理由は,諸臓器が灌流障害による酸素欠乏状態にあるからである.たとえパルスオキシメータでのSpO2やPaO2が正常値を示していても,それが体内臓器に酸素が足りている根拠にはならない.別の項でも解説するが,ScvO2が正常値であっても酸素が足りているとは限らないケースがある.

■組織の酸素需要増加に見合った酸素供給がなされていない状態では,相対的虚血により嫌気性代謝が亢進し,H+や乳酸の産生が高まり,代謝性アシドーシスが進行する.呼吸数増加はこの代償機構の現れである.呼吸代償によっても平衡が保てなくなったとき,アシデミアが出現し,酸素解離曲線が右方にシフトするため,肺におけるヘモグロビンの酸素飽和度が低下することを念頭におかなければならない.よって,PaO2 100-150mmHg程度になるような酸素投与が急性期は優先される.

■挿管適応のない敗血症性ショック全例に非侵襲的陽圧換気NPPV(主にCPAP mode)を装着開始するとよい.理由は,循環動態管理,臓器障害を防ぐためにも大量の輸液は不可避であり,それに伴う肺間質浮腫のリスクも高まるためである(敗血症性ショックではある程度うっ血をきたしてでも大量輸液が優先される).事前にNPPVを導入することで,患者の速やかなNPPV受けいれができ,さらに間質浮腫をおさえることができる.また,肺血管拡張により肺胞に隣接する血流が速まり,ガス交換効率が減少し,シャントが出現するが,CPAPをかけることで肺胞が膨張し,肺毛細血管が扁平化し,シャントが減少する.

■あくまでも増悪時は挿管人工呼吸を行うことを念頭にすべきであるが,ある程度までの呼吸不全患者に対して良好な補助換気を与え,挿管を回避できる可能性がある.

■人工呼吸器患者では現在肺保護療法が原則であり,「肺胞虚脱をつくらず,肺胞を開き続け,酸素濃度は低く保ち,過大な圧・容量負荷を避ける」に集約される.具体的な戦略としてopen lung strategy,低1回換気量換気,高二酸化炭素血症の許容(permissive hypercapnia)があり,とりわけALI/ARDSリスクが非常に高い敗血症病態においてはALI/ARDSにおける換気療法に準じた呼吸管理が必要である.

■重症敗血症において鎮静を行う理由は,酸素消費量の軽減だけではない.敗血症病態に限らず,SIRS病態では,その初期には交感神経緊張により血漿カテコラミン濃度が高まっている.実際に呼吸が促迫していることなどからも交感神経緊張度を評価できる.しかし,このような交感神経緊張度は長く持続できるものではなく,やがては内因性カテコラミンが枯渇し,ショックが具現化される.交感神経緊張状態を早期より回避し,生体のホメオスタシスをコントロールする必要があり,ここに鎮静と鎮痛の役割がある.

■近年,交感神経と副交感神経のバランスは,免疫担当細胞に影響を与えることが分子レベルでも明らかにされてきている[1-3].アドレナリン作動性β受容体は,心血管系に限らず,単球/マクロファージ,リンパ球,好酸球,肥満細胞にも発現し,単球/マクロファージやリンパ球では特にβ2受容体を介して炎症性物質の産生に関与する.結果として,β受容体刺激は,転写因子NF-κBを活性化させ,炎症性サイトカインや血管拡張作用のあるiNOS,プロスタノイドの産生を転写段階で高める.また,β受容体刺激によりマクロファージは泡沫化傾向が高まり,一時的に炎症活性が高まった後に機能不全となることも確認されている[4].このような観点からも,単球やリンパ球などの性状を維持させるために,敗血症の病態では鎮静の抗炎症作用が期待される[5]

■一方,副交感神経活性は,敗血症病態の炎症活性を抑止することや,単球/マクロファージの活性を低下させることが確認されている[6,7]

■以上の観点から,敗血症病態の交感神経緊張をまず鎮静,鎮痛により緩和し,さらに鎮静のレベルに日内変動をもたせ,交感神経と副交感神経の緊張バランスを1日の中でバランスよく変化させることにより,免疫担当細胞のホメオスタシスを維持できる.鎮静はSSCGにおいても積極推奨されている.また,同様の作用であるβ遮断薬が近年敗血症治療のひとつとしてその効果が期待されている.

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# by DrMagicianEARL | 2011-11-12 12:01 | 敗血症 | Comments(0)
■敗血症と診断する以上,まずSIRSの診断をしなければならない.そのためにもVital Signを漏れなく測定する.呼吸数が抜ける施設が多いが,これは敗血症を見逃し,治療開始の遅れにつながるため,普段から呼吸数計測を癖にしておく必要がある.敗血症と診断してからは時間との勝負であり,検査を順序立ててスムーズに行い,円滑に治療に移る必要がある.

■重症敗血症が疑われる症例であれば,ルーチンの検査では必要最低限の一般採血項目に加え,血液像,D-ダイマー,PT-INRを計測しておく.さらに尿検査も必要である.

■エンドトキシンに関してはどの程度まで重要視すべきかについては議論の余地があり,検査が必要かどうかは各施設の判断になる.
※当院ではエンドトキシンは外注項目であり,結果がかえってくるまでに数日程度を要する上コストもかかるため,治療経過に影響を与えないものとして,計測しないことを推奨している.
→詳しくはこちら「エンドトキシンは重要か?~エンドトキシンとPMX~

■各種培養検査を抗菌薬投与前に行う.ただし,例外的に髄液培養検体採取時は抗菌薬投与を先に行ってもよい.これは,検体採取に時間がかかるため抗菌薬治療開始が遅れることに加え,抗菌薬が髄液に移行するのに時間がかかるからである.

■血液培養はルーチン採血の際に1箇所確保.さらにもう1箇所必要となる.末梢から2箇所,さらに中心静脈カテーテルや動脈カテーテル挿入の際に1箇所とれば3セット確保できる.血流感染症において,1セット,2セット,3セット採取した場合の感度はそれぞれ65.1%,80.4%,95.7%となっており,4セット以上の採取は3セットと有意差がなかった[1].血液培養からコンタミネーションが疑われる菌が検出された場合,それが血流感染かどうかを判断するためには1セットのみの採取では十分な情報を得られない[2].実際,コンタミネーションであった場合,血流感染症と比較すると採取セット数が増加するほど血液培養陽性率は低下する[3]

■敗血症での血液培養陽性例の比率は敗血症17%,重症敗血症25%,敗血症性ショック69%である[4]

■血液培養は清潔操作を徹底し,コンタミネーションを最大限防ぐ必要がある.コンタミネーション発生により,医師は真の起炎菌かの判断に困る.検査技師は全く無駄な時間と労力,検査費用を投じることになり,検査キットと人件費で概算5000円ほどの損害となる.患者はコンタミネーションで検出された細菌に対して無用の抗菌薬が投与されれば無為に耐性菌が誘発されたり,副作用の発生,入院の長期化が起こる.これらのことに関連して無駄なコストが積み重なり,医療費が増大する[5]

■末梢血管が確保できないなどの理由で,血液培養検体がどうしても採取できないケースが少なからずある.その際は以下の方法がある.
① 動脈からとる
② 中心静脈カテーテル,動脈カテーテル挿入時に採取.
③ やむを得ない場合は,末梢点滴部より末梢側から採取も可.
④ やむを得ない場合は,駆血帯を一旦外して十分に血流を流す処置を間に加えれば同一箇所も可.

■感染巣を探すため,画像検査は必須となる.状態が悪いからと言ってCTも撮らず,感染巣不明のまま治療を行うようなことがあってはならない.画像診断を行うことで,病巣の同定とその程度の評価が早期に短時間で行え,外科的治療やIVR(interventional radiology)といった適切な治療法の選択が可能となることもある.敗血症患者の搬送や造影剤腎症のリスクを考慮すると,できるだけ簡略な画像診断が望まれる.レントゲン,CT,超音波検査を有効に使い,感染源の特定・評価を行う.

■重症敗血症での循環動態管理を行う前に心臓超音波検査で心機能の評価をしておくことは重要である.重症敗血症病態ではhyperdynamic stateによる心拍出量増加,収縮不全の所見がみられることがある.また,重度の低心機能合併例では循環動態管理においてPiCCOシステムや肺動脈カテーテルなどの挿入による厳重管理が必要となってくる.
→詳しくはこちら「敗血症の心筋障害」

[1] Cockerill FR 3rd, et al. Optimal testing parameters for blood cultures. Clin Infect Dis 2004; 38: 1724-30
[2] Weinstein MP. Current blood culture methods and systems: clinical concepts, technology, and interpretation of results. Clin Infect Dis 1996; 23: 40-6
[3] Weinstein MP, et al. The clinical significance of positive blood cultures: a comprehensive analysis of 500 episodes of bacteremia and fungemia in adults. I. Laboratory and epidemiologic observations. Rev Infect Dis 1983; 5: 35-53
[4] Rangel-Frausto MS, et al. The natural history of the systematic inflammatory response syndrome (SIRS). A prospective study. JAMA 1995; 273: 117-23
[5] 椎木創一.感染症999の謎:感染症検査の基本・微生物学.2010; 66
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# by DrMagicianEARL | 2011-11-10 12:16 | 敗血症 | Comments(0)
■SSC(Surviving Sepsis Campaign)では敗血症診療における重要ツールとして,重症敗血症バンドルを制定し,前項で述べたサイトでも詳しく説明している.その意義について,SSCは「重症敗血症の死亡率を25%減らすことを目標に,敗血症診療におけるさまざまな治療内容それぞれについて,介入時期や順序,治療ゴールなどについて,治療メンバーが周知することを目標に企図されたもの」としている.さらに「バンドルを用いることによって,複雑な敗血症の治療過程を分かり易いものにする」とし,「敗血症診療の中核Core」と位置づけている.バンドルという名前の由来は「重要な推奨項目を個別にそれぞれ実践するのではなく,それらを一纏めにして包括的にした方がさらに高い治療効果が得られる」という目的から「1つに束ねたもの:bandle」と称する.すなわち,ERからICUまで,重症敗血症の認知以降,バンドルに従って推奨項目を1つ1つ実践し,治療を進めていくことで,極めて効率よくかつ適正にSSCGに準拠した敗血症診療を行うことができる.

■SSCのサイト(http://ssc.sccm.org/)にはバンドルの1例が紹介されている.ただし,これはあくまでも例であり,医療環境は各国,各施設で異なるため,それぞれの施設に合ったバンドルを施設が作成する必要があり,作成されるバンドルは遵守できるように作ることが理想とされている.SSCで提唱されているバンドルは蘇生バンドル(resuscitation bundle)と管理バンドル(management bandle)に分かれている.

■以下に当院で作成,2011年11月4日に施行開始となった敗血症院内ガイドラインでのバンドルを1例として示す.
(1) 蘇生バンドル
 重症敗血症/敗血症性ショックの患者に対し,臓器不全発現予防及び救命目的で発症後6時間以内に全項目を100%達成すべき治療項目.全例ともER,一般病棟から施行開始し,ICUに搬送が望ましい.
①血液培養2-3セット+必要な細菌培養検体を抗菌薬投与前に採取する.
②適切な広域抗菌薬を1時間以内に投与開始する.
③乳酸値を測定する(最低でも2時間毎に測定).
④敗血症性ショックであれば輸液負荷チャレンジ(1000mL/30min)を施行する.
 ・容易にうっ血する場合は心臓超音波検査で迅速に心機能を評価する.
 ・重度の低心機能状態を合併している場合は肺動脈カテーテルを挿入し,管理を行う.
⑤呼吸状態良好な患者を含め,全例で酸素投与を開始する.
 ・挿管人工呼吸管理が不要な患者では全例NPPVを装着する.
⑥適度な鎮静を開始する.
⑦中心静脈カテーテルを全例で挿入する.敗血症性ショックにおいては動脈カテーテル挿入を検討する.
⑧EGDT+ELGTを施行する.
 ・晶質液でCVP 8-12mmHgにコントロール
 ・昇圧剤(ノルアドレナリン,バソプレシン)で平均血圧65-90mmHgにコントロール
 ・尿量≧0.5mL/kg/hrを維持する
 ・乳酸値を2時間毎に計測し,血管拡張薬を適宜使用し,前値から20%以上低下させる.
 ・輸血,DOB,CHDFなどでScvO2≧70%を維持する

(2) 管理バンドル
 蘇生バンドルを全項目終了した後に,24時間以内に行うべき治療項目.
①バソプレシン不応重症例では低用量ステロイド療法を行う.
②インスリン持続静注で血糖値を140-180mg/dLにコントロール
③Hb<7.0g/dLの場合,7.0-9.0g/dLを目標に赤血球濃厚液を輸血する.
④必要に応じ血小板輸血を行う.
⑤人工呼吸管理
 ・1回換気量6mL/kg,呼気プラトー圧≦30cmH2O,PaCO2上昇許容
⑥24時間以内に早期経腸栄養を開始する.
 ・カロリー補充目的での早期経静脈栄養は行わない.
⑦CHDFなどによる体液バランスの正常化
⑧DIC,ALI/ARDSに対する治療
⑨深部静脈血栓症予防を行う.
⑩ストレス性胃粘膜障害予防を行う.


■重症敗血症は全身疾患であり,治療法を提示する場合,循環・呼吸・感染・代謝・栄養の全てを意識するものにしなければならない.それだけに行わなければならないことは非常に多く,どうしても忘れてしまう項目もでてくる可能性があるため,何を既に行っていて何を行っていないかをICUスタッフと情報共有する必要がある.各バンドルについてチェックリストを作成することも必要であろう.医師一人で考えるのではなく,看護師,薬剤師,臨床検査技士,臨床工学技士,栄養士,理学療法士などのコメディカルと密なコミュニケーションを積極的にとるべきである.
※これらは三次救急病院などでは当たり前であるが,一般病院では非常にこの意識が希薄であり,当院でもその傾向は顕著であった.その根底には重症敗血症に対する知識が浸透していないことが最大の原因であるかもしれない.

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【余 談】
 小生の病院で院内敗血症ガイドラインを発表したのは2011年11月4日であるが,雛形自体は8月下旬に作成し,試験的に上記バンドルを導入した.導入してよく分かるのは,スタッフが慣れるまでに時間を要することである.特に1例目の敗血症性ショックは次に何をしたらいいのかを全スタッフがすぐには判断できないこともあった.各処置をどのような順序でやれば効率がよいか?ルート類の接続をどうするか?治療項目以外の内容も様々である.蘇生バンドルでは頻回にICUスタッフとコミュニケーションをとり,何の治療を行っていて,これからさらに何をしなければいけないのか,患者は現在どういう状態にあるのかのアセスメントを常に情報共有し,6時間をわずかながらに超過したもののなんとか急性期を脱し,3日でICU離脱状態まで回復できた.
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# by DrMagicianEARL | 2011-11-09 16:13 | 敗血症 | Comments(0)
■SIRSは炎症性サイトカイン過剰状態であり,病原体が消失しても増悪することもあるため,病原体の消失は必ずしも病勢と比例せず,重症病態ほど相関関係はなくなる.敗血症は全身性疾患であり,その重症度評価も全身評価が可能なものが望ましい.すなわち,SIRSからMODSへの移行を考慮し,敗血症における多臓器にわたる機能障害を総和としてとらえる目的で作成された全身的な評価法が行われることが一般的である.

■1981年にKnaus[1]らによって発表されたのがAPACHE(acute physiology and chronic health evaluation)であり,心血管,呼吸などの34指標の異常をスコアリングし,その合計点により死亡率の予知を行った.その後,よりその予測を正確に,さらには簡便化するために改良され,1985年にAPACHEⅡが発表された[2].APACHEⅡは,急性の生理学的異常を示すAPS(acute physiolosy score),呼吸,循環,血液検査値,GCSの12項目において,治療の影響を受けていないICU入室後24時間以内のもっとも悪い値を0-4点にスコアリングし,さらに年齢スコア,慢性疾患スコアを加えたものである.最高点は71点,最低点は0点となる.その後,1991年にAPACHEⅢ[3],2006年にAPACHEⅣ[4]が発表されたが,使用するには商業契約が必要であるため,実際にはAPACHEⅡが広く使用されている.

■臓器不全の診断基準にはall-or-none分類と,各臓器の機能低下の程度をスコア化したものの2つがある.連続的な過程として把握する場合,後者が有用である.スコアに用いる指標は,普遍的,日常的,ベッドサイドで測定可能なもの,病期の経時的な進行を反映するもの,臓器特異的な治療法の奏功度を反映するものが考えられている.SOFA scoreは,欧州集中治療学会が1994年に提案したもので,1995年に行われた前向き試験では,毎日のSOFA scoreと生存,非生存の差別化はよく相関した[5].当初は,sepsis-related organ failure assessmentとして,敗血症に起因する臓器不全評価法として用いられたが,その後,敗血症に限らずMODSの評価法として有用であることが認められ,現在は,Sequential organ failure assessmentに改名されている[6].敗血症の診断後,48時間以内にSOFA scoreが増加する例の死亡率は50%と報告され,早期対処の重要性が指摘されている[7]

■ACCP/SCCMによる敗血症性ショックの診断基準[7]では乳酸値が含まれていないが,乳酸値>36mgl/dL(もしくは>4mmol/L)を満たしても敗血症性ショックと診断すべきである.これは臨床現場における実際の治療対象を明確にするためのものであり,ショックの概念が近年変遷してきたことによる.

■これまでの血圧低下をもってショックとする考えは大循環レベルの循環動態に依存していたが,近年では考え方が変化しており,たとえ血圧が維持されていても組織への血液灌流不全による酸素供給不足や末梢組織・細胞での酸素利用障害などを含む酸素代謝異常のことをショックとしている.すなわち,血圧低下はショックの一要因に過ぎず,血圧低下がなくともショック状態が存在することを認識する必要がある.SSCG 2008でも敗血症性ショックは組織低灌流と定義されており,微小循環障害が重視されていることが分かる.この微小循環障害において,組織酸素需給バランスを反映するのが中心静脈酸素飽和度ScvO2であり,組織酸素代謝を反映するのが乳酸である.敗血症では重症であるほど組織の酸素利用障害が強く,重症敗血症において高頻度に見られる高乳酸血症の主因は酸素利用障害である[8-10]

■重症敗血症の死亡率を16%低下させたEGDTも適応基準に血圧だけでなく乳酸値を使用しており,また,乳酸を低下させることを目標としたELGTも生存率を改善させることが示されており,乳酸値上昇も臨床的に敗血症性ショックに加えられるべき項目である.

■CRPは炎症反応初期より遅れて産生されるIL-6が肝臓に作用することで産生される蛋白であり,リアルタイムな病勢を反映しない.また,炎症反応には必ず抗炎症反応が伴う.SIRSに対してCARS(compensatory anti-inflammatory response syndrome:代償性抗炎症反応症候群)という病態があり[11],このSIRSとCARSが交互に優位になる混合病態をMARS(mixed antagonistic response syndrome;混合性拮抗反応症候群)と呼ぶ[12].このような炎症・抗炎症がめまぐるしく発生するMARS状態を伴う敗血症では,CRPは重症度を反映せず乱高下する.また,CRPは肝障害,低蛋白血症,その他様々な要因により炎症と乖離する.

[1] Knaus WA, et al. APACHE-acute physiology and chronic health evaluation: a physiologically based classification system. Crit Care Med 1981; 9: 591-7
[2] Knaus WA, et al. APACHE II: a severity of disease classification system. Crit Care Med 1985; 13: 818-29
[3] Knaus WA, et al. The APACHE III prognostic system. Risk prediction of hospital mortality for critically ill hospitalized adults. Chest 1991; 100: 1619-36
[4] Zimmerman JE, et al. Acute Physiology and Chronic Health Evaluation (APACHE) IV: hospital mortality assessment for today's critically ill patients. Crit Care Med 2006; 34: 1297-310
[5] Vincent JL, et al. The SOFA (Sepsis-related Organ Failure Assessment) score to describe organ dysfunction/failure. On behalf of the Working Group on Sepsis-Related Problems of the European Society of Intensive Care Medicine. Intensive Care Med 1996; 22: 707-10
[6] Vincent JL, et al. Use of the SOFA score to assess the incidence of organ dysfunction/failure in intensive care units: results of a multicenter, prospective study. Working group on "sepsis-related problems" of the European Society of Intensive Care Medicine. Crit Care Med 1998; 26: 1793-800
[7] American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference: definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med 1992; 20: 864-74
[8] Cohen RD, Woods HF. Lactic acidosis revisited. Diabetes 1983; 32: 181-91
[9] 国元文生,肥田誠治.レター 組織酸素供給低下を示さない患者の高乳酸血症.日集中医誌2006; 13: 73-5
[10] Cohen RD, Woods HF. Metformin and lactic acidosis. Diabetes Care 1999; 22: 1010-1
[11] Bone RC. Sir Isaac Newton, sepsis, SIRS, and CARS. Crit Care Med 1996; 24: 1125-8
[12] J Immunol 2000; 5: 289-300
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# by DrMagicianEARL | 2011-11-08 09:40 | 敗血症 | Comments(0)

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