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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【書籍紹介】ポケット版ICU観察ポイントチェック帳

日総研より,井上茂亮先生(東海大学救急准教授/八王子病院救急センター長)編集の「ポケット版ICU観察ポイントチェック帳」を御恵贈いただきました.当院ICU看護師に本書を見せたところ,25名(ほぼ全員)が購入を希望し,現在注文中です.
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■全身管理を要し,超急性期の救命から亜急性期・回復期につなげる支持療法に至るまで,ICU患者の観察ポイントは多岐にわたります.その際,経験に基づく解釈・介入は重要ではありますが,経験で突っ走ると,「なんとなく」が横行したり,変なローカルルーチンができたり,医療ケアの標準レベルを維持できなかったり,後で振り返る際に改善点が見出しにくかったりといろいろなデメリットが生じます.

■本書はICU看護師の入門書であると同時に簡潔にまとめられた重要観察項目を素早くベッドサイドでチェックできる,ベテランナースにもおすすめできるポケットブックです.病態生理等の詳細な医学書というわけではありませんが,実臨床で使える即戦力となる1冊でしょう.また,ICU管理に慣れていない先生方,研修医にとっても,ICU患者の何を見ればいいかに慣れる上で便利です(せっかくICU看護師が看護カルテにアセスメントでいろいろなスコアリング等を記していても主治医が分からず情報共有にまったくならない上に変な介入が生じるなんてことは珍しくありません).

■大項目としてショック,循環,呼吸,人工呼吸,中枢神経,鎮痛鎮静せん妄,腎・代謝,敗血症,栄養,回復期,ライン・ドレーン管理,術後管理,スキンケア,その他がとりあげられており,小項目は全部で82項目あり,ICUで特に重要な観察項目はほぼすべてカバーされています.中身は,シンプルかつビジュアル的に分かりやすく,1項目につき1ページにまとめられています.大きさは10.5cm×14.4cmほど,厚さは5mmでiPhone6よりも薄く,軽いため,ポケットに入れても邪魔になりません.税込み2000円になります.
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# by DrMagicianEARL | 2016-07-04 11:35 | 敗血症 | Comments(0)
■2016年6月20日付発売のWedgeに村中璃子氏の記事が掲載された.内容は,HPVV(ヒトパピローマウイルスワクチン,子宮頸がんワクチン)を投与されたマウスに脳障害が出たとする信州大学の池田修一氏らの研究に捏造疑惑,というものである.この不正が事実であれば,HPVVが脳障害を起こすという根拠はなく,日本だけで騒がれているHPVV薬害の根拠が崩壊し,まさに「日本版Wakefield[1]」ともいえるべき事態となる.スポンサーは厚生労働省であるが,今後どう対応をするのであろうか.

■詳細はWedge誌をご覧いただきたいが,この研究の内容は見れば見るほどおかしい.まず,研究デザインの時点で意味不明である.本研究では,NF-κB p50欠損マウスをHPVV(サーバリックスのみでガーダシルは検証せず),インフルエンザワクチン,B型肝炎ワクチン,生理食塩水の4種類の接種に割り付けて比較を行っているが,具体的には以下の方法となっている.
・研究で用いたNF-κB p50欠損マウスは放置していても脳障害を起こすモデル
・実際に用いたマウスは欠損マウスと正常マウスの交雑種
・マウスに投与したワクチンの量はヒトに換算すれば通常のワクチン接種の100倍以上の量
・各群のマウスの数は3-5匹ずつしかいない
■ここまではlimitationの範疇とも言える.たが,実際に行われた研究や解析は以下の通りとのことで,これは許容されるものではない(そもそも3月の発表ではHPVVワクチン接種マウスの脳に障害が生じたとしかとらえられない発表であった).
・発表された解析マウスの写真は,ワクチンを接種したマウスではなく,接種マウスの血清を脳にふりかけられた別のマウスのものであり,マウスが異なる上に血液脳関門(BBB)を無視している
・HPVV群以外のマウスでも脳に障害がでていた(どのマウスも自己抗体があるので当然の結果)
・HPVV群だけ緑色に染色(脳に抗体沈着があることを示す結果)された写真をチョイスし,その他の群では染色されていない写真を池田氏がチョイスした
・解析データはすべて1匹のものである(N=1,すなわちチャンピオンデータ)
■これではHPVV接種が脳障害を起こす根拠などまったく示せていないに等しい.子宮頸がんという人命がかかる疾患,あるいはHPVV副作用,その両方にとって重要な研究であるにもかかわらずこのようなことをやっているとしたらSTAP騒動どころではなく,罪は重い.

[1]DrMagicianEARL. 【文献】ワクチンやそれに含まれるチメロサール,水銀は自閉症と関連しない.メタ解析(Wakefieldの論文捏造の詳細含む) 2014年5月21日 http://drmagician.exblog.jp/22025386/
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# by DrMagicianEARL | 2016-06-20 11:52 | Comments(0)
職場が東北に変わり,いろいろバタバタしていてブログ更新が滞っておりましたがようやく再開できそうです.再開1発目が宣伝を兼ねていて恐縮ですが,日本静脈経腸栄養学会雑誌の2016年5月号にPost-Intensive Care Syndrome(PICS)の総説とPICSに関連した栄養管理のエビデンスを執筆させていただきました.今回は兵庫医科大学救急・災害医学講座教授の小谷穣治先生による特集企画として,急性期栄養管理のこれからのトピックスや新しい研究等を紹介する内容になっています.
特集 急性期栄養療法 ~新たな展開と近未来像~
日本静脈経腸栄養学会雑誌(JJSPEN) 2016 May; Vol.31(No.3)

プロバイオティクス・プレバイオティクス
清水健太郎,小島将裕,小倉裕司,ほか.静脈経腸栄養 2016; 31: 797-802

重症患者における体組成評価の有用性とその限界
堤 理恵,大藤 純,福永佳容子,ほか.静脈経腸栄養 2016; 31: 803-6

重症患者における連続腸音解析システムの臨床応用
後藤順子,松田兼一,針井則一,ほか.静脈経腸栄養 2016; 31: 807-10

便移植
山田知輝.静脈経腸栄養 2016; 31: 811-6

Post-Intensive Care Syndromeと栄養管理
DrMagicianEARL.静脈経腸栄養 2016; 31: 817-20

急性血液浄化中の栄養療法
中村智之,西田 修.静脈経腸栄養 2016; 31: 821-6

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# by DrMagicianEARL | 2016-05-30 16:01 | 文献 | Comments(0)
2016年4月18日12時作成
2016年4月18日21時更新
2016年4月19日17時更新
2016年4月20日11時更新

■この度の熊本・大分の地震でお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げます.また,被災された方々の1日でも早い復興をお祈りいたします.

■さて,先日は仙台で開催された第90回日本感染症学会の後のICD講習会において,最後に学会長から「熊本で大きな地震があった.大規模災害では感染症が必発である.特にレジオネラと破傷風には気をつける必要がある」との特別発言がありました.とりわけ破傷風は致死率の高い感染症です.今後さらに医療支援やボランティアで被災地入りする人も多数でてきますが,必ず破傷風ワクチン接種を推奨してください(東日本大震災では災害ボランティアの感染例が報告されています).

■被災地での医療は通常の状況とはかなり異なり,疫学的状況が大きく変化します.以下に感染制御をはじめとする種々の医療関連マニュアルや各学会からの注意喚起を掲載します.被災地での活用や,今後の災害に備えての参考にしていただければ幸甚です.また,「こんなマニュアルもあるよ」というのがあれば御教授ください.こちらに掲載いたします.
【緊急】「平成28年熊本地震」への対応(日本内科学会)
http://www.naika.or.jp/saigai/kumamoto/
日本薬剤師会熊本地震専用ホームページ
http://www.nichiyaku.or.jp/saigai2016/index.html
大規模自然災害の被災地における感染制御マネージメントの手引き
http://www.kankyokansen.org/other/hisaiti_kansenseigyo.pdf


災害と感染症対策
http://www.kansensho.or.jp/disaster/index.html

やむを得ない場合の抗HIV薬内服中断の方法について(東日本大震災時情報)
http://www.acc.ncgm.go.jp/earthquake/020/110315_001.html

医療資源の限られた状況における敗血症治療の推奨(欧州集中治療医学会:英文,フルテキスト無料)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22349419
災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2014_shimokawa_h.pdf


循環器系学会からの被災地の皆様への注意とお知らせ~避難所生活の方と車中で避難をされておられる方へ~いわゆるエコノミークラス症候群の予防について
http://www.j-circ.or.jp/topics/20160418_vte.htm
厚生労働省からの周知依頼「平成28 年熊本地震で被災した妊産婦及び乳幼児等に対する支援のポイント」
http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20160418_kumamoto.pdf
平成28年熊本・九州地震に伴う「日本糖尿病学会 熊本・九州地震対策本部」の設置について
http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=62
高齢者災害時医療ガイドライン(試作版)第2版
http://www.jpn-geriat-soc.or.jp/member/kaikai/koku_saigai-guideline.html
日本透析医会災害情報ネットワーク
https://www.saigai-touseki.net/

熊本県透析施設協議会
https://www.saigai-touseki.net/?bid=100
リウマチ性疾患あるいは膠原病患者の内服薬について(東日本大震災時情報)
http://www.ryumachi-jp.com/info/news110314.html
熊本県災害時の栄養管理ガイドライン~市町村における避難所栄養管理のための手引き~
http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_2574.html
災害精神保健医療マニュアル
http://www.ncnp.go.jp/nimh/seijin/H22DisaManu110311.pdf

子どもの心のケアのために(日本小児科医会)
http://jpa.umin.jp/download/kokoro/PTSD.pdf

災害時の発達障害児・者支援エッセンス-発達障害のある人に対応するみなさんへ-
http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%81%BD%E5%AE%B3%E6%99%82%E3%81%AE%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E5%85%90%E3%83%BB%E8%80%85%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/?action=common_download_main&upload_id=813
大規模災害リハビリテーション対応マニュアル
http://www.jrat.jp/images/PDF/manual_dsrt.pdf
災害ボランティアの安全衛生対策マニュアル VER4.1
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/volunteer/bousai-volunteer/link/pdf/anzen_manual_ver4.1.pdf

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# by DrMagicianEARL | 2016-04-20 11:07 | Comments(0)
■敗血症患者では免疫抑制が生じることが知られていて,ICUで治療中に二次感染が生じやすくなります.ではその二次感染はどの程度死亡リスク上昇に関与しているのかについて検討した報告がJAMA誌にでました.その上昇リスクは絶対差で2%とわずかという結果でした.過去にも「ICU死亡のうちVAPが関与しているのは1.5%に過ぎない」という報告があり(Am J Respir Crit Care Med 2011; 184: 1133-9),ICU関連感染症自体の重症度はそれほどたいしたことはないのかもしれません.このあたりは重症度評価をきっちりはかる必要があります.

■ただし,この結果は二次感染を許容するものでは当然ありません.せん妄リスクや,入院日数・人工呼吸器装着期間,コストへの影響は大きい可能性がありますし,そのぶんだけPICSのリスクも増す可能性があります.
敗血症でICU入室後の二次感染の発生率,危険因子,死亡への寄与
van Vught LA, Klein Klouwenberg PM, Spitoni C, et al; MARS Consortium. Incidence, Risk Factors, and Attributable Mortality of Secondary Infections in the Intensive Care Unit After Admission for Sepsis. JAMA 2016 Mar 15 [Epub ahead of print]
PMID:26975785

Abstract
【背 景】
敗血症では,晩期死亡に関連した二次感染リスク増加を引き起こす免疫抑制が惹起されると考えられている.

【目 的】
敗血症のある,もしくはないICUに入室においてICU関連感染症の臨床的および宿主遺伝的な特性,発生率,死亡への寄与について検討する.

【方 法】
入室時診断(敗血症または非感染症)に応じた層別化を行った,2011年1月から2013年7月までのオランダの2つのICUにおいて48時間以上の連続的入院患者を登録した前向き観察研究である.主要評価項目はICU関連感染症(48時間超での発症)とした.寄与死亡リスク(感染に起因する危険因子の排除によって予防することができた死亡の割合)は,競合リスクを計算する時間事象モデルを用いて検討した.敗血症による入院のサブセット(461例)において,血液遺伝子発現(白血球における全遺伝子トランスクリプトーム)はベースラインとICU関連感染症(19例)と非感染(9例)事象の発症時に解析した.

【結 果】
主要コホートは1719例の敗血症入院を含んでいた(1504患者; 年齢中央値62歳; 四分位範囲[IQR] 51-71歳; 924例は男性(61.4%)).比較コホートは,最初の48時間で感染症を呈していない1921例の入院を含んでいた’(1821患者; 年齢中央値62歳; IQR 49-71歳; 1128例は男性(61.8%)).ICU関連感染症は敗血症によるICU入院の13.5%(232例),非敗血症によるICU入院の15.1%(291例)で生じていた.ICU関連感染症が生じた敗血症患者はICU関連感染症を生じなかった敗血症患者よりも,入院時(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation IV [APACHE IV]スコア中央値 90 [IQR 72-107] vs 79 [IQR 62-98]; p<0.001)およびICU滞在中の疾患重症度スコアが高かったが,ベースラインの遺伝子発現に差はみられなかった.敗血症患者におけるICU関連感染症の集団死亡寄与率は60日で10.9%(95%CI 0.9-20.6%)であり,敗血症患者とICU関連感染症のない患者の死亡率の推定差は60日で2.0%(95%CI 0.2-3.8%; p=0.03)と小さかった.非敗血症のICU入室において,ICU関連感染症の集団寄与死亡率は60日で21.1%(95%CI 0.6-41.7%)であった.ベースラインと比較すると,ICU関連感染症の発症における血液遺伝子発現は糖新生および解糖系における遺伝子発現の減少を示していた.

【結 論】
ICU関連感染症はより重症度の高い敗血症患者においてより多く発生していたが,このような感染症は全死亡への寄与はわずかであった.敗血症患者の遺伝子的反応は二次感染発症時の免疫抑制と一致していた.

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# by DrMagicianEARL | 2016-04-17 00:00 | 敗血症 | Comments(0)

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