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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

■AKI(急性腎傷害)に対するRRT(腎代替療法)の大雑把な導入基準としてはABCDE(Acidosis アシドーシス,Blood urea 尿毒症,Congestion 溢水,Drug 薬物除去,Electrolyte abnormalities 高K血症)が挙げられていますが,その具体的指標でどのように導入するかについては多数の研究があります.既知の観察研究では,早期導入の方がよさそうという流れがありましたが(Crit Care 2011; 15: R72),2年前にNEJMにpublishされたフランスの620例(内科患者80%,敗血症80%)での多施設共同RCTであるAKIKI trial(N Engl J Med 2016; 375: 122-33)では,KDIGO stage3のAKIに対するRRT早期導入は遅くに導入する待機群と比較して60日死亡率に有意差はなく(48.5% vs 49.7%, p=0.79),カテーテル血流感染症を有意に増加させ(10% vs 5%, p=0.03)ています.さらに,待機群の患者の半数がRRTを回避でき,腎機能改善も早かったと報告されています.60日後のRRT依存は2% vs 5%で有意差なしでした.

■今回紹介する論文は同じくフランスからの大規模RCTであるIDEAL-ICU trialです.無益性のため488例登録時点で早期中止となりました.結果は90日死亡率に有意差なし,待機群では腎代替療法を38%が回避できた,90日時点での透析依存割合は2% vs 3%という結果で,概ねAKIKI trialと同じ結果でした.以上から,少なくとも内科,特に敗血症患者では,AKIだからといって緊急導入基準を満たさないならすぐにRRT導入はせずともよさそう,とはなりますが,待機群の17%で緊急導入が必要になってますので,患者のモニタリングで遅れすぎないようにする必要はあります.また,AKIKIもIDEALもフランスからの研究なので,本邦や他国でのRCTがもう少し欲しいところです.ただ,これは完全に個人的考えですが,フランスで有意差がつかなかったものが他国でやって有意差つくとはあまり思えないですね.フランスでのRCTは有意差つきやすい傾向があるので.
急性腎傷害と敗血症を合併した患者における腎代替療法のタイミング(IDEAL-ICU trial)
Barbar SD, Clere-Jehl R, Bourredjem A, et al; for the IDEAL-ICU Trial Investigators and the CRICS TRIGGERSEP Network. Timing of Renal-Replacement Therapy in Patients with Acute Kidney Injury and Sepsis. N Engl J Med 2018; 379: 1431-42
Abstract
【背 景】
AKI(急性腎傷害)は,敗血症性ショック患者においてもっとも頻度が高い合併症であり,死亡の独立危険因子である.腎代替療法は重症AKIの標準治療であるが,理想的な導入時期に関しては議論が続いている.

【方 法】
本多施設共同無作為化比較試験において,リスク・障害・不全・喪失・末期腎不全(RIFLE)分類で不全の段階にある重症AKIを起こしているが,AKI 関連する生命を脅かす合併症は生じていない早期の敗血症性ショック患者を,AKIが不全の段階であることを確認してから12時間以内に腎代替療法を行う早期戦略群と,腎機能が回復しない場合48時間遅らせて腎代替療法を行う待期戦略群のいずれかに割り付けた.RIFLE分類における不全の段階は,血清クレアチニン値がベースライン値の3倍(または4mg/dL以上で0.5 mg/dL以上の急激な上昇を伴う),24 時間以上にわたって尿量が0.3mL/kg/hr未満,または12時間以上の無尿と定義した.主要評価項目は90日死亡率とした.

【結 果】
事前に規定された2回の中間解析後に,試験は無益性のため早期に中止された.488例を無作為化し,患者背景は両群間で有意な差はみられなかった.90日の追跡調査データを入手しえた477例のうち,早期戦略群の58%(138/239)と待期戦略群の54%(128/238)が死亡した(p=0.38).待期戦略群の38%(93例)は腎代替療法を受けなかった.待期戦略群の17%(41例)が緊急での腎代替療法導入基準を満たしていた.

【結 論】
重症AKIを起こした敗血症性ショック患者において,腎代替療法導入に関して早期戦略に割り付けられた患者と待期戦略に割り付けられた患者とのあいだで90日全死亡率に有意差は認められなかった.

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# by DrMagicianEARL | 2018-10-12 17:05 | 敗血症性AKI | Comments(0)
■EAA≧6の敗血症性ショックに対するPMX-DHPの有効性を検討した大規模RCTであるEUPHRATES trialは2016年10月の欧州集中治療医学会で発表されましたが,そこから待つこと2年,ようやくpublishされました.ABDO-MIX trialがIntensive Care Medicine誌で,それよりは対象患者が広いEUPHRATESだと,北米の研究ということもあって出てくるならJAMAだろうと予想してたらその通りJAMAにpublishされました.2年前の学会発表時とはN数もデータもずいぶんと違うようでもう一度整理し直しです.EUPHRATESのアブストラクトだけでなく,敗血症性ショックに対するPMX-DHPのレビューもその下につけました.

■本研究は,PMX-DHPという,デバイスと大きな装置を用いますが,試験方法を工夫してシャム(≒プラセボ)群を設定して二重盲検化に成功している研究です.当初は絶対差15%の死亡率改善を予測して(強気すぎじゃないですか・・・?)360例登録予定でしたが,中間解析でモニタリングボードからより重症例に絞るべきとの提言を受け,対象患者を多臓器障害の指標であるMODS≧9にプトロコル変更して450例まで集積しています.結果はネガティブ,というよりIntent-to-Treat解析ではPMX-DHP群の方が好ましくなさそうなデータです.28日死亡率は有意差がなく,長期追跡では1年死亡率が全患者集団で52.2% vs 42.2%(p=0.10)とPMX-DHP群の方が10%高くなっています.重篤な有害事象は約8%ほどPMX-DHP群の方が高いです.PMX-DHPを2回完遂したper-protocol解析でも死亡率に統計学的有意差はなく,絶対リスク差も5%未満.また,患者背景の違いとしては,PMX-DHP群の方がグラム陰性桿菌が10%ほど多く,これはどちらかというと機序的にはPMX-DHP群に有利な差ですが,それでも死亡率に差はつかなかったということです.この結果から次の改訂のSSCG 2020や日本版敗血症診療ガイドライン2020では「使用しないことを推奨or提案する」になることは必至でしょう.

■それにしてもずいぶんとあっさりとした論文です.患者背景と主要評価項目と有害事象のデータを載せただけです.学会発表から2年も待ったんだしもう少し詳細なデータがあってもいいのにと思ったんですが,supplementary appendixを見てもサブ解析の結果が一切載っていません.感染巣別の死亡率とか見たかったのですが・・・.プレスリリースにあったEAA 0.6-0.9なら死亡率が大きく改善,というデータも載っていません.学会発表時は重篤な有害事象として,PMX-DHP群の方が消化管障害が5%も多かったので気になっていたのですが,論文にもsupplementary appendixにもデータなし.考察も1ページに満たない短さ.いろいろ後から別にpublishするんでしょうか?
敗血症性ショックとエンドトキシン濃度上昇を伴う患者における28日死亡に対するPMX-DHPの効果:EUPHRATES trial
Dellinger RP, Bagshaw SM, Antonelli M, et al. Effect of Targeted Polymyxin B Hemoperfusion on 28-Day Mortality in Patients With Septic Shock and Elevated Endotoxin Level: The EUPHRATES Randomized Clinical Trial. JAMA 2018; 320: 1455-63

Abstract
【背 景】
ポリミキシンBによる血液灌流(PMX-DHP:polymyxin B-immobilized fiber column-Direct HemoPerfusion)は敗血症における血中エンドトキシンレベルを減少させる.エンドトキシン活性は迅速アッセイで血液から計測可能である.敗血症性ショックでエンドトキシン活性が上昇した患者に対するPMX-DHPを使用した治療が臨床アウトカムを改善させる可能性がある.

【目 的】
敗血症性ショックで高いエンドトキシン活性の患者において,標準治療と比較して標準治療にPMX-DHPの追加が生存率を改善するかを検討する.

【方 法】
本研究は北米の55の三次施設において2010年9月から2016年6月まで敗血症性ショックでエンドトキシン活性アッセイレベルが0.60以上の成人重症患者450例を登録した多施設共同無作為化臨床試験である.最後の追跡は2017年7月まで行った.患者は,登録から24時間以内に,標準治療に加え2回のPMX-DHPによる治療(90-120分)を完遂する治療群(224例)と標準治療にシャム(≒プラセボ)を加えたシャム群(226例)に割り付けられた.主要評価項目は,全ての無作為化された患者(全患者)と多臓器障害スコア(MODS:multiple organ dysfunction)が9以上の患者での28日死亡率とした.

【結 果】
450例の患者(平均年齢59.8歳,女性177例[39.3%],平均APACHEⅡスコア29.4[範囲0-71])が登録され,449例(99.8%)が研究を完遂した.PMX-DHPは,全患者(治療群84/223例[37.7%] vs シャム群78/226[34.5%]; 絶対リスク差3.2%; 95%CI -5.7% to 12.0%; 相対リスク 1.09; 95%CI 0.85 to 1.39; p=0.49),MODS≧9の集団(治療群65/146例[45.5%] vs シャム群65/148[43.9%]; 絶対リスク差0.6%; 95%CI -10.8% to 11.9%; 相対リスク 1.01; 95%CI 0.78 to 1.31; p=0.92)のいずれにおいても28日死亡率に有意差はみられなかった.全体で264例の重篤な有害事象が報告された(治療群65.1% vs シャム群57.3%).最も多い重篤な有害事象は敗血症の増悪(治療群10.8% vs シャム群9.1%)と敗血症性ショックの悪化(治療群6.6% vs シャム群7.7%)であった.

【結 論】
敗血症性ショックと高いエンドトキシン活性の患者において,標準治療にPMX-DHPを加えた治療は標準治療にシャムを加えた治療と比較して28日死亡率を改善しなかった.
敗血症性ショックに対するPMX-DHPのレビュー

■1994年に日本発のエンドトキシン吸着カラムPMX-DHP(polymyxin B-immobilized fiber column-direct hemoperfusion)が保険承認され(30万円します),主にグラム陰性菌による腹腔感染での敗血症において使用されている.抗菌薬であるポリミキシンBはエンドトキシンと結合する性質をもっており,PMXを吸着体として直接血液灌流させることによりエンドトキシンを吸着させるものである.以下,臨床アウトカムをメインにレビューを行った.
※COI開示:本ブログ管理人はこれまでPMX-DHP(トレミキシン®)販売メーカーである東レ・メディカル株式会社から同社主催or共催のエンドトキシン血症救命治療研究会,各地域での講演会,社内講演会等において旅費・講演料を受けている.

1.PMX-DHPは敗血症性ショックの死亡率を改善させるか?

■2007年にCruzらがPMX-DHPに対する28報の英語論文によるシステマティックレビューを行い[1],その結果,PMX-DHPの施行で平均血圧の上昇(19mmHg),ドパミン使用量の低下,P/F比の改善および転帰の改善効果(死亡リスク53%低下)が示されている.ただし,このシステマティックレビューはほとんどが本邦での研究であり,また,本邦から報告された8編のRCTのうち7編は同一研究者のもので,同一年に2編のRCTが報告されたことが3回もあり,症例のクロスオーバーやdouble publicationの可能性が否定できないなど問題点がある.2013年にZhouらは,敗血症における血液浄化の16報のメタ解析を報告し[2],これにおいてもPMX-DHPの死亡リスク減少効果が示唆されたが,同様の問題点をかかえている.よって,バイアスを極力除外した大規模なRCTが必要であった.

■PMX-DHPを評価した比較的N数のあるRCTとして,まずEUPHAS(Early Use of Polymixin B Hemoperfusion in Abdominal Septic Shock) studyが行われた[3].本研究はイタリアの10施設で行われた前向き多施設RCTであり,腹腔内感染由来の重症敗血症,敗血症性ショックの64例を対象とし,緊急手術後6時間以内にPMX-DHP施行群と標準治療群に無作為に割付し,臨床的予後の改善に有効であると結論づけている.

■しかしながら,本研究にはさまざまな問題点が指摘されている.本研究は64例の時点で死亡率が有意にPMX-DHP群で低いとの判断で試験が早期終了となっている点である.有用性をもって早期終了した臨床試験の効果は誇張されていることがあり,早期終了した試験は効果のない治療で30%の相対リスクの低下を示し,真に20%の相対リスク低下効果のある治療では40%以上の低下を示すとされている[4].ましてや有意差がでたのは生存期間に関する比例ハザード分析結果によるものであり,あまり前例がない.

■また,EUPHAS studyを掲載したJAMA誌にはこの論文に対して3 編のletter to the editorが掲載されている[5-7].まずVincentはcontrol群とPMX-DHP群が各々34例と30例を集積してあるこの治験でそもそも救命率に統計学的に有意差はないとしている.Amaralらも同様に統計学的手法に懸念を表明している.確かに本研究では死亡関係のアウトカムでは,院内死亡率(41% vs 67%, p値記載ないが計算上は0.049),比例ハザード分析による生存期間は有意に改善しているが,これらは一次・二次評価項目のいずれにも含まれていない.二次評価項目に28日死亡率が含まれているが,32% vs 53%(p=0.13)であり,有意差はない.よって,この報告をもって予後改善が示されたとは言えないであろう.またKidaらは両群間における起炎菌の分布に関しても懸念を示している.加えて,比較的感染巣コントロールがしやすい感染腹部由来敗血症で対照群における救命率が50%以下というのは,SSCG 2004発表後のRCTとしては考えられない低さである.

■次に行われた大規模RCTがABDO-MIX studyである[8].本研究は,フランスの18のICUにおいて,消化管穿孔に関連した腹膜炎に対する緊急手術後12時間以内の敗血症性ショック患者243例を登録している.主要評価項目の28日死亡率は,PMX-DHP群(119例)で27.7%,標準治療群(113例)で19.5%,p=0.14(OR 1.5872, 95%CI 0.8583-2.935),副次評価項目の90日死亡率はPMX-DHP群で33.6%,標準治療群で24%,p=0.10(OR 1.6128, 95%CI 0.9067-2.8685)であった.統計学的有意ではないもののPMX-DHP群の方が死亡率が7-8%大きく,これは臨床的には無視できない差である.この差がなぜ生じたかであるが,PMX-DHP群の32%にあたる38例がPMX-DHPを続行できず,そのうちの23例が凝固が原因であり,そのうち19例が1回目のPMX-DHP施行で凝固が生じていた.この続行不可能であった38例を除外したサブ解析ではPMX-DHP群の死亡率は18.5%となり,標準治療群の19.5%とほぼ同等となる.一方,PMX-DHPが続行できなかった38例の死亡率は47%と異常に高い.なぜこんなに死亡率が高まってしまったのか?

■考えられる原因としては,①フランス人が凝固が起こりやすい人種である点,②日本やイタリアと違いPMX-DHPに慣れてない施設やスタッフも多かった,③フランスではDICの治療は行われない(このため凝固が起こりやすかった),④使用した抗凝固薬はヘパリンであり,これが敗血症病態において何らかの悪影響を及ぼした可能性も否定できない(本邦ではメシル酸ナファモスタットが一般的である).これらの要因が重なり,PMX-DHPが続行不可能となった症例では死亡率が5割近くまで高まったのかもしれない.だが,いずれにせよ,これらの症例を除外しても,死亡率の改善は示せていないことになる.

■そして今回報告されたのが上記の北米で行われた大規模RCTであるEUPHRATES trialである.またしても主要評価項目である28日死亡率に有意差はみられなかった(詳細の説明は上を参照されたい).

■EUPHRATESも含めた敗血症性ショックを対象としたPMX-DHPの効果を検討した5報の海外RCTのメタ解析をFujiiらが既に2018年2月に報告しており[9],28日死亡に有意差はみられなかった(RR 1.03, 95%CI 0.78-1.36; I2 = 25%; n=797).メタ解析はITT集団で解析されるため,死亡率が悪化傾向を示したABDO-MIXに引っ張られている部分はあるが,仮にABDO-MIXを抜いたとしても死亡率に差はない.

■一方,RCTではないが,最近本邦から大規模観察研究JSEPTIC-DIC studyのデータを用いたpropensity score matching解析結果が報告されている[10].1723例からマッチングにより262組がマッチし,全院内死亡率はPMX-DHP施行群の方が有意に低かった(32.8% vs 41.2%; OR 0.681; 95%CI 0.470-0.987; p=0.042).また,本研究はマッチング前のデータとマッチング後のデータを比較すると興味深いことが分かる.APACHEⅡスコアやSOFAスコアはマッチング前後でほぼ変わっていないにもかかわらず,院内死亡率はPMX-DHP施行群で37.9%→32.8%に減少,非施行群で36.6%→41.1%に増加しているのである.そして患者背景を見ると,腹腔感染症やグラム陰性桿菌の比率がマッチングによって増加している.これはpropensity score matchingの特徴の一つである「N数の少ない方の群の特性にマッチング後の集団が寄る」という現象の産物であろうと推察される.これらのことから,やはりメシル酸ナファモスタットを用い,グラム陰性桿菌による腹腔内感染症による敗血症性ショックを対象とした本邦でのRCT再検証が必要と言えなくもない結果かと思われる.

2.PMX-DHPで血圧は上がるのか?

■PMX-DHPで血圧が上がることは臨床現場でよく経験され,これはABDO-MIX,EUPHRATES,さらにはメタ解析でも示されており,その効果は真であろう.PMX-DHPによって血圧が上昇する機序としては,エンドトキシンが関与しないグラム陽性菌感染症でも血圧が上昇する報告があることから,エンドトキシン吸着ではなく,血管拡張作用をもつ内因性大麻と呼ばれる内因性カンナビノイド(anandamide(ANA)と2-arachidonyl glycerol(2-AG))を吸着する[11]ことによる効果が主体と考えられている.

■しかしながら,血圧が上がるにもかかわらずカテコラミン非使用日数では有意差がついていない.これは,他にも昇圧手段があるのも一因と思われる.カテコラミン不応性の難治性の敗血症性ショックにおいても昇圧手段としてはさまざまなものが報告されている.特にバソプレシンやステロイドは多数のRCTが存在し,死亡率改善効果こそまだcontroversialであるが,昇圧効果は得られる.また,Sawaらは,敗血症性ショック患者の後ろ向き研究において,PMX-DHP群30例とバソプレシン群30例をマッチングさせた解析を行っており[12],90日生存率はバソプレシン群が有意に高かった(83% vs 53%, p=0.008)としている.このように,難治性ショックでの昇圧手段としてはPMX-DHPは有用ではあるが,他の比較的低侵襲な昇圧手段がある以上,必ずしもPMX-DHPでなければならないということはなく,難治性ショックの原因に応じて適切な昇圧手段を選択する上でのひとつのオプションとしてとらえるべきであろう.

3.PMX-DHPで有害事象は増えるのか?

■中心静脈にデバイスを挿入し,抗凝固薬を用いるという特性上,有害事象が増加することは避けられない.問題はPMX-DHPの益をその害が上回るかどうかである.何をもって「重篤な有害事象」と判断するかは研究によって異なる.ABDO-MIXでは重篤な有害事象発生数は6例 vs 3例であり,いずれの群も非常に少ない.一方,今回のEUPHRATES trialでは重篤な有害事象は65.1% vs 57.3%でPMX-DHP群の方が8%高い結果となっている.一方,デバイス関連の有害事象は5.2% vs 2.3%であった.いずれにせよ,死亡リスクのeffect sizeから見ると,RCT結果からは益が害を上回るとは言えにくそうである.

■加えて,PMX-DHPはエンドトキシンだけでなく様々なものを吸着することが知られている[11,13-15].ただし,この吸着は敗血症状態の生体にとって悪いもののみでなくいいものも吸着してしまっている可能性がある.体内の生理活性物質等はそれぞれが生理学的意味があって分泌されるもので,サイトカインストーム等過剰で有害なものもあればそうでないものもある.エンドトキシンだけならまだしも,その他の個々の吸着する物質がその患者にとって益か害かは判断が難しい.

■前述の通り,PMX-DHPは内因性カンナビノイドを吸着することで昇圧効果を示す.これらの内因性カンナビノイドはシナプス後部で生成され,逆行性の抑制性モジュレーターとして働き,興奮性伝達物質グルタミン酸や抑制性伝達物質GABAの遊離を制御している.カンナビノイド1受容体は記憶の中枢である海馬,恐怖・情動行動を司る扁桃体に多く発現しており,その生理的役割として,痛み・不安・うつの軽減や脳内報酬系の賦活,不快な記憶の消去等が知られており[16-18],抗ストレス作用として働いているとされ,生体にとって必ずしも有害とは言えない.現状として,ICUで人工呼吸管理を受けた患者の3人に2人がうつ,不安,PTSDの少なくとも1つの精神障害を有することが知られており[19],敗血症性ショックという高度な生体侵襲ストレスによる悪影響を打ち消すために内因性カンナビノイドが増加するのであれば,これらを吸着することは,特にPICS(post-intensive care syndrome)における精神障害に悪影響を及ぼす可能性が否定できない.現時点でPMX-DHP患者のPICSを評価した研究はないが,その機序からすれば懸念せざるを得ない.

4.今後のPMX-DHPの研究

■PMX-DHP群のRCTは少なくともあと1本は出てくる.現在スイスで今も行われている,ENDoX-study[20]である.の研究はAN69ST(SepXiris®)のカラムの電荷を少し変えてエンドトキシンを効率よく除去できるようにしたoXirisというカラムを用い,このoXiris群,PMX-DHP群,標準治療群を比較した3アームのRCTである.

■また,EUPHRATES studyではEAA 0.6-0.9の範囲の患者集団(194例)では28日死亡率は26.1% vs 36.8%と絶対リスク差にして10.7%の減少効果がみられており,プレスリリースでそのデータが公表されている[21,22].これを受けて米国FDAは追試としてRCTではなくシングルアームの研究を行うよう指示している[23].ちなみに研究名はメソポタミア文明に関連する大河であるユーフラテス川とチグリス川にかけてか,(今回EUPHRATESだったので)TIGRISである.現時点ではClinicalTrialGovには登録されていない.

[1] Cruz DN, Perazella MA, Bellomo R, et al. Effectiveness of polymyxin B-immobilized fiber column in sepsis : A systematic review. Crit Care 2007; 11: R47
[2] Zhou F, Peng Z, Murugan R, et al. Blood purification and mortality in sepsis: a meta-analysis of randomized trials. Crit Care Med 2013; 41: 2209-20
[3] Cruz DN, Antonelli M, Fumagalli R, et al. Early use of polymyxin B hemoperfusion in abdominal septic shock : The EUPHAS randomized controlled trial. JAMA 2009; 301: 2445-52
[4] Bassler D, Briel M, Montori VM, et al. Stopping randomized trials early for benefit and estimation of treatment effects: systematic review and meta-regression analysis. JAMA 2010; 303: 1180-7
[5] Vincent JL. Polymyxin B hemoperfusion and mortality in abdominal septic shock. JAMA 2009; 302: 1968
[6] Amaral AC. Polymyxin B hemoperfusion and mortality in abdominal septic shock. JAMA 2009; 302: 1968-9
[7] Kida Y. Polymyxin B hemoperfusion and mortality in abdominal septic shock. JAMA 2009; 302: 1969
[8] Payen DM, Guilhot J, Launey Y, et al. Early use of polymyxin B hemoperfusion in patients with septic shock due to peritonitis: a multicenter randomized control trial. Intensive Care Med 2015; 41: 975-84
[9] Fujii T, Ganeko R, Kataoka Y, et al. Polymyxin B-immobilized hemoperfusion and mortality in critically ill adult patients with sepsis/septic shock: a systematic review with meta-analysis and trial sequential analysis. Intensive Care Med 2018; 44: 167-78
[10] Nakamura Y, Kitamura T, Kiyomi F, et al; Japan Septic Disseminated Intravascular Coagulation (JSEPTIC DIC) study group. Potential survival benefit of polymyxin B hemoperfusion in patients with septic shock: a propensity-matched cohort study. Crit Care 2017; 21: 134
[11] Wang Y, Liu Y, Sarker KP, et al. Polymyxin B binds to anandamide and inhibits its cytotoxic effect. FEBS Lett 2000; 470: 151–5
[12] Sawa N, Ubara Y, Sumida K, et al. Direct hemoperfusion with a polymyxin B column versus vasopressin for gram negative septic shock: a matched cohort study of the effect on survival. Clin Nephrol 2013; 79: 463-70
[13] Nakamura T, Kawagoe Y, Matsuda T, et al. Effect of polymyxin B-immobilized fiber on blood metalloproteinase-9 and tissue inhibitor of metalloproteinase-1 levels in acute respiratory distress syndrome patients. Blood Purif 2004; 22: 256-60
[14] Abe S, Seo Y, Hayashi H, et al. Neutrophil adsorption by polymyxin B-immobilized fiber column for acute exacerbation in patients with interstitial pneumonia: a pilot study. Blood Purif 2010; 29: 321-6
[15] Oishi K, Mimura-Kimura Y, Miyasho T, et al. Association between cytokine removal by polymyxin B hemoperfusion and improved pulmonary oxygenation in patients with acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis. Cytokine 2013; 61: 84-9
[16] Neumeister A, Seidel J, Ragen BJ, et al. Translational evidence for a role of endocannabinoids in the etiology and treatment of posttraumatic stress disorder. Psychoneuroendocrinology 2015; 51: 577-84
[17] Huang WJ, Chen WW, Zhang X. Endocannabinoid system: Role in depression, reward and pain control (Review). Mol Med Rep 2016; 14: 2899-903
[18] Coccaro EF, Hill MN, Robinson L、et al. Circulating endocannabinoids and affect regulation in human subjects. Psychoneuroendocrinology 2018; 92: 66-71
[19] Huang M, Parker AM, Bienvenu OJ, et al. Psychiatric Symptoms in Acute Respiratory Distress Syndrome Survivors: A 1-Year National Multicenter Study. Crit Care Med 2016; 44: 954-65
[20] https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01948778?term=polymyxin+hemoperfusion&rank=7
[21] http://www.spectraldx.com/assets/spectral-rls-05.30.17.pdf
Iba T, Fowler L. Is polymyxin B-immobilized fiber column ineffective for septic shock? A discussion on the press release for EUPHRATES trial. J Intensive Care 2017; 5: 40
[22] http://www.spectraldx.com/assets/spectral-rls-053018.pdf

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# by DrMagicianEARL | 2018-10-10 16:29 | 敗血症 | Comments(0)
更新履歴
2018年9月27日「置賜DIC治療戦略講演会(10月19日山形)」追加
2018年9月27日「第46回日本救急医学会総会学術集会」追加
2018年9月27日「第23回エンドトキシン救命治療研究会」追加
2018年9月27日「第46回日本集中治療医学会学術集会」追加


研究会,講演会,学会日程
※学会総会に加え,主に敗血症,救急集中治療,感染症の研究会,講演会を適宜掲載していきます(本記事を更新していきます).あくまでも私の知る範囲でのものだけです.

※ここに掲載されていない研究会・講演会で掲載希望等あればコメント欄に記入するか,以下までメールで御連絡下さい.開催場所に制限はありませんが,内容は本ブログの内容の関係上,敗血症,感染症,救急/集中治療に関連するものに限ります.日時,演題名,会の主な対象や主旨等を記載して下さい.
⇒メールはこちらcum_earl@yahoo.co.jp
置賜DIC治療戦略講演会
日時:2018年10月19日(金)18:30~20:00
会場:公立置賜総合病院 大研修室

18:30~19:15
座長:平井一郎先生(三友堂病院外科医長)
特別講演Ⅰ:「エビデンスから見えてきた敗血症性DICの治療とrTM」
DrMagicianEARL(EARLの医学ノート管理人)

19:15~20:00
座長:薄場修先生(公立置賜総合病院副院長)
特別講演Ⅱ:「固形がんに合併したDICの治療におけるrTMの意義」
大内康太先生(東北大学病院腫瘍内科助教)

共催:公立置賜総合病院/旭化成ファーマ株式会社
後援:公立置賜総合病院がん診療委員会/東置賜郡南陽市医師会
第46回日本救急医学会総会・学術集会
会期:2018年11月19日(月)~21日(水)
会場:パシフィコ横浜
会長:坂本 哲也先生(帝京大学医学部救急医学講座主任教授)
テーマ:「救急医学 - Science of uncertainty and probability -」

ホームページ:http://jaam46.umin.ne.jp/index.html
第23回エンドトキシン血症救命治療研究会
会期:2019年1月25日(金)・26日(土)
会場:NSスカイカンファレンス(東京都新宿区西新宿2-4-1 新宿NSビル30F)
会長:今泉均先生(東京医科大学麻酔科学分野・集中治療部教授)
テーマ:「敗血症/敗血症性ショック治療に挑む」


ホームページ:http://jscce.umin.jp/後援:東レ・メディカル株式会社
第46回日本集中治療医学会学術集会
会期:2019年3月1日(金)~3日(日)
会場:国立京都国際会館,グランドプリンスホテル京都
会長:橋本悟(京都府立医科大学附属病院集中治療部)
テーマ:「次世代のためにFor the next generation」

ホームページ:http://jsicm2019.jp/index.html

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# by DrMagicianEARL | 2018-09-27 15:35 | 研究会・講演会・学会 | Comments(8)
■重症の純インフルエンザ肺炎(あるいはそれによるARDS)では肺炎球菌や黄色ブドウ球菌による細菌感染合併で死亡率が高まることはよく知られていますが,侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)も合併しやすいことが経験的に知られており,これまでも小規模データながら報告が散見されていました.私自身,重症インフルエンザ肺炎でICUで治療中にIPAを合併して痛い目にあったことがあります(当時はステロイドを使用していました).

■IPAは敗血症や呼吸不全を呈しうるだけでなく,仮性動脈瘤破裂による大喀血も致死的要因となります.アスペルギルスはエラスターゼを産生し,血管壁の防御機構破綻させて血管炎を惹起し,その血管炎は血管の全層において広範囲に及ぶため,血管内腔が拡張して紡錘形の瘤となり,動脈瘤を形成することが知られています.

■今回紹介する論文は,ICUに入室した重症インフルエンザでのIPA合併率,死亡率を検討した多施設での大規模な貴重な疫学データです.IPA合併率は19%(免疫不全なしで14%,免疫不全ありで32%)であり,免疫不全なしかつ非インフルエンザの重症市中肺炎で5%であることから,インフルエンザ患者でかなり多いことが分かります.90日死亡率もIPA合併例51% vs 非合併例28%でかなりの差があります.多変量解析でもインフルエンザがIPA合併の独立危険因子であることが示されています.

■結論にある通り,いかに予防・早期診断治療するかが鍵になってきます.IPAによる仮性動脈瘤はわずか2日で形成されるという報告もあるくらいで,思った以上に進行は早いです.

■本研究の多変量解析にある通り,ステロイドもリスク因子になります.ARDSでのステロイドは意見が分かれていますが,ことインフルエンザ肺炎でのARDSではステロイドは死亡リスクを高める可能性があり(Moreno G, et al. Intensive Care Med 2018 Aug 3)投与すべきではないと考えます.

■診断については,重症インフルエンザのICU患者ですので,人工呼吸器やECMOがついていてはそう簡単にCTは撮れないでしょうし,CTでIPAの特徴的とされるhalo signも初期にしか見られず,時間がたてば非特異的になり(J Clin Oncol 2001; 19: 253-9),多発結節影があればある程度判断しやすくはなるものの,鑑別は難しくなります.β-Dグルカン,アスペルギルスGM抗原なども用いて総合的に判断する必要があります.

■IPAを疑ったら第一選択薬ボリコナゾールを1回4mg/kg(初日のみローディングで6mg/kg)で1日2回投与し,TDMモニタリングも行います(5-7日で定常状態となるため,トラフ値はそれ以降に計測し,≧1~2µg/mLを目標).ただし,GFR<30mL/minの腎機能低下患者では禁忌ですので,アンホテリシンBかキャンディン系を使用します.

重症インフルエンザでICUに入室した患者における侵襲性肺アスペルギルス:後ろ向きコホート研究
Schauwvlieghe AFAD, Rijnders BJA, Philips N, et al; Dutch-Belgian Mycosis study group. Invasive aspergillosis in patients admitted to the intensive care unit with severe influenza: a retrospective cohort study. Lancet Respir Med 2018 Jul 31[Epub ahead of print]
PMID: 30076119

Abstract
【背 景】
侵襲性肺アスペルギルス症は典型的には免疫不全宿主に生じる.ほぼ一世紀の間,インフルエンザは細菌の重複感染を発生させることが知られていたが,最近では,重症インフルエンザ患者にも侵襲性肺アスペルギルス症が発生することが報告されている.

【目 的】
本研究の目的は,集中治療室(ICU)におけるインフルエンザ肺炎患者の数シーズンにわたる侵襲性肺アスペルギルス症の発生率を計測し,インフルエンザが侵襲性肺アスペルギルス症の独立した危険因子であるかどうかを評価することである.

【方 法】
我々は多施設共同後ろ向きコホート研究を行った.データは,7つのインフルエンザシーズンの間にベルギーとオランダの7つのICUに入室した重症インフルエンザの成人患者から収集した.患者は18歳以上で,画像検査で肺の浸潤陰影を有する急性呼吸不全でICUに24時間以上入室し,気道検体のPCR検査が陽性のインフルエンザ感染が確認された者とした(インフルエンザコホート).非免疫不全(欧州癌研究機関/真菌症研究グループ[EORTC/MSG]の宿主因子がない)のインフルエンザ陽性患者(インフルエンザ群)と気道インフルエンザPCR試験陰性の重症市中肺炎を呈した非免疫不全の患者(対照群)の比較において,インフルエンザが侵襲性アスペルギルス症に独立して関連しているかを調べるためにロジスティック回帰解析を用いた.

【結 果】
データは2009年1月1日から2016年6月30日までにICUに入室した患者から収集した.インフルエンザでICUに入室した患者432例(インフルエンザコホート)のうち,83例(19%)がICU入室後中央値3日目で侵襲性肺アスペルギルス症と診断された.インフルエンザA型とB型で発生率は同等であった.侵襲性肺アスペルギルス症の発生率は,非免疫不全のインフルエンザ症例群が14%(315例中45例)に対して,免疫不全を有するインフルエンザ患者では32%(117例中38例)と高かった.一方で,対照群では侵襲性肺アスペルギルス症発生は315例中16例(5%)のみであった.90日死亡率は侵襲性肺アスペルギルス症を合併したインフルエンザコホートで51%,侵襲性肺アスペルギルス症非合併のインフルエンザコホートで28%であった(p=0.0001).本研究において,インフルエンザは,高いAPACHEⅡスコア,男性,ステロイド使用と同様に,侵襲性肺アスペルギルス症に独立して関連していた(調整OR 5.19; 95%CI 2.63-10.26; p<0.0001).

【結 論】
インフルエンザは侵襲性肺アスペルギルス症の独立した危険因子であり,高い死亡率を伴うことを示した.さらなる研究で,より早い診断または真菌感染予防がインフルエンザ関連アスペルギルス症の予後を改善するかについて評価すべきである.

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# by DrMagicianEARL | 2018-08-13 14:35 | 文献 | Comments(0)
■ICUにおける早期リハビリテーションの重要性はかなり浸透してきており,本邦では診療報酬改定により早期離床加算も登場しています.ではエビデンスの方はどうか?というと,必ずしも確たる有益性を示しきれているわけではありません.もちろん益があるからこそ推奨はされているのですが,そのeffect sizeはそこまで大きくなく,有意差がついているアウトカムも限られているのが現状です(BMJ Open 2018; 8: e019998)

■今回紹介する論文は,標準的な早期リハビリテーションにベッド上サイクリングと四肢の電気筋刺激を追加すると筋力が改善するかどうかについて検討したRCTです.結果はネガティブで,筋力(MRC score)も有意差がついていません.ICUAWは評価されていませんが,MRC scoreを見るにおそらくはICUAWの予防にはなっていないと思われます.同様に6ヶ月後の健康関連QOLであるSF-36も有意差なしです.

■気になるのはICU死亡率です.統計学的有意差はついていませんが,介入群20.9% vs 標準ケア群15.6%で,絶対差にして5.4%の差がついていて,臨床的には無視できない差だと思います(考察では一切触れられていません).SAPSⅡやSOFAスコアは介入群の方がほんのわずかながら高いですが,こんなわずかな重症度の差で死亡率にここまでの開きが出るとは考えにくいです.そしてこの差は退院時,28日,6ヶ月時点でも維持されています(つまりICUで差がついている).

■私自身,ICU早期リハのシステマティックレビューを行った時に気が付いたことがあります.これまでのICU早期リハのRCTで介入群で死亡リスクが増加傾向を示した研究は複数あり,また,今回の研究を含むICU死亡率を評価した3つのRCTはすべて死亡リスクが増加傾向です.いずれも統計学的有意差はついていないものの,今回のRCTを含めて共通点がみられます.その共通点は,リハビリテーションの強度がかなり強めということです.非ICU患者のRCTでも,超早期から強度の強いリハビリテーションを行うと死亡率や神経学的予後が悪化した研究が2つあります.現時点でこれらの原因は明らかになってはいませんが,高度侵襲期にある患者への強度の強いリハビリテーションが何らかの悪影響を及ぼしている可能性があるのかもしれません.Too much is not always better,ということでしょうか.「ICUではリハビリは早期から,でも強度は強すぎず」が一番いいのかもしれません.
重症成人患者におけるベッド上サイクリングと四肢の電気筋刺激の筋力への影響
Fossat G, Baudin F, Courtes L, et al. Effect of In-Bed Leg Cycling and Electrical Stimulation of the Quadriceps on Global Muscle Strength in Critically Ill Adults: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2018; 320: 368-78
PMID: 30043066

Abstract
【背 景】
早期のベッド上サイクリングと電気筋刺激はICU患者におけるリハビリテーションの有益性を改善させる可能性がある.

【目 的】
標準的な早期リハビリテーションに早期のベッド上サイクリングと四肢筋の電気刺激を加えることでICU退室時の筋力がより強化されるかどうかを検討する.

【方 法】
本研究はフランスの1100床の病院のICUにおける重症成人患者を登録した単施設無作為化臨床試験である.2014年7月から2016年6月まで登録を行い,2016年11月24日まで6ヶ月の追跡を行った.患者は標準的早期リハビリテーションに早期のベッド上サイクリングと四肢筋の電気刺激を加える群(n=159)または標準的早期リハビリテーションのみの群(n=155)に無作為に割り付けられた.主要評価項目は盲検化された理学療法士のMedical Research Councilグレードシステム(点数幅0-60点;高い点数ほど良好な筋力を反映;最小の臨床的に重要な差は4点)を用いた評価によるICU退室時の筋力とした.副次評価項目はICU退室時の人工呼吸器非装着日数とICU Mobility Scaleスコア(点数幅0-10点;高い点数ほど良好な歩行能を反映)とした.機能的自立と健康関連QOLは6ヶ月時点で評価した.

【結 果】
無作為化された患者314例のうち,312例(平均年齢66歳,女性36%;研究登録時の人工呼吸器装着78%)が研究を完遂し,解析に組み込まれた.ICU退室時の国際的なMedical Research Councilスコア中央値は介入群で48点(四分位範囲 29 to 58),標準ケア群で51点(四分位範囲37 to 58)であった(中央値差-3.0[95%CI -7.0 to 2.8]; p=0.28).ICU退室時のICU Mobility Scaleスコアは両群とも6点(四分位範囲3 to 9)であった(平均差0[95%CI -1 to 2]; p=0.52).28日時点での人工呼吸器非装着日数は介入群で21日(四分位範囲6 to 25),標準ケア群で22日(四分位範囲10 to 25)であった(中央値差1[95%CI -2 to 3]; p=0.24).運動セッションの間の臨床的に意義のある有害事象は,介入群で7例(4.4%),標準ケア群で9例(5.8%)であった.6ヶ月時点で評価されたアウトカムについては両群間で有意差はみられなかった.

【結 論】
ICUに入室した患者を登録した本単施設無作為化臨床試験において,標準的早期リハビリテーションプログラムにベッド上サイクリングと四肢筋の電気刺激を加えることは,ICU退室時の筋力を改善させなかった.

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# by DrMagicianEARL | 2018-08-07 12:01 | 文献 | Comments(0)

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