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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【文献】肺炎球菌肺炎においてトロンボモデュリンのレクチン様ドメインは宿主の防御反応を妨げる

■今回はちょっと古い文献になりますが,基礎研究論文の紹介です.肺炎球菌肺炎の病態においてはα-エノラーゼによりNETsが過剰産生され,肺炎球菌の莢膜やリポテイコ酸によりNETsから回避しうることが知られており,rTM(リコモジュリン)投与は肺炎球菌肺炎に対する特異的な有益性があるだろうと考えていました.しかし,マウスモデル実験ではこのような結果.ヒトの場合とNETs産生の違いや,DIC病態に対する研究ではないことを考慮する必要はありますが,必ずしもトロンボモデュリンはいい働きばかりするとは限らないということでしょう.
肺炎球菌肺炎においてトロンボモデュリンのレクチン様ドメインは宿主の防御反応を妨げる
Schouten M, de Boer JD, van 't Veer C, et al. The lectin-like domain of thrombomodulin hampers host defence in pneumococcal pneumonia. Eur Respir J 2013; 41: 935-42

Abstract
【背 景】
トロンボモデュリン(TM)のレクチン様ドメインは無菌の炎症状態において重要な制御的役割をはたしているが,重症グラム陽性菌感染症における役割は分かっていない.肺炎球菌は市中肺炎の原因菌として最も一般的である.

【目 的】
本研究の目的は,マウスの肺炎球菌肺炎においてTMのレクチン様ドメインの役割を検討することである.

【方 法】
野生型(WT)マウスとTMのレクチン様ドメイン欠損(TM(LeD/LeD))マウスを鼻腔内に生きた肺炎球菌を感染させ,双方の生存の観察と感染後6,24,48時間後に安楽死を行った.

【結 果】
野生型マウスと比較して,TM(LeD/LeD)マウスは肺炎球菌肺炎での生存が著明に良好であった.肺炎球菌感染から48時間後で,TM(LeD/LeD)マウスは血液中および肝臓内の菌量が少なく,肺組織病理学的に見て肺の炎症もなく,好中球浸潤もなく,サイトカイン,ケモカイン濃度は低かった.向炎症性サイトカインの血漿レベルも感染曝露後のTM(LeD/LeD)マウスにおいて減少していた.

【結 論】
TMのレクチン様ドメインの除去は肺炎球菌肺炎の宿主防御を改善させた.TMのレクチン様ドメインはグラム陽性菌かグラム陰性菌に対する反応で異なる役割を有している可能性がある.

by drmagicianearl | 2014-06-18 13:30 | 敗血症性DIC

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