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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【文献】ICU患者で免疫調整栄養に有益性はなく,むしろ死亡リスク増加の可能性(MetaPlus study)

昨年,グルタミン,セレンがICU患者の経腸栄養での効果が否定(グルタミンに至っては死亡率増加)された大規模RCTのREDOXS studyが報告されましたが,今度は免疫調整栄養そのものを否定する論文がJAMA誌にでました.栄養士さんにはショックな論文かもしれませんね.免疫調整投与は感染症を減少させず,人工呼吸器装着期間,臓器不全やICU在室・入院日数日数は改善せず,内科患者に限定したサブ解析では死亡率がむしろ増加しています.先月BMJ誌に報告された,早期強化リハビリテーションが予後を悪化させる結果となったRCTと同様,More is not always better,余計なことはするな,シンプルにいけ,ということでしょう.ただ,この研究,新規感染症発生率が50%を超えているのはちょっと気になりますが・・・
ICUにおける免疫調整栄養豊富な高タンパク経腸栄養と標準的高タンパク経腸栄養の比較と院内感染症:無作為化比較試験
van Zanten RH, Sztark F, Kaisers US, et al; High-Protein Enteral Nutrition Enriched With Immune-Modulating Nutrients vs Standard High-Protein Enteral Nutrition and Nosocomial Infections in the ICU: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2014; 312: 514-24

Abstract
【背 景】
免疫調整栄養(例えばグルタミン,オメガ-3脂肪酸,セレン,抗酸化物質)の経腸投与は感染症を減少し,重症疾患からの回復を促進することが示唆されていた.しかし,ガイドラインでコンセンサスが得られていないこともあり,免疫調整経腸栄養の使用においては議論がなされている.

【目 的】
人工呼吸器を装着した重症患者において,免疫調整栄養豊富な高タンパク経腸栄養(IMHP)が標準的高タンパク経腸栄養(HP)と比較して感染症発生率を減少させるかを検討する.

【方 法】
このMetaPlus studyは,オランダ,ドイツ,フランス,ベルギーの14の集中治療室(ICU)において2010年2月から2012年4月まで,6ヶ月の追跡期間を含めて行われた無作為化二重盲検多施設研究である.72時間以上の人工呼吸管理と72時間以上の経腸栄養を要することが想定された計301例の成人患者を,IMHP群(152例)とHP群(149例)に無作為化し,intention-to-treat解析,内科,外科,外傷のサブグループでも解析を行った.介入は,ICU入室から48時間以内にIMHPまたはHPを開始し,最大で28日間,ICU在室中に継続して行った.主要評価項目は疾病管理予防センター(CDC)の定義に準拠した新規感染症発症とした.副次評価項目は,死亡率,Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア,人工呼吸管理期間,ICU在室および入院期間,CDC定義に準拠した感染症のタイプとした.

【結 果】
新規感染症発生は,IMHP群で53%(95%CI 44-61%),HP群で52%(95%CI 44-61%)であり,統計学的有意差がなかった(p=0.96).内科サブグループにおいてはIMHP群の方が6ヶ月死亡率が有意に高く(IMHP群54%(95%CI 40-67%),HP群35%(95%CI 22-49%); p=0.04),年齢,Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II(APACHE II)スコアで調整した6ヶ月死亡のハザード比は1.57(95%CI 1.03-2.39; p=0.04)であり,それ以外の評価項目では有意差はみられなかった.

【結 論】
ICUで人工呼吸器を装着している成人患者において,HPと比較してIMHPは感染症合併率を改善せず,調整後6ヶ月死亡率を増加させることが示唆され,有害な可能性がある.この知見は,これらの患者においてIMHP栄養を使用することを支持しない.

by DrMagicianEARL | 2014-08-06 18:45 | 文献

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