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EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【文献】成人で牛乳摂取量が増えると死亡リスクが増加し,骨折リスクは減少しない.

第42回日本救急医学会から帰ってきたらこんな論文がでていました.牛乳摂取量が増えると死亡リスクが増加する上に骨折を減らさない(むしろ増加させる傾向)という結果で,これまでの牛乳神話に影響を与えそうです.興味深いのはバイオマーカーで見ると牛乳摂取量と酸化ストレス・炎症が正の相関を示していること.おそらく摂取量が増えると牛乳のメリットを消してしまうほど有害になってしまうのでしょう.サプリメントでもそういう論文が最近よくでていますね(たとえばビタミンCは抗酸化作用を有するが,サプリメントで摂取すると過量となるためむしろ酸化作用が働いてしまうため逆効果となる).食品産業やサプリメント産業は薬剤に比して安全性等はゆるい上に欧米では信奉者も多く,なかなか受け入れられないでしょうね(スポンサーの問題もあるためマスコミはあまり報道しないでしょう).でも死亡リスクがここまで増加となると無視はできない論文です.
女性および男性における牛乳摂取と死亡・骨折のリスク:コホート研究
Michaëlsson K, Wolk A, Langenskiöld S, et al. Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies. BMJ 2014; 349: g6015

Abstract
【目 的】
牛乳摂取量が多いことは女性および男性において死亡や骨折と関連しているかについて検討する.

【方 法】
本研究デザインはコホート研究で,スウェーデン3地域で行った.患者は,食物頻度アンケートを導入した2つの大規模スウェーデン人コホート集団であり,1つは61433例の女性(1987-90年をベースラインとした39-74歳),もう1つは45339例の男性(1997年をベースラインとした45-79歳)である.主要評価項目は牛乳摂取と死亡や骨折までの期間の関連性を適応した多変量生存モデルとした.

【結 果】
平均追跡期間20.1年の間に,女性の15541例が死亡し,17252例が骨折し,そのうち4259例は股関節の骨折であった.男性コホートでは平均追跡期間11.2年で,10112例が死亡し,5066例が骨折し,そのうち1166例が股関節の骨折であった.女性において,牛乳摂取量が1日あたり1杯未満の場合に比して,1日あたり3杯以上の調整された死亡危険率は1.93倍(95%CI 1.80-2.06).牛乳摂取量が1杯増えるごとに,調整された全死亡危険率は女性で1.15(1.13-1.17),男性で1.03(1.01-1.04)であった.女性において,牛乳摂取量が1杯ずつ増えても,全骨折(1.02; 1.00-1.04)あるいは股関節骨折(1.09; 1.05-1.13)といった骨折リスクに減少は見られなかった.同様に男性において調整された危険率は1.01(0.99-1.03)と1.03(0.99-1.07)であった.2つのコホートのサブサンプルでは,両性別における尿中8-iso-PGF2α(酸化ストレスのバイオマーカー),男性における血清インターロイキン6(主要な炎症性バイオマーカー)と牛乳摂取量の間に正の相関が認められた.

【結 論】
牛乳摂取量が多いことは,女性コホート,男性コホートにおいてより高い死亡と関連していた.

by DrMagicianEARL | 2014-10-30 19:46 | 文献

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