【文献】遺伝子組み換えトロンボモデュリンは敗血症性DICの死亡率を改善させる傾向(メタ解析)
■RCTより観察研究のエビデンスを重視してはいけないわけですが,相対リスク比で見ると観察研究の方が死亡リスク減少効果が強いです.おそらくは前後比較研究による原疾患治療の変化,RCTよりも重症例を登録しているために死亡率に差がつきやすいなどの要因もあると思われます.また,観察研究に症例対照研究が含まれており,解釈に注意が必要かと思われます.後ろ向き症例対照研究においてはバイアスを考慮すると,いかにp値が小さく95%信頼区間が狭くとも,オッズ比が3-4以上または0.25-0.33以下でない限りその結果は懐疑的であるとする意見があります(Science 1995; 269: 164-9).
■ただ,最近,敗血症性DIC領域はアウトカムを死亡率だけで判断してよいのか個人的には疑問に思っています.KyberSept trialの二次解析を見ると,DIC治療は長期機能予後を改善させる可能性があるのではないか?と最近思っていて,そんな研究を今後やってみたいものです.
重症敗血症における遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモデュリン:システマティックレビューとメタ解析
Yamakawa K, Aihara M, Ogura H, et al. Recombinant human soluble thrombomodulin in severe sepsis: a systematic review and meta-analysis. J Thromb Haemost. 2015 Jan 10 [Epub ahead of print]
PMID:25581687
Abstract
【背 景】
遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモデュリン(rhTM)は,日本では播種性血管内凝固(DIC)に対する新しい抗凝固薬として広く使用されているが,敗血症性DICにおけるその臨床効果は明らかではない.
【目 的】
敗血症性DIC患者におけるrhTMの有益性と有害性を評価する.
【方 法】
敗血症性DICに対するrhTMを検討した無作為化試験(RCT)と観察研究(後ろ向き症例対照研究および前向きコホート研究)の各々において,システマティックレビューとメタ解析を行った.有効性として全死亡率(28-30日)を,有害事象として重篤な出血合併症を主要評価項目として評価した.GRADEアプローチを用いたアウトカムレベルでエビデンスの質を評価した.
【結 果】
12研究(838例/RCT3報,571例/9報観察研究)を解析した.
死亡における相対リスクは,RCTで0.81 (95% CI, 0.62-1.06)と有意でない減少を示し,観察研究では0.59 (95% CI, 0.45-0.77)であった.メタ回帰解析では,各研究において,rhTM治療の効果量とベースラインの死亡率に有意な負の相関がみられ(p=0.012),ベースラインのリスク増加に伴ってrhTM治療が有益となる確率が増加することを示唆している.重篤な出血合併症リスクはrhTM群と対照群で有意差はみられなかった.死亡率,重篤な出血におけるエビデンスの質を中等度と判定した.
【結 論】
rhTMは敗血症性DIC患者において28-30日死亡率を減少させる傾向に関連していた.臨床に組み込むことを明白にする前に,本知見を支持するか否かについてはさらなる大規模かつ厳密な試験が必要である.