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EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【文献】腹腔内感染に対する短期抗菌薬治療のRCT(SPOT-IT trial)

■重症感染症においては感染巣コントロールがなされていない状況で抗菌薬のみで戦うのは無謀で,たとえ原因菌を網羅していても治療しきれません.しかしながら臨床状況では感染巣コントロールがなされないまま治療されるケースも見られ,なかなかよくならない状態でICTから感染巣コントロールを提言することもあります.感染巣コントロールが遅れるのはそれだけその医師に有効性が認識されていないこともあるのだと思います.

■以下に紹介するSPOT-IT trialは感染巣コントロールを要する腹腔内感染症において,適切に手術できていれば発熱や白血球数等を参考にする必要性は低く,抗菌薬治療期間は4日間の固定でよいとする結果でした.
腹腔内感染に対する短期抗菌薬治療の試験(SPOT-IT trial)
Sawyer RG, Claridge JA, Nathens AB, et al. Trial of short-course antimicrobial therapy for intraabdominal infection. N Engl J Med. 2015 May 21;372(21):1996-2005
PMID:25992746

Abstract
【背 景】
腹腔内感染の治療の成功には解剖学的感染巣コントロールと抗菌薬の併用が必要である.抗菌薬治療の適切な期間は明らかではない.

【方 法】
我々は複雑性腹腔内感染症の患者518例を,発熱,白血球増加,イレウスが消退してから2日間,最長10日間抗菌薬投与を受ける群(対照群)と,4±1日の一定期間の抗菌薬投与を受ける群(実験群)に無作為に割り付けた.主要評価項目は,治療群ごとの,指標とする感染巣コントロールのための処置後30日以内の手術部位感染症,腹腔内感染症の再発,死亡の複合アウトカムとした.副次評価項目は,治療期間,その後の感染症発生率とした.

【結 果】
手術部位感染症,腹腔内感染症の再発,または死亡は,実験群では257例中56例(21.8%)に発生したのに対し,対照群では260例中58例(22.3%)に発生した(絶対差-0.5%,95%CI -7.0 to 8.0,p=0.92).抗菌薬治療期間中央値は,実験群では4.0日(四分位範囲 4.0-5.0)であったのに対し,対照群では8.0日(四分位範囲5.0ー10.0)であった(絶対差-4.0 日,95%CI -4.7 to -3.3,p<0.001).主要評価項目の各項目の発生率および他の副次評価項目は,両群間で有意差は認められなかった.

【結 論】
適切な感染巣コントロールを受けた腹腔内感染症の患者において,一定期間の抗菌薬治療(約4日間)のアウトカムは,生理学的異常の消退後まで行うより長期の抗菌薬療法(約8日間)のアウトカムと同様であった.

by DrMagicianEARL | 2015-05-25 15:22 | 抗菌薬

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