【文献】誤嚥性肺炎の治療における初期の絶食管理はアウトカムを悪化させる
■たとえ数日程度であっても絶食管理したぶん廃用で嚥下機能がさらに落ちることは実臨床で実感していますし,院内データの解析を行うとその傾向がはっきりと確認できたため,私は誤嚥性肺炎では入院時から可能な限り経口摂取を開始するようにしています.入院して数日以内に認知症が急激に進行することがあるのと同様,嚥下機能も使わなければあっという間に廃用し,機能予後が悪化するであろうというのが私の考えです.経鼻胃管を挿入しての経管栄養は栄養状態改善と消化管廃用防止という意味では利点はありますが,絶食管理下で経管栄養を行っても嚥下機能は補えません.
■今回紹介する研究は私のpracticeの追い風になる報告で,外的妥当性も確認できたという点で院内でより強く推奨できるかなと思っています.
誤嚥性肺炎の高齢者において,絶食管理は予後不良となる
Maeda K, Koga T, Akagi J, et al. Tentative nil per os leads to poor outcomes in older adults with aspiration pneumonia. Clin Nutr 2015, Oct.9 [Epub ahead of print]
Abstract
【背 景】
誤嚥性肺炎患者は,人工的な栄養療法を必要つする治療中において嚥下機能低下が生じている可能性がある.適切な誤嚥性肺炎の治療は日常生活動作の維持に寄与する.
【目 的】
本研究の目的は,誤嚥性肺炎患者の回復および嚥下機能低下における絶食管理状態の効果を評価することである.
【方 法】
本後ろ向きコホート研究は,嘔吐または呼吸不全などの理由で除外した上で,発症前に食事の経口摂取をしていた誤嚥性肺炎患者331例を登録した.対象患者は,入院時に医師の指示に従って,早期経口摂取群と絶食管理群の2つの群に割り付けた.我々は、治療の逆確率加重(IPTW)法により統計学的差がない等分散モデルとなったすべての対象患者のグループに関連する集団モデルを作成し,群間比較を行った.
【結 果】
IPTWモデルにおいて,絶食管理は,入院から1週間の毎日の栄養摂取量が不良であり(p<0.05),より有意に長い治療期間を要し(50%治療期間:絶食管理群13日間[95%CI 12.04-13.96],早期経口摂取群8日間[95%CI 7.69-8.31], log-rank検定 p<0.001),治療経過において嚥下機能がより大きく低下していた(p<0.001).
【結 論】
入院した誤嚥性肺炎における絶食管理は,患者に対して治療期間の延長や嚥下機能低下などの有害な効果をもたらした.不必要な絶食管理の回避は,誤嚥性肺炎を治療しかつ薬剤投与に加えて患者のアウトカムに寄与するもうひとつの手段となる可能性がある.