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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【文献】誤嚥性肺炎のリスク因子(日本のビッグデータ解析)

■高齢者の誤嚥性肺炎のリスク因子を調査した報告がでました.これまでに知られた知見に矛盾しない予想通りの結果ではありますが,これは関連性を調べたものですので解釈に注意が必要です.因果関係とは別になりますので,たとえば喀痰吸引がリスク因子となっていますが,「喀痰l吸引がリスク因子=喀痰吸引を行うと誤嚥性肺炎になる」としないようにする必要があります.どちらかというと吸引をしなければならないほど排痰が多いor痰の喀出機能が落ちている,の方が解釈としては理にかなっていると思われます.また,あくまでもビッグデータの解析ですので,細かいデータのリスク因子は抽出できない研究であり,多数の交絡因子が抜け落ちていることは考慮しておく必要があります.
高齢者における誤嚥性肺炎の危険因子
Manabe T, Teramoto S, Tamiya N, et al. Risk Factors for Aspiration Pneumonia in Older Adults. PLoS One 2015; 10: e0140060
PMID:26444916

Abstract
【背 景】
誤嚥性肺炎は高齢集団において,市中肺炎や医療関連肺炎の主要な病態であり,死亡の原因となりうる.しかし,高齢者における誤嚥性肺炎進展のリスク因子は完全には評価されていない.

【目 的】
本研究の目的は,高齢者における誤嚥性肺炎のリスク因子を決定することである.

【方 法】
我々は,日本の老人医療介護施設の全国調査データを用いた観察研究を行った.9930例(平均年齢86歳,女性76%)の研究対象は,3ヶ月以内に誤嚥性肺炎の既往がある患者とない患者の2つの群に分けられた.統計,臨床状態,日常生活動作(ADL),主要疾患のデータを,誤嚥性肺炎既往を有する群と有しない群で比較した.

【結 果】
259例(全サンプルの2.6%)が誤嚥性肺炎群となった.単変量解析では,高齢は誤嚥性肺炎のリスク因子ではなかったが,喀痰吸引(OR 17.25, 95%CI 13.16-22.62, p<0.001),毎日の酸素療法(OR 8.29, 95%CI 4.39-15.65),栄養支持療法依存(OR 8.10, 95%CI 6.27-10.48),尿路カテーテル(OR 4.08, 95%CI 2.81-5.91, p<0.001)はリスク因子であった.多変量ロジスティック回帰解析では,傾向調整(各258例ずつ)後の誤嚥性肺炎に関連したリスク因子は,喀痰吸引(OR 3.276, 95%CI 1.910-5.619),過去3ヶ月の嚥下機能低下(OR 3.584, 95%CI 1.948-6.952),脱水(OR 8.019, 95%CI 2.720-23.643),認知症(OR 1.618, 95%CI 1.031-2.539).

【結 論】
誤嚥性肺炎のリスク因子は,喀痰吸引,嚥下機能低下,脱水,認知症であった.これらの結果は,誤嚥性肺炎再発の予防における臨床マネージメントの改善に寄与しうる.

by DrMagicianEARL | 2015-10-20 11:00 | 肺炎

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