【論文】急性期疾患で内科に入院した低栄養患者において栄養療法の効果はわずか(メタ解析)
■ICU患者での栄養管理の論文はよく読みますが,より広い範囲の「急性期の患者」というくくりでの論文はあまり読んだことがなく,今回そのRCTのメタ解析が出たので紹介します.ただでさえICU患者でも栄養療法で有意差をつけることが難しい上に,ICU患者に比して重症度がかなり低くなりますから,当然ながら臨床ハードアウトカムに差はつかないだろうなと思いながら読んでみたらやはり死亡率を含めほとんどのアウトカムで有意差なし.ただし,副次評価項目ではあるものの再入院では有意差がついているので,長期アウトカムの設定にするといろいろ差が見えてくるんじゃないかなと.
低栄養の入院患者における栄養サポートと予後:システマティックレビューとメタ解析
Bally MR, Blaser Yildirim PZ, Bounoure L, et al. Nutritional Support and Outcomes in Malnourished Medical Inpatients: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Intern Med. 2016 Jan 1;176(1):43-53
PMID:26720894
Abstract
【背 景】
急性疾患において,栄養療法は低栄養状態あるいはそのリスクのある内科入院患者において広く行われている.しかし,我々の知る範囲では,この介入が患者に対して有効性および有益性を示した包括的な研究はない.
【目 的】
無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビューにおいて低栄養あるいはそのリスクを有する内科入院患者の予後における栄養療法の効果を検討する.
【方 法】
Cochrane Library,MEDLINE,EMBASEを用いた.研究期間は1982年10月5日から2014年4月30日までに各国で行われたもの(ほとんどは欧州)を登録した.我々の解析は2015年3月10日から2015年9月16日にかけて行った.予め指定されたコクランプロトコルに基づいて,我々は入院患者における対照群と比較した栄養療法(カウンセリングや経口摂取・経腸栄養を含む)の効果を検討したRCTを体系的に検索した.2人のレビュワーが研究の背景,方法,結果のデータを抽出した.意見の不一致は合意により解決した.主要評価項目は死亡率とした.副次評価項目は医療関連感染,あらゆる原因での再入院,機能予後,入院期間,毎日のカロリーおよび蛋白の摂取量,体重変化とした.
【結 果】
計3736例の患者を含む22報のRCTを登録した.全体的に研究の質は低く,バイアスリスクが不明確なものがほとんどであり,RCT間の異質性は高かった.介入群は対照群に比して有意に体重(平均差0.72 kg; 95%CI 0.23-1.21 kg),カロリー接種量(平均差397 kcal; 95%CI, 279-515 kcal),蛋白接種量(平均差20.0 g/d; 95%CI 12.5-27.1 g/d)が増加した.死亡率(9.8% vs 10.3%; OR 0.96; 95%CI 0.72-1.27),医療関連感染(6.0% vs 7.6%; OR 0.75; 95%CI 0.50-1.11),機能予後(平均Barthel指数差 0.33ポイント; 95%CI -0.88 to 1.55ポイント),入院期間(平均差 -0.42日; 95%CI -1.09 to 0.24日)は介入群と対照群間で有意差がみられなかった.再入院は介入群で有意に減少させた(20.5% vs 29.6%; RR 0.71; 95%CI 0.57-0.87).
【結 論】
内科入院患者において,栄養療法はカロリーと蛋白の摂取量,体重を増加させる.しかしながら,再入院を除き,臨床アウトカムにおいてはわずか効果しかみられなかった.このギャップを満たすため,より質の高いRCTが必要である.