【文献】人工呼吸器患者においてプロポフォールはミダゾラムより腎関連アウトカム,死亡率が良好
■2カ月前のものですが,腎機能に着眼点を置いたICU人工呼吸器患者の鎮静剤の比較論文を紹介します.傾向スコアマッチング解析を用いた大規模研究で,プロポフォールがミダゾラムよりも腎アウトカムが良好で,死亡率も有意に低いという結果であり,近年のミダゾラムよりプロポフォールの方が好ましいという流れを支持するものです.ただ,マッチングしているとはいえ,ミダゾラムが使用された患者は循環動態が芳しくないためプロポフォールを回避されたというバイアスがある可能性もあります.
プロポフォールまたはミダゾラムの投与を受けた重症疾患患者の腎臓の予後
Leite TT, Macedo E, Martins Ida S, et al. Renal Outcomes in Critically Ill Patients Receiving Propofol or Midazolam. Clin J Am Soc Nephrol. 2015 Nov 6;10(11):1937-45
PMID:26342046
Abstract
【背 景】
プロポフォールは経験的に腎虚血再灌流傷害に対する保護効果を有することが示されてきているが,心臓手術患者での臨床エビデンスは限られている.重症疾患患者におけるプロポフォールと乏尿やAKI(急性腎傷害)との関連性についてのデータはない.
【方 法】
Multiparameter Intelligent Monitoring in Intensive Care IIデータベース(2001-2008年)からデータを得た.患者選択基準は,初回の集中治療室(ICU)に入室した,人工呼吸器を必要とし,プロポフォールまたはミダゾラムの投与を受けた成人患者とした.傾向スコア(Propensity score)解析(1:1)を用い,腎関連アウトカム(AKI,乏尿,累積体液バランス,RRTの必要度)はICU滞在の最初の7日間で評価した.
【結 果】
1396のプロポフォール/ミダゾラムのマッチングした患者が登録された.最初のICU7日間におけるAKIはミダゾラム群に比してプロポフォール群の方が有意に低かった(55.0% vs 67.3%, p<0.001).プロポフォールは尿量(45.0% vs 55.7%, p<0.001)や血清クレアチニン基準(28.8% vs 37.2%, p=0.001)のいずれの基準を用いても低いAKI発生に関連していたプロポフォール群は乏尿(<400mL/日)の頻度が少なく(12.4% vs 19.6%, p=0.001),利尿薬の使用頻度が少なかった(8.5% vs 14.3%, p=0.001).加えて,ICU在室の最初の7日間において,プロポフォール群は体重の5%超の累積体液バランスへの到達頻度が少なかった(50.1% vs 58.3%, p=0.01).ICU在室の最初の7日間でのRRTの必要度もプロポフォール群で少なかった(3.4%vs 5.9%, p=0.03).ICU死亡はプロポフォール群が低かった(14.6% vs 29.7%, p<0.001).
【結 論】
本大規模傾向スコアマッチングのICU患者集団において,プロポフォールで治療された患者はAKI,輸液関連合併症,RRTを必要とするリスクが低かった.