【文献】23価肺炎球菌ワクチンは65歳以上の肺炎球菌肺炎を3割減少させる
■今回,本邦において肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)の肺炎球菌に対する予防効果を検討した研究が報告されましたので紹介します.結果は全ての肺炎球菌肺炎を27.4%,PPV23に合致する血清型では33.5%減少させる予防効果が示されました.日本において重症化予防のみならず発症予防効果をも示せたことは大変意義のあることです.
65歳以上の成人における肺炎球菌肺炎に対する23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチンの血清特異的効果:多施設前向き症例対照研究
Suzuki M, Dhoubhadel BG, Ishifuji T, et al; Adult Pneumonia Study Group-Japan (APSG-J). Serotype-specific effectiveness of 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine against pneumococcal pneumonia in adults aged 65 years or older: a multicentre, prospective, test-negative design study. Lancet Infect Dis. 2017 Jan 23. [Epub ahead of print]
PMID: 28126327
Abstract
【背 景】
65歳以上の成人において,肺炎球菌肺炎に対する23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPV23)の血清特異的効果はまだ確立されていない.我々は本集団においてPPV23の効果を評価した.
【方 法】
本多施設共同前向き研究においては,2011年9月28日から2014年8月23日まで研究を行う日本の4つの病院を受診した65歳以上の市中肺炎全例を登録した.肺炎球菌は喀痰と血液検体から分離し,莢膜Quellung法によって血清型を決定した.喀痰検体は肺炎球菌DNA抽出のためPCRアッセイによってさらに検査を行い,陽性検体はナノ流体リアルタイムPCRアッセイによって50の血清型に判定した.尿検体は尿中抗原で検査を行った.血清特異的ワクチンの効果は症例対照デザインを用いて推定した.
【結 果】
研究病院に2621例の患者が受診し,そのうち585例は喀痰検体が得られず解析から除外となった.2036例の患者のうち419例(21%)は肺炎球菌感染が陽性であった.(喀痰培養で232例,喀痰PCRで317例,尿中抗原検査で197例,血液培養で14例).522例(26%)の患者はワクチン接種を受けていたと判定された.PPV23による予防効果は,全ての肺炎球菌肺炎を27.4%(95%CI 3.2 to 45.6),PPV23に合致する血清型では33.5%(5.6 to 53.1),PPV23に合致しない血清型を2.0%(-78.9 to 46.3)減少させた.サブグループでは有意差は見られなかったものの,75歳未満,女性,大葉性肺炎または医療ケア関連肺炎においてより高い予防効果がみられた.
【結 論】
PPV23は65歳以上においてワクチン血清型肺炎球菌肺炎に対する低~中等度の予防効果を示した.現在の肺炎球菌ワクチンプログラムを改善させるため,高齢者の異なる集団におけるPPV23効果の変動性についてさらなる検討が必要である.