【文献】敗血症性ショックで高酸素血症状態で管理すると死亡リスクや有害事象が増加する(HYPERS2S)
■一方,この研究は2×2機能RCTとして,初期輸液蘇生の輸液として高張性食塩水と生理食塩水の比較を見ています.高張食塩水の過去の研究では出血性ショック,頭部外傷によるICP降下作用,広範囲熱傷初期における必要輸液量の軽減,腹部コンパートメント症候群などでどうやらいいらしい,というエビデンスがありますが,これらの食塩水濃度はおおむね7.5%のものが多く,この論文では3%が用いられています.こちらも予後を改善させるような効果はなさそうな結果です.
敗血症性ショック患者における高酸素血症と高張食塩水(HYPERS2S):多施設共同2×2機能無作為化比較試験
Hyperoxia and hypertonic saline in patients with septic shock (HYPERS2S): a two-by-two factorial, multicentre, randomised, clinical trial. Lancet Respir Med 2017 Feb 14. [Epub ahead of print]
Abstract
【背 景】
敗血症性ショック患者において,吸入酸素濃度(FiO2)を増加させた人工呼吸および高張生理食塩水による輸液蘇生の使用に関する研究は不十分である.我々はこれらの介入が死亡率の低下に関連しているかどうかを検討した.
【方 法】
本研究はフランス22施設における人工呼吸管理を受けた18歳以上の敗血症性ショック患者を登録した多施設共同2×2機能無作為化臨床試験(HYPERS2S)である.患者は,ランダムサイズの順列ブロックを使用して,施設と急性呼吸窮迫症候群の有無によって層別化されたコンピュータによる無作為化リストによって,無作為に1:1:1:1の4つのグループに割りつけられた.患者は,最初の24時間でオープンラベルでFiO2 1.0で管理(高酸素血症群)または動脈血ヘモグロビン酸素飽和度88-95%を目標とするFiO2管理(正常酸素血症群)による人工呼吸を受けた.また,二重盲検下で,最初の72時間の間の輸液蘇生において,3.0%生理食塩水(高張群)または0.9%生理食塩水(等張群)のいずれかの280mLボーラス投与を受けた.主要評価項目はintention-to-treat集団における無作為化から28日時点での死亡率とした.本研究はClinicalTrials.govの登録番号NCT01722422で登録されている.
【結 果】
2012年11月3日から2014年6月13日までの間に442例の患者が登録され,各治療群(正常酸素血症群233例または高酸素血症群219例,等張群224例または高張群218例)に割り付けられた.本試験は安全性の理由により早期に中止された.28日死亡率は424例の患者で記録され,高酸素血症群で217例中93例(43%),正常酸素血症群で217例中77例(35%)が死亡した(HR 1.27, 95%CI 0,94-1.72; p=0.12).高張群では214例中89例(42%),等張群では220例中81例(37%)が死亡した(HR 1.19, 95%CI 0.88-1.61; p=0.25).すべての重篤な有害事象発生率においては高酸素血症群(185例[85%])と正常酸素血症群(165例[76%])で有意差がみられ(p=0.02),ICU-AW(24例[11%] vs 13例[6%]; p=0.06)や無気肺(26例[12%] vs 13例[6%]; p=0.04)の患者数は高酸素血症群で倍増していた.生理食塩水の2群間では重篤な有害事象に統計学的有意差は見られなかった(p=0.23).
【結 論】
敗血症性ショックの患者において,高酸素血症を誘導するためのFiO2 1.0の設定は死亡リスクを増加させた.高張性(3%)生理食塩水は生存率を改善させなかった.