【文献】敗血症における過大腎クリアランス(ARC)は予後に影響を与えない
■本研究はANZICSが行った重症敗血症での抗菌薬持続投与と間欠投与を比較したRCTであるBLING-II trialの二次解析です.結果は,ARCは予後をに影響を与えないというものでした.最もARCを有する患者は若年で臓器障害が少ないという特徴があるため,背景因子として予後は比較的良好な患者集団とも言えます.RCTでの再評価が待たれます.
■ただ,個人的考えですが,このようなPK/PDの理論は,敗血症の予後に影響を与えるほどのインパクトはないのではないかと諸研究を見て最近感じています.敗血症の本体は炎症であり臓器障害であり,いわゆる宿主側の問題であって,感染症治療については抗菌薬が原因菌に当たってさえいれば非敗血症での投与方法・投与期間でも変わらないのではないかとつくづく思います.敗血症患者でのプロカルシトニンガイド下での抗菌薬投与で投与日数がこれまでの経験的日数よりかなり少なくてすんでいる知見がでてきたのもそういうことではないかと.
持続的または間欠的静脈内投与によるβラクタム系抗菌薬治療を受けた患者における過大腎クリアランス(ARC)と臨床アウトカムの関連性:BLING-II無作為化プラセボ対照比較試験のコホート内研究
Udy AA, Dulhunty JM, Roberts JA, et al; BLING-II Investigators; ANZICS Clinical Trials Group. Association between augmented renal clearance and clinical outcomes in patients receiving β-lactam antibiotic therapy by continuous or intermittent infusion: a nested cohort study of the BLING-II randomised, placebo-controlled, clinical trial. Int J Antimicrob Agents. 2017 Mar 9 [Epub ahead of print]
PMID: 28286115
Abstract
【背 景】
過大腎クリアランス(ARC)はβラクタム系抗菌薬の薬物動態に影響するものとして知られている.
【目 的】
BLING-II試験の本サブ研究の目的は,大規模無作為化比較試験におけるARCと患者アウトカムの関連性について検討することである.
【方 法】
BLING-II試験は,βラクタム系抗菌薬による治療を持続的投与か間欠的投与かで無作為化された重症敗血症患者432例を登録した.CLCr≧130 mL/minで定義されるARCを抽出するため,第1病日に8時間でのクレアチニンクリアランス(CLCr)を用いた.腎代替療法を受けた患者は除外された.主要評価項目は28日時点でのICU非在室生存日数とした.副次評価項目は90日死亡率と抗菌薬中止から14日時点での臨床的治癒とした.
【結 果】
計254例の患者が登録され,45例(17.7%)がARCとされた[CLCr中央値(四分位範囲) 165 (144-198) mL/min].ARC患者は,若年であり(p<0.001),男性に多く(p=0.04),臓器障害が少なかった(p<0.001).28日時点でのICU非在室生存日数に有意差はみられなかったが[ARCあり 21 (12-24)日; ARCなし 21(11-25)日; p=0.89],未調整解析ではARCを有する方が有意に臨床的治癒率が高かった[33/45 (73.3%) vs 115/209 (55.0%), p=0.02].多変量解析においては本結果は減衰していた.90日死亡率に差は見られなかった.
【結 論】
ARC患者の臨床アウトカムに統計的に有意な差はなかった.重症敗血症におけるβラクタム系抗菌薬の大規模臨床試験の本サブ研究において,ARCは投薬戦略にかかわらずいかなるアウトカムの差異にも関連していなかった.