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EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【文献】成人の急性咽頭痛にステロイドは有効か?

■上気道炎での咽頭痛を訴える患者は非常に多く,このような患者に対しては私はアズノールうがい液を処方することが一番多いです.他にはトローチや小柴胡湯加桔梗石膏を処方することもあります.この咽頭痛があるせいで抗菌薬の不適切使用につながっているという見方もあるようです.

■研修医の頃,咽頭痛にNSAIDsやトランサミンを処方している上級医も見たことがありますが,エビデンス的には・・・.一方,耳鼻科の先生から咽頭痛に対してステロイド(デキサメサゾン)が経験的によく効くということを教えられたことがあります.でもエビデンスや副作用のことを考えると処方する気にはなれず処方したことはありません.今回紹介する論文は成人の急性咽頭痛にデキサメサゾンが有効かを検討したRCTです.結果は,主要評価項目の24時間時点では咽頭痛を改善させる傾向はあるけど有意差なし,副次評価項目の48時間後なら有意に改善というなんとも評価しにくい結果です.どうやら効くかもしれないなという印象はありますが,投与を推奨するほどのインパクトがあるかというと疑問です.少なくともこの研究を見てデキサメサゾンを処方しようとは私はならないですね.
成人の急性咽頭痛における初期抗菌薬なしでのプラセボと比較したデキサメサゾン経口の効果
Hayward GN, Hay AD, Moore MV, et al. Effect of Oral Dexamethasone Without Immediate Antibiotics vs Placebo on Acute Sore Throat in Adults: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2017 Apr 18;317(15):1535-1543
PMID: 28418482

Abstract
【背 景】
急性咽頭痛はプライマリケアにおいては明らかな負担であり,不適切な抗菌薬処方の原因となる.コルチコステロイドは代替対症療法となりうる.

【目 的】
抗菌薬が処方されていない急性咽頭痛における経口コルチコステロイドの臨床的有効性を評価する.

【方 法】
南および西イングランドの42の診療所において,直ちに抗菌薬治療を必要としない急性咽頭痛を診療所で訴えたその日に登録された成人576例の二重盲検プラセボ対照無作為化試験(2013年4月から2015年2月まで;28日間追跡完了は2015年4月)を行った.投与は,デキサメサゾン10mg経口単回(293例)または同一のプラセボ(283例)とした.主要評価項目は,24時間後での症状が完全消失した患者の割合とした.副次評価項目は48時間後に症状が完全消失した患者の割合,中等度の症状持続期間(Linkertスケールに基づく),視覚的疼痛尺度(0-100mm; 0が無症状で100が最も悪い),仕事や学校を休んだ日数,後で処方された抗菌薬使用量または他の薬剤,有害事象とした.

【結 果】
565例の患者(年齢中央値34歳[四分位範囲 26.0-45.5歳]; 女性75.2%; 介入率100%)はデキサメサゾンを投与された288例とプラセボ277例に無作為に割り付けられた.24時間後,デキサメサゾン群で65例(22.6%),プラセボ群で49例(17.7%)が症状完全消失となり,リスク差は4.7%(95%CI -1.8% to 11.2%),相対リスクは1.28(95%CI 0.92 to 1.78; p=0.14).24時間後で,デキサメサゾン投与を受けた患者はプラセボを投与された患者と比較して症状完全消失が多くはならなかった.48時間後では,デキサメサゾン群で102例(35.4%),プラセボ群で75例(27.1%)が症状完全消失し,リスク差は8.7%(95%CI 1.2% to 16.2%),相対リスクは1.31(95%CI1.02 to 1.68; p=0.03)であった.この差は後での抗菌薬投与を受けていない患者においても見られており,リスク差は10.3%(95%CI 0.6% to 20.1%),相対リスクは1.37(95%CI 1.01 to 1.87; p=0.046).他の副次評価項目では有意差はみられなかった.

【結 論】
急性咽頭痛をプライマリケアで呈する成人において,デキサメサゾン経口単回投与はプラセボに比して24時間後の症状消失率を増加させなかった.しかしながら,48時間後では有意な増加がみられた.

by DrMagicianEARL | 2017-05-08 19:56 | 感染症

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