■今回,JAMA Psychiatry誌に,大麻を合法化した州で違法な大麻使用と大麻による有害事象が増加しているとの報告が出ましたので紹介します.やはり日本では研究は進めるにしても臨床導入するの時期尚早すぎるなと思います(日本では大麻そのものの研究はできませんが,特区を作るなどして研究を行える体制をつくるべく日本臨床カンナビノイド学会が発足しています).なお,文中に登場する「医療用大麻」という言葉はおかしいのですが,論文中に使用されているためそのまま記載しています.実際のところは,医師が処方箋を出し,その処方箋をもって大麻販売所で購入するというもので,「医療用」と明確に区切られているわけではないのが現状です.
米国成人の違法大麻使用,大麻使用による障害,医療マリファナ法:1991-1992年から2012-2013年
Hasin DS, Sarvet AL, Cerdá M, et al. US Adult Illicit Cannabis Use, Cannabis Use Disorder, and Medical Marijuana Laws: 1991-1992 to 2012-2013. JAMA Psychiatry. 2017 Apr 26 [Epub ahead of print]
PMID: 28445557
Abstract
【背 景】
過去25年間に,違法な大麻使用と大麻使用による障害が米国の成人に増加しており,また28の州が医療マリファナ法(MML)を制定した.MMLおよび成人の違法な大麻使用または大麻使用により経時的に考えうる障害についてはほとんど知られていない.
【目 的】
州のMMLおよび大麻の使用および障害の有病率における変化の程度に関する米国データを提示する.
【方 法】
MMLを定めた州と他の州の居住者の変化の程度の差異を3つの横断的な米国成人サーベランス(the National Longitudinal Alcohol Epidemiologic Survey (NLAES; 1991-1992), the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions (NESARC; 2001-2002), and the National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions-III (NESARC-Ⅲ; 2012-2013))を用いて検討する.早期MML州はNLAESとNESARCの間にMMLが制定された州とした(前期).後期MML州はNESARCとNESARC-Ⅲの間にMMLが制定された州とした(後期).過去の違法な大麻使用とDSM-Ⅳでの大麻使用による障害を計測した.
【結 果】
1991-1992年から2012-2013年にかけて,MMLが定められた州において違法な大麻使用は他の州よりも有意に増加し(1.4%増加; 標準誤差 0.5; p=0.004),同様に大麻使用による障害も増加した(0.7%増加; 標準誤差 0.3; p=0.03).前期では,違法な大麻使用と大麻使用による障害はMMLがない州とカリフォルニア州(最初から有病率が非常に高かった)において同等に減少していた.一方で,早期からMMLを制定した州においては,大麻の使用や障害の頻度は増加していた.早期にMMLを制定した州とMMLを制定していない州とで大麻使用(2.5%; 標準誤差 0.9; p=0.004)と障害(1.1%; 標準誤差 0.5; p=0.02)に有意な差が見られた.後期では,違法な大麻使用は,MMLを制定していない州で3.5%(標準誤差 0.5),カリフォルニア州で5.3%(標準誤差 1.0),コロラド州で7.0%(標準誤差 1.6),他の早期MML制定州で2.6%(標準誤差 0.9),後期MML制定州で5.1%(標準誤差 0.8)増加した.MMLを制定していない州と比較して,後期MML制定州(1.6%増加; 標準誤差 0.6; p=0.01),カリフォルニア州(1.8%増加; 標準誤差 0.9; p=0.04),コロラド州(3.5%; 標準誤差 1.5; p=0.03)では違法な大麻使用の増加が有意に大きかった.大麻使用による障害の増加はカリフォルニア州(1.0%増加; 標準誤差 0.5; p=0.06)とコロラド州(1.6%増加; 標準誤差 0.8; p=0.04)においては,有病率が少なかった大麻使用による障害の増加は小さいものの,同様のパターンを記述的に追っており,その変化はMMLを制定していない州よりも大きかった.
【結 論】
医療用マリファナ法は,違法な大麻使用および大麻使用による障害の頻度の増加に寄与していた.州独自の政策変更もまた重要な要因となっている可能性がある.医療マリファナは幾許かの有益性があるかもしれないが,マリファナの州法変更に関連した大麻による健康への影響について医療従事者や一般市民の両方が考慮すべきである.