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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【文献】9価HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)は子宮頸がんを90%予防しうる(RCT)

■ヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン;通称「子宮頸がんワクチン」)が世に出てからかなりの年月が経ち,ついに長期追跡結果がでてきました.今回紹介する論文はLancetにonline firstでpublishされた9価HPVワクチン(ガーダシル9®)と4価HPVワクチン(ガーダシル®)を比較したRCTの追跡結果になります.結果は有意な有効性を示しており,「ワクチンで世界の子宮頸がんの90%を予防しうる」と結論づけています.

■日本では有害事象が相次いだとして係争中の状態にあり,現在HPVワクチンの接種推奨はストップしている状況です.その中で,日本からもHPVワクチン接種によって子宮頸がん発生に関連するタイプのHPVの感染率に9倍の差がみられたとするデータが報告され,日本産科婦人科学会は国に接種推奨再開を求める声明を発表しています.現在の接種推奨ストップの状況が続けば,子宮頸がんの領域において日本は後進国になってしまうでしょう.有害事象に関しては真にワクチンの副反応であったかについて議論されている状態ですが,ワクチン未接種群でも同様の症状が一定数見られていること,これまでの調査結果ではワクチンの副反応であったと結論づける結果はでておらず,引き続き調査が行われています.同時に有害事象が見られたが回復された患者の聞き取り調査も開始されています.
16-26歳の女性における9価ヒトパピローマウイルスワクチンの有効性,免疫反応,安全性の最終解析:無作為化二重盲検比較試験
Huh WK, Joura EA, Giuliano AR, et al. Final efficacy, immunogenicity, and safety analyses of a nine-valent human papillomavirus vaccine in women aged 16-26 years: a randomised, double-blind trial. Lancet. 2017 Sep 5. [Epub ahead of print]
PMID: 28886907

Abstract
【背 景】
16-26歳の若年女性における研究の主要解析で,感染やHPV 31, 33, 45, 52, 58に関連する疾患に対する9価ヒトパピローマウイルス(9vHPV; HPV 6, 11, 18, 31, 33, 45, 52, 58)ワクチンの有効性と,4価HPV(qHPV; 6, 11, 16, 18)ワクチンとの比較におけるHPV 6, 11, 16, 18に対する抗体反応の非劣性が示されている.我々の目的は,最初の投与後の6年間までの9vHPVワクチンの有効性と5年間の抗体反応を報告することである.

【方 法】
我々は,18ヶ国の105の研究施設で9vHPVワクチンの無作為化二重盲検での有効性,免疫原性および安全性試験を行った.健常で,異常な子宮頸部細胞診の病歴がなく,以前の異常な子宮頸部生検結果がなく,性的パートナーが4人を超えていない16-26歳の女性を,9vHPVまたはqHPVのワクチンを6ヶ月間で3回筋肉注射で接種するよう中央無作為化およびブロックサイズ4となるように無作為に1:1に割り付けられた.全ての被験者,本研究者,研究施設員,検査スタッフ,スポンサーの研究チームメンバー,病理学的診断スタッフはワクチングループ情報をマスクされた.主要評価項目はHPV 31, 33, 45, 52, 58に関連した高いグレードの子宮頸部疾患(子宮頸部上皮内腫瘍グレード2または3,腺癌,浸潤性子宮頸癌),外陰疾患(外陰上皮内腫瘍グレード2/3,外陰部癌),膣疾患(膣上皮内腫瘍グレード2/3,膣癌)の発生率,および抗HPV6, 11, 16, 18の幾何平均(GMT)抗体価の非劣性(1.5倍の減少を除く)とした.組織検体は組織病理学的診断で判定し,HPV DNA検査を行った.血清抗体反応は競合的ルミネックスイムノアッセイで評価した.有効性の主要評価は,有効性集団のper-protocolでの優越性解析で行い,支持的有効性は調整intention-to-treat集団での解析で行い,免疫の主要評価は非劣性解析で行った.本試験はClinicalTrials.govのNCT00543543で登録されている.

【結 果】
2007年9月26日から2009年12月18日の間に,14215例の参加者を9vHPVワクチン(7106例)とqHPVワクチン(7109例)に無作為に割り付けて登録した.per-protocol集団では,HPV 31, 33, 45, 52, 58に関連した高いグレードの子宮頸部,外陰,膣疾患は,9vHPV群で0.5例/10000患者-年,qHPV群で19.0例/10000患者-年であり,97.4%の効果(95%CI 85.0-99.9)を示した.HPV 6, 11, 16, 18 GMTはワクチン接種後1ヶ月から3年において9vHPV対qHPVで非劣性であった.両群間で重篤な有害事象の臨床的に意義のある差は見られなかった.研究追跡期間の間に11名の参加者(9vHPV群6例,qHPV群5例)の死亡があったが,ワクチンに関連すると考えられた死亡はなかった.

【結 論】
9vHPVワクチンはHPV 31, 33, 45, 52, 58に関連した感染,細胞診異常,高いグレードの病変,子宮頸部処置を予防する.9vHPVワクチンとqHPVワクチンはHPV 6, 11, 16, 18における免疫反応は同等であった.ワクチンの有効性は6年目でも持続していた.9vHPVワクチンは9vHPVワクチンは,潜在的に広い範囲をカバーし,世界中の子宮頸癌症例の90%を予防しうる.

by DrMagicianEARL | 2017-09-19 11:03 | 感染対策

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