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EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【RCT】成人ICU患者における間接熱量計と畜尿を用いた早期目標到達型栄養vs標準栄養ケア(EAT-ICU trial)

■ICUでの栄養管理では至適投与カロリーはいまだにわかっておらず,初期は予想される目標エネルギー量より少ないpermissive underfeedingが主流になっています.その目標エネルギー量の一定の指標として,間接熱量計での測定結果でも推算式(Harris-Benedictの式や25-30kcal/kg/日の簡易式)でもよいとガイドライン(日集中医誌 2016; 23: 185-281)で推奨されています.しかし,間接熱量計を用いた上での個々のICU患者へのエネルギーおよびカロリー必要量の投与を検討したRCTはこれまでありませんでした.

■今回紹介する論文は,ICUの人工呼吸器患者に対する間接熱量計と24時間畜尿(尿素窒素)を用いて必要栄養量を投与する栄養管理(EGDN:Early Goal-Directed Nutrition)の有効性を,従来の標準的な25kcal/kg/dayでの栄養管理と比較したRCTであるEAT-ICU trialです.

■ただ,このEGDN群,Methodを見たら明らかに投与エネルギー量が多いんですよね.実際の結果を見ると,EGDN群と標準ケア群の投与エネルギー量はまるでEDEN trial(JAMA 2012; 307: 795-803)のエネルギー投与量を見ているかのようです.EDENではARDS患者1000例を対象として,400kcal/dayと1300kcal/dayを比較した結果,死亡率や人工呼吸器装着期間に有意差はなく,嘔吐・胃内残量増加・便秘が1300kcal群の方が有意に多かったという結果でした.また,2015年に報告されたシステマティックレビュー(Crit Care 2015; 19:180)では,目標エネルギー量の33.3-66.6%の群が最も死亡率が低かったという結果がでています.これらから普通に考えればEAT-ICU trialのEGDN群は分が悪いです(なのでなんでこんな研究デザインにしたのか首をかしげたくなります).

■血糖値を見てみると,15mmol/L(270mg/dL)以上になった患者の割合は52% vs 25%でEGDN群がほぼ倍(RR 2.06, 95%CI 1.40-3.03)で,当然ながらインスリン使用量も中央値で86 vs 0(RR 262, 95%CI 71-453)でEGDN群の方が多いという結果でした.高血糖はICUAWのリスク因子でもありますし(Lancet 2013; 381: 1715),インスリン投与量が増えたぶん筋肉の質も落ちやすくなります(Crit Care Med 2013; 41: 2298-309)

■案の定,結果はネガティブでした.まああくまでも間接熱量計が有効かどうかを見る研究ですので,この結果から,あえて間接熱量計を院内に導入する必要はないかなというのが感想です.
成人集中治療患者における早期目標到達型栄養vs標準ケア:単施設無作為化評価者盲検EAT-ICU trial
Allingstrup MJ, Kondrup J, Wiis J, et al. Early goal-directed nutrition versus standard of care in adult intensive care patients: the single-centre, randomised, outcome assessor-blinded EAT-ICU trial. Intensive Care Med 2017 Sep 22 [Epub ahead of print]
PMID: 28936712

Abstract
【目 的】
成人ICU患者における早期目標到達型栄養(EGDN:Early Goal-Directed Nutrition)vs標準栄養ケアの効果を評価する.

【方 法】
我々は,緊急入院で3日間を超えてICUに在室することが予測された人工呼吸器を装着したICU患者を無作為化した.EGDN群では,経腸と静脈栄養を用いて最初の試験日から100%の必要度をカバーすることを目的として間接熱量計と24時間畜尿により栄養必要度を推定した.標準ケア群では,経腸栄養で25kcal/kg/日を投与することを目標とし,もし7日目までに満たさなければ患者は静脈栄養による補充を受けた.主要評価項目は6ヶ月時点でのSF-36の身体的サマリー(PCS:physical component summart)スコアとした.非回答者のデータについては複数の代用を行った.

【結 果】
203例の患者が無作為化され,Intention-to-Treat解析に199例が登録された.ベースラインの変数は両群間で合理的にバランスがとれていた.標準ケア群と比較して,EGDN群ではICUにおけるエネルギーや蛋白の不足が少なかった.6ヶ月時点でのPCSスコアは二群間で差がなく(平均差 0.0; 95%CI -5.9 to 5.8; p=0.99),死亡率,臓器不全,ICUにおける重篤な有害反応や感染症,ICU在室期間や入院期間,90日時点での生命維持装置なしの生存期間も有意差がみられなかった.

【結 論】
急性期に入院し,人工呼吸器を装着した成人ICU患者において,標準栄養ケアと比較してEGDNは6ヶ月時点での身体的QOLや他の重要なアウトカムに影響を与えなかった.

by DrMagicianEARL | 2017-09-26 00:00 | 文献