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EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【RCTメタ解析】TAZ/PIPCとVCMの併用は急性腎傷害が有意に増加する

■TAZ/PIPCとVCMの併用で腎障害が増加するという話は近年かなり話題となりましたが,そのシステマティックレビューがpublishされました.敗血症の初期抗菌薬でTAZ/PIPCかカルバペネム系かならペニシリン系のTAZ/PIPCを選びたいところではありますが,VCMを併用する場合はカルバペネム系よりもTAZ/PIPCの方がAKIを増やすとなると初期抗菌薬選択に影響がでますね.
成人におけるバンコマイシン+ピペラシリン/タゾバクタム併用と急性腎傷害:システマティックレビューおよびメタ解析
Luther MK, Timbrook TT, Caffrey AR, et al. Vancomycin Plus Piperacillin-Tazobactam and Acute Kidney Injury in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Crit Care Med. 2017 Oct 28[Epub ahead of print]
PMID: 29088001

【目 的】
本システマティックレビューおよびメタ解析の目的は,成人患者および重症疾患患者におけるバンコマイシン(VCM)とピペラシリン/タゾバクタム(P/T)の併用療法による急性腎傷害(AKI)を評価することである.AKIの頻度,AKI発生までの時間,AKIのオッズはVCM単剤,VCMとセフェピム(CFPM)またはカルバペネム(CRBs)との併用,P/T単剤と比較した.

【方 法】
研究は,2017年4月まで,PubMed,EMBASE,Web of Science,Cochraneでの検索で検出した.選択された学会のアブストラクトは手動検索した.英語でない論文,小児の研究,症例報告は除外した.2人の執筆者が独立して研究方法,AKIの頻度,AKI発生までの時間についてデータを抽出した.効果推定と95%信頼区間はRevMan 5.3によるランダム効果モデルを用いて算出した.

【結 果】
文献検索により15の出版研究と17の学会アブストラクトの24799例の患者が検出された.AKIの全発生率は16.7%,VCMとP/T併用は22.2%,対照群は12.9%であった.これらにより,有害必要数(NNH)は11であった.AKI発症までの時間はVCMとCFPMまたはCRBsの併用に比してVCMとT/Pの併用の方が短かったが,有意ではなかった(平均差 -1.30日; 95%CI -3.00 to 0.41).VCMとT/P併用によるAKIのオッズは,対VCM単剤(OR 3.40; 95%CI 2.57-4.50),対VCMとCFPMまたはCRBs併用(OR 2.68; 95%CI 1.83-3.91),対P/T単剤(OR 2.70; 95%CI 1.97-3.69)で増加していた.重症疾患患者968例での小規模サブ解析では,AKIのオッズは,対VCM単剤(OR 9.62; 95%CI 4.48-20.68)では増加していたが,VCMとCFPMまたはCRBs併用(OR 1.43l 95%CI 0.83-2.47)やP/T単剤(OR 1.35; 95%CI 0.86-2.11)とは有意差はみられなかった.

【結 論】
VCMとP/Tの併用は,VCM単剤,VCMとCFPMまたはCRBs併用,P/T単剤と比較したAKIのオッズを増加させた.重症疾患患者の限定されたデータでは,AKIのオッズは対VCM単剤では増加し,対その他の比較対象では軽減されることが示唆された.重症疾患集団においてはさらなる研究が必要である.

by DrMagicianEARL | 2017-11-09 19:11 | 抗菌薬

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