【RCT】カテーテル挿入・管理時の消毒はポビドンヨードよりもクロルヘキシジンアルコールの方が優れている
■私も参加した多施設共同RCTであるJSEPTIC-CRBSI trialがCritical Care誌にpublishされたので紹介させていただきます.本研究は中心静脈・動脈カテーテル挿入時・管理中に使用する消毒薬(0.5%または1%クロルヘキシジンアルコール,ポビドンヨード(イソジン®))を比較したものです.本邦においてクロルヘキシジンを浸透させるためには,あらためて本邦発のデータとして0.5%クロルヘキシジンアルコールの10%ポピドンヨードに対する優位性を示す説得力のあるデータを出すことが必要であり,また,どの濃度のクロルヘキシジンアルコールが推奨されるべきなのか決着をつけるために0.5%と1%クロルヘキシジンアルコールの直接比較も必要であるとして本研究が組まれました.2012年11月13日にkick off meetingを行い,5年を経てpublishです.結果は,クロルヘキシジンアルコールがポビドンヨードよりも有意にコロナイゼーション(菌汚染)が少ないという結果であり,カテーテル挿入時の消毒はポビドンヨードよりもクロルヘキシジンが推奨されるものと考えます.オープンアクセスですので是非ご参照いただき,各施設でのクロルヘキシジン推奨にご活用ください.
https://ccforum.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s13054-017-1890-z?site=ccforum.biomedcentral.com
■主要評価項目をカテーテルコロナイゼーションとしているのは,既存の研究のほとんどがこのアウトカムを主要評価項目としていること,CRBSIの発生率はもともと低いため,消毒薬間で有意差を出すには必要となるサンプル数が非常に多くなってしまうことが理由です.カテーテルコロナイゼーションの発生率とCRBSIの発生率は相関することが既に報告されており(Clin Infect Dis 2002; 35: 1053-8),カテーテルコロナイゼーションの発生率に対する有用性を示すことでCRBSI発生率減少への有用性へと結びつけることが可能であると考え,主要評価項目に設定しています.実際に本研究ではCRBSI発生率に有意差はありませんでしたが,クロルヘキシジン群の方が少ない傾向がみられています.
■プロトコルですが,消毒薬はクロルヘキシジンで30秒間×2回,ポビドンヨードで2分間×2回行い,中心静脈カテーテルを挿入する際にはマキシマルバリアプレコーションを,動脈圧ラインを挿入する際にはマスク・手袋・ドレープでプレコーションを行い,カテーテルを挿入しました.挿入後は清潔にポリウレタン性の非抗菌フィルムドレッシング剤でカテーテル刺入部を覆い,交換は7日毎,ただし,カテーテル挿入部付近の浸出が多い場合には清潔なガーゼドレッシングに変更としました.ドレッシング交換時は割り付けられた消毒薬と同様のものを使用しています.
■なお,余談ですが,「ポビドンヨード(イソジン®)消毒時は乾くまで待て」と教えられた先生方はけっこうおられるのではないでしょうか?これは間違いです.ポビドンヨードは2分間たたなければちゃんと作用してくれませんので,乾けば2分未満でもOKというものではありません.そういう意味でも30秒ですむクロルヘキシジンはおすすめです.最近は色付きのクロルヘキシジンがありますので消毒範囲も見えるようになっています.あと,これは私がSNSで医療従事者にアンケートをとってみたのですが,「イソジン®の一般名はポ『ピ』ドンヨードかポ『ビ』ドンヨードか?」で699名中475名(68%)の方が間違っているポピドンヨードを選択されていました.ポリビニルピロリドンの略でポビドンヨードが正解です.
https://ccforum.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/s13054-017-1890-z?site=ccforum.biomedcentral.com
■主要評価項目をカテーテルコロナイゼーションとしているのは,既存の研究のほとんどがこのアウトカムを主要評価項目としていること,CRBSIの発生率はもともと低いため,消毒薬間で有意差を出すには必要となるサンプル数が非常に多くなってしまうことが理由です.カテーテルコロナイゼーションの発生率とCRBSIの発生率は相関することが既に報告されており(Clin Infect Dis 2002; 35: 1053-8),カテーテルコロナイゼーションの発生率に対する有用性を示すことでCRBSI発生率減少への有用性へと結びつけることが可能であると考え,主要評価項目に設定しています.実際に本研究ではCRBSI発生率に有意差はありませんでしたが,クロルヘキシジン群の方が少ない傾向がみられています.
■プロトコルですが,消毒薬はクロルヘキシジンで30秒間×2回,ポビドンヨードで2分間×2回行い,中心静脈カテーテルを挿入する際にはマキシマルバリアプレコーションを,動脈圧ラインを挿入する際にはマスク・手袋・ドレープでプレコーションを行い,カテーテルを挿入しました.挿入後は清潔にポリウレタン性の非抗菌フィルムドレッシング剤でカテーテル刺入部を覆い,交換は7日毎,ただし,カテーテル挿入部付近の浸出が多い場合には清潔なガーゼドレッシングに変更としました.ドレッシング交換時は割り付けられた消毒薬と同様のものを使用しています.
■なお,余談ですが,「ポビドンヨード(イソジン®)消毒時は乾くまで待て」と教えられた先生方はけっこうおられるのではないでしょうか?これは間違いです.ポビドンヨードは2分間たたなければちゃんと作用してくれませんので,乾けば2分未満でもOKというものではありません.そういう意味でも30秒ですむクロルヘキシジンはおすすめです.最近は色付きのクロルヘキシジンがありますので消毒範囲も見えるようになっています.あと,これは私がSNSで医療従事者にアンケートをとってみたのですが,「イソジン®の一般名はポ『ピ』ドンヨードかポ『ビ』ドンヨードか?」で699名中475名(68%)の方が間違っているポピドンヨードを選択されていました.ポリビニルピロリドンの略でポビドンヨードが正解です.
カテーテルコロナイゼーション予防のための3種類の局所消毒薬の効果の比較:多施設共同無作為化比較試験(JSEPTIC-CRBSI trial)
Yasuda H, Sanui M, Abe T, et al; for Japanese Society of Education for Physicians and Trainees in Intensive Care (JSEPTIC) Clinical Trial Group. Comparison of the efficacy of three topical antiseptic solutions for the prevention of catheter colonization: a multicenter randomized controlled study. Crit Care 2017; 21: 320
Abstract
【背 景】血管内カテーテルコロナイゼーション予防のための3つの消毒薬[0.5%および1.0%のクロルヘキシジンアルコール(CHG)と10%ポビドンヨード(PVI)]の効果の比較を行うため,我々は日本の16施設ICUの患者で無作為化比較試験を行った.
【方 法】中心静脈および動脈カテーテル挿入を行う成人患者を,カテーテル挿入およびドレッシング交換の際に使用する3つの消毒薬の1つに無作為に割り付けた.主要評価項目はカテーテルコロナイゼーションの発生率,副次評価項目はカテーテル関連血流感染症(CRBSI)の発生率とした.
【結 果】
無作為化された1132本のカテーテルのうち,796本(70%)が解析に組み込まれた.カテーテルコロナイゼーション発生率は0.5%CHG,1%CHG,PVIで1000カテーテル-日あたりそれぞれ3.7,3.9,10.5であった(p=0.03).群間でのカテーテルコロナイゼーションの対比較では,PVI群でカテーテルコロナイゼーションリスクが有意に高かった(0.5%CHG vs PVI: HR 0.33 [95%CI 0.12–0.95], p=0.04; 1.0%CHG vs PVI: HR 0.35 [95%CI 0.13–0.93], p=0.04).多重代入法による全患者を含んだ感度解析では,一貫した定量的結果を示した(0.5%CHG vs. PVI: HR 0.34, p=0.03; 1.0%CHG vs PVI: HR 0.35, p=0.04).群間のCRBSIの発生率に有意差はみられなかった.
【結 論】
血管内カテーテルコロナイゼーションの予防のための0.5%および1.0%CHGは10%PVIより優れていた.
by DrMagicianEARL | 2017-12-23 17:43 | 感染対策