【文献】餅窒息による院外心停止例のうち1/4は正月三が日に発生しており1カ月生存率20%弱
■ボランティアで1人暮らしの高齢者に餅を配って回ることをやっている団体もあるようですが,食べやすく小さく切っているとはいえやはり気が気でなりません.嚥下機能低下の程度しだいでは切っていても窒息するものは窒息します.本論文では餅窒息による院外心停止例の7割は目撃者なしです.窒息が生じて目撃者がいなければ予後は極めて厳しいものになりますので(本論文では目撃がなければ1カ月生存率は4.8%)
餅による窒息に焦点を当てた窒息による院外心停止の疫学:ウツタイン大阪プロジェクトの集団ベース観察研究
Kiyohara K, Sakai T, Nishiyama C, et al. Epidemiology of Out-of-Hospital Cardiac Arrest Due to Suffocation Focusing on Suffocation Due to Japanese Rice Cake: A Population-Based Observational Study From the Utstein Osaka Project. J Epidemiol. 2017 Oct 28[Epub ahead of print]
PMID: 29093354
Abstract
【背 景】
日本において餅は食物による窒息の主要な原因である.しかしながら,餅での窒息による院外心停止の疫学データは乏しい.
【方 法】
大阪府の集団ベース院外心停止レジストリより2005年から2012年までの院外心停止データを抽出した.救急隊到着前に生じた窒息による院外心停止となった20歳以上の患者を登録した.患者特性,病院前介入,予後を窒息の原因(餅かそれ以外)で比較した.主要評価項目は院外心停止後からの1カ月生存率とした.
【結 果】
研究期間で計46911例の成人院外心停止例があった.それらのうち,7.0%(3294/46911例)が窒息が原因であり,餅による窒息はそのうちの9.5%(314/3294例)を占め,それらのうち24.5%(77/314例)が正月三が日の間に発生していた.租分析では,1カ月生存率は餅による窒息が17.2%(54/314例),餅以外の窒息が13.4%(400/2980)であった.全原因による窒息の多変量解析では,若年,目撃のある心停止,早期の救急隊の対応時間が良好な1カ月生存に有意に関連していた.
【結 論】
窒息による院外心停止の約10%は餅が原因であり,そのうちの25%は正月三が日に発生していた.予防策を確立し,窒息を早期に認識し,目撃者が早急に救急隊に電話するよう促すためのさらなる努力が必要である.