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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【RCT】重症疾患の成人患者における調整晶質液vs生理食塩水(SMART trial)

■ICU患者での急速輸液では晶質液(いわゆるリンゲル液系)と生食のいずれがいいのか?というClinical Questionに関しては,「理論上は晶質液の方がいいけどエビデンスがない」という状態が続いていて,(海外では特に)コストの関係から安い生理食塩水を用いているところもあるようです.SSCG 2016も蘇生輸液は生食でもいいよというスタンスでした.

■生理食塩水などのクロライド(Cl)を多く含む輸液製剤は,クロライドにより糸球体細動脈を収縮させるためGFRが落ちることが知られており,これまで複数の観察研究でクロライド負荷が死亡リスクを増加させるとの結果がでていました.比較的最近の研究をみてみると,敗血症性ショック患者において,晶質液群より生理食塩水群の方が死亡率が有意に高い(19.6% vs 22.8%)という53448例傾向スコアマッチング解析(Crit Care Med 2014; 42: 1585-91)があります.

■一方,ANZICSは2278例でのRCT/pilot studyであるSPLIT study(JAMA 2015; 314: 1701-10)を行っており,AKI発症率(9.6% vs 9.2%, p=0.77),新規腎代替療法導入(3.3% vs 3.4%, p=0.91),院内死亡(7.6% vs 8.6%, p=0.4)に有意差なしという結果でした.よりハイリスク集団で検討すべく,8300例を登録するPLUS studyが進行中です.

■このPLUS studyを待っている間に米国の方から大規模RCTがNEJM誌に報告されたので紹介します.結果は,全死亡+腎機能障害遷延+腎代替療法の複合アウトカムが晶質液群の方が生食群よりもよかったということで,今後は積極的に晶質液が推奨されていくと思われます.ただ,データを見るにSPLIT studyと似たような印象で,個々のアウトカムに関しては有意差はついていませんし,主要評価項目である複合アウトカムについてもその絶対差はわずか1.1%です.さてこれは統計学的に有意な差であっても臨床的に有意な差だろうかという疑問はあります.NNT 91ですし,救急集中治療領域でこのNNTの数値は意味があるのかと.なんせサンプル数15802例であり,数で押し切ってる感がありますね.全死亡率は10.3% vs 11.1%,p=0.06で,p値だけ見れば「ギリギリ有意差ついてないけど晶質液の方がよさそう」となりそうですが,これも絶対差0.8%,NNT 125です.NNT 30以下だけどサンプル数を集めるのが困難で統計学的有意差がつけられなかった介入が「有効性なし」とされることがこの領域ではゴロゴロあるわけで悩ましいところです.少なくとも,コストがシビアな発展途上国でこのエビデンスをもって生食よりも晶質液を使えという推奨は現実的ではないとは思います.個人的にはもともとリンゲル液使用してますし,一種の補強材料といえないこともないですけどね(生食でガンガン輸液するとあとで電解質補正が大変・・・).

重症疾患の成人患者における調整晶質液vs生理食塩水(SMART trial)
Semler MW, Self WH, Wanderer JP, et al. Balanced Crystalloids versus Saline in Critically Ill Adults. N Engl J Med. 2018 Feb 27 [Epub ahead of print]
PMID: 29485925

Abstract
【背 景】
調整された晶質液と生理食塩水は成人重症疾患における輸液で使用されるが,臨床アウトカムにおいていずれがよりよいのかについては知られていない.

【方 法】
大学病院の5つのICUで行われた本実用的クラスター無作為化クロスオーバー試験において,我々は15802例の成人患者をICU入室時に,生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)投与群または調整された晶質液(乳酸リンゲル液またはPlasma Lyte A)投与群に無作為に割り付けた.主要評価項目は30日以内の主要な腎有害事象(退院時または30日のいずれか早い時点で生じた全死亡,新規の腎代替療法導入,クレアチニンがベースの200%以上の上昇で定義された腎機能障害遷延の複合アウトカム)とした.

【結 果】
主要な腎有害事象は,調整晶質液群で7942例中1139例(14.3%),生理食塩水群で7860例中1211例(15.4%)に生じた(marginal OR 0.91; 95%CI 0.84-0.99,conditional OR 0.90; 95%CI 0.82-0.99; p=0.04).30日時点での院内死亡率は調整晶質液群で10.3%,生理食塩水群で11.1%であった(p=0.06).新規の腎代替療法の導入率はそれぞれ2.5%と2.9%であり(p=0.08),腎機能障害の遷延はそれぞれ6.4%vs6.6%であった(p=0.06).

【結 論】
重症疾患の成人患者では,輸液投与における調整晶質液の使用は生理食塩水の使用と比較して,全死亡,新規の腎代替療法導入,腎機能障害遷延の複合アウトカムの発生率が低かった.

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by DrMagicianEARL | 2018-02-28 18:27 | 文献 | Comments(0)

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