【RCT post hoc】ARDS患者のNPPV管理はフェイスマスク型よりもヘルメット型の方が長期予後良好
■今回,このRCTの長期予後を評価した検討がpublishされましたので紹介します.結果は,ヘルメット群の方がICU-AWが少なく,機能的に自立している患者が多く,1年死亡率が低いという結果で,2016年の報告に引き続きヘルメット群に軍配が上がった形になります.また,本文を見ると,せん妄もヘルメット群の方が少ないという結果です.
■ただし,ヘルメット群の方がAPACHE IIスコアがやや低く,呼吸不全の原因が肺炎である率が高く,ショック患者が少なく,昇圧薬を必要とした患者数が少なく,ステロイド使用が多いという背景因子の違いがあり,全体的にヘルメット群の方が有利なようですので,その部分は考慮する必要がありそうです.もっとも既知の研究でもフェイスマスクよりヘルメットの方がハードアウトカムが良好とする報告はいくつかでています.理由としては,ヘルメットの方がPEEPが高く維持でき,リークも少ないことが挙げられます.
ヘルメットvsフェイスマスクの非侵襲的換気の無作為化臨床試験に登録されたARDS患者の1年後の予後Patel BK, Wolfe KS, MacKenzie EL, et al. One-Year Outcomes in Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome Enrolled in a Randomized Clinical Trial of Helmet Versus Facemask Noninvasive Ventilation. Crit Care Med 2018 Mar 27. [Epub ahead of print]PMID: 29595563Abstract【背 景】急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の多くの生存患者は,おそらくは“侵襲的”人工呼吸管理の間の支持療法による長期予後不良の状態にある.ARDSにおけるヘルメット型の非侵襲的換気は挿管率を減少させる可能性があるが,ヘルメット型非侵襲的換気によって挿管を回避することでARDS生存患者の予後が変わるかについては明らかではない.【方 法】本研究は出版された既知の無作為化比較試験の長期観察データである.患者は発表された臨床試験における成人ICUのARDSの患者を登録した.主要評価項目は退院後から1年時点での日常生活動作および歩行の自立性で定義される機能的自立とした.1年時点で,機能的自立性,生存率,自宅で過ごした生存日数として定義される医療機関非受診日数を評価するために患者の調査を行った.ICU-acquired weakness(ICU-AW)と機能的自立は,退院時に盲検化された医療従事者によって評価された.【結 果】退院時に,フェイスマスク群ではICU-AWが多く(79.5% vs 38.6%; p=0.0002),機能的自立が少なかった(15.4% vs 50%; p=0.001).1年間の観察データは83例中81例で収集された(97.6%).1年後死亡率はフェイスマスク群で高かった(69.2% vs 43.2%; p=0.017).1年時点で,ヘルメット群の患者は,機能的自立がより多く(40.9% vs 15.4%; p=0.015),医療機関非受診日数が多かった(中央値 268.5[0-354] vs 0[0-323]; p=0.017).【結 論】ARDSにおいて侵襲的人工呼吸管理後の機能的回復不良は一般的である.ヘルメット型非侵襲的換気は,非侵襲的換気で管理されたARDS生存患者において問題となる長期合併症を緩和する最初の介入となる可能性がある.