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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【RCT】ICUで早期リハにベッド上サイクリングと電気筋刺激を追加しても筋力を改善せず

■ICUにおける早期リハビリテーションの重要性はかなり浸透してきており,本邦では診療報酬改定により早期離床加算も登場しています.ではエビデンスの方はどうか?というと,必ずしも確たる有益性を示しきれているわけではありません.もちろん益があるからこそ推奨はされているのですが,そのeffect sizeはそこまで大きくなく,有意差がついているアウトカムも限られているのが現状です(BMJ Open 2018; 8: e019998)

■今回紹介する論文は,標準的な早期リハビリテーションにベッド上サイクリングと四肢の電気筋刺激を追加すると筋力が改善するかどうかについて検討したRCTです.結果はネガティブで,筋力(MRC score)も有意差がついていません.ICUAWは評価されていませんが,MRC scoreを見るにおそらくはICUAWの予防にはなっていないと思われます.同様に6ヶ月後の健康関連QOLであるSF-36も有意差なしです.

■気になるのはICU死亡率です.統計学的有意差はついていませんが,介入群20.9% vs 標準ケア群15.6%で,絶対差にして5.4%の差がついていて,臨床的には無視できない差だと思います(考察では一切触れられていません).SAPSⅡやSOFAスコアは介入群の方がほんのわずかながら高いですが,こんなわずかな重症度の差で死亡率にここまでの開きが出るとは考えにくいです.そしてこの差は退院時,28日,6ヶ月時点でも維持されています(つまりICUで差がついている).

■私自身,ICU早期リハのシステマティックレビューを行った時に気が付いたことがあります.これまでのICU早期リハのRCTで介入群で死亡リスクが増加傾向を示した研究は複数あり,また,今回の研究を含むICU死亡率を評価した3つのRCTはすべて死亡リスクが増加傾向です.いずれも統計学的有意差はついていないものの,今回のRCTを含めて共通点がみられます.その共通点は,リハビリテーションの強度がかなり強めということです.非ICU患者のRCTでも,超早期から強度の強いリハビリテーションを行うと死亡率や神経学的予後が悪化した研究が2つあります.現時点でこれらの原因は明らかになってはいませんが,高度侵襲期にある患者への強度の強いリハビリテーションが何らかの悪影響を及ぼしている可能性があるのかもしれません.Too much is not always better,ということでしょうか.「ICUではリハビリは早期から,でも強度は強すぎず」が一番いいのかもしれません.
重症成人患者におけるベッド上サイクリングと四肢の電気筋刺激の筋力への影響
Fossat G, Baudin F, Courtes L, et al. Effect of In-Bed Leg Cycling and Electrical Stimulation of the Quadriceps on Global Muscle Strength in Critically Ill Adults: A Randomized Clinical Trial. JAMA 2018; 320: 368-78
PMID: 30043066

Abstract
【背 景】
早期のベッド上サイクリングと電気筋刺激はICU患者におけるリハビリテーションの有益性を改善させる可能性がある.

【目 的】
標準的な早期リハビリテーションに早期のベッド上サイクリングと四肢筋の電気刺激を加えることでICU退室時の筋力がより強化されるかどうかを検討する.

【方 法】
本研究はフランスの1100床の病院のICUにおける重症成人患者を登録した単施設無作為化臨床試験である.2014年7月から2016年6月まで登録を行い,2016年11月24日まで6ヶ月の追跡を行った.患者は標準的早期リハビリテーションに早期のベッド上サイクリングと四肢筋の電気刺激を加える群(n=159)または標準的早期リハビリテーションのみの群(n=155)に無作為に割り付けられた.主要評価項目は盲検化された理学療法士のMedical Research Councilグレードシステム(点数幅0-60点;高い点数ほど良好な筋力を反映;最小の臨床的に重要な差は4点)を用いた評価によるICU退室時の筋力とした.副次評価項目はICU退室時の人工呼吸器非装着日数とICU Mobility Scaleスコア(点数幅0-10点;高い点数ほど良好な歩行能を反映)とした.機能的自立と健康関連QOLは6ヶ月時点で評価した.

【結 果】
無作為化された患者314例のうち,312例(平均年齢66歳,女性36%;研究登録時の人工呼吸器装着78%)が研究を完遂し,解析に組み込まれた.ICU退室時の国際的なMedical Research Councilスコア中央値は介入群で48点(四分位範囲 29 to 58),標準ケア群で51点(四分位範囲37 to 58)であった(中央値差-3.0[95%CI -7.0 to 2.8]; p=0.28).ICU退室時のICU Mobility Scaleスコアは両群とも6点(四分位範囲3 to 9)であった(平均差0[95%CI -1 to 2]; p=0.52).28日時点での人工呼吸器非装着日数は介入群で21日(四分位範囲6 to 25),標準ケア群で22日(四分位範囲10 to 25)であった(中央値差1[95%CI -2 to 3]; p=0.24).運動セッションの間の臨床的に意義のある有害事象は,介入群で7例(4.4%),標準ケア群で9例(5.8%)であった.6ヶ月時点で評価されたアウトカムについては両群間で有意差はみられなかった.

【結 論】
ICUに入室した患者を登録した本単施設無作為化臨床試験において,標準的早期リハビリテーションプログラムにベッド上サイクリングと四肢筋の電気刺激を加えることは,ICU退室時の筋力を改善させなかった.

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by DrMagicianEARL | 2018-08-07 12:01 | 文献 | Comments(0)

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