【RCT post hoc】EAA 0.6-0.89の敗血症性ショックでPMX-DHPは予後を改善する
■先月JAMAに敗血症性ショックに対するPMX-DHPを検討したEUPHRATES trialがpublishされました.結果がネガティブだっただけでなく,アウトカムは少ないし本文にはKaplan-Meier曲線も載せないしサブ解析データもなしという実に味気ない論文で,editorialすらつきませんでした.
【RCT+レビュー】敗血症性ショックに対するPMX-DHPは有効か?EUPHRATESの結果を踏まえて
https://drmagician.exblog.jp/27590255/
一方,プレスリリースではEAA 0.6-0.89の患者に限定したサブ解析ならいいデータが出た,とされていて,それは別の論文にまとめるのかなと思ったらIntensive Care Medicineにpublishされましたので紹介します.
■28日死亡率は26% vs 37%でPMX-DHPが有意に死亡率を低下させています.副次評価項目も有意差がないものも含めて概ねPMX-DHP群の方がよさそうなデータ,ということになります.ただ,EAAの範囲をここまで絞る事後解析はかなり恣意的な印象があります.また,EAAの変化については両群間で差はなし.これはEUPHRATESのITT集団やABDO-MIXの解析でも同様で,どうもPMX-DHPはEAAを下げないようです.だとすればPMX-DHPの何がアウトカムを改善させたのかというと,昇圧効果くらいしかないのかなという印象です.
■ただ,この事後解析は当然ながら事前規定のないサブ解析です.それも途中でプロトコル変更して一定以上の重症度に限定したのに,さらに今度は重症度で上限を設けるサブ解析というのは集中治療領域ではあまり前例がありません.この事後解析をもとにRCTを行っても有意差がつくとはあまり思えません.ちなみに,サブ解析の際にいつも気になることですが,サブ解析で良好な結果になった場合,それ以外の集団では悪化するというシーソー減少が起こりかねません.実際に,今回のEUPHRATESにおけるITT集団からこのサブ解析集団を除いた患者集団では,28日死亡率はPMX-DHP群45.2% vs シャム群32.5%で,PMX-DHP群の方が高いという結果ですから,EAA 0.6-0.89以外ではむしろ悪化要因という可能性だって残ります.
過剰なエンドトキシン血症ではないエンドトキシン血症性敗血症性ショックにおけるポリミキシンB血液灌流(PMX-DHP):EUPHRATES trial事後解析
Klein DJ, Foster D, Walker PM, et al. Polymyxin B hemoperfusion in endotoxemic septic shock patients without extreme endotoxemia: a post hoc analysis of the EUPHRATES trial. Intensive Care Med. 2018 Nov 23[Epub ahead of print]
PMID: 30470853
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30470853
Abstract
【目 的】
EUPHRATES trialではEAA≧0.6で定義される敗血症性ショックおよびエンドトキシン血症の死亡率に対するポリミキシンB血液灌流(PMX)の影響を検討した.28日全死亡率には差はみられなかった.しかしながら,エンドトキシン活性が高すぎる(EAA≧0.9)いくらかの敗血症性ショック患者がみられた.事後解析において,我々は敗血症性ショックでエンドトキシン活性が0.6-0.89の患者におけるPMXの使用の影響を評価した.
【方 法】
2つの治療(PMXまたはシャム(≒プラセボ))を完遂したEAA 0.6-0.89の患者194例において,EUPHRATES trialの事後解析を行った.主要評価項目はAPACHE IIスコアとベースラインの平均血圧(MAP)で調整した28日死亡率とした.副次評価項目では,MAPの変化,累積血管作動薬指数(CVI),EAA中央値減少,人工呼吸器非装着日数(VFD),透析非使用日数(CFD),在院期間とした.サブ解析は感染巣別とベースラインで0.1µg/kg/minを超えるノルアドレナリン投与とした.
【結 果】
28日時点で,PMX群で88例中23例(26.1%),シャム群で106例中39例(36.8%)が死亡した[絶対リスク差 10.7%, OR 0.52, 95%CI 0.27-0.99, P=0.047].ベースラインの変数で調整しなかった場合はP=0.11であった.PMX群の28日間での生存期間はシャム群より長かった[HR 0.56, 95%CI 0.33-0.95, P=0.03].PMXによる治療はシャムと比較して,MAPを増加させ[中央値(四分位範囲) 8mmHg (-0.5, 19.5) vs 4mmHg (-4.0, 11), P=0.04],VFDを増加させた[中央値(四分位範囲) 20日 (0.5, 23.5) vs 6日 (0, 20), P=0.004].その他の評価項目には有意差はみられなかった.培養で菌の発育がなかった患者においてはPMX治療の方が死亡率が有意に低かった[PMX 6/30 (20%) vs シャム 13/31 (41.9%), P=0.005].この集団において,EAA中央値の変化は-12.9%(範囲:増加49.2%-減少86.3%)であった.EAA中央値減少群における死亡率はPMX群で6/38例(15.7%),シャム群15/49例(30.6%),P=0.08であった.
【結 論】
EUPHRATES trialの探索的事後解析に基づいたこれらの仮説検証の結果,平均血圧,人工呼吸器非装着日数,死亡率の変化において,敗血症性ショックでEAA 0.6-0.89の患者が反応することを示唆する.