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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.Stop Sepsis, Save Lives.

【文献】日本政府によるHPVワクチンの推奨再開のその先

■日本では毎年約9000人が子宮頸がんと診断され,約2000~3000人が子宮頸がんで死亡しています.この子宮頸がんの原因とされるヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンは,子宮頸がん,またはその前癌病変の予防に有効であるという報告が多数でてきており,オーストラリアでは子宮頸がんをほぼ制圧する最初の国になるだろうと予測されています.一方,日本は先進国の中で唯一HPVワクチン接種の積極推奨を中止したままであり,WHOからも名指しで批判されています.このままでは日本だけが子宮頸がんで毎年2000~3000人も亡くなる国のままになってしまいます.

■今回紹介する論文はLancet OncologyへのCommentとして大阪大学がpublishしたものです.ここには,ただ接種推奨を再開するだけでなく,再開と同時に様々なことを平行して行わなければならないという提言がもりこまれています.
日本政府によるHPVワクチンの勧告の再開のその先
Ueda Y, Yagi A, Ikeda S, et al. Beyond resumption of the Japanese Government's recommendation of the HPV vaccine. Lancet Oncol 2018; 19: 1563-4
要 約

【日本におけるHPVワクチン定期接種開始から中止まで】
 子宮頸部のHPV関連前癌性病変や浸潤性HPV関連癌に対する予防効果が示されてきている.日本では,2010年に公的補助金によるHPVワクチン接種が開始され,2013年4月には,12〜16歳の女児に対して全国的に推奨される定期予防接種となった.しかし,予防接種後に疼痛や運動障害が生じた少女の有害事象報道がメディアによってなされ,2013年6月に厚生労働省は,安全性と有効性に関する適切な情報が市民に提供されるまで定期予防接種を中止することを発表した.その結果,12〜16歳の日本の少女たちの間でのHPVワクチン接種はほぼ0%に低下した.

【日本でのHPVワクチンの疫学研究】
 政府によるHPVワクチン勧告の中止後から現在までに,HPVワクチンの有用性と安全性は世界中で示されてきた.日本では,厚生労働省の助成を受けて,HPVワクチンの有効性を分析するための観察研究を行った結果,HPVワクチン接種の増加と平行して,子宮頸癌スクリーニングでの異常の減少を示した.また,HPVワクチン接種を受けた少女と同様に,ワクチン接種を受けていない少女においても,広範な疼痛や感覚・運動・自律神経・認知機能障害などの症状を示した.さらに,別の研究では,HPVワクチン接種後にこれらの多様な症状のいずれかの発生に有意な増加は見られなかった.

【HPVワクチン推奨再開にあたっての課題】
 厚生労働省は,HPVワクチン接種に関する情報を提供するリーフレットを作成しており,HPVワクチン接種に対する政府の勧告が間もなく再開されると考えられるが,ただ再開するだけにとどまらない考慮されるべきである課題がある.

(1)予防接種を受けられず,既に対象年齢(12~16歳)を超えてしまった女性にも接種を行う
(2)子宮頸がんを8~9割予防できるとされる9価ワクチンを導入する
(3)男子へのワクチン接種も行う
(4)HPVワクチンの安全性と有効性のみならず,子宮頸癌の重症度とそれによる受胎合併症もまた説明が必要であり,行動経済学的手法を駆使した接種推奨を行う
(5)報道するメディアにHPVワクチンの有効性と安全性について正確な情報を提供し,そのことを報道する手助けする

by DrMagicianEARL | 2018-12-27 17:22 | 感染対策