【文献】特発性間質性肺炎に対する遺伝子組換えトロンボモデュリンは死亡率を改善する
■そのような中,期待されているのがDIC治療に使われる遺伝子組換えトロンボモデュリン(rhTM)と敗血症治療に使われるエンドトキシン吸着カラムのPMX-DHPです.いずれも観察研究において死亡率を大きく改善する結果が報告されており,rhTMは本邦で多施設RCTが進行中です.ただ,このrhTMとPMX-DHPといえども,これまでの研究内容を見てみると,挿管人工呼吸管理に至ってしまっている患者にはほぼ無効です.ですので,使用するとすれば救急受診する前,感冒様症状等の軽症の時点で受診し,他疾患を除外した上で早期に使用しなければ無駄になってしまうことになります.なので,重症化した後に対応する救急・集中治療医よりも早期の呼吸器内科の腕にかかっている治療とも言えます.
■今回紹介する論文は大阪間質性肺炎急性増悪研究グループによる前向き多施設コホート研究です.結果はこれまでの観察研究と同様の結果で,effect sizeも同程度といったところです.
特発性間質性肺炎に対する遺伝子組換えトロンボモデュリン
Arai T, Kida H, Ogata Y, et al; Osaka Acute Exacerbation of Interstitial Pneumonia Research Group. Recombinant thrombomodulin for acute exacerbation in idiopathic interstitial pneumonias. Respirology 2019 Mar 5 [Epub ahead of print]PMID: 30835911
Abstract
【背 景】
特発性肺線維症(IIP)やその他の特発性間質性肺炎(IIP)の急性増悪(AE)はコルチコステロイドや免疫抑制剤による標準治療を行っても予後は不良である.
【目 的】
本研究の目的はAE-IIPに対する遺伝子組換えヒト可溶性トロンボモデュリン(rhTM)の有効性と安全性を評価することである.
【方 法】
本前向きシングルアーム・オープンラベル多施設コホート研究において,2011年から2013年までの標準治療を受けたAE-IIP患者61例(対照群)と2014年から2016年までの標準治療とrhTM(380U/kg/dayを6日間)による治療を受けたAE-IIP患者39例を前向きに登録した(rhTM群).治療比較における潜在的交絡を減じるため,90日生存において調整された死亡率の解析を,治療の重みづけ確率の逆数を使用したCox比例ハザード回帰モデルで行った.重みづけは,潜在的交絡を含む多変量ロジスティック回帰解析を用いた傾向スコアで行った.
【結 果】
rhTMで治療を受けたまたは受けていないAE-IIP患者の90日生存率はそれぞれ66.7%(26/39)と47.5%(29/61)であった.不均衡を調整すると,rhTM治療は死亡減少に有意に関連していた(調整HR 0.453; 95%CI 0.237-0.864; p=0.0163).有害事象の頻度はrhTM群で17.9%(7/39),対照群で19.7%(12/61)であり,両群で同等であった(p=1.0).rhTM群において2例の出血関連有害事象が発生した.
【結 論】
AE-IIPのrhTM治療における安全性と有効性が確認された.最終的な結論を引き出すためには,今後無作為化比較試験が必要である.