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EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

ICUにおけるせん妄介入のRCTでは,非検証のせん妄判断基準では過大評価を起こす

■ICUにおけるせん妄の予防や治療についてのRCTは多く行われているが,その結果を正確に解釈するためには各試験でどのようにせん妄が定義され,評価されているかを理解することが重要である.今回紹介する論文では,せん妄の定義はRCT間で異なることが多く,これが介入効果の評価に影響を及ぼす可能性があるとの結果が示されている.試験の中には,非検証のせん妄の評価を用いているものが1/5もあり,その評価方法が不明確であるため,結果の解釈や他の試験との比較が困難となる.そして,非検証の定義を用いた試験では介入効果が過大評価される傾向があることが示唆されている.これらの論文を読むときは,①せん妄の定義の確認,②使用されている定義の妥当性,をチェックしておく必要がある.
ICUにおけるせん妄の定義の異質性とランダム化比較試験における介入効果との関連性:メタ疫学的研究
Heterogeneity in the definition of delirium in ICUs and association with the intervention effect in randomized controlled trials: a meta-epidemiological study. Collet L, Lanore A, Alaterre C, et al. Crit Care 2023; 27: 170
PMID: 37143091
https://doi.org/10.1186/s13054-023-04411-y

Abstract
【目的】集中治療室(ICU)のせん妄についてのメタ解析に含まれる無作為化比較試験(RCT)におけるせん妄の定義の異質性を評価し,介入効果が使用される定義に依存しているかどうかを検討する.

【方法】ICUでのせん妄の予防または治療戦略を評価するRCTを含むメタ解析のためにPubMedを検索した.せん妄の定義はRCTから収集し,検証済み(DSM基準,CAM-ICU,ICDSC,NEECHAM,DRS-R98)または非検証(非検証の尺度,症状のセット,医師の評価または報告なし)として分類した.検証済みの定義を使用する試験とそうでない試験の間で介入効果を比較するためにメタ疫学的分析を行い,一次分析として2ステップ法,二次分析として多層モデルを用いた.オッズ比(ROR)<1は非検証の定義を使用する試験でより大きな介入効果を示すものとした.

【結果】149件のRCT(41のメタ解析)のうち,109件(73.1%)が検証済みの定義を使用し,40件(26.8%)が使用していなかった(うち31件[20.8%]が定義を報告していなかった).7つのメタ解析(30件のRCT)の一次解析では,検証済みの定義を使用する試験とその他の試験との間で介入効果に有意差は見られなかった(rOR=0.54 95%CI 0.27-1.08).一方,12のメタ解析(67件のRCT)を含む二次の多層分析では,非検証の定義を使用する試験と検証済みの定義を使用する試験との間で有意に大きな効果が見られた(rOR=0.36 95%CI 0.21-0.62).
※rOR: ratio of odds ratios

【結論】せん妄の定義はRCT間で異質であり,5分の1がせん妄の評価方法を報告していなかった.一次解析では介入効果との有意な関連性は見られなかった.より多くの研究を含む二次解析では,非検証の定義を使用する試験で有意に大きな介入効果が見られた.

by DrMagicianEARL | 2023-05-15 09:46 | 文献

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