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EARLの医学ノート

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敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【RCT】成人の再発性急性扁桃炎での扁桃腺摘出術は保存的治療に比して優れている

■再発性急性扁桃炎での扁桃腺摘出術は保存的治療に比して臨床的にも費用対効果的にも優れているとの報告(NATTINA)がLancetにonline publishされたので紹介する.過去20年間で多くの欧州諸国における扁桃腺摘出術の実施率は最大50%減少したが,一方で扁桃炎のための入院は136%増加した[1].2014年のコクランメタ解析[2]では,2つのRCTが抽出され扁桃腺摘出術を受けた患者は約6ヵ月の追跡期間中に保存的治療を受けた患者よりも咽頭痛の日数が10.6日(95%CI 5.8-15.8)少ないことが示された(低い質のエビデンス).しかし,どちらの研究も術後の疼痛日数を考慮に入れていなかった.

■コクランは主要な結果は24ヵ月間の喉の痛みの日数であるべきであると述べており,英国の国立健康研究所が実用的な臨床試験を委託,咽頭通を持つ成人に対する手術介入の臨床的効果と費用対効果を評価する最大のRCTであるNATTINAが計画された.結果は,咽頭痛の日数を47%減少させるという結果であった.
英国での再発性急性扁桃炎を有する成人における保存的治療と扁桃腺摘出術の比較(NATTINA):多施設共同非盲検無作為化比較試験
Wilson AJ, O'Hara J, Fouweather T, et al. Conservative management versus tonsillectomy in adults with recurrent acute tonsillitis in the UK (NATTINA): a multicentre, open-label, randomised controlled trial. Lancet 2023 May 17[Online ahead of print]
PMID: 37209706
https://doi.org/10.1016/s0140-6736(23)00519-6

Abstract

【背景】急性扁桃炎の成人に対しては定期的に扁桃腺摘出術が行われているが,その根拠は乏しい.扁桃腺摘出術の減少とともに,急性扁桃炎の合併症による成人の急性入院が増加している.再発性急性扁桃炎の患者における保存的治療と扁桃腺摘出術の臨床効果およびコスト効果を評価することを目的とした.

【方法】本実用的多施設共同非盲検無作為化比較試験は,英国の27の病院で実施された.対象は再発性急性扁桃炎で二次医療機関の耳鼻咽喉科に新たに紹介された16歳以上の成人であった.患者は無作為に扁桃腺摘出術または保存的治療を受けるように割り付けられた.募集センターと基準症状の重症度による層別化は,Tonsil Outcome Inventory-14スコア(軽症0-35,中等症36-48,または重症49-70として定義)を使用して評価された.扁桃腺摘出術群の患者は,無作為化割り付け後8週間以内に口蓋扁桃腺を摘出する予定手術を受け,保存的治療群の患者は24ヶ月間にわたり非外科的な通常のケアを受けた.主要評価項目は,無作為化割り付け後24ヶ月間に収集された咽頭痛の日数で,週に1回テキストメッセージで報告された.主要な解析はIntent-to-Treat(ITT)集団で行われた.この研究はISRCTNレジストリ55284102に登録されている.

【結果】2015年5月11日から2018年4月30日までに,再発性急性扁桃炎の4165人の患者が適格性を評価され,3712人が除外された.453人の適格な参加者がランダムに割り当てられた(扁桃腺摘出術群233人 vs 保存的治療群220人).429人(95%)の患者が主要なITT解析に含まれた(224人 vs 205人).患者の年齢中央値は23歳(四分位範囲19-30歳),355人(78%)が女性,97人(21%)が男性であった.参加者の大部分は白人であった(407人 [90%]).扁桃腺摘出術群の患者は,保存的治療群の患者よりも24ヶ月間での咽頭痛の日数が少なかった(中央値23日 [四分位範囲11-46日] vs 30日 [14-65日]).部位とベースラインの重症度を調整後,扁桃腺摘出術群(n=224)と比較して保守的治療群(n=205)の全咽頭痛の日数の発症率比は0.53(95%CI 0.43-0.65, p<0.0001).231人の参加者のうち90人(39%)で191件の有害事象が扁桃腺摘出術に関連していると判断された.最も一般的な有害事象は出血であり,44人(19%)の参加者で54件の事象が報告された.研究期間中に死亡は報告されなかった.

【結論】再発性急性扁桃炎の成人において,扁桃腺摘出術は保存的治療と比較して臨床的に有効で,費用対効果に優れている.
[1] Douglas MC, Altmyer U, Cottom L, et al. A 20-year observational cohort of a 5 million patient population-Tonsillectomy rates in the context of two national policy changes. Clin Otolaryngol 2019; 44: 7-13(PMID: 30260571)https://doi.org/10.1111/coa.13233
[2] Burton JM, Glaszio PP, Chong LY, et al. Tonsillectomy or adenotonsillectomy versus non-surgical treatment for chronic/recurrent acute tonsillitis. Cochrane Database Syst Rev 2014; 2014: CD001802(PMID: 25407135)https://doi.org/10.1002/14651858.cd001802.pub3
by DrMagicianEARL | 2023-05-23 09:35 | 感染症

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