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EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【COVID-19】学校において,マスクは空気清浄機よりもウイルス曝露/感染リスク減少効果が大きい

■COVID-19に限らず,学校は感染症の拡大場所として重要視されてきた.COVID-19は第4波までは,小児は感染しても周囲への感染伝播が非常に少ないという特徴があったが,デルタ株の第5波以降は小児からの感染伝播が増加し,第6波以降は10歳未満と10代が人口あたりの感染者数で最も多い世代という状況になっている.実際にCOVID-19でも学校での接触がSARS-CoV-2の伝播一定割合寄与していることが報告されており,マスク着用と換気がエアロゾルを減少させたり,COVID-19発生率を下げたりしたとの報告が複数でている.

■今回,学校におけるCOVID-19予防目的のマスク着用と換気の効果を検討した研究がpublishされたので紹介する.この研究は,学校内での呼吸器感染症の伝播と感染対策措置の関連を評価するために,疫学的,環境的,分子的なデータを組み合わせた研究手法を使用しており,さらに実際の学校環境において感染対策措置の効果を評価しているのが特徴である.結果は,ウイルス曝露リスクについてはマスク着用で69%減少,空気清浄機で39%減少し,COVID-19への感染リスクはマスク着用で81%減少したのに対し,空気清浄機では減少効果はみられなかった.
スイスの学校におけるマスク着用または空気清浄機の有無によるSARS-CoV-2の感染:疫学的,環境的,分子的データのモデリング研究
Banholzer N, Zürcher K, Jent P, et al. SARS-CoV-2 transmission with and without mask wearing or air cleaners in schools in Switzerland: A modeling study of epidemiological, environmental, and molecular data. PLoS Med 2023; 20: e1004226
PMID: 37200241
https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1004226

Abstract

【背景】蓄積されたエビデンスは,重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の広がりにおいて,特にエアロゾルと呼ばれるより小さな粒子を介した空気感染が特に寄与していることを示唆している.しかし,学校の児童がSARS-CoV-2の感染にどの程度関与しているかは不明である.本研究の目的は,複数の測定手法を使用して学校での空気感染症の伝播と感染予防対策の関連を評価することである.

【方法】我々は,スイスの2つの中学校(n=90,平均18人/教室)で2022年1月から3月までの7週間(オミクロン波)にわたり,感染症学的(COVID-19の症例),環境(CO2,エアロゾルおよび粒子濃度),および分子的データ(バイオエアロゾルおよび唾液サンプル)を収集した.異なる研究条件(介入なし,マスク装着,空気清浄機)間での環境および分子特性の変化を分析した.環境の変化の分析は,換気の違い,クラスの生徒数,学校および曜日の影響で調整した.我々は,半機械的ベイズ階層モデルを使用して病気の伝播をモデル化し,欠席している学生とコミュニティ伝播に対して調整した.

【結果】唾液(21/262陽性)および空気中のサンプル(10/130)の分子解析では,SARS-CoV-2が研究全体で検出され(週平均ウイルス濃度0.6コピー/ L),時折他の呼吸器ウイルスも検出された.全体の平均CO2レベルは1,064±232ppm(±標準偏差)であった.介入なしの日平均エアロゾル数濃度は177±109/cm3で,マスク装着では69%(95%CI 42-86%)減少し,空気清浄機では39%(95%CI 4-69%)減少した.介入なしと比較して,マスク着用による感染リスクは低く(aOR 0.19,95%CI 0.09-0.38),空気清浄機との比較では同等であった(1.00 95%CI 0.15-6.51).研究の限界として,時間の経過とともに感受性のある生徒の数が減少したことによる交絡の可能性がある.さらに,病原体の空中検出は曝露を示すものであり,必ずしも伝播を示すものではない.

【結論】空中および人間のSARS-CoV-2の分子検出は,学校での持続的な伝播を示していた.マスクの義務付けは,空気清浄機よりもエアロゾル濃度の減少と伝播の低下と関連していた.我々の複数の測定手法は,学校や他の集団施設での呼吸器感染症の伝播リスクと感染予防対策の効果を継続的にモニタリングするために使用することができる.

by DrMagicianEARL | 2023-05-31 12:10 | 感染対策

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