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EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【メタ解析】重症市中肺炎に対するステロイド投与は死亡率を改善させる

■市中肺炎に対するステロイド投与は多数のRCTが行われたが,その結果には一貫性がなく,メタ解析やガイドライン推奨も一貫していない.2023年になり,Dequinらによる大規模なRCTで,ICUで治療された重症市中肺炎患者に対するヒドロコルチゾンはプラセボに比して28日死亡率を有意に低下させたとするCRICS-TriGGERSep trialが報告された(N Engl J Med 2023; 388: 1931–41).この報告を含めた,市中肺炎の中でも重症例に絞ってステロイドの効果を検討したメタ解析が行われ,死亡率改善効果がみられたとする結果がCritical Care誌にpublishされたので紹介する.なお,このメタ解析はAMSTAR2の評価では低い品質である.
重症市中肺炎治療における補助的なステロイドの効果と安全性:無作為化比較試験のシステマティックレビューとメタ解析
Blaser AR, Rooyackers O, Bear DE. Efficacy and safety of adjunctive corticosteroids in the treatment of severe community-acquired pneumonia: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Crit Care 2023; 27: 274
PMID: 37422686
https://doi.org/10.1186/s13054-023-04561-z
Abstract

【背景】本システマティックレビューおよびメタ解析は,重症市中肺炎(sCAP)の患者に対する全身的ステロイド治療の臨床的効果と安全性を調査することを目的とした.

【方法】2023年4月24日までに公表された論文について,Medline,Embase,ClinicalTrials.gov,Scopusデータベースを使用して包括的な検索を行った.sCAPの治療における補助的ステロイドの臨床的効果と安全性を評価した無作為化比較試験(RCT)のみが含まれた.主要評価項目は30日全死亡率とした.

【結果】本研究では合計で1689人の患者を対象としたRCTが含まれた.全体として,介入群は対照群に比べて30日時点での死亡率が低く(RR 0.61; 95%CI 0.44-0.85; p<0.01),異質性は低かった(I2=0%,p=0.42).対照群と比較して,介入群は人工呼吸器の必要性が低く(RR 0.57; 95%CI 0.45~0.73: p<0.001),集中治療室在室(平均差 -0.8; 95%CI -1.4 to -0.1; p=0.02)および在院日数(平均差 -1.1;95%CI -2.0 to -0.1; p=0.04)が短かった.消化管出血(RR 1.03; 95%CI 0.49-2.18;p=0.93),医療関連感染(RR 0.89; 95%CI 0.60-1.32; p=0.56),および急性腎傷害(RR 0.68; 95%CI 0.21-2.26; p=0.53)については,介入群と対照群間で有意な差は認められなかった.

【結論】sCAPの患者において,補助的ステロイドは生存利益有し,有害事象の増加なしに臨床結果を改善していた.しかし,プールされたエビデンスはまだ確定的ではないため,さらなる研究が必要である.
■AMSTAR(A MeaSurement Tool to Assess systematic Reviews)とは,システマティックレビューの品質を評価するためのツールであり,研究者がシステマティックレビューの信頼性と品質を判断するのに役立つものである.本研究をAMSTER2(BMJ 2017; 358: j4008)で評価すると,16項目は以下のようになる.
※2,4,7,9,11,13,15は全体的な信頼性に影響を与える重要項目
1.プロトコルが事前に登録されているか:No
2.研究の適格性基準が明確に記述されているか:Yes
3.研究選択のための手順が正しく実施されているか:Yes
4.データ抽出と評価のための手順が正しく実施されているか:Yes
5.研究者が情報源として使用したすべての文献をリストアップしているか:No
6.レビューに含まれる研究の一覧を提供しているか:Yes
7.レビューに含まれる研究の特性を詳細に説明しているか:Yes
8.リスクオブバイアス(RoB)を各研究に対して評価しているか:Yes
9.RoBの結果を報告しているか:Yes
10.RoBを結果の解釈に利用しているか:Yes
11.データの統合方法が適切であるか:Yes
12.異質性を評価しているか:Yes
13.研究の結果を適切に解釈しているか:Yes
14.出版バイアスの可能性を評価しているか:No
15.出版バイアスの可能性を結果に反映しているか:No
16.利益相反を開示しているか:Yes
■この結果から,本システマティックレビューを以下の基準に沿って評価すると,重要項目の1つ(15番)がNoであり,低品質という評価になる.
高品質:全ての重要項目でYesと評価され,他の項目もYesと評価されている.利用可能な研究の結果の正確かつ包括的な要約を提供する.

中品質:全ての重要項目がYesと評価され,他の項目にNoと評価されているものがある.レビューに含まれた利用可能な研究の結果の正確な要約を提供している可能性がある.

低品質:1つの重要項目がNo評価されている.利用可能な研究の正確かつ包括的な要約を提供していない可能性がある.

非常に低品質:2つ以上の重要項目がNoと評価されている.利用可能な研究の正確かつ包括的な要約として参照すべきではない.

by DrMagicianEARL | 2023-07-13 12:25 | 肺炎

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