【論文】ICU患者における小腸内細菌異常増殖症(SIBO)は3人に1人
■SIBOに関する論文は2000年以降急増している.主な診断法は,ラクツロース呼気試験(LBT),グルコース呼気試験(GBT),空腸細菌培養定量法の3つが主流である.さらに,SIBOは当初水素の放出と関連していたが,現在ではSIBOがメタンの生成も伴うことが認められている.メタンSIBOと水素SIBOは,検出される頻度が異なるだけでなく、影響も異なる可能性がある。水素SIBOの検査でメタンSIBOが検出されないこと、またその逆がないことが重要である.
■ICU患者におけるSIBOの有病率を検討した報告はほとんどない.しかしながら,前述の原因を見るに,一般的には腸内細菌叢の多様性が失われると言われているICU患者でも状況次第ではSIBOが発生する可能性は十分にありえる.そして,本研究の結果では36.5%という高い割合で検出されている.もっとも単施設のN数が少ない解析であり,今後ICU領域での詳しい研究が待たれる.
ICU患者における小腸内細菌異常増殖症の高い有病率:観察研究
Karakosta A, Bousvaros K, Margaritis A, et al. High Prevalence of Small Intestinal Bacterial Overgrowth Syndrome in ICU Patients: An Observational Study
PMID: 37489018
https://doi.org/10.1177/08850666231190284
Abstract
【背景】小腸内細菌異常増殖症(SIBO)は重篤な合併症を引き起こす可能性があるが,重症患者における研究は十分に行われていない.本研究の主要目的は,重症患者におけるSIBOの有病率を評価することであった.副次評価項目として,人工呼吸器関連肺炎(VAP),集中治療室(ICU)の在院日数(LOS),および全死因による院内死亡率に対するSIBOの影響を評価した.
【方法】この前向き観察研究は,内科外科混合ICUで実施された.連続した52例のICU患者において,SIBO診断のためにラクツロースを用いた非侵襲的修正水素呼気試験(HBT)を採用した.HBTは所定の時間間隔(入院初日,ICU入室3日目,5日目,7日目)で実施した.ICU入室日にSIBOを示唆するHBT異常が認められた患者は研究から除外された.参加者は,3日目,5日目,および/または7日目のHBTに基づいて陽性または陰性のいずれかに分類された.人口統計学的データ,APACHE IIスコア,VAPの発生率,ICU滞在期間,および全原因院内死亡率の比較評価を実施した.多変量ロジスティック回帰解析を行い,SIBOの予測因子を同定した.
【結果】各群のベースライン特性は均質であった.SIBOの有病率は36.5%であった.全病院内死亡率は34.6%であった.SIBOの存在は,VAPの発生率の増加(P<0.001)およびICU滞在期間の延長(P<0.033)と関連していた.全病院内死亡率は両群間で同程度であった.多変量ロジスティック回帰モデルの結果では,年齢のみがSIBOの統計的に有意な独立した予測因子として同定された(OR 1.08,P=0.018).
【結論】ICU患者におけるSIBOの有病率は増加しているようである.SIBOはVAPおよび入院期間の延長と関連しているようであるため,早期診断と効果的な治療の両方が,特に重症患者にとって最も重要である.