人気ブログランキング | 話題のタグを見る
ブログトップ

EARLの医学ノート

drmagician.exblog.jp

敗血症をメインとした集中治療,感染症,呼吸器のノート.医療におけるAIについても

【SR】急性腎傷害に対する早期の腎代替療法は後期と比較して害が益を上回る

■重症患者の急性腎傷害(AKI)に対する腎代替療法(RRT)のタイミングは早期か後期か?については長らく論争が起こっているが,最近は早期に行っても予後に影響は与えないではないかという研究が増加してきている.そのような中,RRTの早期vs後期を比較したRCTのシステマティックレビュー論文がpublishされたので紹介する.結果は,死亡率や人工呼吸器非装着日数,RRT非使用日数などの項目で有意差はなく,有害事象は早期RRT群で多かった.このことから,緊急の指標がないAKIにおいては,後期RRTと比較して,早期RRTは害が益を上回る結果となっている.なお,本システマティックレビューのMASTAR2評価では16項目すべてがYesであり,高品質(利用可能な研究の結果の正確かつ包括的な要約を提供している)の評価となる.
急性腎傷害の成人患者における早期vs後期の腎代替療法:無作為化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析のアップデート
Li JH, Cai JH, Wang MJ, et al. Early strategy vs. late initiation of renal replacement therapy in adult patients with acute kidney injury: an updated systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Eur Rev Med Pharmacol Sci 2023; 27: 6046-57
PMID: 37458646
https://doi.org/10.26355/eurrev_202307_32959

Abstract

【目的】急性腎傷害(AKI)の最適な腎代替療法(RRT)開始時期は議論がある.本研究では,成人のAKI患者において早期と後期のRRT開始を比較し,臨床転帰に与える影響を調査することを目的とする.

【方法】PubMed,Embase,Cochrane Library,Web of Science,中国生物医学文献データベース,ClinicalTrials.gov,国際臨床試験登録プラットフォームを2022年8月7日までのデータを対象にシステマティックに検索した.このレビューには,AKI患者における早期と後期のRRT開始を比較した無作為化臨床試験(RCT)が含まれた.選択した主要評価項目は,短期および長期の死亡率であり,副次評価項目はRRT依存性,集中治療室(ICU)滞在時間,入院期間,人工呼吸器非装着日数,血管作動薬非使用日数,RRT非使用日数,および有害事象であった.

【結果】合計で15件のRCT(5,625例の患者を含む)が解析された.早期のRRTは後期と比較して生存に有利ではなかった(28日または30日の死亡率:RR 1.01,95%CI 0.94-1.08,p=0.87;60日の死亡率:RR 0.87,95%CI 0.71-1.06,p=0.16;90日の死亡率:RR 1.00,95%CI 0.88-1.13,p=0.97;院内死亡率:RR 1.05,95%CI 0.88-1.24,p=0.58;ICU内の死亡率:RR 1.00,95%CI 0.91-1.10,p=0.98).後期RRTは早期RRTよりもRRT依存性,ICU滞在時間,入院期間のリスクが高くなることはなかった.同様に,早期RRT開始は人工呼吸器非使用日数,血管活性剤非使用日数,およびRRT非使用日数が長くなることはなかった.ただし,早期RRTの開始は有害事象が増加する結果となった.

【結論】本研究は,早期のRRT開始が生存上の利益や臨床転帰の改善とは関連しておらず,RRT関連の有害事象のリスクが増加することを示唆している.緊急の指標がないAKI患者に対して早期RRTの使用をサポートする現在のエビデンスはない.

by DrMagicianEARL | 2023-07-28 12:16 | 敗血症性AKI

by DrMagicianEARL