【RCT】COVID-19関連ARDS患者において4mL/kgの超低1回換気量は推奨されない
■超1回換気量を検討した過去のRCTは,人工呼吸管理にECCOR2を組み合わせた研究2報のみであり,XTRAVENT研究では,主要評価項目の60日間の人工呼吸器非装着日数に有意差なしであったが,post hoc解析でP/F比<150のサブグループにおいては有意差がみられたと報告している.REST試験では,90日死亡率に有意な影響を与えなかったが,早期終了により臨床的に重要な差を検出するためのパワーが不足していた可能性があり,またECCO2Rに関連した有害事象の発生率が高かった.
■今回紹介する研究は,フランスにおけるCOVID-19関連ARDSの超低1回換気量(4mL/kg)と従来の低1回換気量(6mL/kg)を比較したRCT,VT4COVID試験である.この研究チームは,ARDS患者34例を対象としたpilot研究において,ECCO2Rなしで4mL/kgの超1回換気量による人工呼吸管理を行うことで,22人(34人中65%)の患者で許容可能な高炭酸血症を保ちつつpHを7.20以上に保つことができ,この戦略は,人工呼吸器駆動力と人工呼吸器関連肺傷害の有意な減少と関連していた.
■このpilot試験を経て行われた今回のVT4COVID試験では,90日目の全原因死亡率と60日目の人工呼吸器からの離脱日数に基づく複合スコアにおいて有意差はなく(90日死亡率44% vs 39%, p=0.52),呼吸性アシドーシスを有意に増加させた(33% vs 13%, p=0.0004).サブグループ解析では,主要評価項目に対する超低1回換気量群の有利な効果を示した項目はなく,入院時に腎臓のSOFAサブスコアが2以上の患者ではむしろ有意に有害な結果となった.以上から,COVID-19関連ARDSにおける超低1回換気量戦略のルーチンでの導入は支持しないとしている.
フランスにおけるCOVID-19関連ARDSの超低1回換気量の人工呼吸管理:多施設共同オープンラベル並行群間無作為化比較試験Richard JC, Terzi N, Yonis H, et al. Ultra-low tidal volume ventilation for COVID-19-related ARDS in France (VT4COVID): a multicentre, open-label, parallel-group, randomised trial. Lancet Respir Med 2023 Jul.12[Online ahead of print]
PMID: 37453445
https://doi.org/10.1016/S2213-2600(23)00221-7
Abstract
【背景】COVID-19関連の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は,高い死亡率と長期の人工呼吸を必要とすることが関連している.我々の目的は,COVID-19関連ARDS患者における超低1回換気量(ULTV)による換気と低1回換気量(LTV)による換気の有効性を評価することである.
【方法】本研究は,フランスの10の集中治療室で行われた多施設,オープンラベル,並行群間無作為化試験である.対象となる参加者は,18歳以上で,RT-PCRによって確認されたCOVID-19により侵襲的な人工呼吸を受け,ベルリン定義に基づくARDSを有し,動脈酸素分圧と吸入酸素分率(PaO2/FiO2)の比が150 mmHg以下で,1回換気量(VT)が予測体重あたり6.0 mL/kg以下で,静脈内鎮静薬持続投与を受けていた.患者は,ブロック無作為化を使用して,予測体重あたり4.0 mL/kgのVTを目指すULTV(介入群)か,予測体重あたり6.0 mL/kgのVTを目指すLTV(対照群)を受けるよう無作為に割り当てられた(1:1).参加者,研究者,および結果の評価者はグループの割り当てについて開示されていた.主要評価項目は,90日時点での全死因死亡率を第一の基準とし,60日時点で生存している患者の中での人工呼吸器非使用日数を第二の基準とするランク付けされた複合スコアであった.効果量は,ULTV群とLTV群の各患者間での主要評価項目の優先順位付けされた比較に基づく非一致勝利比率で計算された.非一致勝利比率は,ULTV群でより有利な結果を示したペアの数と,ULTV群でより不利な結果を示したペアの数との比率として計算された.主要な分析は,無作為に割り当てられ,追跡可能であったすべての参加者を含む修正されたintention-to treat集団で行われた.本試験はClinicalTrials.govにNCT04349618で登録されている.
【結果】2020年4月15日から2021年4月13日までの間に220人の患者が含まれ,5人(2%)が除外された.215人の患者が無作為に割り当てられた(ULTV群へ106人[49%],LTV群へ109人[51%]).58人(27%)の患者が女性で,157人(73%)が男性だった.中央値の年齢は68歳(IQR 60-74)であった.214人の患者が追跡を完了(ULTV群で1人が追跡を失った)し,修正intention-to-treat解析に含まれた.主要評価項目は,2群間で有意差はみられなかった(ULTV群の非一致勝利比率0.85[95% CI 0.60 to 1.19];p=0.38).ULTV群の105人の患者のうち46人(44%)と,LTV群の109人の患者のうち43人(39%)が90日までに死亡した(絶対差4%[−9から18];p=0.52).最初の28日間での重度の呼吸性アシドーシスの率は,ULTV群がLTV群よりも高かった(35人[33%] vs 14人[13%];絶対差20%[95% CI 9 to 31];p=0.0004).
【結論】中等度から重度のCOVID-19関連ARDS患者では,60日時点で生存している患者の間での死亡率と人工呼吸器非使用日数に基づく複合スコアにおいて,ULTVとLTVとの間に有意な差はみられなかった.これらの結果は,COVID-19関連ARDS患者に対するULTVの体系的な使用を支持していない.